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第三十八話:砂塵のレイダーズ 後編

【第三十八話:砂塵のレイダーズ 後編】

港町クシュナール アズマヤールの砦

ユアラはリールの先導で、接待室へと急いでいた。


途中、通路の向こうから二人の兵士の会話が聞こえてきた。


リールが慌てて近くの扉の中へとユアラを誘導する。


しばらくすると扉の前を二人の兵士が通過する。


「おい、さっきの見たか!」


「ああ、ルシーダと一緒にいた女だろ?

フード被っていて顔は良く見えなかったが、イイ身体した女だったな~」


「あれ?お前、年増女に興味あったか?」


「うるせぇ。俺は女なら誰だって良いんだ…」


二人の会話が通り過ぎるのを待って、また通路へと戻るユアラとリール。


「あいつらほっんと。最低!!」とユアラ。


するとリールがクスリと笑いながら言う。


「レイ(ダー)の容姿は私らが完璧に仕上げたからムリもないさ。

真実を知って絶望するあいつらの顔が見てみたいわ」


「確かにそうかも!」


ユアラたちが兵士たちをやり過ごして接待室に繋がる通路に差し掛かった時だった。


通路の奥から不意に誰かの声が通路に響いた。


「裏切り者だ!!敵がいるぞ!!」


「まずい!バレたよ」


リールが駆けだす。ひときわ豪華な扉の前に来ると、通路に二人の兵士が呻きながら倒れている。


リールとユアラは一瞬たじろいだが、次の瞬間、扉に体当たりして全力でこじ開けた。


中に入ると、嗅いだ事のないお香のような甘ったるい匂いが漂っていた。


「なっ!?何をしておる!!」


入るとベッドの脇で鞭を抱えた裸の男が、だらしない体系を晒して叫んだ。


突然の事に慌てる男に、リールは素早く駆け寄ると、持っていたショートソードの柄を男の眉間目掛けてズガンと突き込んだ。


「ごっ…」


一瞬にして白目を剥く男。


その傍らには裸にされた少女が縄で縛られて天井からぶら下がっていた。


ユアラが素早くグラディウスで天井から伸びた縄を切り少女を床に降ろす。


「アイリちゃんよね!もう大丈夫よ」


「うわぁぁ…」


少女はユアラに身を埋めて泣いた。


リールがベッドの上に散乱した衣服を掴んでアイリに被せながら言う。


「今は時間がない。アイリはこれを着て私に着いてきて!ユアラは援護を頼む」


「わかった!」


リールは少女の身体に巻かれた縄を短剣で切解きながら、先行するユアラの後を追って部屋を出た。


部屋を出ると、さっきやり過ごした兵士二人が慌てて戻って来ていた。


「き、貴様ら!」


するとユアラが手をかざして容赦なく詠唱する。


『切り裂け。烈風の刃よ、愚か者を刻め』


詠唱と同時に大気に白刃が現れ、兵士たちの手足をすり抜けるように切り付ける。


「お!?あっ!」


兵士たちは、剣を握る事も、立ち上がる事もできず床に崩れ落ちる。


痛みにうめき声をあげる兵士を置き去りに、その脇をユアラとリールと少女が駆け抜けた。


「表まで一気に走るわ」


ユアラの先導で来た道を戻る3人。


一方表ではルカたちが馬車を納屋から表に引き出して、待ち構えていた。


すると砦の裏手からルシーダとレイダーが駆けてきた。


見るとその後を3名の兵士が追いかけて来ていた。


それを見たマーラが追手に向けて爆炎魔法を詠唱する。


それを見たルシーダが叫ぶ。


「レイ!かわせ!!」「おう!」


二人が素早く身を屈めるとその頭上ギリギリをマーラの放った火球がフォンと音を立てて通り過ぎ、追撃していた兵士へと向かった。


火球は兵士に当たると周囲を巻き込んで炸裂する。


ボンっ!と空気を振るわせて追手たちを炎が包み込んだ。


「ぎゃあ!」「アチっ!」


思わぬ攻撃に追撃者たちは炎に包まれると地面に転がった。


ルシーダがマーラに言う。


「子供たちは!」


すると砦から子供たちを引き連れてユアラたちが駆け戻ってきた。


その時、砦の警鐘がカンカンカンカンと鳴り響いた。


「急ぐよ!さっさと馬車に乗せな!」


駆けこんできた子供たちを近くの馬車へと飛び乗らせるルカたち。


2台の馬車がいっぱいになると、ルシーダが指示を出す。


「待たなくていい。出発だ!!マーラは門番を何とかしな!!」


仲間の女たちが馬車を走らせ、マーラがスナ飛びネズミに跨って随行し始める。


残り3台に子供たちを乗せる間に砦から兵士たちが駆けだしてきた。


するとレイダーとユアラが立ちはだかった。


「先に行け!」「私たちが引き留める」


ルシーダは「すまない!」と言うと、2台の馬車を引き連れて走り出す。


レイダーは追手3人との間合いを素早く詰めると、ロングソードを躍らせた。


3人の兵士も各々で応戦するが、剣を振り降ろすより早くレイダーの剣先が彼らに到達した。


一人はレイダーが打ち上げた剣を肩に食らい地面に転がり、次の一人は、レイダーに向け振り下ろした剣筋を見切られ、空ぶったところにレイダーが撃ち降ろした剣を頭に受けて地面に沈んだ。


