普通、自分を■■という生徒はいません。
エレベーターって、なんか無言になっちゃうよね。
主に知らない人が近くにいる場合ですが。
エレベーター内、中にいる人たちは無言であった。
気まずいというわけではないが、何故か無言であった。
創の後ろにいる少女は、上の階数の表示をひたすら見続けている。
そこを見ると『1F・・・B1F・・・B2F・・・B3F』と表示されており、
B1Fが点滅している状態であった。
創の体感で、エレベーターが降り始めて5分ぐらいでそれであった。
すこし不安そうにしている創は、ふと、愁の方を見た。
愁はすこしうつむきながら真顔の状態でボーっとしている。
そこからずーっと創は愁を見続けた。心配や不安を抱いて。
10分後、エレベーターの点滅表示がB2Fになった頃、
「なぁあんた、見た感じ転移者じゃなさそうだが、どこから来たんだ?」
ロゼが口を開く。
その質問を聞いた少女はロゼの方を向いてにっこりと笑う。
「え? 私転移者ですよ?」
「は?」
創と愁はその少女の答えにびっくりし、少女の方を向きあわあわしている。
そんなことをしているにもかかわらず、少女は振り返りはしなかった。
「まぁ後ろの反応の通り、転移者とは思えない姿をしてらっしゃるもんでね。
ちょーっと気になったんだ。で、あんたいったいなにもんだよ。」
「なにもん、って言われても……」
すると、ポォンと言う音と共に、BF3のランプが点灯し、
エレベーターのドアが開いてまぶしい光が入った。
「では! また後で!」
そう言い、少女は全速力でエレベーターから出ていった。
創はその少女を視線で追いかける。その時、外の景色が見えた。
まず見えたのはレンガの道と草原。その道に少女は走っている。
そこから視野を広くすると城のような建物が目の前にあった。
「あれが……アロディルデ学園ですか……」
そんな中、苦い顔をして少女が出ていく様を見ていたロゼ。
急にエレベーターの開閉ボタンを連打し始めた。
すると、エレベーターの操作盤がガタン、と開き、
中から近未来のスナイパーライフルのような物が出てきた。
彼女はそれを取り出し、じっくりと見始めた。
「え、なんですそれ……」
「ドミちゃん。」
「ドミちゃん……?」
「うん、ドミちゃん。これで打たれたら相手は弾ける。物理的にな。
チート武器ではないが、隠し武器ではあるもんで、一応回収だけ。」
そう言ってパラメータビジョンを開き、スナイパーライフルをそこに入れる。
一瞬彼女らを見たと思えば、すぐにエレベーターからでて、後ろを振り向く。
「ほうら、君らが望んている学校が目の前に。行くぞ。」
ぶっきらぼうにそう言い、少女と同じ道を歩き始めた。
彼女らは顔を見合わせ、こくんと頷き、ロゼについて行った。
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「……あの、ロゼさん。」
「どうした創、緊張してんのか?」
「なんで入学届をだしてすぐ入学式があるんですかっ!?」
アロディルデ学園1-4教室。
彼女らは受付の女性に案内され、6席あるその教室に彼女らはいる。
創は中心の前の席、ロゼは右列の前、愁は左列の後ろに。
案内中、礼儀として状況に対しツッコむことができなかった彼女。
どうやら教室で入学式の放送が流れるらしいのだが。
彼女ら以外誰もいない教室で、創のツッコミが入る。
「でもいいだろ? 明日入学式だぁ! ワクワクすっぞ!
つって、今日うきうきで眠れなくて済むんだからさ。」
「確かにそうですけど! 心の準備と言う物がありましてね!」
「おお、そうだなぁ、入学式終わったら自己紹介やるもんなぁ。頑張れ。」
サムズアップしながらにっこりと笑った。
「はぁ……自己紹介ですか……」
落胆し、しかたなくひたすら自己紹介の文を考える彼女。
文は普通に考えられる。ただ言える自信がない。すぐ忘れそう。すごく不安。
様々な負の感情が襲う。そして過去の失敗の経験も襲ってきた。
創は、自己紹介そのものが、トラウマになっていた。
「創さん、大丈夫ですか?」
創の肩に手を添え、愁が心配そうに話しかけてきた。
「は、はい……」
「自己紹介が苦手だというのなら、私もです。安心してください。」
優しい表情でそう言われたが、創の脳裏に、あの時の愁の自己紹介が浮かぶ。
苦手、というのはたぶん優しさで言っているのだろう。
苦手であんな自己紹介できたら……吹っ切れすぎでしょうに。
「あの……コツとかなんかないんです……か……」
そう聞こうとしたとき、教室のドアが開く。
ロゼはビクッとしたが、すぐに真顔になりドアの方を見る。
「「……」」
創と愁は開いたドアの方を見て絶句する。
そこには彼女らと同じような制服を着た短髪の少女がいた。
「む、同じ制服……創と同じ学校の人?」
「……愁様。」
少女は愁の方を向いてそうつぶやく。
「愁様……? 様っつった? え? 愁さん?」
ロゼが愁の方を向くと、彼女は窓を開けてたそがれていた。
創は驚いた表情でその少女を見ていた。
「愁様! やっとお会いすることができました!」
少女は、嬉しそうに愁に歩き寄る。
ロゼは一瞬、『ナンダコイツ』と言わんとばかりの眼で少女を見る。
そして、愁様とか言われている彼女の様子をニヤニヤと見始めた。
「……なんで私がここに居るって分かったんですか?」
「もちろん、愁様の考えていることを予測して、です。」
「……ストーカーなんてしてませんよね。」
