第16話 釈放そして…
「待てッ!」
威厳のある声が飛び、撃つ気満々の新兵の指がとまった。
勲章やら徽章やらをじゃらじゃらと身につけた高級将校らしき武官が一同の前を横切ってあらわれた。
「釈放だ。そいつをいますぐ下ろせ」
「えっ?!」
監督官は武官がいった言葉が信じられない。すぐには反応できず戸惑っていると――
「聞こえなかったのか。さっさと下ろして放りだせ」
ざわざわ……と兵士たちだけではない、収容労働者たちの間でもざわめきが広がった。
「上からの命令だ。早くしろ」
憮然とした表情で武官がうながす。
監督官は不承不承といった態で部下に命令を実行させた。
信じられない思いは光太郎も同じであった。これはまたなにかの罠ではないだろうか?
鎖の縛めを解かれ、十字架から地上に下ろされると、監督官が憎々しげな顔もあらわに光太郎の耳元でささやいた。
「おまえ、一体どんな手を使ったんだ?」
むろん、光太郎はこたえない。こたえられるはずもなかった。
教えてほしいのはこっちだ。
光太郎は突然、“釈放”された。
囚人服といっていい作業着のままで龍国総領事館の表門から外へ放りだされた。
三年ぶりの“娑婆”の空気であった。
気のせいか街は淀んでいた。
人権監視委員会が設置され、人権擁護法案が試験適用されてから言論の自由がこの街から失われたと聞く。
光太郎はかつて住んでいたマンションにもどろうとしたが、そこは既に取り壊され、跡地にはシヨッピングモールが建てられてあった。
“釈放”はされたものの、光太郎にはゆく場所がなかった。
無一文で放りだされたため、メシも食えない。
空腹を抱えてあてどなくふらふらと歩いていると、強烈なめまいに襲われた。
光太郎は倒れた。
意識を失う間際、聞き覚えのある声に自分の名を呼ばれた気がした。
つづく
時代劇専門チャンネルで「赤影」を見ていたのだが、敵忍者が巨大ロボやらUFOやら怪獣軍団などを繰り出すのをみて、「ギヤマンの鐘」とか「黄金の仮面」とか狙わなくてもよくね? と思うのは私だけだろうか? 日本どころか世界も支配できるよ、そのままで(^^;




