➖閑話 〜ダン・フォスキーの出会い〜➖
本日2話目です。
今王国中で蔓延している流行病で、学院が休講してしまった。
別に寂しがりやでは無いが、日々同じ目標を持って切磋琢磨していた連中に会えないと、それなりに寂しく思う。
学院が休講してからは、実家の手伝いで街をあちこち歩き回る日が続いていた。
実家は花屋兼薬草園をしているので、今も何件かの医者や薬師の所に薬草を配達して来たところだ。
家に向かって歩いていると、今まで見た事の無い女の子が不安そうにして泣いているのが見えた。
俺はこれでも、街中を歩きまわってるからか顔が広い。この辺の子供の顔は全て把握していると言っても過言では無い。
きっと、少しは離れた所から親と来て逸れたのだろう。
「大丈夫?お母さんと逸れた?」
そう声を掛けながらハンカチを差し出した。泣いてる女の子をそのままに話すのは、騎士を目指す俺としては騎士道に反するからな。
女の子は器用に、眼鏡がズレないように涙を拭いて、深呼吸をしていた。
俺は女の子の顔を見て息をのんだ。やばいっタイプだ。
女の子は、亜麻色の背中まで伸びた髪を可愛らしく、でも動きやすい感じのハーフアップにしていて、眼鏡で瞳の色は分かりにくいが、クリッとした目をしていた。
輪郭は丸顔に近いが、顎に掛けてのラインはすっきりしているので、将来のメイクの仕方では愛らしく有りながらも、綺麗にもなりそうだ。
唇も……って、何考えてるんだ俺。
はぁ、俺みたいな何処にでもいる顔は相手にされない…じゃなくて、今はそれどころじゃないだろ。
どうやら女の子の母親が高熱で倒れた様で医者か薬師を探しているそうだ。
ここら辺で腕のいい医者か薬師だったら、アンダーソンさんの所だな。
女の子は状況の説明をしていると、また瞳に涙が溢れてきていた。
「落ち着いて大丈夫だよ、深呼吸して。
それじゃあ、一緒に行こうか。
俺はダン、ダン・フォスキー。君の名前は?」
「私はミーナ・ヴァグナークです。
ダンさん、ありがとうございます。」
ヴァグナークって、シルバとロイ兄弟の親戚か?
そう言えば、2人には誰もあった事が無い妹が居るって噂があったけど、どうなんだ?
「そういえば、ミーナはヴァグナークなんだよな?
て事は、シルバの妹?
あいつに妹が居るらしいって噂があるけど、誰も見た事ないから幻扱いされてるぞ。
学院に入ったら騒がれて大変になるな。」
ミーナの顔を見たら好奇心で聞いた事を後悔した。
何か事情があるから、誰にも会ってないんだよな。シルバだって、噂が出始めた時に否定も肯定もして無かったじゃないか。
あいつだって、他の連中が聞いてきた時困った顔してたし、ロイの方もイライラしてたんだった。
「…あー、まぁ人には色々有るだろうから答えなくていいぞ。俺の独り言だ。
っと、ここだ。こんちはー。」
タイミングよく店に着いて良かった。空気の重さに耐えられそうに無かったからな。
店には薬師夫婦の娘のセシルが店番をしていたが、運良くおばさんがいた様だ。
セシルがおばさんを呼びに行く時に、俺に落ち着かせろと目配せをしてきた。
良く、近所の子供らの相手してたから出来なくは無いが、俺の落ち着かせ方が頭を撫でる一択だって知ってるだろうに。
…ちょっと役得と思っているが。
おばさんが現れて、あっという間に話が進んでく。
ミーナとこれで会えなくなると思うとちょっと切ない。と思っていたら、兄貴達がいる伯父さんの所に手紙を届けて欲しいときた。
お安い御用だ。
場所を聞いて仰天だ。
シュテルネン伯爵家だと!?優秀で平民にも優しいと評判の貴族様じゃないか。しかも、前当主は国の英雄で現魔法士団の団長で、現当主の弟は剣も魔法も才が有る騎士団で体調をしてるって有名な。
てことは、あいつらがその弟の子供かよ。
強いのは当たり前じゃないか。こりゃ、シルバに剣で勝てる日が遠のいた気がするわ。
そういや、驚きの余りミーナに挨拶しないで出てきちまったな。
考え事をしながら走っていれば、いつの間にか伯爵家に着いていた。
「すみません。ミーナから手紙を預かってきたので、シュテルネン伯爵にお渡しして頂きたいのですが…。」
「っ!拝見する。
確かにミーナ様の印が押してある。暫くここでお待ち頂けませんか?」
「えっ、あっはい。」
手紙届けたのに待たされるってどういう事だ?
直ぐにさっきの門番が戻ってきて、屋敷の中に案内された。
どうなってんの、俺なんかしたか?
「ミーナの手紙を届けてくれたのは、貴方ですね。ありがとうございます。
質問を幾つかさせて頂きたいのですが、宜しいですか?」
疑問系にしてるけど、これは拒否権はないよね。
「何でしょうか?」
「まず、ミーナとどの様な状況であったのか、現在どの様な状況になっているかですね。」
「はい。
あった時の状況は、街中で不安そうに泣いていたのを見かけて声を掛けさせて頂きました。
状況を聞くと、家で母親と2人でいた時に、母親が高熱を出して倒れて、医者か薬師を探してるとの事でした。
なので、私の判断でその近辺で腕がいい薬師の所へ連れて行き、今はその薬師の女性と一緒に帰宅しているはずです。」
「はずと言うのは?」
「私は薬師の所へ案内して合わせた後に、こちらへ手紙を届けて欲しいと頼まれましたので。」
「そうですか。この事を知ってるのは、貴方とその薬師の女性だけですか?」
「いえ、店に訪れた時に薬師の娘が店番をしていたので、その娘も知っています。」
「ありがとうございます。この事はどうか内密にお願いします。」
伯爵様が平民の俺に頭を下げるってどういう状況ですか!?
「分かりましたから、頭をお上げくださいっ。」
「あぁ、それと貴方のお名前を伺っても?」
「名乗らずに失礼をしました。
私は、ダン・フォスキーと申します。」
「このお礼は後日させて頂きます。
マルス、お送りを。」
俺のこの日の出会いは、驚きの連続だった。
余談だが、学院が再開して早々シルバとロイ呼び出されたのは言うまでもないか。
お読み頂きありがとうございます。
次回も閑話になりますが、投稿は明日の7:00になります。