最後の一人は仲間が倒されるのを見て怯んだ。


レイダーはその隙を見逃さず、ロングソードを横薙ぎに振り抜く。


兵士は慌てて剣で受けたが、勢いを殺し切れず、剣を弾かれて姿勢を崩した。


次の瞬間レイダーの切っ先が首元を捉えた。


3人が切り伏せられ地面に倒れると、さらに奥から十数人の兵士が駆けて来るのが見えた。


子供たちを助け出した通路からも次々と兵士が姿を現す。


「切りがねぇ」とレイダー。


すると最後の1台に子供を乗せたルカが叫ぶ。


「子供たちはこれで最後だ!」


その言葉を聞いたユアラが走り迫る兵士の目前に向けて詠唱する。


『放て。灼熱の理をもって、立ちはだかるモノを灰に帰せ』


詠唱と同時に地面を伝う様に炎が吹きあがる。


突然の炎を前に、兵士たちは慌てて間合いを取る。


ユアラがルカに言う。


「先に行って!私たちはこれで追いかけるわ!」


ユアラはルカが準備していたスナ飛びネズミの手綱を掴むと、素早く跨った。


「レイダー!これに乗って!」


ユアラはもう一頭のスナ飛びネズミの手綱をレイダーに向けて投げる。


「おう!」


レイダーも駆け寄って素早く手綱を受け取ると、ヒラリと蔵に跨った。


「次に死にたい奴はどいつだ?」


砦の門の前では警鐘の音を聞いた荒くれどもが何があったのだろうかと集まっていた。


そこに向け、馬車が突っ込んで来た。


「何事だ!?」


すると先頭を駆けていたマーラが詠唱する。


『爆ぜろ。怒りの炎よ、下劣な彼の四肢すら別て』


マーラの放った爆炎魔法が門前に集まっていた荒くれどもを襲い一気に吹き飛ばした。


「うわっ!!」


マーラは炎に巻かれ地面に転がる荒くれどもには目もくれず、素早く門まで駆け寄ると、ギギギと門を開く。


半開きの状態の門に向け、馬車が両輪を軋ませながら体当たりで突っ込んでくる。


「ドン!」と馬車の外側が門に当たり大きく揺れたが、強引に通過する。


マーラも再びスナ飛びネズミに跨ると、先頭へと戻っていった。


5台の馬車が猛烈なスピードで門を潜り抜けて街中を疾走する。


最後尾の馬車にはルカ、そして追いついたレイダーとユアラがスナ飛びネズミで随行する。


町を抜けると、計画どおりサンドワームの巣穴の方へと駆けてゆく。


するとそれに遅れること数分、アズマヤールの砦から砂塵を巻き上げながら、無数のスナ飛びネズミに跨った荒くれどもと兵士が追撃してきた。


車列の中央にいたルシーダが先頭を駆けるマーラに言う。


「判ってるだろうね。目印のとおりに進みな!」


「判ってるわ!任せて」


ルシーダたちはここまでの道中、逃走経路に目印の赤い樹の棒を突き刺して来ていた。


それはサンドワームの巣穴から最も遠い場所を指し示す目印だ。


ルシーダは今度は最後尾へと移動する。


「レイダー生きてるかい?」


「大丈夫だ。でも追手が迫っている。もっと早く走れないのか?」


見ると馬車の轍の後が残った砂山の2つ向こうに砂塵が舞っている。


「っち。確かに早いね…でも馬車はこれ以上早く走れやしないよ。

早いけど、あの作戦いくよ」


