↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オール・ライト 〜冒険者たちときっかけの女神〜  作者: 加藤貴敏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/21

「食べて歌って戦って」

今日のライブは小さなホール会場。アイドルは大変だと思う事ばかりだけど、楽しい。続けたいと思う。小さなホールなら、席を埋められるくらいの認知度はあるし、たまに大型のフェスにも出れる。まだまだこれからだって思える分、充実してる。

「みんなお疲れ様です」

「お疲れ様です!」

「今日もすごく良かったよ。めっちゃ盛り上がってた」

アイラブのチーフマネージャーは普段は厳しいけど、ライブだけは褒めてくれる。今日は私的にも満足なパフォーマンスが出来たなぁ。

「反省会の前に、じゃあ先に嬉しいニュースから。結成3年目で、アイラブ、なんと、来月の超アイドルサミットに出ます」

「ええっ!」

「おお・・・すごい」

「といっても、本編じゃなくてオープニングアクトね。でもここで頑張れば、沢山の人に見つかると思うから、気合い入れていこう」

「はい!」

まさかスタジアムでパフォーマンスが出来るなんて、正直びっくりで、不安。いや、これは本当にすごいこと。超アイドルサミットは、3日間に渡って100組超のアイドルが出演する、アイドルの登竜門みたいなステージ。

「それと、クーナちゃん。クーナちゃんの事務所のマネさんから、報告を預かってます。前にドラマのオーディション受けたんだってね」

「え!はい、え・・・」

「・・・・・合格だそうです。良かったですね」

「はい!」

「え、何受けたの?主役?」

「『科捜研の養女』っていうドラマ」

「えーー!今度、シーズン18の?」

「3話のカフェの店員役」

「へー。おおう、まぁ良かったじゃん」

休みの日。レナは冒険に出ていた。メンバーはペロ、植物学系女子大生キョウカ、そして守り人のジュウゴ。

「実は、この魔法、使うの初めてなんだよね」

「ファンから貰ったっていう?」

「うん」

レナはイメージした。意識の手順、具現化の手順、明確な完成イメージ。それらがビシッと決まると、魔法となって現実に現れる。とは言え、それは目に見えるものとは限らない。でもレナはすぐに自分の体の違和感に気が付いた。

「あれ、なんか、すごく、体が軽い」

軽くジャンプしただけで3メートル跳び、普通じゃ持てるはずのない大きな石を片手でスッと持ち上げた。そんな様子にジュウゴはなるほどと頷く。

「それあれだ。エンチャント系の魔法なんだな。身体能力向上の魔法で、めちゃくちゃ戦いに便利、というか、強い奴はみんな使ってる」

「へーそうなんだ」



第21話「食べて歌って戦って」



今回狩猟したのはレベル5相当のマテリアル。それから静かな森の中でバーベキュー。

「これなんか、耐火性はめっちゃいい。これに防刃インナーを合わせれば、レベル5なんて余裕だ。でも動きやすさを考えたいなら、インナーは筋肉サポート系がいい。相手によって変えるんだ」

「なるほどね」

初めてきた森。キョウカはふと立ち上がった。

「ああ!」

「ん?どした?」

「何これ見たことない」

キョウカが見つけたのは、なんだか黄色と紫のグラデーションが可愛らしい、クラゲのような植物だった。スマホでパシャリ。角度を変えてまたパシャリ。それから熱心にメモに書き込む。その隣に座り込むペロ。手を伸ばすと、キョウカはそれを制止した。

「だめ。初めて見るものは簡単に触っちゃだめ」

「ああそうね」

「観察と分析。それが生死を分けるの」

「た、確かに見るからに毒っぽいしね」

キョウカとペロのやり取りを眺めながら、レナはなるほどと思った。

また後日、レナは初めて防具屋に入ってみた。洋服だけじゃない。防災グッズや、救難用、治療用のアイテムが揃っていた。なんとなく店内を見渡し、それから手に取ったのはフリーペーパー。表紙はマーメイドクイーン、リバナ。息を飲むほど美しい女性。私もいつかこんな風に。

