-【9-7】-これから驚くことが起きるよ
ジトッとした探り合う様な視線のぶつけ合い。
センセイは、リュンクの異常なステータスに勘付いているに違いない。
3回目の対峙にして、様々な工夫が見える
センセイの攻防が、それの何よりの証拠になっている。
しかし、解せない部分もある。
どうしてセンセイは、この圧倒的優位な状況で、
リュンクに【奴隷の輪】を掛けて操ろうとしたのだろうか?
自分達が劣勢なのだとすれば、
リュンクという強力な駒を手中に収め
逆転に繋げたいという心理は理解できる。
だが、この優位な状況ならば、一度敗北している相手には、
早々と退場してもらいたいと考えそうなものだ。
それならば【奴隷の輪】を行使して直ぐに自害を命じれば良い。
深読みすれば。
今後、強力な駒として扱かう為に欲を出したとも考えられるが、
今までの印象的に、慎重な人間性を持つセンセイからして、
その様な足を掬われかねない選択を取るだろうか?
「‥‥‥‥」
リュンクは思う。
この男は、この場において、どうにも不条理な人物だと。
皆が一様に視線を向ける中、
一人だけ違う方向に顔を向けている様な、
同調性を欠いた人間を見る時に感じる
なんとも腑に落ちない違和感がある。
そう、言うなれば。
自分達によく似ている。
「じれってぇな!!どけ!!頭デッカチの管理職!!
こんなガキ!とっとと殺しゃいいんだよ!!」
と、その時、お見合いを続ける二人に痺れを切らしたのか、
無思慮に駆け出すアマテオ兵が一人。
「よせ!!そいつに攻撃するな!!」
そう言うセンセイの制止も虚しく、
アマテオ兵は不用意にリュンクに攻撃を仕掛けた。
フォッ!という素早く軽い風切り音を立てて
アマテオ兵のロングソードが、リュンクの側頭部に迫る。
いうまでもなく時間遅延が展開され、
遅延世界の中で、何事もなかった様に
視界の横に登場した白刃をするりと交わすリュンク。
この好機は逃せない。
身体に害をなしていた紋術の影響も失せ、
いつでも握りしめた竜剣を叩きつけられる。
今なら、センセイに仕掛ける事も叶うだろうが、
彼は遅延世界に対応する術があるかもしれない。
その辺りは、不明瞭だが、
こんな時に博打を打つ程、リュンクは馬鹿じゃない。
だが、手をこまねいているのも事実。
目の前でへこたれる五人の人質が足かせとなり、
かてて加えて、後方ではウィフフの部下は既に武器をその手に
今にも名簿の生徒達を処刑してしまいそうだ。
時間遅延が与えてくれた僅かな時間で、
竜剣の矛先を向ける先について、リュンクは選択を迫られた。
篤丸やオトロ、協力者の学生達を解放するか。
直ぐに後方へ駆け出し、名簿の生徒教員を救うか。
選ばれなかった片方は、恐らく無事では済まない。
誰かは、ここで犠牲になってしまう。
リュンクは、この状況を前にして
夏休みに祖母と繰り広げた
挟み将棋の盤上を彷彿とさせた。
相手の駒を一つ倒せるが、
次の手で自分の駒も倒される。
簡単なルールで行われる挟み将棋では、
そういった駒を相殺する状況は良くある場面で、
練度が低く、その状況を回避する術を知らないリュンクは、
その都度「しまった!」と声を上げ悔しがっていた。
しかし、この度は悔しがるだけでは済まされず、
倒された駒は、次のゲームで復活しないのだ。
リュンク側の陣地から欠けた駒は永遠に盤上に並べられない。
「くそっ!選べないッ!」
彼の原動力が、刃を向ける場所を決めかねさせ
分厚く不恰好なその剣は彷徨い震える。
「どうすれば良い!?どうすれば!!くそッ!!」
時間遅延による思案は有限だ。
サルホーガとの戦闘で、同じ猶予の使い方をして、
そのタイムリミットは感覚で分かっている。
もう、数刻も時間遅延はもたない。
前に後ろに、焦る帽子のツバが行き交い、
リュンクはまるで優柔不断な小鳥。
「‥‥‥ぁっ!!」
と、小さな声を上げたリュンクは、
頭上に何かを見つけ凝視した後、
ゴクリと大きな音を立てて生唾を飲み込むと、
全速力で広場脇の校舎に向けて走り始め、
その壁面に突き出る窓用の屋根に足を掛けると、
思いっきり踏ん張り校舎の上へ跳び上がった。
「ぉおおおおぁあああッ!!!」
リュンクがたまに見せる怪力で踏み台にされた屋根は、
大きく破損したが、彼の体は高く舞い上がり
その視界では、ビュンビュンと校舎の窓が通過していく。
しかし、そこで時間遅延が解ける寸前の感覚に陥る。
「まだだ!!!足しになれよ!!サルホーガァ!!」
そう叫ぶと同時、キラリと、真っ赤な夕日を反射する
白銀の破片を逆手に、自分の心臓に突き立てたリュンクは、
解かれつつあった遅延領域を再展開してから、
更に窓辺を踏み台にし、遂に屋上へ到達すると
何か大きなモノを掴み上げ、広場の中央へぶん投げた。
「おらぁああああああッ!!!」
大きな気合にと同時に、時間遅延は解除され
目の前から消えたリュンクを追い、センセイの視界が頭上に向く。
「ッ!?どうやってあんな場所に‥‥ッ!?」
センセイは、校舎上で肩を荒げるリュンクから、
そこから投擲された大きな物体に視線を写し
その異様な光景に目を細め、あまりにも常識から外れた光景に
ややパニックに陥る。
センセイが、困惑する中で、
唯一、確実に正確に視認したのは。
成人男性の身の丈ほどある巨大な剣だった。
発破の炸裂と聞き紛う程の派手な衝撃。
それは中央広場全体に響き渡り、
発信源に向けて全員が注目した。
その場所では、先程まで武器を振り降ろさんばかりに
体を強張らせていたウィフフの部下が、大きな体を地面に預け
腰が抜けた老人の様に尻餅をついている。
衝撃で砂埃の舞う中、そこからボヤッと、大きく細長い輪郭が見え始め
それが煉瓦造りの地面に突き刺さる巨大な剣だと分かる頃には、
傍でうずくまる大男の存在が露わになった。
「いってぇええ!!!