ルシーダはそう言うと、手を上げて車列の中央を走る馬車に乗った仲間に合図を送る。


すると馬車の荷台から道の両脇に向けて、四角い木箱が次々と投下されてゆく。


最初に投下された木箱が最後尾を通過したのを見届けたルシーダが腰裏に忍ばせていた小型の弓を構えると、矢の先を、着ていたアーマーのヤスリ状になった部分にシュっとこすりつけて火を灯すと、木箱に向けて矢を放った。


その矢は一直線に木箱に刺さると一瞬遅れて爆発した。


ボン!という低くくぐもった音と共に、木箱の周囲の砂が吹き飛ぶ。


ルシーダは馬車から投げ出された木箱を次々と射抜いて爆発させてゆく。


しばらくすると、道の両脇から大きな砂のうねりが爆発箇所に向け動き出すのが見えた。


「来たよ。サンドワームの餌の時間だ」


爆発音を聞きつけてサンドワームが巣穴から這い出て来たのだ。


サンドワームは爆発した箇所に向け地面の砂を持ち上げるように進むと、丁度追手が通りかかったタイミングで頭を出した。


「うわ!」「サンドワーム!!」


サンドワームは爆発箇所にいた追手たちを砂ごと大きな口で飲み込んだ。


一気に乱れる追手の列。


次々と地面から突き出すように現れたサンドワームの群れに、追手たちは混乱しながらも、回避すべくジグザグに進んで、各個に応戦する。


荒くれどもと兵士たちの必死な姿を観てルシーダが笑った。


「アハハ!いいざまだね。そのまま食らい尽くしちまいな!」


一方先頭を走る馬車では異変が起きていた。


急にガクンと左右に揺れたかと思うと、前輪の左側の車輪が車体から外れてしまった。


門を無理やり通過した時に車体にダメージが入っていたのだ。


「マズイ!!」


仲間が何とかバランスを保って横転は避けたが、馬車は目印を大きく反れて砂漠の丘を転がり落ちた。


それを見たマーラが全体に対して停止の合図を送る。


合図を受けて、次々と停車する馬車。


ルシーダもその異変に気付いて叫ぶ。


「何があったんだい!?」


するとマーラが先頭から駆けてきて叫んだ。


「先頭の馬車が走行不能になった!」


サンドワームとの距離はそう離れてはいない。


このままでは追いつかれるのは時間の問題だ。


ルシーダは即決する。


「馬車に乗せる余裕があるならそこに全員を乗せ直すよ」


するとルカが言う。


「この馬車はまだ余裕がある。これに乗せていけ。俺はここであいつらを食い止める」


「わかった。ならアンタはこのスナ飛びネズミに乗っていきな」


ルシーダはそう言うと、ルカに手綱を渡し、馬車へと移るとマーラに言う。


「さっきの話は聞いたね!さっさと馬車に乗せて、できた馬車から走らせな!」


「判ったわ!」


マーラが駆けだしてゆく。


「道を空けな。馬車を通すよ」


ルシーダは早速、先頭へと馬車を走らせ始めた。


一方後方ではサンドワームの追撃を逃れた一団がこちらに向かって来ていた。


「向こうも必死って感じだな」とレイダー。


「でもマリアンの希望(子供たち)をここで見捨てられない…だろ?」とルカ。


「もちろん!