「あれ?」

レナが振り返れば、そこに居たのはカグラだった。

「冒険、捗ってる?」

「んー、どうだろう。本格的に勉強したくて、でも、どうしようって」

「うん、そうか。もし時間あるなら、一緒にどう?」

集合場所に戻ってきたレナとカグラ。集合場所にはスポンサーの雑誌が置いてあって、レナは何となく開いていく。

「冒険で大事なことは、自分で選ぶってことだ。何がしたいか、何が欲しいか。でも安全な場所では意味がない。過酷な自然と対話してこそ、それが分かる。楽しい冒険だけじゃなくて、厳しくても意味のある冒険も必要だ」

しんみりと頷きながら、レナはとあるページに目を留めた。それは”パートナーマテリアル”という存在に関しての特集だった。人間とコンビを組んで冒険するマテリアル。助け合いながらも心強い仲間。レナはなんだか強く興味を惹かれた。

「これ、なんか面白そう」

「ん?」

「パートナーマテリアル。こういうのが居たら冒険も楽しいと思う。でも、ワイバーンとか、さすがに一緒に暮らせないし。実際問題、ハードルは高いなぁ」

しかしレナの隣で、カグラは目を見開いていた。ちょっと怖い眼差しで、レナは引いてしまう。

「こ、これだ!これだよ!オレが求めてたもの」

雑誌を手に取るカグラ。それから指を差してみせた。

「小型の龍、アセン。人を乗せて空も飛べる。ワイバーンほど大きくないし、しかも教えれば魔法も覚えてくれるって。オレ、決めた!こいつをパートナーにする」

「そんな簡単にパートナーに出来るの?」

「んー、どうだろう。龍は基本的にハイネティスにしかいないし」

「でしたら、ハイネティスに行ったらいいと思います。ハイネティスには、いくつものパートナーマテリアル養成所がありますから」

オリヴィアがそう言えば、カグラは驚くように笑みを浮かべる。

「さすがハイネティス。すぐ行こう!」

「どこの養成所がいいんだろう」

「ウツセミさんに聞いてみるか」

オリヴィアに頼んで、連絡を繋いでもらった。

「はい」

電話が通じて、スピーカーモードでウツセミの返事が聞こえてくる。スマホを囲っているオリヴィア、つむぎ、レナ、カグラ。カグラは固唾を飲んだ。

「突然の連絡すみません、カグラです」

「はい、どうかされました?」

「実は、折り入ってお願いが」

ハイネティスの田舎街、トクン。小さな空港のような、けど立派な建物を出て、カグラは思い切り深呼吸した。観光客が必ず買うと言われる、美味しいジュースを片手に。

「いやぁー楽しみだ。何気に初ハイネティスだ」

「なんか雰囲気は全然、あっちと変わんないね。そういえば、つむぎってどこで暮らしてたの?」

「わたしが暮らしてたのは、ミフォーレっていう港町。ここわたしも初めてだな」

「皆さま、お待ちしてました」

「ウツセミさん、急なお願いに対応してもらってありがとうございます」

「いえいえ、では行きましょうか」

のんびりと街を歩く。その道すがら、レナは犬や猫と、お喋りしながら散歩している人を見かける。ハイネティス特有種の犬や猫は、普通に喋る。おまけに龍も。のどかでファンタジックな、なんて良い国だ。やがて一行が辿り着いたのは牧場だった。でも優雅に過ごしているのは牛でも豚でもなく、小型の龍アセン。

