普通、学校に■■■はいません。
……
……あれ?
べ、べっと……?
「おはようございやす創ぇ。5時間ぶりぃ。」
彼女が目を覚ますとそこはベット。
目の前には軍人っぽいヘルメットをかぶったロゼがいた。
「あ……あの……私は……」
「そうだね。なんで私はここに居るの? って聞きたいんだろうね。」
創はベットから起き上がり、辺りを見回す。少し薄暗いが、保健室のようだ。
隣のベットを見ると神堕 聖がよだれを垂らして眠っていた。
とても寝相が悪く、今にもベットから落ちそうだ。
そんな様子を見ていると落ち着いたのか、自分の身に何があったのかを思い出す。
「そうだ……私、倒れちゃって……」
「自己紹介してる時に倒れたからびっくりしたよ。
ま、感情によるものだから病気とかじゃなくてよかったよ。」
優しい表情でそう言いながら、ロゼは拳銃を渡してきた。
「え……なんですこれ……?」
「ゾンビから身を守るための定番アイテムだが?
それとも使い方が分からない? そこの引き金を引くだけだよ?」
「……へ? ゾンビ……?」
「うん。ゾンビ。普通に強いアンデットかつ一番有名な化け物の類だね。」
「な、なんでそんなのがここにいるんですか!?」
そう驚く創にロゼはカーテンがかかった窓に近づき、創を呼び寄せる。
そして静かにロゼは、「ちょっとめくって外を見てみ。」と指示。
創はその指示を実行に移す。
窓の外にいたのは無数のおどろおどろしい色をした人間の集団。
手を前に出し、ひたすらどこかへ前進しているようだ。
「あ、あの……なんなんですかアレ……」
「だからゾンビだっつぅの。
私らはあのゾンビに囲まれてどうしようもないんだよ。」
「どうしようもないって、何があったんですか!?」
ロゼは(換気をしていた)窓を閉め、
神堕 聖が寝ているベットの横に座る。
目元をぴくぴくとさせながら、ロゼは小さく、何かをつぶやいた。
「え……? 今なんて言いました……?」
「……私でも分かんねぇんだよ!!」
「わ、分かんない……?」
ピンポンパンポーン♪
その時、保健室の壁にあったスピーカーから音が出る。
創とロゼはそのスピーカーのほうを向いてその音の後の内容に耳を傾ける。
〈「あー、あー、聞こえてますかー、アロディルデ学園の生徒諸君。
ゾンビたちがあと少しぐらいで校門のバリケードぶっ壊しそうだよー。
今ちょっとしか入っていないけど、壊されたらドバァと入ってくるから、
早く学園の中に設置したテレポーターで脱出して頂戴な。
脱出できないと……お察しの通りだね。
噛まれたり感染した生徒は十分の四、脱出生徒は十分の二ぐらい。
後の十分の四の方々~、がぁんばってくださいね~ 」〉
ピンポンパンポーン。
「な、なんですか今の放送……」
「さぁね……10分ごとに流れてるわけわかんない放送だよ……
とりあえず言えることは我々ピンチってことぐらいです……」
創がロゼの方を見るとスピーカーとは真逆の方を向いて苦笑いをしていた。
「ピンチなんですか!?」
「うん、ピンチ。魔法も使えないしマインドも応答しない。
挙句の果てにはパラメータービジョンも開けない。」
「え……!?」
それを聞いて創は慌ててパラメータービジョンを展開しようとする。
しかし開くことができない、何度やってもビジョンが展開しない。
魔法が使えないということで呪文を唱えるが何も起こらない。
噛まずに魔法を出そうとするイメージがあるのに何度やってもダメだった。
「ど、どうなってるんですか……!?」
「こっちが聞きたい。私とてこの事態は想定外なんだよな~
いつでも魔法打てるようにしてるし規制なんてしてないしこりゃ陰謀だべ。」
遠い目をしてロゼは笑い始めた。
「笑ってる場合じゃないですよ! どうするんですからこれから!?」
彼女は焦りながらロゼの肩を掴んで揺らす。
「どうするっつってもねぇ……、今、愁と村田とスペルで
テレポーターを探してもらってるから待つしかないんだよなぁ。」
彼女はピタッと肩を揺らすのをやめ、周りを見回す。
「しゅ、愁ちゃん……!?」
「あー、気づいてなかった?
あと銃持ちながら揺らすのやめてくれや。普通に撃たれそうで怖え。」
創は手を離し、銃をベットに置く。
「そ、それで愁ちゃんはどこに……」
「私に言われてもなぁ~……探しに行くと言ったっきり分かんねぇし、
ここにいろって愁に言われてたもんでどうにも動けんし……」
「……」
創は落ち込み、ロゼが座っているベットに座りながら寝ころぶ。
「うぶっ……(神堕 聖の腹に直撃。)」
動こうにもゾンビがいるかもしれないから下手に動けない。
でも愁ちゃんが心配。もしゾンビに襲われていたらどうしよう。
愁ちゃんのところに行きたいけどゾンビが怖い。
でも愁ちゃんが、でもゾンビが、そんな繰り返しの思惑が頭を巡る。
「うーん、うーん……(神堕 聖は唸っている)」
魔法が使えないとなれば身を守る手段は……
彼女は手に持っている拳銃を見て、あることをロゼに聞く。
「そういえばロゼさん、この銃ってどこにあったんですか?」
「朝のエレベーターみたく、隠し場所からとったやつ。
拳銃3本セットは消火栓の中の扉の中に。
このヘルメットは、なんか近場にあったから被ってるだけ。」
「う、うぉぉ……(神堕 聖は苦しそうだ。)」
「あの……そう言う武器、ここらへんにいくつあるんですか……?」
「いっぱい。」
「いっぱい……」
そこから、彼女らの会話は途切れた。
保健室のドアから何者かが入ってきたからだ。
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ゾンビって、素敵だよね。
ゾンビが誰かを襲って噛んだりする理由はさておき、動いているからさ、
意思はなくても、心がなくても生きているもの。
動こうとする理由さえあればゾンビは生きていけるんだよ。
でも動かなくなっちゃったらそこでおしまい。ご臨終。
だから、動こうとする理由さえ与えればずぅーっと生かさせれる。
私が好きだったあの人はゾンビになっちゃったけど、
私と一緒にいることで何千年も生きていてくれてる。
ちゃぁんとご飯も食べて、運動もしたりして、健康なんです。
お友達もゾンビにしちゃって、みんな仲良く生きているんです。
だから、ね。ゾンビになろうよ。家族になろ?
人間なんかに転生するより、ゾンビになった方がいいよ。
生きる理由さえあればずぅーっと生きて行けるんだからさ。
「……」
……えっ、そ、そんな……
理由がないだなんてそんな事言わないで!
生きていける理由なんてたくさんあるんだから!
あの人みたいに、私の家族みたいに、今を生きてるんだから!
あの子、何をやっているんだ……