でもマズイわ。サンドワームも追手を追いかけてこっちに向かって来てるみたい」とユアラが叫ぶ。


すると最後尾の馬車がまた走り出した。


「私たちも急ごう!巨石群までもうすぐだ!」


ルカの号令と共にまた走りだすレイダーとユアラ。


途中、走行不能となっていた馬車の横を通過しようとしたその時だった。


不意に砂地が隆起しながらこちらに向かって来ているのが見えた。


「マズイ!こっちにも来やがった」


馬車の最後尾はまだすぐそこを走っている。


巨石群は遠くに見えるが、そこまで走り切るより前に追いつかれるのは目に見えている。


するとルカが地面に降りた。


「召喚する!」


「えっ。ここで?」


ユアラが驚く。


「ああ、このままじゃ追いつかれる。せめてコイツだけでもなんとかしないと」


「でも召喚中に移動は出来るの?」


「多分…できない…でもやらなくちゃ」


「なら、俺もここに残るぜ!人間相手なら負けはしない。怪物は任せるぜ!」


レイダーはそう言うと、ロングソードをヒュンと振り身構える。


「それなら支援と回復は任せて」


ユアラも意を決して降りると、さっそく3人に支援魔法をかけ始めた。


ルカは返してもらった短剣をかざすと二人から距離を取り静かに詠唱を始めた。


『力の根源たる火の女神スラティマよ。我が祈りに応えよ』


ルカの足元に魔法陣が浮き出て炎の柱を形成し始めた。


ルカがさらに集中すると火柱が炎の女神へと変貌する。


女神の手には弓が握られている。


ルカが短剣を弓に見立てて引く仕草をすると、その動きに合わせて女神も弓を引き絞る。


するとそれまで無かった弓に一筋の矢がみるみるうちに出現した。


サンドワームがルカたちに迫る。


しかしルカは闇雲に放たない。


サンドワームは一瞬、地面に潜ると、次の瞬間砂煙を上げながら空に向かって身を躍らせ飲み込む体制に入った。


その時、ルカが最後の詠唱をした。


『放て。悪しきものを灰に帰す、殲滅の炎となれ』


ルカは引き絞った指を離す素振りを見せると、女神の手から矢がサンドワームの腹目掛けて放たれた。


ほぼ0距離で放たれた矢はサンドワームの腹に突き刺さると瞬時にしてゴツゴツした表層を沸き立たせ、赤く融解させながら大穴を空けて貫通した。


貫通した矢が数百メートルほど後方の砂山に着弾し砂地をマグマ溜まりへと変えてゆく。


腹を貫かれたサンドワームは矢の勢いに負けてのけ反るように傾くと、砂塵を巻き上げてズズン!とその

身を横たえた。


ルカは続いて矢をつがえると、迫りくるサンドワームと兵士たちに向ける。


『放て。悪しきものを灰に帰す、殲滅の炎となれ』


ヒュンという音を追ってドン!という衝撃波がレイダーとユアラを襲う。


「うわ!」「ひっ!」


放たれた矢は必死に走り来る兵士たちの頭上を霞めると後方でのた打ちながら迫るサンドワームに向かった。


しかしその矢は中空で四散し細かな炎の雨になって降り注いだ。


さっきの一撃とは打って変わってサンドワームへの効果は余りなかった。


ルカを見ると、気を失い倒れる寸前だった。


「ルカ!」「ルカちゃん!」


二人が駆け寄る頃には女神は消え、魔法陣も残り火がチラチラと見える程度になっていた。


「へへ。一発が限界みたいだ…」


ルカが申し訳なさそうに話す。


レイダーがルカを抱えながら言う。


「上出来だ。足止めにはなっただろう」


「奴らが来るわ!」


「ルカを乗せて走る。手伝ってくれ」


レイダーはルカをスナ飛びネズミの蔵に乗せると、その後ろに跨った。


「ったくスカートがヒラヒラしてジャマだな。

ルカ。振り落とされんなよ!」


