奇妙なお茶会。
ここ数日であちこちに挨拶回りをした。
ほとんどが宮殿の関係部署だったけど、お外の人たちには手紙を送るしかなかった。
あと、クレイさんもまだ戻ってきてないらしい。
つか、ルノハークの件が解決したのなら、帝都の観光してもよくない?
まだ残党が隠れているかもしれないし、獣人との関係もギスギスしたままだからダメだって……。
パパンが過保護を炸裂させているから、仕方なく我慢するけどさ。
次に来たときは、絶対に帝都観光してやる!
「ネマお嬢様。マーリエ様からお手紙が届いております」
パウルが持ってきた手紙はいつものとは違い、なんか仰々しい意匠のものだった。
パウルに封を開けてもらい、中身を確認する。
「……お茶会の招待状だって」
マーリエに授けられた、象徴となる花が使われていることから、いつものおやつタイム感覚のお茶会ではないことを察した。
「お茶会ですか。衣装はどうされますか?」
「特に何も書かれてないけど……日程が急だからかな?」
ちゃんとしたお茶会では、主催がそれとなく当日の注意事項を書き込むものらしい。
特に他国からの人には、主催がいろいろ配慮するものだってお姉ちゃんが言ってた。
「では、ライナス帝国様式のもので、お茶会に合うものをご用意しておきます」
「あ、そうだ!ルクス様にも何か身につけられるものがあったらお願いね」
せっかくだし、ルクス様にもおしゃれをしてもらおう!
「畏まりました」
じゃあ、私はマーリエに参加のお返事を書いてってと……。
『いつものとは違うようだね?』
あの仰々しい招待状に興味を持ったルクス様は、返事を書いている私の手元を覗き込む。
いつものが仲のいい友達をランチをするようなものだとしたら、ちゃんとしたお茶会は会社での接待ランチみたいなものだと説明したが、ルクス様には伝わらなかった。
「じゃあ、ちゃんとしたお茶会は公の場で、いつものお茶会は私事くらい違う感じ?」
『なるほどね。それで、ちゃんとしたお茶会とやらで何をするんだい?』
さらなる質問に、私は少し戸惑う。
だって、ちゃんとしたお茶会の経験が少ないというか、ほぼないんだよね。
我が国の王妃様に招待されたやつや、マーリエ父が手を回して招待されたやつとかはあったけど、どちらも身内的なノリに近いものだったし。
唯一それっぽいのが、ミルマ国の王女様たちに招待されたやつだけど、ヴィが乱入してきたりといろいろあったからなぁ。あれはお茶会としてカウントしていいものやら。
「おかあ様が言うには、お茶会は人間関係を調整しながら行う情報戦だって」
相手の家が自分の家にとってどんな存在かを見極め、距離を調整し、いろいろな情報を引き出しながら、こちらの情報も適宜に広める。
ぶっちゃけ、私にはできない芸当だ。
ママンもそれをわかっているのか、私をお茶会に連れていったりもない。
そもそも、我が家ではお茶会を主催することも、お茶会に出席することも少ないんだけどね。
我が家の使用人たちが大変優秀なので、わざわざお茶会を通さなくても情報戦ができちゃうのだ!
『面白い話が聞けるとよいな』
んー、なんかルクス様が勘違いしているような気もするけど、まぁいいか。
マーリエが主催するなら、変な人は少ないと思うし。要注意なのはマーリエ母くらいか。
ようやくパパンやヴィたちが少し落ち着き始めた。
きっと帰る日ももうすぐだろう。
今日はマーリエ主催のお茶会があるんだけど、場所って本当にここで合ってる?
宮殿の西翼にある一番小さな広間。それが今日のお茶会の場所だった。
西翼の広間は合計四つあるが、大広間を含む三つは隣接していて、宴の規模に合わせて広間を拡げることができるらしい。
この一番小さな広間だけ、他の広間から少し離れていて、出入りする場所も限られている。
つまり、警備を厳重にしなければいけない場合や内緒で何かをやる場合に使われるのだ。
「あら、ネマ?」
「ん?おねえ様??」
そんな広間の前に、おしゃれしたお姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんも今日は学術殿のお友達のお茶会に行くって言ってなかったっけ?