「ここは、王宮もひいきにしてる、パートナーマテリアル養成所です」

カランコロンとドアベルが鳴れば、親しげにおじいさんがウツセミに手を挙げた。

「お久しぶりです」

「おお!女神やねーかー」

軽快にやって来るおじいさんに、カグラとレナは少し緊張が薄れる。

「こちらが施設長のアツガネさんです。この方々は、つむぎ様のチームの冒険者の方々です」

「おう」

「はじめまして」

まるで幼稚園で元気いっぱいに走り回る子供のように、アセンたちがはしゃいだり、アスレチックを登ったり。1歳だと小型犬くらいで、とにかく可愛かった。

「どれもちーこくてかーりんやろ」

「そうですね。出来れば、即戦力が欲しいんですけど」

「だいたい冒険に行けるようになるんは10歳からや。でも即戦力となると、そうやなー」

牧場を進むにつれて、少しずつ大きなアセンを見かけるようになってくる。人間でいう成人は10歳で、その頃になれば大人を乗せて空も飛べる。大きさは鹿やダチョウと同じくらいになる。10歳の群れを前にすると、さすがにレナもカグラも緊張してきた。

「メロハ」

アツガネが声をかけると、10歳のアセンたちを世話していた竜人の女性が顔を向けてきた。

「お客さんだ、即戦力が欲しいんやと」

客の人間に興味深々のアセンたち、一気に囲まれて、レナもカグラも固まった。それはオリヴィアに抱っこされてるつむぎもだった。

「どっちが欲しいん?」

「はい、オレです」

「ふーん。ランクは?」

「今はBです。今度、Aランク試験を控えてて」

「なるほど。そっちの人はいいん?」

パッと見てくるアセンたち。レナはふと、冒険してきた景色を思い出した。

「もうちょっと、考えてもいいですか」

「別に、好きなだけ考えたらいいよ。じゃあそっちの人、好きなアセン選び?人間と同じ、雰囲気や性格のフィーリングが合うほど、良いコンビになれる。何となくの直感で選んだ方が、案外いいパートナーが見つかるかもね」

「フィーリング・・・」

今この場にいるアセンは20頭ほど。でもすでにカグラに興味のないアセンは離れて歩き回っている。きっとフィーリングとは、お互いのフィーリングなんだ。そうカグラは自分の顔を伺う数頭のアセンを見渡す。パッと目が合った途端、離れていく数頭のアセン。それから最後に残ったのは、目を合わせた時に首を傾げたアセンだった。恐る恐る手を伸ばすカグラ。するとアセンの方もゆっくりと近づいてきて、カグラの手に頬を摺り寄せた。鱗がすべすべだった。

「・・・・・うん、こいつに決めた」

小さく頷くメロハ。特に笑顔は浮かべず、その眼差しは冷たかった。

「で、請求は?」

「ウツセミのとこやぞ。請求は王宮や」

「そっ」

それからアセンとの暮らしについてのレクチャーを受けているカグラを遠く見つめるレナ。ここに来たはいいものの、決断が出来なかった。そんな様子を、つむぎは見つめる。

「アセンじゃないパートナーも探してみる?」

「んー・・・なんか私、本当はどうしたいんだろうって。パートナーマテリアルは、きっと居てくれたら頼もしい。でもそれが本当に理想なのかどうか、なんか分からなくて。仕事もあるし。両立を考えると、もしかしたらもっといい形があるんじゃないかって」

「そっか。それでもいいと思うよ」

「沢山悩んでください。その先に、きっとレナさんに合った形が見つかりますよ」

「うん・・・決めた。もうちょっと考える」

レナが見上げた空は、良い天気だった。

それからディッセンディアに戻りながら、レナはカグラと冒険へ。カグラのパートナーのアセンは、モルトと名付けられた。岩肌がむき出しの山岳地帯にやってきて、カグラはモルトに乗り、レナはエンチャント魔法で身体能力を強化。ゴツゴツしたフィールドでも、2人はすいすいと移動していく。今回の目的は、”良い景色”。その山岳地帯には、穴場のスポットがある。誰でも行けるような、簡単な道ではない。安全でもない。

案の定、登山中に2人は凶暴なマテリアルに出くわした。レベル6相当の、熊のような原型をした、3メートルのマテリアル。その名はヴァウクゥーダ。カグラにとってはそれほど強敵ではなかったし、モルトが居れば尚更だった。レナはサポートに回り、翻弄、攪乱、死角からの強襲を担った。