レイダーとルカ、ユアラが走り出す頃には兵士達との距離は数百メートルまで迫っていた。


一方その頃、馬車の一団は巨石群まであと1キロに迫っていた。


「もう少しだよ!」ルシーダが声をかける。


すると巨石群側から別の一団が迫って来ていた。


「あれは敵!?」


するとルシーダの頭上を大きな巨体の影が横切る。


赤いドラゴン。セツナのフィールだ。


その姿を観てルシーダはフッと安堵の顔になるのだった。


レイダーたちは逃げてはいるが、ルカを乗せて走るには限界があった。


追手との差はジリジリと迫ってきていた。


「くそ。そろそろ限界か!?」


レイダーが悪態をついた。


その時だった。


不意に黒い雲が空を覆い始めた。


その雲は暖かな雨を降らせ始める。


次第に風も強くなってきた。


「これまさか…」


レイダーが気づいて叫ぶ。


「ユアラ!急げ!」


「え何これ!?」


「良いから早く、この雲の外に向かって走れ!!」


雨が境界線のようになり、雲を抜けるとカラッとした砂漠の暑さが襲ってくる。


その時だった。


詠唱が響いた。


『轟け。天理の雷よ、ここに戦慄を奏でよ!』


その直後、黒雲の間から強烈な閃光と共に大気を揺るがすほどの爆音が背後で響いた。


ズン!ドドン!


その音に、トビ砂ネズミに振り落とされ砂地に投げ出されるルカとレイダーとユアラ。


音のした方を見ると、黒い雲の下にいたサンドワームに無数の落雷が降り注いでいた。


サンドワームが雄叫びをあげる。


落雷を受けた巨体がのたうち回り、焼き焦げた巨体から白煙を上げながら、一匹、また一匹と力なく倒れ伏してゆく。


辛うじて黒い雲から抜け出た兵士たちはそれを見て恐慌状態に陥った。


「なんだあれは!?」「か、神が怒っている!!」「もういやだ!!」


すると巨石群の方角からセツナの声が響いた。


「間に合った!!」


レイダーが振り返りながら言う。


「殺す気か!トリニティ・サンダーを撃つなら先に言ってくれ!!」


見ると、ルディウス、ロビン、セツナが詠唱姿勢でこちらに向かって立っていた。


「よう!レイダー。ってお前その恰好…」


ロビンがレイダーの女装を見て驚愕する。


するとルディウスが言う。


「すまない。これでも急いで来たのだ」


黒い雲が晴れ、また元の環境に戻る頃には、サンドワームの死骸が、まるで岩山のように転がっていた。


追手たちのほとんどは落雷に遭い壊滅し、辛うじて黒雲の外に出ていた一団も、目の前の光景に戦意を喪失し素直に投降した。


その後、負傷者の援護と残党狩りが進められた。


拘束されたアデルは全てを自白、アズマヤールの砦に残っていた残党も、騎士団の攻勢を前に恐れを成して無血開城し、ここに砂塵のガーベイジは解散された。


ルシーダはクシュナールの城壁から砂漠を見下ろして、アズマヤールの砦の方角に視線を送りながらひとり佇んでいた。


「マリアン…あんたの願いだった子供たちは私たちがちゃんと守ったよ」


すると城壁の下からマーラが声をかける。


「ちょっとルシーダ!手を貸してよ。

子供たちの相手一人じゃ無理!!一人で何人抱えていると思ってるの!」


ルシーダはフっと笑うとマーラに言った。


「これからやらなきゃいけない事が山ほどあるんだ。

少しくらい休ませてくれてもいいだろ!」


こうして、長年砂漠を渡り歩き、搾取され踏みにじられ続けてきたルシーダたちの戦いは終わりを告げ、自分たちの希望を叶える未来へと一歩ずつ歩き始めるのだった。


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