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101話

王都に入る街門から少し離れた所で一度陣を築きました。

一体何故こんな所で陣を張るのかわからなかったのですが、どうやら、凱旋パレードを行う為にここで人員の整理をするそうです。

活躍が目立った人やお偉い方達を中心にしたパレードで、騎士や魔法士は全員参加するそうですが、非戦闘員(後方支援部隊)達は、ここでパレードが終わるまで待ちその後少数ずつに分かれて、迅速に王城や各集合場所(隊舎や国の施設)にひっそりと移動をするそうです。

私も、医療部隊や司祭といった関係で、待ちになると思っていたのですが、パディ様の婚約者と言う立場でパレードに参加する様にとお達しがされました。

パディ様、つまり新国王陛下の婚約者という立場だと、とても目立つ位置でパレードに参加させられてしまいます。この後の婚約破棄がし難くなるのですが。それに、もう一つの懸念があります。

それは、私が戦場で助けられなかった方達の遺族の方からの遺恨です。私はその思いを宿した目をどれくらい目にしなければならないのでしょうか…。



パレードが始まり、やはりと言うべきか私のいる場所は目立つ場所でした。パレードの先頭から3番目の位置で、先頭のクリーガ―団長、次にヘレンさんその次が私でした。ちなみに今回の戦争で英雄的位置づけになったダンさんは5番目の位置です。

パレードの先頭の方は皆、プフェート()に乗っての行進になります。私も勿論プフェートに乗っています。


王都の街門から入ってすぐの頃は、誰も彼も讃える声が続き、また、私に対しての遺恨の籠る目を向けられる事もありませんでした。

私が考え過ぎていたのかとホッとし、パレードも半ばまで進みましたが、そのあたりから徐々に、遺恨の籠る目や悪意のある目を目撃するようになり、遂に私に向かって物を投げ、罵声を浴びせる人が現れました。


「何が、世界で唯一の治癒魔法を持った奇跡の少女よ!

治癒魔法があるなら、何で私の夫を…イグスを助けてくれなかったのよ!!!

お前が…、お前が代わりに死ねばよかったのに!!!!!」


その女性を皮切りに、他からも罵声が飛び交い始めました。街の治安を維持していた騎士様達があちこちから上がる罵声を止めようとしていますが、一部の騎士様は積極的に動く事がありません。

あぁ、きっとあの騎士様達は、私の事が気に食わない貴族の方達と繋がりがある方たちなのですね。

目も耳もこの場で塞いでしまいたいですが、そんな事が出来ません。目を閉じれば、罵倒の言葉が今以上に耳に残ってしまいます。目を閉じれば、危険な物が飛んできた場合に避ける事が出来ませんから、只々耐えるしかありません。


私は私に出来る精一杯をしたのです。戦争で家族を亡くしたのは貴女方だけではありません。私も兄や祖父、従兄を亡くしたのです。しかも兄は私を庇って目の前で。

どれだけ、この事を叫びたかったでしょうか。でも、私がここで取り乱すのは良策ではないでしょう。これは、戦争で家族を亡くした方達の心の傷を抉った、一部の貴族からの攻撃なのでしょうから。そんな貴族に屈するつもりはありません。

残りのパレードも罵声を浴び、時々物が飛んで来るのを耐えながら進みます。

漸く王城に着き、罵声が聞こえなくなってから私はプフェートから降りました。

ここに辿り着くまでに、心がとても疲弊してしまいました。これから、謁見が行われると聞いていましたが、私を良く思っていない貴族達と対面するには気力が足りません。

私は周りの流れに流されながら移動し、気が付けば王城の中の1室に通されていました。

この部屋には、私の他は誰もいません。私はついて行く場所を間違えたのでしょうか?

少し呆然としていると、部屋をノックする音が聞こえました。


「どなたでしょうか?」


いきなり戸を開けず、少し距離を取ってから誰何をします。しかし、思っていた以上に声が出ず、か細い声での誰何になってしまいました。


「ルーカスです。入っても良いですか?」


ルーカス義父様でした。私は、慌てて扉に近づき開きます。

窶れて、杖をついていますが、ルーカス義父様です。


「ルーカス義父様…、私、わたし……。」

「ミーナ、パレードでの事を聞きました。私やカールの力が及ばず、辛い思いをさせました。もう、無理をする必要はありませんよ。

謁見にも参加しなくて大丈夫です。パトリック国王陛下からのお心遣いです。

このまま、一度シュテルネンの屋敷へ帰りましょう。ハンスにはカールから伝言がされますから、心配はいりませんよ。」


泣きじゃくる私を、杖をつき、半身に麻痺が残る状態であるにも関わらず、温かく抱きしめてくれます。

私は家族にとても恵まれています。この家族を大切にしなければそれこそ罰が当たりますね。

ルーカス義父様に促されながら、シュテルネン家の馬車に乗り家へ帰りました。

そこでも、アマンダ義母様とシャルロッテ姉様に温かく迎え入れられました。

お読み頂きありがとうございます。

次回は、年明け後の投稿になり、パトリック視点での閑話にする予定です。

それでは皆様よいお年を。

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