不思議に思って聞いたら、お姉ちゃんのお茶会の会場もここだと言う。
「今、外出するのは危険だから、宮殿に場所を借りたと書いてあったのよね。国賓であるわたくしの安全を配慮するのは当然だから、疑わなかったのは失敗だったわ」
本来であれば、会場が宮殿内の広間だということに疑問を抱かねばならなかったのに、お姉ちゃんはそれを見逃してしまった。
私だったら、そこまでしなくてもいいのになぁって思っちゃうわ。
「では、油断せずにいきましょう。パウル、いいわね?」
「もちろんでございます」
お姉ちゃんもわかっているのだろう。
パウルがお姉ちゃんに一言も忠告しなかったってことは、ただ場所がちょっと変わった、普通のお茶会だということが。
「扉を開けてちょうだい」
開いた扉から一歩広間に踏み入れると、なぜか盛大な拍手で出迎えられた。
これには私もお姉ちゃんもぽかーんだ。
「主、口……」
くそっ、森鬼め。お約束をマスターしやがって……。
私の口を閉じようと伸ばされた手を制し、会場内に目をやる。
たくさんの見知った人たちと、素朴感のある飾りつけ、アットホームな空気すら感じる空間に首を傾げる。
「ふふふ、驚いた?」
マーリエが嬉しさを隠しきれない笑顔でやってきた。
「すごくびっくりした……」
「ネマを驚かせようと思って、皆様に協力してもらったのよ」
一番最初にマーリエが協力者として紹介してくれたのが、お姉ちゃんのお友達の侯爵令嬢だった。
お姉ちゃんはライナス帝国に残ることになっているが、一ヶ月ほど学術殿をお休みして、私たちと一緒に帰省する。
なので、お姉ちゃんもお友達も呼んで、合同の送別会を計画したと。
「とは言っても、招待客を選別したのは、ネマのところのパウルだけどね」
やっぱりパウルもグルだったか。
まぁ、パウルじゃないと、私たち姉妹の交友関係を完全に把握するのは難しいだろうしね。
「ひんぱんに遊びにくると言っても、なかなか会えない人もいるでしょう?だから、いっぱいおしゃべりして帰りなさい!」
あのツンデレのマーリエが、ここに来て最大のデレを見せてくれるなんて!!
「マーリエ!大好きっ!!」
感動のあまりマーリエに抱きつくと、知ってるわよとツンを発動された。
◆
マーリエの案内で、まずは皇族に挨拶をしにいく。
「一応、太上陛下と皇太后様にも招待状を送ったんだけど……年寄りがいては寛げないだろうって断られたの」
先帝様と皇太后様にはすでに退去の挨拶は終えているので、会えなくても大丈夫といえば大丈夫だが。
「わかった。帰る前にお手紙でお礼を伝えておくね」
お礼を伝えるくらいなら、くどくはならないだろう。
「クレイリス殿下、エリザシエラ殿下、ダオルーグ殿下。ネマが到着いたしました」
おぉ……マーリエがダオを殿下って呼ぶの、なんか新鮮だな。
「ネマ様、帰ってしまうのは淋しいわ」
エリザさんにそっと抱きしめられ、嬉しいやら、畏れ多いやらで、どう反応していいのかわからない。
「エリザ、ほどほどにしておけ」
そう言って、クレイさんが引き離してくれたので助かった。
「クレイ様……なんかやつれた?」
クレイさんに会ったのはヘリオス伯爵にさらわれる前なので、二ヶ月も経ってないのに頬がげっそりしている。
「兄上の尻拭いでちょっとな。それより、無事に帰れることになってよかったな、ネマ」
クレイさんが頭を撫でてくれたが、それよりもクレイさんの言葉が嬉しかった。
