↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/271

ピンチは予測不可能。情報を把握し適応せよ。


ピンチ。危機が訪れます。


ピンチはその場の判断力で解決するものです。

後回しにはできない、すぐにやらねばならないのです。

ただし冷静に。判断を誤ればあなたの保証はありません。

 城から北の山の道のりの森にて。


「森。広大。移動手段がないねぇ~」


姫路はのほほんとしながら森を歩く。


「にしてもモンスター全然いないねぇ~

 ここらでスライムだのゴブリンだの出るって聞いたんだけどな~」


辺りを見回してもモンスターらしき気配がない。

耳をすませば木々の揺れる音、鳥のさえずり、水の流れ。

雑に舗装された道以外を除けば自然のど真ん中にいる気分だった。

とてもモンスターがいるような雰囲気ではなく、平和であった。


「はぁー……いいねぇ~自然の雰囲気。嫌いじゃない。」


彼女は一歩一歩森を進む。

自然の雰囲気を楽しみながら。

いつモンスターに遭遇するかわくわくしながら。


「う”ぉぉぉりゃぁぁぁぁ!」


森を進んでいると覇気を感じる声が聞こえてきた。


「ん?誰かいるの?」


それを聞いた姫路はその声が聞こえた方向を探す。


「あー……なんじゃありゃ。」


森の奥を見ると、木を剣で切り続けている少年の後ろ姿があった。

少年は150cmぐらいの身長で、農民のような恰好をしていた。


「う”ぅ”ん!はぁ”!」


少年は声を出しながらひたすら木を剣で切り続けている。


「木を剣で……なにをやっているんだか……」


姫路は興味津々に少年を見ていた。

そして彼女は森の奥に入り、少年と接触しようとする。

その時、彼女の後ろから穴が開き、

うねうねした木の根のようなものが穴から出てきて

彼女の足首に絡みつき、それに引っ張られ体勢が崩れて転んでしまう。


「うぉ!?な、なんですかい!?」


彼女は急に足に絡みつかれ焦る。なぜかその時若干嬉しそうであったが。

そして転んだままの姫路を木の根のようなものが

根が生えている穴に引きずり込もうとする。


「ああうんこれはまずいかも!?」


根っこを外そうとすると一気に体が持っていかれそうなほど力が強い。

地面に引きずり込まれたらどうなるか分からない。

彼女は必死に近くにあった大きな根を両手で掴み引っ張られないようにする。


「ぬぅぅぅぅ!力強いねぇ!これはやばい!」


必死にこらえるが、限界が近い。

両手の掴む力がだんだん弱まり、今にも手を離しそうだ。


「ふん!はぁ!」


少年の声が聞こえる。

姫路はその声の方向を見るが少年は未だ木を切り続けている。


「ちょ、そこの少年君!?後ろを見てくれ!

 人が!根っこに襲われてますよ!」


彼女は大声で叫ぶ。

少年は木を切るのをやめ、ゆっくりと振り返る。

彼は強気な表情をしていた。しかもイケメンの顔で。


「わぁイケメン……」


一瞬その顔に見惚れた姫路は、手の力が抜けてしまう。


(あ、やべ)


彼女は根っこに勢いよく引っ張られる。


「ちょ!?」


勢いよく引っ張られ、根っこが生えている穴に頭まで引きずりこまれてしまう。

その時なんとか必死に穴の淵を両手で掴み、

完全に穴に引きずり込まれるのを防いだ。

しかし、淵に掴んだ手を引っ張ろうものならすぐに引きずり込まれ、

引っ張った人も引きずり込まれそうなほど力が強くなっている。

もし仮に少年が助けに来よう物なら、

彼もこの穴に飲み込まれる可能性がある。

というか、引っ張る相手がとんでもない馬鹿力でない限り、

この穴からでられることはできないだろう。

自分から出ることはできない。淵を掴むので精一杯だ。


「……!これは……やむを得ないか……!」


そう言って彼女はこう叫んだ。


「そこにいる少年君!