おいっ!!!なんて事しやがる!!
人を敵陣のど真ん中に投げる奴があるか!!」
その声の正体は、紛れもなくオーケンだった。
リュンクが、頭を抱える遅延世界で発見したのは、
巨大な剣を背負い屋上を走りぬけるオーケンだった。
今にも屋上から飛び降りそうな勢いで駆け抜ける彼は、
リュンクからすれば、将棋盤の外から現れた
「駒の相殺」を覆す、唯一の手立に他ならない。
無論、挟み将棋でそれをすればルール違反で反則負けになるのだが。
「オーケン!!こっちはどうにかするから!!
そのマッチョ達を止めてよ!!でも!!殺さないでよ!!」
と、人を投げつけた事に悪びれる様子もなく
無茶苦茶な要求を投げかけたリュンクに対し、
オーケンは、顔をしかめてヒゲを撫でると。
「あいつ‥‥無茶苦茶言う様になったなぁ‥‥
いい感じじゃないか‥えぇ?」
と、愉快そうに笑うと全体をぐるりと見渡した。
「よう!鶏冠に来る糞ったれ野朗供。
気の毒な話だが、刑務官ごっこは店終いにしてもらおうか」
軽口じみた煽り文句を颯爽と飛ばすオーケンだが、
口上とは裏腹に、その顔は並々ならぬ激昂を放っており
派手な登場を相まって、場に居る者は警戒こそすれど
直ちに斬りかかる様な真似は出来ない。
「誰だお前は‥どこから現れた?」
不釣り合いな椅子に着座したまま、ふんずり返るイズオが、
とんがった鼻を可愛がりながら問いかける。
その様子からは、まだ余裕が見えた。
「見てなかったのか?
上だよ上」
「そんな事は見ていたのだからわかるよ。
お前‥‥この街に潜伏していた者ではないな?
何年も潜伏していた人間の登場にしては無計画すぎる。
‥‥という事は‥他の街から‥‥まさか‥‥」
ツツツと、イズオの額に彫られた深い皺に汗がつたう。
「アンガフから来たのか‥いや、ありえない‥
今、あそこには奴が‥なら‥許すはずもない。
まさか‥‥誤報か?‥‥だがアイーロン視察の裏は‥‥
マータリン卿が動向を見誤るなど‥‥」
一人であれやこれやブツブツと喋り始めたイズオ、
上体を丸め、貧乏ゆすりをしながら余裕なく独り言を漏らすその姿は、
まさに本来の彼を等身大で表現した、これ以上ない自己紹介。
「どうした痩せっぽっち。
身の丈に合わない椅子に座ったもんで
尻が窮屈なんじゃないか?」
と、オーケンは、無駄に小洒落た椅子に座るイズオを、
状況になぞらえ揶揄し、煽りをかます。
「‥‥嫌な感覚だよ。
私の臆病風が、お前を強く警戒している。
何やら途轍もない脅威だとな。
よろしい。
処罰を中断し、皆、この男を捕らえるのに全力を出したまえ
殺さなければ方法は問わん」
イズオの号令により、我に返ったのか
アマテオに属する全員がオーケンに敵意を集中させ、
足に力を入れ地面を踏みしめる音が一斉に鳴り響く。
「捕らえるだなんて甘っちょろい‥‥。
味方が近くに居らず、周りは敵ばかり‥‥
この状況で大剣を持った俺は、手に負えんぞ。
死にたくないなら、クソ漏らす前に降伏しとけよ」
そう言いながら、オーケンは、
地面に突き刺さる大剣の柄に手を這わし
強引に抜き取り‥‥
「んぎッ!!‥‥?