「いや、すごいよレナ。サポートの立ち回りとか上手いね」

「これくらいは、何度かやってきたから」

息を整えるレナ。マテリアルの遺体を前に、ようやく茫然とした。本当に自分がこんな大きくて、強いマテリアルを狩れたなんて。

「今日の晩御飯は、良い肉が食えるよ。ありがとうな、モルト」

「ウェー」

体中の力が抜けていたレナはふっと失笑した。アセンって鳴き声可愛い。

それから穴場のスポットに到着した。テントを広げてゆったり出来るような場所ではないが、とにかく良い景色だった。

「良かったの?パートナーを見つけないで」

「・・・うん。何となく、思ったんだよね。今の私に必要なのは、なんか、頼もしい仲間っていうより、自分の弱さに向き合うことなんじゃないかって」

「そうか。素晴らしいと思う」

眼前に広がる広大な自然。木々は絨毯のように広がって、たまに見える岩山がなんだか面白い。そういうのを目の当たりにすると、いつも自分がちっぽけに思える。実際、ちっぽけだ。この広大な自然からすれば、3年目のアイドルなんて、未熟でしかない。答えなんて簡単に見つからない。けど、それがいいんだって思えてくる。

後日、レナはステージに立って、歌って踊っていた。ショッピングモールの小さなステージ。すべての人が足を止めてくれる訳じゃない。それでも笑顔でファンサをする。午前のミニライブを終え、ショッピングモールの控室で、アイラブの5人は昼食を取っていた。

「ねえ見た?これ、すごくない?」

ルクラが、クーナにスマホを見せる。

「レナのブログ、100万いいね超えてんの。めっちゃバズってる。すごくない?」

「レナ、すごいね」

「ありがとう」

「しかも、レベル6を狩ってるし。めっちゃ強いじゃん」

マリアがそういうと、レナは微妙な笑みを見せる。

「いや全然。冒険者の中じゃ、んー、中の下かな。それに今度私、Cランク昇格試験受けようと思う」

「え、今ってEでしょ?」

「Cまではね、現状のランクは関係なく、誰でも試験受けられるの」

「へー」

そんなところで、チーフマネージャーがやって来る。

「レナ、取材のオファー来たよ。来週、つむぎストライカーズの取材。カグラさんと一緒に」

「分かりました」

「あと、新しく発売される冒険グッズのポスターのモデル。あのブログ、結構話題になってるみたいね。この調子で冒険も頑張って」

「はい」

「いーなー。私も入ろうかな、つむぎストライカーズ」

「アンミ、冒険したことあるの?」

「ないけど。猫が好きなだけ」

笑い合うレナ達。

「それに、レナは文才もあるんじゃないかな?ここのところ。この広大な自然からすれば、3年目のアイドルなんて、未熟でしかない。答えなんて簡単に見つからない。けど、それがいいんだって思えてくる。私、なんか、すごくグッと来たんだよね」

「ほんと?恥ずかしい。でもありがとう」

「ねえ今度さ、みんなでつむぎに会いに行ってもいい?」

「えー行きたい!」

「うん、全然いいよ」

午後は、ミニライブの後にファンとのふれあいイベントがある。握手会と、2ショット写真撮影会。レナに並ぶファンは、冒険が好きな人が多い。自分も魔法使いですとか、この前あそこに行きましたとか、あのマテリアル美味しいですよとか、そういう会話が弾む。ちなみにマリアは5人の中で一番のモデル体型。だから美容の話をファンとよくしてる。無事にイベントが終わって帰り支度。レナは、心の中の小さな納得を感じていた。アイドルであり冒険者。未熟であり、でも時には充足感がなんだか嬉しい。

「お疲れ様でした~」

「今日も楽しかったね。ねえ、ラーメン食べいかない?」

「行くいくー」

読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。