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闇の世界  作者: ななし
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ことの始まり

 血と硝煙の匂いがする。


 気づいたら僕はどこか見知らぬ駅のホームに立っていた。しとしと霧雨が降ってるせいか、駅は霧がかり、かすかに雨音だけがしている。おかしなことにホームには誰もいなかった。自分の呼吸音すら聞こえるくらい静まり返っている。


……ここはどこだ?


 僕は周囲を見渡した。「五月駅」という駅名標が見える。


 ふらっと足を踏み出した。すると僕は急にあることに気づいた。


 僕は……僕はいったい何者なんだろうか?


 頭に手を当て考える。だがいくら考えても何も思い出せなかった。


 おかしい……。記憶がない。全く思い出せない。 


 僕は背負ってたリュックを降ろすと、自分を確認できる物を探そうとした。だがリュックの中には携帯食料数個と、水、タオルが入ってるだけで、自分に関する情報は何一つなかった。


 さらに何か情報を得れる物がないかとポケットを探ってみる。ズボンの後ろポケットを探ると、無機質な物が手に当たった。


 スマホだ。


  不思議なことに、僕はこれがスマホであることは分かるようだ。自分のことは分からないのに、生活の基本となる事柄はすべて覚えてるらしい。どう操作すればいいかも分かる。


 僕は急いでスマホを手に取ると、中の確認しようとした。しかしロックがかかっているらしく、開かない。何度か適当なパスワードを入れて試してみたが、ことごとく失敗しやがて諦めた。


 仕方ないのでスマホは諦め、ホームを歩き人を探すことにした。誰かに助けを求めれば、きっと自分のことが分かるだろう。そう期待して歩く。


 しかし駅のホームには駅員の姿はなかった。それどころか乗客すらいない。停まってる電車の車内を順々に渡り歩いてみたが、誰一人いなかった。


 おかしい……。どうして誰もいないんだ?


 僕は改札に向かった。窓口を覗き込み、声をかけた。


「あの……、誰かいませんか?」


 窓口に駅員はいなかった。


 後方にドアがあり、半開きになっていた。ドアの隙間から椅子が一脚横倒しに倒れたままになっているのが見える。しばらく待つが、奥から誰かが出てくることはなかった。僕はあきらめて駅から出ることにした。 


 改札機の扉が全部開きっぱなしになっている。機械の故障だろうか? 少しためらいつつも通り抜ける。


 目の前にうっすら霧がかった商店街が現れた。雨がやんだのか、水たまりに光が落ち、店のショーウィンドウがところどころ輝いていた。


 駅前にはコンビニやカフェ、衣料品店があった。しかしどの店も人の気配はなく、静かだった。

 真横にあるコンビニを覗く。何があったのか。棚は倒れ、食べ物やドリンクなどが床に散乱している。

 自動ドアのすぐそばに新聞が落ちていた。日付が見える。「2024年7月6日」。今日の新聞だろうか。僕は新聞を拾うと、コンビニを出て商店街を歩き出した。 


 商店街は左右に分かれていた。右側に顔を向けてみると、少し先に大通りらしき道路が見えた。僕は自然とそちらへ足を向けていた。なるべく人と遭遇できる確率の高い場所に行こうと思ってだった。誰かと会って、早く安心したい……。


 水たまりを踏み足音が鳴る。しかしそれ以外の音はしなかった。あまりの静けさに頭がおかしくなりそうだった。


 やがて、間近に広い道路にビルが見えてきた。かなり大きな通りだ。これほど大きな道路や建物がある場所ならば、誰かしらいそうだ。僕は期待し、いつの間にか駆け出していた。商店街をいっきに走り抜け、広い通りに出る。視界が開けてくる。


ーー目の前の道路に警察車両が停車していた。

 横には救急車もドアを開けたまま同じく停車している。その背後にはたくさんの車も見えた。トラックやバス、一般車。


 しかし、それらは折り重なるように衝突していた。


 建物を見る。大通りに沿った建物はところどころ崩れ、窓ガラスやドアが破損していた。頭上を見上げると、雑居ビルの最上階にヘリコプターが追突していた。火災が起きたのか、周辺に焦げた跡があった。よくよく見ると道路の奥には自衛隊らしき機体も墜落し大破していた。


 僕は手にしていた新聞を力無く落とした。その場に立ちつくす。


 ……この街にいったい何が起きたんだ?! 


ーー街は廃墟と化していた。

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