‥‥‥ぐッ!!
ッい‥‥ぉおおッ!!
‥‥あ‥‥あれ?」
強引に抜き取れない。
「マジか」
煉瓦造りの地面に直立するほどめり込んだ大剣は、
がっちがちに固定され、オーケンの剛腕を持ってしても
びくりとも動かなかった。
「マズイ‥‥これは‥マズイッ!!!」
焦るオーケンを見たウィフフの部下達は、
互いに顔を見合わせ困惑して、様子を伺ったが
イズオ達、内政管理官の護衛であるアマテオ兵達は、
直ぐに抜剣し、ジリジリとオーケンに近寄り始める。
「うわっ!!お前ら!!
兵士としての誇りはないのか!?
武器もない相手に勝って嬉しいのか!!
仕切り直そう!!な?
どうにかしてこれ引っこ抜くから!!
仕切り直して!
それから!やろうじゃないか!?」
などと慌てるオーケンに容赦無く攻め寄るアマテオ兵達は、
次第にその剣戟の範囲にまで到達し、一斉に斬り掛かり始めた。
途端、腰のショートソードを抜剣したオーケンは、
無計画に大振りで振りかぶっているアマテオ兵に接近し、
鎧の隙間に素早く刃を差し込み、脇から心臓を突き破り殺害すると、
そのまま突き飛ばして後方の兵を牽制しつつ、
左右からの攻撃を受けて交わし、重心が前に寄った兵士の兜を掴むと、
強引に弧を描いて振り回してから背部に突き刺さる大剣の刀身にぶつけ頭を飛ばした。
更に後方からの攻撃は、後方の大剣に隠れる様にして回避し
深追いしてくる相手を厳選して、急所に一撃で仕留めていった。
それを数回繰り返した後、オーケンの足元には、
ドス黒い血溜まりが広がっている。
供給先を失ったアマテオ兵の頸動脈から、ビチビチと血飛沫が舞い
鮮血は、オーケンの顔面に降りかかり、その形相を更に厳しいものへと変えた。
「‥何止まってんだ?
次々来いよ」
周囲に、ゾワっとした怖気が広がり、
オーケンを囲うアマテオ兵の先頭が感じた恐怖は、
瞬く間に全体に伝染して場の雰囲気を変える。
一対多数で膠着状態。
通常ではありえない構図がここに構築された。
「やはり!!‥‥屈強ぉッ!!」
イズオは、自身の臆病風が的中した事知り
不安からか思わず椅子によじ登っては、
しきりに鼻を触りその先端は既に赤い。
状況を見かねたのか、遂にウィフフの部下達も動き始め、
狼狽し攻めあぐねているアマテオ兵達を押し退けオーケンに接近した。
ウィフフの部下達は、ウィフフが手塩に掛けて育てた精鋭、
ただの護衛として集められた彼等と比べ、その実力は一線を画す。
オーケンの小芝居に釣られず、様子を見ていたのが良い証拠だ。
しかし、それを制止する声がある。
「ここは私に任せても貰うのであるッ!!」
オーケンを囲う兵を二手に割って登場するウィフフ、
その手には、バカに大きい凶器。
両手で掴む長さの鉄製の柄、
無数の針がこれでもかと生える球体の先端、
それはモーニングスター付きの巨大なメイス、モーニングメイスだ。
これがアマテオ帝国の猛者「怪力のウィフフ」本来の得物。
「やはり‥‥こうなってしまうのだなオーケン殿」
「仕方がないさ。
俺とあんたは、今は敵同士だ」
周囲の兵士たちは、ウィフフの得物に巻き込まれまいと
自然と囲いの輪を広げ、それがそのまま一騎打ちのステージと化す。
オーケンは、ウィフフと向き合い
その得物を見るや「これじゃ流石に打ち合えないな」と、
血塗れのショートソードを見つめると、
地面に生え不動と化した大剣に向き、
その刀身の中腹を剣の柄頭で強く殴りつける。
バヨンッと激しく湾曲し振動する大剣、
オーケンが剛力によって振動を強引に制動させると
振動が下方向に分散され、地面に埋まる刀身の切っ先はパキンと折れた。
「‥‥うむ。
何も折らずともよいものを‥大事な物ではないのであるか?」
「いいや。思い入れは無い腐れ縁があるだけだ。
少し軽くなって扱い易くなった」
丸太のように太い腕で大剣を頭上に向け構えるオーケン。
その姿たるや、彼の経歴を知らぬ者が見ても
豪傑に足る存在だと知らしめるに充分な勇姿。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
両者による眼光のぶつけ合い。
大剣を上に掲げ、微動だにしないオーケンと、
モーニングメイスを振りかぶり、ジリジリと寄るウィフフ。
そして、打ち合いは唐突に始まる。
先に動いたのはオーケンだ。
まるで大剣を上に放り投げるような初動、
彼の扱う剣技、大剣操作術特有の動きだ。
重力による落下加速を相乗させた大剣を、
無理なく横薙ぎに変換させたオーケンは、
全身で繰り出す剣戟をウィフフの横腹に打ち込んだ。
「むッ!!」
知識のない剣技に対し、初動に気を取られたウィフフは、
上段からの攻撃を警戒し得物を上に構えたが、
直ぐに横薙ぎに変質した剣戟に素早く対応し、
上体を捻っては、鉄の柄で剣戟を弾く。
周囲に、武器の打ち合いとは思えない音が響き、
弾かれたオーケンの大剣から、微量の火花が散った。
一撃目を弾かれたオーケンだが、攻撃は止まらない。
弾かれた反動を増幅させ、今度は反対方向へ回転し、
最も加速を充実させる重心移動から、勢いを殺さず二の太刀へ。
「おぉッ!?」
ウィフフは、その勢いに飲まれない様、
それと同等の衝撃をモーニングメイスから繰り出し
なんとか衝撃を相殺させ、攻撃を堪えた。
大剣を振っているとは思えない俊敏な剣戟と、
巨漢らしからぬ柔軟な動きをするオーケンに、
ウィフフは興奮を隠さない。
「なんと奇妙なッ!!