 こっちに来て私のフードを外してもらえないだろうか!」


しかし少年は姫路の方には向かわず、

何故か再び木を剣で切り始めた。


「少年君!こっちだ!声を頼りにしてきてくれ!」


「ふん!はぁ!」


木に剣が当たる音と少年の声で姫路は察する。



ああ、これ完全に見捨てられてますね。と。



彼女は必死に淵を掴むが、すでに限界であった。


「……むぅ……これだけは言いたくなかったが……」


彼女は呼吸を整える。

腕がもう持ちそうにない中、彼女はある事を叫ぶ。


「ウェドスタッフをお助けてくださいゼロス・アルターネイティブ様ぁ!」


しかし何も起こらない。状況に変わりはない。

ただ叫び声が森中に響いただけであった。


「あんにゃ”ろうこねぇじゃねぇか!」


そう言った途端手の力が抜けてしまう。


「お”ヴっ”」


彼女は一瞬にして穴に引きずり込まれてしまう。

そして姫路を引きずり込んだその穴は瞬時に埋まった。


少年はそんなことがあってもなお木を切り続けている。

その少年のはすこしににやいたように見えた。



<>



 城から北東、

現世における警察省の役割を果たす、

王国騎士団本部にて。


「ヨル様。こちらが繁華街で歩いていた異民達を調査した資料、

 そしてここ数ヶ月生まれた赤子の資料でございます。」


一人の兵がヨルに、二部の資料を渡す。


「ああ、ありがとう。君はしばらく休んでいてくれ。」


やさしく微笑みながら兵士に礼をする。


「はっ。」


兵はその場を後にし、ヨルはそれを見送る。


「さて……彼女の仮説が正しくなければいいのだが……」


まず彼は異民達を調べた資料を真剣に見始めた。

その資料には人の名前、性別、職業、人の様子

そしてこの国の民であるかどうかの欄がある。

欄を見るにこの国の民ではない人が多いようだ。


「やはりこの国の民ではない者が大勢いるか……

 とはいえ危害を加えるような者は今のところいない……か……」


資料を読み進めるとある文章が目に止まる。


『異民のほとんどが、ここはどこ、私は死んだ、

 ここは異世界か、などと訳の分からないことを発言していた。』


「異世界……やはりそう言う事か……」


ヨルはその資料を片手で持ち、次に赤子の資料を見る。


「やはり多い……一ヶ月前とは大違いだ……」


赤子の資料を見るに大量の子供の名前と性別と誕生日、生まれた時刻

そしてその子供の母親が書かれていた。

彼は主にその子供の母親と、誕生日の欄を見る。


「やはりあの妊婦達の赤子のほとんどがここ最近出産されている…か……」


ヨルはある事を思い返す。


 一ヶ月前、町中の女性のほとんどが、

結婚もしていないのにも関わらず、急に体内に赤子を宿す怪奇現象が起きた。

赤子はどんどんと成長していき、すぐに出産間近の状態に陥った。

しかも体内に赤子を宿す妊婦の家庭のほとんどが一気に裕福になるという、

経済的にも医学的にも理解ができないことがあった。


「この赤子達が……現世と言う所から来た転生者なのか……?」


ヨルはそう言い、二部の資料を片手でもち、

懐からトランシーバーを取り出し連絡を始める。


「コルプス。ちょっといいか?」



<>



「あいあい、なんでしょうかヨルさん。」


コルプスはその辺の男をコピーした状態で繁華街の路地にいた。


「繁華街にいる、異世界から来た、と言う人物をコピーしてくれ。

 その人物の記憶を見て現世という物が何かを知りたい。」


コルプスすこし不満そうな表情をする。


「おいおい、簡単にコピーしろだなんてよく言うねぇ。

 よく分からない存在に対してコピーしろと。

 様子を探ってからコピーするから多少時間がかかるがいいか?」


「ああ、構わない。頼りにしてるぞマ(・)イ(・)ン(・)ド(・)。」


そう言われコルプスの顔が若干赤くなる。


「お、おう……頑張るよ……」


そう言いコルプスは通信を切る。

「異世界から来た……ねぇ。創の姿で接触すれば普通に話せるかな。」


コルプスは手から黒い靄を出し、自分を靄で覆う。

そして瞬間コルプスは創の姿に変わる。


「ふぅ……これでいいですね。」


コルプス(創)は自分の姿を確認して微笑む。

彼女は路地から出て、繁華街で散策を始める。


「まぁ、一見すると普通の繁華街ですよね。

 やっぱり人が気になりますが……」


繁華街を歩く人々はのほとんどが、

周りをきょろきょろ見ながら歩いている。


「たぶんあの人たち全員異世界転移者なんでしょうけど、

 確実にGWEの転移者上限越えてますよね。」


コルプス(創)も同様辺りを見回していると、

しょぼくれたサラリーマンが向こう側から歩いてくるのが見えた。


「あの人……確実に転移した人ですね。」


彼女はそのサラリーマンの元へ笑顔で走り寄ろうとする。


「すみませーん!あなたも死んでしまったんですか?」


サラリーマンは彼女の顔を見る。


「ああ……私は疲れている。もう一度彼女に会うなんて……」


ボソッとそうつぶやいた後、


「なんでこんなことに……こんな……うわぁぁぁぁぁ!!!」


サラリーマンは恐怖に満ちた叫びをしながら

彼女の横を走って通り過ぎろうとする。


その瞬間コルプス(創)はサラリーマンのお腹を手刀で止める。


「ぐふぉぁ……!」


「人の顔を見て逃げるとは失礼ですよ!」


サラリーマンはその場でお腹を抱えうずくまる。

その様子を見た通行人の一部は立ち止まる。


「な、なに……あの人……」


「さぁ?死んだことに対してなんかやってんじゃねぇの?」


「あの子かわいいな……」


そんな声が聞こえる。


「……!!」


彼女は周りの視線のせいか恥ずかしがってしまう。


「き、きみぃ……なにをするつもりなんだ……」


サラリーマンはゆっくりと立ち上がる。


「と、とりあえずですね!