みんなが淋しがったり、惜しんでくれるのも嬉しい。私を受け入れてくれている証拠だからね。
でも、お家に帰れるようになってよかったと言われるのはもっと嬉しい。
初めて言ってくれたのは皇太后様だったけど、そのときに、私がお家に帰れることはよいことなんだって気づいた。
当たり前といえば当たり前なんだけど、私の身の安全が確保できるようになったから、家族と離れて過ごす必要はなくなったってことだもんね。
「うん、ありがとう!でも、すぐ遊びにくると思うよ。まだ帝都の観光もしていないし」
帝都で食べ歩きツアーするのもいいよねー。
「えぇ!?まだ帝都を見てないの?」
エリザさんが驚いていたので、理由を説明した。
「クレイ兄上、さっさと獣人に吠えかかっているおまぬけさんたちをどうにかしなさい!」
「私は兄上の尻拭いで忙しいと言っているだろうが。エリザが動く方が早いんじゃないか?」
「……それもそうね。ネマ様が次に来られるときには、すべて大人しくさせておきますわね」
エリザさんがどんな方法で何をするのかは、恐ろしくて聞けなかった。
「じゃあ、そのときはダオとマーリエに案内してもらいます!」
エリザさんに気後れしてか、大人しくしているダオだったが、急に名前を呼ばれてキョトンとする。
「それはいいな。では、ダオの次の公務は帝都の視察にしよう。ネマを案内できるよう、帝都の地理を学んでおくんだ」
「……やります!」
勝手にダオの公務を決めてしまって大丈夫なのかな?
まぁ、ダオがやりたいならいいけど……。
「そういえば、アイセ様はどうしているんですか?」
神様降臨の遺跡を出てから、一度もアイセさんの姿を見ていない。
最初は謹慎していると聞いたけど、もう結構時間が経っている。
「アイセは、ちょっと危険な場所に修行に行っている」
「本当、あの子もおまぬけさんよ。己の力量も弁えず、首を突っ込んだのだから仕方ないわ」
エリザさん、おまぬけさんって言い方にハマってんのかな?
エリザさんが言うと、可愛らしく聞こえるからアリだけど。
二人の話を要約すると、アイセさんは二重スパイみたいなことをしていたが、技術が足りずに中途半端な結果になってしまったと。
アイセ様をヘリオス伯爵側の人間だと思っている人が多いため、ほとぼりが冷めるまで修行するらしい。
なんの修行かはわからないが、クレイさんが危険っていうことは、そこそこ身の危険があるはず。
無事に戻ってこられるといいが。
クレイさんとエリザさん、それぞれの警衛隊の皆さんに別れの挨拶をして離れるとき、ダオをこちらに連れてきた。
エリザさんの様子から、ダオにちょっかいかけそうだったし。
会場を回っていると、軍部の獣人さんたちと遭遇した。
ダオ主催の宝探しゲームに協力してくれた人たちだ。
なぜか話の流れで、大人の獣人でも体を使って遊べるものを作って欲しい、という無茶振りをされる。
なんか、羽子板の話が軍部にまで広がっているらしい。
大人でも遊べるかぁ。羽子板を作ったし、今度は蹴鞠にでも挑戦してみるべき?
とはいえ、鞠の作り方とか知らないので、職人さんに丸投げするだけだけど。
いい案を思いついたら教えることを約束する。
「またそうやって安請け合いして」
「でも、ネマの面白い遊びを考えつく才能は凄いよ!」
マーリエとダオ、それぞれの言葉に良心が痛む。
特にダオ、才能だと褒めてくれたけど、全部地球からの輸入だから!
話していいってお許しが出たら、前世にことも全部話すからね!