凄まじい練度の剣技である!!」
「俺の半生は、これに費やした。
どうせならもう少し見ていけよ」
と、再び上に剣を掲げるオーケン。
ウィフフは、経験則から次に来る剣戟の衝撃を予想し、
しかし、どの角度から繰り出されてもいい様に構えを変える。
「うぉおおおおおッ!!!」
一際激しいオーケンの気合い。
そして振り下ろされる大剣。
それと同時にオーケンは大剣から手を離し
ウィフフに突進を仕掛けた。
「おおおッ!?」
刀身の動きに気を取られたウィフフは、
オーケンの接近を許してしまう。
オーケンは、素早い組み技でウィフフのバランスを絡め崩し、
大剣に行う重心移動を応用した投げ技で強烈な引力を引き出すと
自由落下してくる大剣の方向へウィフフを転がした。
「なるものかッ!!」
だが、ウィフフもされるがままでは無い。
よく洗練された受け身で、華麗に転がると
落ちてくる大剣をメイスで弾き、直ぐにオーケンに向く。
オーケンが武器を手放したのなら、次はウィフフのターンだ。
「むっ!!」
だが、ウィフフは攻撃に転じずに後方へ退いた。
「流石だなウィフフ校長。
今、攻めていたら致命傷だったぞ」
そう言う、オーケンの左手には、
血濡れのショートソードが握られている。
もしもあの状況で、巨大なメイスで攻撃を仕掛けようものなら
それよりも素早くオーケンのショートソードがウィフフの体を貫いていた。
「なんと言う戦闘構成なのだ。
よく練られた剣技である‥‥感服した」
「謙遜が過ぎるな。
あんたが手を抜いていなければ
ここまで一歩的にはならないだろうよ」
「‥‥‥」
オーケンは転がる大剣を手中に収め、
ショートソードを背部に収めると再び上へ掲げて構える。
「別にいいんだぞ
マジにやり合っても。
お互い無傷じゃ明日を迎えられない。
どの道、生傷も傷心も回避できないだろ」
「‥‥うむ‥‥万策尽きたか」
「明日は‥違う関係になれるさ」
「‥‥なるほど。
それでは‥‥もう容赦はいらぬな
ふぉおおおおッ!!!」
怪獣を彷彿とさせるウィフフの咆哮、
それに合わせてブツブツと繊維が引きちぎれる音、
ウィフフを包んでいた窮屈な教員服がバリバリに破け、
中からガチガチに肥大化した肉体がはみ出てて来た。
心なしが、ウィフフの巨体がビルドアップした様にも見える。
「動きにくくてかなわんのだ。
この格好は‥‥そして教職者と言う肩書きも‥
今は脱ぎ捨てるとしよう」
「けっこうな事だ。
最後までやり合おうウィフフ」
その時、呑気に対話する二人を前に、
手柄を得ようと早まったのか、
数名のアマテオ兵が背後からオーケンを狙う。
「ぁ!よさんかっ」
と、ウィフフが言い終わる前に、
一番先頭で背後を狙ったアマテオ兵に向けて
オーケンの大剣が襲いかかる。
件の要領で加速した大剣を、身を捻る事で後方への攻撃に転じ
その餌食となったアマテオ兵は、胴鎧に直撃を受け三メートル程吹き飛んだ。
まるで風車の様に回転して飛んでいくその姿は、コミカルで面白い光景だったが、
その張本人と、これからその犠牲となる兵士達はとても笑える状況じゃない。
ウィフフに向けられる表情とは異なり、冷酷で恐ろしい顔をしたオーケンは、
一切の容赦無く背後にいるアマテオ兵に対し、台風の様な連続攻撃を仕掛け、
最後の兵は、下腹部から鎧を交わして串刺しにされ、そのまま回転しながら宙を舞い
意識あるうちに、胴体から真っ二つに切断され吹き飛んだ。
その光景を見せつけられたアマテオ兵達は、
差異はあれど同様の発想に行きつく。
この男は戦士としてのレベルが違う。
「馬鹿者ども!!
