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39.さらばアンドレア

 非常にニコニコだ。3人で各々感想を話し合い、バギーに跨いで集合写真を撮ってこの場を後にした。

 帰りもあの地獄みたいな急斜面と対峙したが、帰りは下るだけなので比較的楽ではあった。行きほどの怖さは無い。

 そんなかんなで車に戻った。だが、

 

「やべ、ハンカチ落とした」

 

 隼人がそんなことを言い始めた。律儀で綺麗好きな彼は毎日ハンカチを持ち歩く。そのハンカチをどこかで落としたらしい。それを車で言うとミゲルが先ほどのガイドに何か話をしに行った。

 

「まさか落とすとはね。運がなかった」

 

 隼人は諦めている。そこまで高いものでもないらしく、本人は無くなっても別にいいらしい。

 そう思っていたのだが、ミゲルは戻ってくると何やら外が騒がしくなっていた。

 

「隼人サーーーン!ハンカチを探しに行ってきてくだサ――イ」

「え?」

 

 ここで外が騒がしい正体がわかった。マウンテンバイクが用意されており、そのエンジン音がうるさかったのだ。明らかに出発をする体勢の方がバイクにまたがっている。後ろにはご丁寧に1つヘルメットが置かれているので、多分隼人はあれで連れてかれるんだろう。

 

「隼人頑張ってこい」

「まじか。やっぱりあのバイクか」

「絶対そうだろ」

「怖いて」

「さぁ!頑張ってきてね!」

 

 そう俺は言って送り出した。

 車の窓から俺と服部さんは見守っているが、隼人はヘルメットを装着するとすぐにバイクは発進してまた森の中へ消えていった。ちゃんと帰ってくるのか不安しかない。

 見知らぬ男とバイク相乗りして森の中へ消えるというのは、字面だけ見ると危ない予感しかないだろう。

 

「隼人・・君との思いでは楽しかったよ」

「おぉいおぉい。樹里!?隼人を勝手に殺さないでくれるかい」

「バイクに乗って消えて行ったんだぞ」

「んーーーまぁそれだけ聞くと死亡フラグだねぇ」

「あのセリフ言ってほしかったな・・」

「ほぉどれだい?」

「アイルビーバック」

「アーノルドだね!」

「アーノルド・シュワルツェネッガーのことあんまりアーノルドって言わないぞ服部氏」

「アノちゃん」

「なんか途端にかわいいね!そのあだ名」

「樹里よ。これからはシュワちゃんではなくアノちゃんで呼ぼう」

「うむ」

 

 隼人がいなくなって1分も経たずにアホみたいな会話が繰り広げられてしまい、それを平常な会話と同じように進行してしまう俺と服部さん。この旅行中何度も隼人ありがたさを感じる。

 そんなおバカな会話をノンストップで行っている内に、バイクのエンジン音が再度聞こえてきた。隼人が帰ってきたということ。

 バイクから降りて運転手と握手を交わしているということはハンカチを見つけたのだろう。思ったよりも早いお帰りだ。

 

「ただいま」

「おかえり~」

 

 帰還した隼人曰く、あの急斜面のところにハンカチを落としていたらし。だからすぐに見つけることができたらしい。奥まで戻る必要がなかったのでこれだけ早く戻ってこれたのだ。

 

「清水さんお帰りなさい。見つかってよかったです」

 

 アンドレアが隼人のことを呼んだのだが、隼人を名字で呼ぶ人をあまり見ないので、清水さんというのが一瞬隼人だとわからなかった。

 

「あ、はい。ありがとうございます。こいつらうるさかったですか?」

 

 なんて質問をするんだ。うるさいに決まっている。

 

「え、えぇまぁ。なんと言いますか。凄い会話してました」

 

 アンドレアが言語化できない程支離滅裂な会話をしていたようだ。そんな会話をしていた俺らはどんな風に思われてたんだろうか。

 

「アンドレア・・すみません。こいつらそういう会話を普通にします。意味わからないこと言い出しても気にしないでさい。関西人同士が喋っていると思った方が早いです」

「あ、はい。わかりました」

 

 アンドレアも反応に困っている。隼人の関西人同士という会話は非常に的を得ている。なんせ、実際に関西人に言われたことあるからだ。

 

「では、皆サーン!港に戻りマスヨ」

「はーい」

 

 ミゲルに言われて判明したが、今日の観光はこれで終了なのだ。やはり移動時間が長いので昨日程の観光スポットは巡れないのだ。太陽が沈みだしていることも今やっとわかった。そして、アンドレアとの別れも近い。アンドレアとは多分もう二度と会うことはない。そう思うと悲しくなってくる。そんなことを思いながら俺は窓の外を見ている。見慣れてきたボホール島の木々も別れ惜しい。どうにかしてこの旅を思い出に残したいが、どう残せばいいのだろう。この答えを探しながら港まで戻ることにする。

 

 

「さてさて、着きマー――シタ!」

 

 朝と同じ港に着いた。行きと同じ船が停泊しているので景色は変わらないが、あの時は太陽がサンサンと照りつけていたが、今は夕焼けが俺たちをぼんやりと照らしだしている。

 

「皆さん。今日はありがとうございました。私はとても楽しかったです」

 

 アンドレアとはここでお別れだ。このボホール島でもなかなかに濃い思い出を作れた。それはアンドレアのおかげでもあるのだ。俺たちは感謝をしないといけない。隼人が一歩前へ出た。

 

「アンドレア。あんまり船まで時間がないようだから、俺が代表して感謝を伝えさせてください。ここでの体験は一生忘れない。この思い出を作れたのもあなたのおかげです。本当にありがとうございました。俺たちは明後日日本に帰ります。それまではセブ島で全力で楽しみます」

 

 隼人にここまで言ってもらって俺らは何も言わないのは嫌だ。服部さんと目を合わせて俺らも感謝を伝えようと2人でうなづいた。

 

「アンドレア。楽しかったです。ありがとうございました」

「めちゃくちゃ楽しかったです。ありがとうございました」

「皆さん・・・船での踊り素晴らしかったですよ。今まで踊りをお客さんにお願いしたことはありません。あなた方が初めてです。いい思い出になったと思います。ほら、ミゲルが呼んでます。船の時間は待ってくれません」

 

 そのアンドレアの言葉の後にそれ以上俺らは何も言わず、アンドレアと握手を交わして船に向かった。さらばアンドレア。

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