沙耶、話を聞く
久しぶりの更新です
フカフカの枕はやっぱり寝心地が最高で、私の目覚めは最高だった。
私、この枕と相性いいのかも!!
そう思いながら、朝食の用意をしようとリビングに出る。
部屋のドアを開け、共同スペースのリビングに出る。
アルさんはまだ、寝室らしく人の気配はない。
(…やっぱり、生活感ないなぁ)
必要最低限、もしくはそれ以下のような家具を見て私はそう思いながらキッチンへ。
「…あ」
思わず、小さく声が出た。
生活感の欠片もないような部屋のキッチンだけ、正確には作業するテーブルに大量の食材が乱雑に置いてあった。
パンや野菜、生ものを保存する所には肉や魚。
鮮度をみても、買ったばかりの新しいものだ。
きっとアルさんが昨日買ってきてくれたんだ…。
生活感の欠片もない部屋の一角だけ、やっと人の気配…アルさんの性格が出ている場所がある。
その事がやけに嬉しくて、ふっと自分の頬が緩むのが分かる。
「よし!頑張ってご飯作ろ!」
ニヤけそうになる顔を軽く叩き、私は料理を作り始める。
あらかた朝食の準備が整ったのを見計らったようなタイミングで「おはよ」とアルさんが寝室からやってきた。
「あ、おはようございます!ご飯出来てますよ」
アルさんと旅をし始めてからの恒例の挨拶をする。
いつもアルさん見計らったように起きてくるんだよね~何でかな?
そんな事を私が思ってると「おぉ、今日も美味そうだなぁ~!」といつも通りのアルさんの声が部屋に響く。
アルさんの顔を見ると、早く食べたいだろうことが見てとれて、「食べる前に顔洗って下さいね」とアルさんに声をかけると、慌てたような表情になったアルさんが「おう!」と勢いよく洗面台に向かって行った。
そんないつも通りのアルさんを見て、思わず笑みが零れる。
やっぱり大丈夫。
この人と一緒に暮らしていけそうだ…!
「で、本題なんだけどよ」
私が朝食のスクランブルエッグを口に運んでる最中に不意にアルさんが声をかけてきた。
見るとアルさんはもう食べ終えていて、少し真剣な面持ちで私を見ていた。
…本当マイペースな人だな!
もう少しで食べ終わるから待っててよ!
…と口にできるはずもなく、口に運んだスクランブルエッグを黙々と咀嚼し胃に収めて私はアルさんを見つめ返した。
「…私のこれからの事ですね」
私の問いかけにアルさんは無言で頷く。
目下の目的は魔術師名簿に登録し、身分を得る事。
そして最終目的は…自立。
この世界でどうやって1人でやっていくのか…そもそも登録できるのか…。
色々な不安が入り交ざり、私の表情が硬くなるのが分かる。
そんな私を見て、アルさんが一瞬視線を落としもう一度視線を上げ「とりあず、昼飯は弁当な?」ととっても良い笑顔で言い放った。
「…は?」
そう気のない返事をした私の表情は非常に面妖なものだったに違いない。
現に真正面のアルさんは、ひぃひぃ言いながらテーブルを叩いている。
…この人、殴っていいだろうか?
笑い転げていたアルさんの波が去り、その後の詳細が教えられた。
まず、今日作るお弁当は私のレパートリーの中でも奇抜なものにするもの。
奇抜ってなんだよって思うが、この国の人では思いつかないものと私は捉えた。
そうしたら、絶対に登録できるとあとは自分に任せろと自信満々の表情でアルさんが笑うから、これはもう大丈夫だと、私は直感した。
…この人が大丈夫っていうとそうなる気がするから不思議だな。
そうして次に私が成人したらの事。
基本は国の為に働くのが魔術師だけど、私の魔法の使えなさを知ってるアルさんは、無理にそうしなくていいと言ってくれた。
少ないけど、王国に関係なく働いてる人もいると教えてくれた。
そうすると年に数回魔術師機関に顔を出し、定期報告する義務があると教えてくれた。
住む家は、今いる家をそのまま使ってもいいし、自分の家が欲しいのならアルさんが後見人となって家を造ってもいいと言ってくれた。
「ここは1人身の魔術師の為にある集合住宅だから、このままあんたがここに住むなら、空いてる部屋にそのまま移動することが出来る。でも、そうすると拠点が王都になるからどうしても国の仕事を少なからず背負う事になると思う。今のあんたには厳しいかもな。逆に家を造るとしても、自分の好きな所に家を建てれるかも分かんないし、お前の容姿を良く思わない奴の傍でやっていかないといけないかもしれない。成人したら自分の身は自分で守んなくちゃいけない。味方のいない地に1人で行くかもしれないという危険がある事を忘れんなよ。」
そう淡々と、メリットデメリットを私に言ってくれた上で「まぁ、まだ家の事は保留でいいぜ。」と笑ってくれた。
アルさんは笑ってくれたけど…思っていたよりもずっと厳しい話だった。
成人するまで3年…
シーガ村に帰れるの?
ラル君の所に帰れるの?
…元の世界に…帰れるの?
でも、今は前を見るんだ。
前だけ…見よう。
そうして、アルさんに言われた通りにお弁当を作り(アルさんのいう所の奇抜弁当)
私は今…
王国直属魔術師機関の門前にいる。
また登録できなかった…。
玄関までは来ました…