よく聞け!!不意打ちなど無駄である!!
貴様らの練度で敵う相手では無い!!
この男は白銀騎士隊の騎士に比敵すると知れッ!!」
誰も何も言葉を発しなかったが
ザワッと、意識の波紋がのたうつのが分かる。
アマテオ帝国兵にとって、白銀騎士隊とは雲の上の存在。
伝説の領域に片足を乗せられる、豪傑の中の豪傑達。
白銀騎士達と同格。
それを現状の説得力を持って示されれば、
彼らにはもう、武器を振るう士気は舞い戻らなかった。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
リュンクは、オーケンに場を託した直後、学舎の屋上から
センセイの居る地面へと舞い戻る為に高所からダイブしていた。
視界の端では、シュンシュンと高速で景色が通り過ぎている。
確か自分は高所恐怖症だった気がしたリュンクだったが、
竜剣で学舎の外壁を切り裂きながら、冷静に勢いを殺す所を見ると、
どうやら知らないうちに克服したのだと、やや強引に納得。
上昇するときに足蹴にした屋根を今度は着地に使い
バキボキと完全に破壊したリュンクは、
広場の方へ注目する隙だらけのアマテオ兵達に目をつけた。
オーケンの登場により、ややポジティブに転向した頭の中で、
カチカチと不意打ちの算段を立てる。
先ほどの様に再度乱戦に持ち込めれば、
自作自演式時間遅延を活用して
大多数のアマテオ兵を無力化する事ができる。
「‥‥そう上手い事‥いかないよな」
経験則からインスタントに発案した算段を実行に移す前に、
目の前の視線が制止を促した。
皆が、広場に注目しオーケンの動向を見ている中で、
一人だけ、こちらを凝視する人間がいる。
「‥‥センセイ」
どうやら、やはり彼とは決着をつけなければならない様だ。
しかし、先ほどと同じ様に紋術師と結託されるとやりづらい、
それに人質を組み伏せるアマテオ兵や内政管理官達も放っておけない。
オーケンには、場の勢いで「どうにかする」と大見得切ったが、
この状況は想像よりも厄介だ。
その時、センセイが急に振り返る。
急な動きに警戒したリュンクが、何をするのかと注目していると
センセイは、不意にアマテオ兵に組み伏せられている篤丸の頭を強く踏みつけた。
「目覚ましてるのバレバレなんだよね。
別にどうでも良いけどさ、これ以上面倒起こさないでよね」
「‥‥よう見とるのう」
悪態をつく篤丸は、地面に顔面を押し付けられつつ
憎らしそうにセンセイを睨みつけている。
「‥‥くそ‥篤丸‥動ける様になっていたのか」
しかし、リュンクに傾注していたはずのセンセイが、
どうして篤丸の状況に気付けるのだろうか
正面から視認していたリュンクですら気が付かなかった事だ、
普通に考えれば、背後で組み伏せられている人間に意識が戻った事など
気付き用が無いはずだ。
だが、篤丸の意識が戻ったのは、リュンクにとってありがたい。
どうにかして篤丸を解放すれば状況は少し良くなる。
「‥‥‥」
その時、リュンクは再び違和感を覚えた。
この感覚は、オーケンにしてやられる前の
上手い様に使われている感覚に似ている。
何か‥見落としているのだろうか。
「ボーッとしてて良いのかい?