「している訳がありません。なんせ、私はあなたの奴隷なのですから。」
創は一瞬、少女の方を向き、状況を見ながらロゼの方に近づいていった。
少女の様子を見ていたロゼはヤバい人を見るような眼になっている。
創はその様子を見て苦笑いし、ロゼの顔付近まで近づき、
こそこそと奴隷と言っている少女について話し始めた。
「ロゼさん……あの人は愁ちゃんの生徒会の副会長なんです……」
「うん、何があったの。」
「あー……クラスが違ったり、生徒会に居なかったので、
あんまり詳しいことは私もよく分からないんですけど……
いろいろ、やっちゃいけないことをやったそうなんですよね……」
「ほんとに何があったんだ…… んで、アイツの名前は?」
「……村田 ヒビキさん……です……」
「ヒビキ、ねぇ……」
複雑な感情を抱きながら、ヒビキの方を見る。
見た目はとても可愛いのに、自分を奴隷と言い、愁を様づけ。
何があったんだろうとひたすら考えるが、情報が少ない。
ということで彼女は、ヒビキに接触することにした。
「ちょ!? ロゼさん!?」
「やぁやぁ、どうも、私の名前はロゼ・アルターネイティブ。
さっきから愁様とか自分を奴隷とか変な言葉が聞こえたんだけどさぁ、
君、その子と何があってそう言う行動をとっているんだい?」
ド直球。躊躇とかそう言うの無かった。
その言葉を言っている時、創はロゼの裾を掴み首を横に振っていた。
彼女の眼が「やめておいた方がいい」と言っていたが、ロゼは気にしなかった。
ヒビキはロゼの方を向き、優しい笑顔を向けてきた。
しかしそれだけで話をしようと口を開くわけではなかった。
「……創さん、ロゼ、しばらくヒビキと話すことがあるので、
すこし席を外します。ちょっと待っていてください。」
ヒビキより先に愁が口を開き、
彼女は創らに顔を見せず、ヒビキを連れて教室から出ていった。
「あーうん、さすがに口を慎むべきだったかな。
見た感じ、ふざけて奴隷とか言っている訳ではなさそうだし。」
「話を聞こうと思っても、なかなか話してくれないんですよね……
愁ちゃんからは、ヒビキさんとはあまり関わらない方がいいとか、
普通にいい子だからそっとしておいてほしいとか言われてますが……」
「うん、あいつが自分から話すまでそっとしておこう。
ヒビキはこの教室のクラスメイトみたいだからなぁ……」
引きつり笑いをしながら創の肩を叩き、自分の席へと戻った。
「え!? そ、そうなんですか!?」
「聞いてなかったのかよ。『愁様と同じクラスになりました。』
とかなんとか言ってたし。中学時代の謎が解決しそうだね。ハハハ。」
「同じクラスなんですか……大丈夫なんですかね愁ちゃん……」
そう言いながら、不安そうに自分の席へ戻る。
その時、再び教室のドアが開く。
そこにいたのは愁を蹴飛ばしてエレベーターに入った少女であった。
何故か半泣き。
「あ、あの……どうかしましたか……?」
少女は創の席の左横の席に座り、創の方を向いてギャン泣きし始めた。
「うぇ!? ど、どうしたんですか!?」
話しかけても少女は泣き続けるばかりである。
ロゼは創の肩をポンポンっと叩き、創はロゼの方を向く。
「さっき案内の人から聞いたんだが、そいつ、神堕 聖だぞ。」
「……はい!?」
そう言うと、少女は急に泣きわめくのをやめる。
どうしたのかと思って創は後ろを向くと、こちらをじっと見つめていた。
半泣きで。
創はその時、改めて少女の姿を見てみた。
……たしかに、アホ毛と言い、前髪の色と言い、虚ろな目……
神堕 聖と似て通ずる部分はあるが、なんか身長が伸びてるし、髪の色が違う。
「ええっと、聖ちゃん、なんですか……?」
「……あーあ、自己紹介の時にビックリさせようと思ったんだけどな~」
涙を拭き、席を立って教卓の前に立った。
「え!? 聖ちゃんなんですか!?」
「そうですとも、GWEを生み出し、ニャルラトホテプの力を持った、
さいっきょうの天才美少女、神堕 聖ちゃんですっ!」
謎のポーズをしながら、創にそうアピールした。
彼女はポカーンとしながらロゼの方を向き、少女を指さす。
「うん、そうだね。気持ちはわかるけど本人がそう言ってるから。」
「え、ええ……」
神堕 聖と名乗るその少女は再び席に座り、机でうずくまった。
「だけどさっき、悲しいことがあったのでテンションだだ下がりなのです……
なんで私が図書館の修復代を払わないといけないんですか……?
ていうか、魔法で修復したのになんで修復代なんて物があるんです……?」
そう言いながら、グスンと少しずつ泣き始めた。
「ええっと、まさかとは思いますが、私たちを同じクラスなん……です?」
「そうだよ……おんなじクラスだ……」
ロゼは目元をピクピクさせながら、ため息をついて机にうずくまった。
創は神堕 聖を見ながらいろいろ考え始めた。
助手は言っていた、神堕 聖の言葉はあまり信じないほうがいいと。
あの時いろいろ聞いたけどあれも嘘なのか。確認したい。
でもその確認した時にまた嘘を言われるかもしれない。
ふと、さっきまでの神堕 聖の言動を振り返ってみる。
エレベーターで会ったときは、普通にかわいい女の子だった。
急いでたからと言って愁を蹴飛ばしたのはすこしイラっとしたが。
……? そう言えば神堕 聖、自分から転移者って……
「そーいや創、自己紹介の分は考えたのかー?」
……
創は、机にうずくまった。
人の弱みを握って心を操作するのはやめましょう。
心の破損、感情の爆発などの恐れがあります。




