23話
何時もの様に【陣】の中央に立てば、お祖父様達が【陣】を起動させます。
【陣】からは何時もの様に淡い銀色の光が立ち上がり、私の周りを漂い始めます。
いつ見ても、幻想的ですね。
今回も光の色には変化はありませんね。
光が私の中に消えるまでの時間は毎回伸びていて、魔力量だけを見ると同年代とは比べ物にならない量だそうです。
お祖父様曰く、魔法士団で役持ちになれる人と同じぐらいとの事なので、20歳になる頃にはお祖父様の全盛期の魔力量以上になる可能性があるそうです。
お祖父様の魔力量は異常に多い様で、歴代の魔法士団長の中でも随一だそうです。
因みに、父様とロイ兄様もそれなりに量が多いらしいので、魔力量は遺伝するのではないかと言われています。
魔力量はチートなんですが、肝心の魔法系統が分からないのが難点です。
ナディエージ様はチートは付けられないと言われていたので、その為でしょうか?
=ガタン=
そんなの事を考えていると、突然物音が響きました。
音の出処は入り口の扉で、そちらに顔を向けると2人の人物が立ち尽くしていました。
私は【陣】の中央にいて、周りにはまだ光が漂っているので2人の人物はシルエットでしか確認が取れません。
しかし、お祖父様達には誰だか分かった様で息を飲まれて驚かれているのが伝わります。
いったいどなたなのでしょうか?まぁ、私が顔を見れたとしても、知らない人が殆どなので分からないと思いますが…。
光が段々と私の中に消えたので2人の人物が見えてきました。
1人は、鈍色の髪と瞳をしたシルバ兄様と同い年ぐらいの少年で、よく見ると顔の造形がネイルソン隊長によく似ています。
先程のお話に出てきた、ご子息様でしょうか?
ご子息様?もネイルソン隊長と同じ鈍色の髪と瞳なので魔法の才があるのですね。まだ魔法士団員の制服を着ていないので、魔法士団員ではないのでしょうが、何故ここにいるのでしょうか?
そして、もう1人の人物は、透き通る様な銀髪で瞳の色は薄めの紫水晶の色です。顔もイケメンで、世の中のお嬢様達が放っておかない、いえ、下手したら何人ものストーカーがいてもおかしくない顔立ちで、やはりシルバ兄様と同い年ぐらいの少年です。
何となく、ナディエージ様に雰囲気が似ている様な気がします。
そう言えば、我が国の王族には、銀髪で薄い色の瞳を持つナディエージ神の愛し子と言われる、加護を与えられた者が多く産まれるとの事でした。加護自体は幸運をもたらすと言われているのみですが。
確か、現在も加護持ちの王族がいましたが、どなただったでしょうか。
2人の人物を観察して、どなたなのか考えていると光が私の中に全て消えていました。
「幻想的な光景ですね。一瞬天使を召喚して捕らえているのかと思いましたよ。
でも、まだ幼い少女ですね。シュテルネン団長、彼女はどこの誰ですか?
それに、その色彩はどう言う事でしょうか?」
「……殿下、この娘は儂の孫娘です。
色彩に関しては産まれつきなので、説明のしようが有りません。」
「シュテルネン団長の孫娘?確か孫は男児が4人だったと記憶しているのですが。」
「陛下の意向にて、秘匿されているのです。」
「父上は彼女の事をご存知ですか。
秘匿とは、…まぁされるでしょうね。」
お祖父様が私に目配せをしてきます。
えっと、ご挨拶をしろと言うことですよね?殿下と仰っていましたが、確か現国王の子供でシルバ兄様ぐらいの年齢の男性だと王太子殿下ですよね。
取り敢えず、最敬礼になる淑女の礼を取りましょう。でも、下の者からは話しかけてはダメだった筈です。この後どうすれば良いのでしょうか?
それに、私の服装は王族の前に出ていいような洋服ではありませんよ。
ドレスではなくて、只のワンピースです。誰か助けて下さいー。
「顔を上げていいよ。名前を聞いてもいいかな?」
「はっ、ミーナ・ヴァグナークと申します。」
「ヴァグナークと言うことは、第1騎士隊長の娘だね。
歳は幾つになるのかな?」
「今年9歳になります。」
「4歳下か、フランツはどう思う?」
「殿下、私が口を挟む事では無いと思いますが…。
敢えて言うならば、現段階だとロリコンと言われるかと。」
「お前は丁寧な言葉で酷いことを言うね。
そう言うお前はだって、見惚れていたんだからロリコンだろう。」
な、何の話をされているのでしょうか?
私名乗ってしかいないですよ?
「シュテルネン団長、彼女を私の婚約者にしたいんだがいいよね?」
お読み頂きありがとうございます。