君がどれだけイカサマ能力持ってるか知らないけどさ
この状況は一人じゃ覆せないだろ?」
と、攻めあぐねるリュンクに憎まれ口を叩くセンセイ。
「‥‥成る様にしか成らないか」
あれこれ考えても拉致があかない、
いけ好かないがこの口車に乗る他は無い様だ。
リュンクは、お気に入りの帽子を深くかぶり直し
竜剣を背負う様に構えて歩みを前に進めた。
「お前らはしっかりその田舎武士を抑えてろよ。
あいつは僕がやる。手助けはいらないよ」
「は‥ですが、人質にも居ますし
数で圧倒してあちらの加勢に行ったほうが」
「いや。おそらく、あそこに居る大男よりも
あの少年兵の方が厄介な相手だ。
人質がいなければ、君たちは瞬きする間に皆殺しさ。
僕は生き残るけどね」
「はぁ‥‥」
「まぁ‥見てなよ。
上手くいけば、これから驚くことが起きるよ」
その捨て台詞の後、センセイもリュンクに向けて歩みを進めた。
再び、対峙するセンセイとリュンク。
「さぁ‥‥賭けの続きだ。
これはさ珍しんだよね。
僕はあまりギャンブルはしない質なんだよ?」
「‥‥お前は‥一体何がしたいんだよ」
「それこそが賭けさ。
がっかりさせないでくれよ?」
軽口も早々に、武器を構えたセンセイと、
竜剣を持つ右手に渾身の集中力を注ぎ込むリュンク。
瞬き一回。
双方の得物が敵対者を捉える。
先に有効打を繰り出したのはやはりセンセイ、
恐ろしく軽く俊敏なその双剣の太刀筋は、
風に舞い散る枯葉の如し。
リュンクの肉眼ではとても捉えきれない。
だが、問題はここからだ。
リュンクには時間遅延がある。
そしてセンセイはそれに気が付いている。
「ッ!!」
リュンクは、恐怖に抗えず竜剣で防御を試みるが
その脇をヒラリとかわしたセンセイが、再び背後へと回り込んだ。
1秒にも満たない一瞬の見つめ合い。
リュンクの心臓がドクリと跳ねる。
直後、鋭い突きがリュンクの後頭部に迫り‥‥
髪の毛を裂いて頬を軽く刻む。
「うぉっ!」
反射的に上体を捻るリュンクだが、
センセイは、それに追撃を仕掛け
無防備な体に、無数の突きを放つ。
その全てを体に受けたリュンクだが、
時間遅延は一切起こらず、痛みに反してどれも致命傷にはならない。
「いっ!痛ててッ!!クソが!!」
「‥‥‥‥」
意味が分からない行動の数々に激情するリュンク、
なぜ真剣での攻撃で時間遅延が発動しないのか分からないが、
この様な攻撃をいくら続けても意味が無いのは明白だ。
「なっ!何がしたいんだよ!!お前!!」
だがセンセイはその問いには答えない。
「付き合ってられるか!!」
と、リュンクは、左手にある白銀の破片で、
強制的に時間遅延を発動させると
遅延領域の展開で無防備になったセンセイに
竜剣での反撃を試みるが‥‥。
「っ!!」
センセイの双眼が、遅延世界でギギギと回った。
遅延領域と、現実世界とでは、体感時間の乖離はどれ程だろうか、
ストップウォッチのないこの世界では、正確な時間を計る術はないが、
少なくとも、肉眼でその動きを終える程、時間遅延は生半可な能力ではない。
にも関わらず、センセイは確実に
遅延世界で動いているリュンクを目で追ったのだ。
「こいつ!!」
それに油断した束の間、
センセイの剣が、時間遅延の影響を覆し素早く動いた。
「あぁッ!!」
気づいた頃にはもう遅い。
その白刃は、攻撃を躊躇したリュンクの首筋に届く手前、
既に時間遅延が発動している状況では、オート防衛機能も無効だった。
『死ぬ』
久しく忘れていた死の恐怖が蘇る。
初めてハキホーリに剣先を突きつけられた時の、
どこまでも無情な死の恐怖が、再び訪れた。
思わず目を閉じるリュンク。
‥‥‥だが、肉を切り裂く痛みは襲ってこない。
「!?」
目を開けて見える光景。
なんとセンセイは再び、攻撃を寸前で止めたのだ。
意味が分からない。
時間遅延を回避する為の寸止めなら理解できる。
だが、遅延世界で攻撃できるのなら
それをする意味はない。
そして、短期の時間遅延が終わり
体感時間が元に戻る。
その瞬間。
グチャボキと生理的嫌悪感を粟立たせる
肉々しい異音が鳴り響く同時に、周囲に血飛沫が舞う。
「ぐぁあああっ!!」
くぐもった悲鳴。
それはセンセイのものだ。
「なっ!!?」
リュンクの目の前で膝をつき苦しむセンセイ、
先ほど攻撃を仕掛けた彼の右腕は、関節があらぬ方向へ曲がり
へし折れた骨が、肘を突き破り露出している。
さらに、両目と鼻からは血液がボトボトとこぼれ落ちている、
その目は、もう景色を見ることは叶わないだろう。
「へっ‥‥体が着いていけないな‥‥これがお前の領域か‥‥
全くこれだから‥おえっ‥‥チート能力系は嫌いなんだ‥
‥‥だいたいインフレ起こしてグダるじゃんか‥ああいうの‥」
ボロボロのセンセイは、嘔吐きながら意味の分からない言葉を連ねている。
リュンクはその光景に鳥肌を立てて恐怖した。
これ程まで意味の分からない行動をとる人間を見た事がないからだ。
「どうして‥‥攻撃しなかったんだよ‥‥」
「賭けは‥‥終わり‥‥これで実らなけりゃ‥‥
それはやられ損ってやつだよね‥‥おぶっ‥」
「賭け‥?」
リュンクは、センセイの起こした意味不明な行動の数々を思い出す。
「‥‥まさか‥‥お前‥‥」
「‥‥‥‥タイムリミットだ
あとは、君に任せる」
「任す?‥‥何を‥」
センセイは、意味深な言葉の後、
見えぬ目でリュンクの顔をじっと見つめ
無傷な左手で広場を指差した。
「!?」
はっと、その指差す方向に視線を向ける。
それは、大男二人の決着が着く瞬間だった。
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「ぅぐぉッ!!」
密着した状況のオーケンとウィフフ、
悲痛な声を上げたのはウィフフの方だ。
後ずさる彼の胸元には、血ぬれのショートソードが突き刺さっている。
「「「ウィフフ様ぁ!!!」」」
「「「校長ぉッ!!!」」」
ほぼ同時に、同一の人物を指す異なる名詞で叫び声が上がった。
大の字で後ろに倒れるウィフフに、人質にされた生徒教員を含めた
大勢の人間が集まり、その安否を探る様に、皆、彼の体に触れる。
「致命傷だ。
もう助からない」
その冷たいオーケンの言葉に、数名の生徒が彼を鋭く睨みつけ
今にも食って掛かりそうだ。
「おいおい。
勘違いしてんなよ
俺はお前らを助ける側だぞ?
