第二十三話 若杉雨丸
「それでお前は全てを話すだけ話して手ぶらで帰ってきたというわけか……」
「いやね、反魂の法にはなんでも必要な法具があるらしいんですが、ちゃんと納得できる理由があれば大人しくそれを差し出すって言ってやしたぜ。あっしの見立てではあいつらはそれを使って悪さを企んでいるようには見えなかった」
綿二は若杉に向かってそういった。
「既に塚原卜伝をこの世に蘇らせて、織田殿も斬り捨てられてしまったんだぞ。そんな物騒なものを町民風情に持たせておくわけにはいかないだろう。もしその連中がこれ以上悪さをしなくても、いつ誰が奪い取って何をするかわかったものでは無いだろう」
「あっしもそれぐらいのことは言ったんですが、そしたらその赤目の女侍が、心配なら自分が預かって守るなんて事を言い出しましてね」
「大した自信だな。赤目の一族はそんなにも強かったのか?」
「強いというか、あっしの間合いで攻撃を入れてくるなんてやつは今まで兄貴ぐらいしかいませんでしたからね」
「しかしお前の事を近距離で認識するとはな、拙者ですら叶わぬのに噂通り赤目の一族とは大したものだな」
「心配なら隠密から手練れのものをよこせと言ってました。もし自分がそいつに負けるようなら、確かに法具は我らに預けたほうがいいかなと言ってやしたぜ」
「なるほど、自分も倒せないようなやつには法具も守れんだろうという事か、確かに筋は通っている。ならば誰かを向かわせるとしようか……いや、拙者が自ら参ってもよいか」
「……うーん……若杉の旦那だとまずいですなぁ」
「なぜだ」
「嫌、条件というかなんというか、できれば長男以外の独身者を寄越せと言われましてな……あ、あと面相もいいほうがいいとか何とか……」
綿二は困ったような顔をしながらそう言った。
「なんだそれは?」
「……色々と条件をつけても大丈夫なくらい、御公儀には強者がごまんといるところを見せろということなんでやしょう」
「生意気な物言いだな。まぁ良い。面相が良くて独身で長男以外……であれば沖田を向かわせるか……」
「沖田の旦那ですかい! しかしあの人興奮すると加減てもんを忘れちまうからな……」
「御公儀隠密に喧嘩を売ってきているのだ、殺されても文句は言えんだろう」
「相手は納得できれば黙って渡すと言ってるんですよ。それはちょっと気の毒じゃないですかね?」
「まぁ拙者から沖田には、殺さぬようにとは申し付けておく。その上でどうなるのかは知らんがな……」
そう言って若杉雨丸はにやりと笑った。




