買い出しは危険がいっぱい?
「あれっ、高塚さんは?」
備品の買い出し日当日。
集合場所に来ていたのは、僕の他には、大山君と矢口君の2人だけだった。
「愛純は少し体調崩したみたいで」
「大丈夫なの?」
「うん、季節の変わり目は、よくある事だから」
確かに最近は少しずつ暑さもやわらぎ、日によっては少し肌寒さを感じる朝もある。
「埋め合わせは必ずするから、今日はよろしくだってさ」
矢口君が言うには、今朝起きたら少し熱っぽい感じがしたので、大事をとっての事で、そこまで心配するほどの事でも無いのだとか。
佐藤先輩も居ない今、確かに無理をしてもらってこれ以上人が減るのは困るかも。
「男手は足りているし、大丈夫でしょ」
そんな訳で今日は、あらためて1年生組男子陣だけでの買い出しとなったのだった。
「おう!! よく来たな!!」
「「「?!」」」
品揃えが充実していると教わった、学校から少し離れた場所に有るホームセンター。
そこで僕達を出迎えたのは、教えてくれた当人である、遠山先輩本人だった。
Yシャツに、作業ズボン。店のロゴマークの入ったエプロンまで装着したその姿は、すでにベテラン店員の様な、謎の風格まで感じる。
「先輩。その格好は?」
「おう!! ここでバイトしていると、社内割引が使えるからな!!」
どうやら、趣味のアウトドアグッズの費用は、ここでアルバイトをしながら貯めているらしい。
うん、趣味と実益を兼ねていすぎる。
「どうだ!! ついでだから色々見ていかないか!!」
そう言って手招きをしているけれど、その先に見える案内板には、レジャーコーナーと書かれている様に見えるのですけれど?
「あの、今日の目的は⋯⋯」
「大丈夫だ!! ちゃんとわかっている!!」
わかっていると言いながら、完全に自分の趣味を押し付ける気満々ですよね?
こうして僕達は、いつの間にか謎のホームセンター見学ツアーに強制参加する事となったのだった。
「ほら!! これなんてどうだ!! これからの季節の必需品だぞ!!」
「先輩、なんで登山グッズなんですか」
「シーズン前に備えておくのは当然だ!!」
「あの、防寒グッズは少し急ぎすぎなのでは?」
「確かにな!! ならこっちはどうだ!!」
「あの、バーベキューセットって何の関係が⋯⋯」
「秋の大自然の中でのバーベキューは最高だぞ!!」
それはそうですけれど⋯⋯。
「いいか!! 健全な精神は、健全な肉体からだ!!」
うん、間違ってはいないような⋯⋯。
食欲の秋って言われているし。
「先輩、その前にまずは学園祭を成功させましょう」
「むっ!! 確かに!! 打ち上げはその後だな!!」
大山君のそのひと言で、忘れそうになっていた本来の目的を思い出す。
いつの間にか、完全に遠山先輩のペースに巻き込まれて、余計な買い物をする所だった。
「先輩、ここってペットコーナーも有りますか」
矢口君?!
人の事は言えないけれど、目的忘れていないよね?
「なんだ!! ペットに興味あったのか!!」
「いや、僕じゃ無くて、愛純の用事で⋯⋯」
「なんだ、高塚か⋯⋯。 そういえば今日はどうした!!」
「実は⋯⋯」
あらためて高塚さんの事を説明する矢口君。
「よし!! 事情はわかった!!」
「えっ、ちょっと、遠山先輩!?」
そう言うと矢口君の手を掴み、何処かへ駆け出そうとする遠山先輩。
「心配するな!! こっちだ!! 全部俺に任せておけ!!」
そんな言葉を残して、2人の姿は、通路の奥へと消えていった。
「行っちゃったね⋯⋯」
「うん、そうだね⋯⋯」
結局僕と大山君は、2人だけで備品を買い揃える為に不慣れな店内をさまよう事となったのだった。
「ねえ、これってさ⋯⋯」
「どうしたの、大山君?」
「最初から、遠山先輩にお願いしておけば、僕達が来る必要無かったかもね⋯⋯」
そう言って、力無く笑う大山君に、返す言葉が無かった僕だった。
次回『思わぬ再会?』は8月7日(金)21時頃更新予定です