礼の一つでも言って欲しいもんだ」
悪びれないオーケンに、強い反発心を抱いたものは多かったが、
それが正論な事も理解でき、誰も彼も黙り俯くことしか出来ない。
「きぃぇえええ!!全員動くんじゃ無いぞぉお!!!」
甲高く誰のものか知れない女々しく悲鳴じみた声が上がる。
その発信源はイズオだ。
「離してっ!!触らないでよぉッ!!!」
その傍らには、両腕を縛られた女子生徒、
彼女は、ウィフフに命を救われた生徒だ。
「黙れ!!『奴隷よ!大人しくしろ!!』」
イズオは【服従の紋術】=【命令】を行使した。
「ひぃい!!殺さないでぇ!!」
【服従の紋術】、【奴隷の輪】の影響下にある彼女は、
イズオの行使する紋術に抵抗できず、
恐怖で失禁しながらも言われたまま大人しく直立した。
「私は粗相をしろとは命令していない!!
さぁ!!これを持て!私を守るのだ!!」
そういうイズオは、女子生徒に短剣を持たせ自身を護衛する様に命令する。
その目は狂気じみており、どう見てもまともな精神状態とは思えない、
恐らくウィフフの敗北と、オーケンの並外れた強さを見て気が触れてしまったのだろう。
「あのゲスが‥なんて事しやがる」
オーケンは、眉間に皺を寄せ最悪の状況を認めた。
「どうだぁ!!どれだけ屈強でもこれは堪えるだろう!!
その大剣で生徒の首がはねられるかぁ!!屈強ぉ!?」
その状況を見たウィフフの部下は、拳が砕ける程に力み
イズオの暴挙に居ても立っても居られない様子だ。
だが、彼らはこの状況であってもアマテオに属する以上は、
自分たちの意思で反乱を企てることは出来ない。
ウィフフが彼らに与えた矜恃が、今は害を成す。
彼同様に、自分の在り方、自分の生き方を忠誠心により改め、
今日を生き、明日を生かす糧にした彼らは、
今は首輪をつながれた犬、もう、それを手放し野生へ帰る事は出来ない。
そうすれば自分が自分で居られなくなり、
勝つために手段を選ばない、元の粗野で暴力主義な人間に逆戻りしてしまう。
それでは、あのゲスな男と何が違うと言うのか。
「セビル!!何処にいる!!セビルッ!!」
誰かを呼ぶイズオ。
「ここだ!!」
その応答を返したのは、センセイだ。
「おぉ!セビルよ!!無能なウィフフはもう役に立たん!!
ここに来い!!お前がやるのだ!!その屈強の両足を切れ!!
動けなくして拷問するのだ!!
どうやってここにきて!!何をしようとしているのか聞き出せ!!
クリンヒル卿は恐ろしいからなぁ‥我々とて‥‥‥やられてしまうぞぉ!!」
イズオは、異常な立ち振る舞いで狂乱し、
焦点の合わない目をグルグルと回しながら唾を飛ばし、そう喚いた。
「ああ‥‥すぐ行くよ」
イズオに召集されたセンセイは、フラつきながらも立ち上がり
大広場へ向けて歩き始める。
「‥‥‥‥賭けは‥‥上手く生きそう?」
と、傍のリュンクが不意に投げかけた言葉に、
センセイは顔を向け答える。
「さぁね。賭けなんだから運次第だよ」
問いに答えた、先生の目は既に綺麗な形に整っていた。
「‥‥‥なら、僕も賭けにのるよ」
と、そう告げたリュンクは、オーケンの元へ行くセンセイを黙って見過ごす。
「其処元ぉ!!なんで止めんのじゃ!!」
「‥‥‥‥」
篤丸の声が響き渡るが、リュンクはそれを無視し先生の背中を見送る。
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やがてセンセイがオーケンの前までたどり着くと、
二人は視線を合わせたが、センセイはオーケンを通り過ぎ
倒れるウィフフに近づき、膝を折って様子を伺う。
「何をしているセビル!!
ウィフフなど捨て置け!!
そいつの足の腱をだなぁ!!こう‥‥ミチミチっと!!