 ちょっとこっちに来てください!」


彼女は顔を赤らめながらサラリーマンの手を掴み、繁華街を駆ける。


「お、おい、君……!なにを……!」


「話はあとで聞きますからとりあえず来てください!

 あとで何でもいい手上げますから!」


サラリーマンはポカーンとしながら彼女に引っ張られる。

そして通行人をうまく避け、近くに路地に向かおうとする。


「……! あそこがいいですね!」


すると後ろから兵士達が駆け寄ってくる。


「君!止まりなさい!」


「止まれぇ!」


コルプス(創)は後方を確認すると、兵士が来ているのを見て驚驚いた。

その兵士の顔は闘士のごとく熱くなっており、

大きな盾と槍を持って近づいてくる。

(完全に追跡用の配置じゃないですかぁ!?)


「あ、あの!来ないでください!犯罪をしている訳でないので!」


「君に指名手配が出てるんだ!ここで止まるわけにはいかない!」


「し、指名手配!?」


「きみ……!何か悪いことをしたのかい!?」


それを聞いた彼女はさらに驚く。同時にサラリーマンも驚く。

彼女は、走るスピードを速くし、

ここからどうするか考えた後サラリーマンに喋りかける。


「するわけないじゃないですか!私一応学生ですよ!

 サラリーマンの……えっと、誰ですか!?」


「テンショウ! テンショウアユムだぁ……!」


サラリーマンは少し怯えながらそう言う。


「テンショウさん!これからあの兵をまくためにちょっと屋根を通ります!

 屋根まで飛ばすのでちょっと我慢してください!」


「な、投げるだって……!?」


彼女はあせあせと言いテンショウの手を力強く握り、

屋根の上より高くぶん投げた。


「うわぁぁぁぁぁ!?」


空高くから彼の悲鳴が聞こえる

彼女は近くの路地に入ったところで、路地の壁を蹴り屋根の上に登る。

そして屋根の上で飛び、彼の腕をつかみ着地。

彼はなんとか屋根の上に足を付け、

そのまま彼女に腕を引っ張られ屋根の上を駆ける。

彼の様子を見たコルプス(創)は微笑む。


「なかなか瞬発力が高いですね!見た目の割にはなかなかですよ!」


「そ、そうか!?ていうか君どんな腕をしているんだ!

 あそこからここまで飛ばすなんて!」


彼は驚きの表情を見せながら走る。


「ここは異世界ですよ!そんな事たやすくできます!」


にやつきながら彼女は大きな跳躍をし、次の屋根に飛び移る。


「うおぉぉぉぉ!」


彼の恐怖の叫びが聞こえる。


「なんだあの跳躍!?」


「え!?あれ子供!?すごくない!?」


「すげぇ……」


兵士達と通行人は上を見上げ驚く。


「行け!見逃すな!捕らえろ!」


兵士達は彼らを追う。

その様子を見た彼はコルプス(創)に喋りかける。


「君!下でものすごい追いかけられているぞ!?」


「いいんです!この繁華街に私(・)がいるんでこのまま引き付けて

 この繁華街からあの兵を遠ざけるので!」

彼女はただ前だけを見ている。


「はぁ!?ど、どういうことだ!?」


彼は彼女の言っている意味がよくわからなかった。

その言葉を聞き一瞬後ろを見た彼女はこう言う。


「なんであれまだ撒ける状況じゃないってことです!」


彼女はそうして屋根の上を次々と駆けていった。



「ん?あれは……さっきのチビッ子かぁ!?」


武器屋の前にいたいかつい男が、

創とサラリーマンとで屋根の上を駆ける所を目撃する。

その下を見ると、兵士達は創を追いかけているようだった。


「じゃ、じゃぁあいつは双子ってことかぁ……?

 いや違うな……?ど、どういうことだぁ……!?」


いかつい男は深く考える。





天井から大きな音が聞こえた。

なにか、どんどんどんと、そんな音が……


「うーん……はっ!?」


創はその音で目を覚ます。

口元によだれを垂らしながら。

なぜ指名手配されるのか。

何かあったからに決まっているでしょう()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。