切ってしまうのだ!!」
「‥‥‥」
イズオの言葉を受け、立ち上がったセンセイは、
今度こそオーケンに向かって立ち、
その顔と身体を覆い隠していた覆面とポンチョを勢いよく脱ぎ捨てた。
そこには、女と見間違える程、
端整な顔立ちをした美しい顔の少年が居た。
「‥ぁ‥‥‥誰だ‥‥お前は‥‥
セビルは何処だ!!私の可愛いセビルッ!!」
と、負の抜けた情けのない声を上げるイズオ。
先ほどまで「セビルセビル」と、嬉しげに呼んでいた筈だが、
どうやら、何か大きな勘違いがあったようだ。
「‥‥えっとさ。
あんたがさっきから呼んでるセビルさんにはその声は届かないと思うよ。
彼女は、ミゴーン大河川の底にいるからね」
「いっ!!‥‥いいい!!!!
居場所が違ううううう!!!」
既に狂乱の果てに行き着きそうなイズオは、
もはや支離滅裂な言葉でしか感情を表せない。
「ふぅ‥‥暑かった。
それじゃ、最後の茶番だね」
センセイは、そう言いオーケンの顔を見ると、
大きく息を吸い、渾身の【疎通の紋術】で言う。
『うわーウィフフ将軍がやられてしまったー!!!
どうかー!私と!彼の部下たちの命だけはお助けくださいー!!
なんでも言うことを聞きますからー!!』
学園都市ビッショウに響く棒読みの叫びは、
何処の誰が、いつ聞いてもそれが下手な演技だと分かるものだった。
それを聞いたリュンクは「くっさい芝居だな」と、
腹の底から湧き出る安心感と、それ以上に高ぶる高揚感に身を震わせた。
センセイから感じていた違和感は、全てここに収束する。
時間遅延の起きない攻撃の正体は、殺意がなく致命傷にならない攻撃、
「私はあなたを殺すつもりがない」と言うリュンクだけに伝わるメッセージだった。
いつどのタイミングで、センセイがこちら側に着いたか定かではないが、
それにはオーケンが絡んでいると、リュンクは睨んでいる。
どちらにせよ、謎解きは後だ、
全て片付いた後で本人達の口から聞くとしよう。
「またしてやられたんだな、僕は」
リュンクは、そう呟いたが、
その顔はちっとも悔しそうじゃない。
そして、センセイのクサイ大根演技を受けたオーケンは、
「ふーむ」と、わざとらしく髭を擦ると両手をポンポンと叩き言う。
「よろしい!!ではひとつ条件をつけるぞ!!
お前たちは捕虜だ!!今は緊急事態だから俺たちの仲間として戦ってもらうぞ!!」
「喜んで」
オーケンの申し出に、センセイが了承で返した事によって場の状況が変わる。
「さぁ!!お前たち!!ウィフフが倒れた今!
お前らの上司は僕だ!!僕の命令に従ってもらうぞ!!」
センセイは、場の状況を飲み込めないウィフフの部下たちに、
にこやかに笑いながら指示を下し始め、
それによって徐々に、事の本質を理解していったウィフフの部下達は、
迸るガッツを溢れんばかりに漲らせ始める。
「よく我慢したね。
もう好きにすれば良い。
君らの教育とやらを僕に見せて欲しいな」
「「「「「ウォオオオオオオオオッ!!!!」」」」」
オーケンと先生の策略によって、
首輪を外さずリードだけを延長されたウィフフの部下達は、
大群でドラミングするゴリラのような雄叫びをあげて、
次々と目の前のアマテオ兵達に攻撃を仕掛け始めた。
大集会場で、直ちに乱戦が巻き起こる。
「オーケンさん、どうやらもう少しかかりそうだよ。
僕はあっちを手伝ってくるから、あとは手筈通りに頼むよ」
「ああ!反撃開始だ!!」
そして、何事も無かったように
リュンク達の元に帰ってくるセンセイ、
その口角は斜めに上がっている。
リュンクとセンセイの視線が合う。
「賭けもたまには良いものだよね?」
「手札も知らないのに大金を乗せた僕の身にもなってよ!!!」
「勝ったんだからよくない?
細かい事気にしないでさ‥そのチート能力を存分に使ってよ
もちろん、今度は同じ目線で見させてもらうけどね」
「よくわかんないけど
さっき嫌いって言って無かった?」
「うーん。
仲間なら話は変わるよね。
最高に好きな展開だよ」
「まぁ‥‥そうだろうね」
その言葉の後、示し合わせた訳でもないが
リュンクとセンセイは、肩を並べて立ち。
人質を組み伏せたまま、ややパニック状態で動けない
アマテオ兵達に向けて剣を構える。
「こ‥‥これはどう言う状況なのですか!?」
と、困惑するアマテオ兵は縋るようにセンセイに問いかけ、
センセイは、それにさも嬉そうに言葉を返した。
「だから言っただろ?
これから驚くことが起きるよってさ」