「二の姫様」
そういえば、姫様と呼ばれるのもいつの間にか慣れたなぁ。
「レイリウスさんにカルンステさん!お久しぶりです」
私を呼んだのは、捜査班のエルフのお二人だった。
「レイリウスさん、お忙しいんですか?元気ないみたいですけど……」
エルフ独特の笹穂耳が、ちょっとヘタっているような気がする。
「先日までガシェ王国の方にいたので、慣れない環境で疲れたのかもしれません」
「もしかして……プシュー作戦からずっと?」
まさかと思って聞いてみたら、そのまさかだった。
レイリウスさんの班は、プシュー作戦後の捕らえたルノハークの引き渡しだとかの件でガシェ王国に派遣されたんだって。
尋問のお手伝いしているうちに、ずるずると滞在期間が延びて、数日前に帰国したばかりらしい。
「我が国にご助力くださり、ありがとうございます。オスフェ家を代表して、お礼申し上げます」
王様かオリヴィエ姉ちゃんあたりがお礼を伝えているとは思うけど、あとでガシェ王国で頑張ってくれていた軍人さんたちにボーナス支給できないか聞いてみよ。
「いえいえ。エルフの手助けが必要なときはいつでも呼んでください。そうすれば、二の姫様の尊いお姿が拝見できますので!」
レイリウスさんのちょっと興奮した声に、カルンステさんも深く頷く。
そうだった……この人たち、私に群がる精霊を愛でる会の人たちだったわ。
ちょっと感動してたのにぃぃぃ!
レイリウスさんの様子が怪しくなってきたので、しれーっとバイバイする。
「エルフから人気があるとは聞いていたけど、噂は本当だったのね」
「うわさ?」
マーリエが聞いたという噂は、エルフの軍人たちが私を精霊並みに敬っているというものだった。
「ハハハ……なんでだろうねー」
私が精霊ホイホイだからだなんて、誰も思わないよねぇ。
はぁ……私も早く精霊が見られるようになりたい。
「あ、いた!ネマ様ー!」
ブンブンと手を大きく振っているのはミーティアちゃんだった。
「ミーティアちゃん!みんなも!」
ミーティアちゃんの周りには、宝探しゲームで一緒になった面々が揃っていた。
「ネマ様、お国に帰ってもてがみは送ってもいいですか?」
「もちろん!それに、ミーティアちゃんの領地に遊びにいく気満々だよ」
他国の貴族との交流という大義名分があれば、パパンも外泊を許可してくれるはず。
ミーティアちゃんの領地で行われている遊びも気になっていたし、うちの魔物っ子たちも思う存分駆け回れそうだし、行かないという選択肢はないのだよ。
「ほんとですか!おとう様もおかあ様もよろこびます」
ミーティアちゃんの尻尾がピーンってなっていて、本当に喜んでくれていることがわかる。
「そういえば、アイリーナちゃんとユアン君は大丈夫だった?獣人がおそわれたりしていたんでしょう?」
私が熊族のアイリーナちゃんと鸇族のユアン君に尋ねると、二人は互いに顔を見合わせて笑った。
「おれたちの父親が軍人なのは知っているだろ?」
あの宝探しゲームは、子供たちが他種族と交流する目的があったけど、試験的な試みだったために、貴族や軍人、宮殿で働いている人の子供を集めたものだった。
アイリーナちゃんとユアン君の父親は、宝探しゲームでは他のチームの監視役をしていたのだ。
「軍は希望すれば、配属先の詰め所の隣にある宿舎に家族で住めるの」
なので、アイリーナちゃんもユアン君も、軍人が常時待機している詰め所の隣に住んでいるから、どの地域よりも安全なんだとか。
「まぁ、たまに変な奴が詰め所に来るけどなー」
ユアン君の言葉に、つい交番を連想してしまった。
交番の隣であれば、防犯としては強いだろうが、夜中に酔っ払いの騒ぎとか聞こえてきそうだなって。
「フェリス君はどう過ごしてた?」
フェリス君は子爵家の子息で、マイペースな性格だから、今も自分だけちゃっかり飲み物を手にしている。
「僕は学術殿に入学する準備をしているんだ。できれば、最上学術殿に入りたくて」
フェリス君の発言にみんなが驚く。
そりゃあ、ライナス帝国で一番入るのも出るのも難しい学校だからね。
その分、好きなことを本格的に学べるらしいけど。
「あの……ネマ様」
ルネリュースの妹さん……名前なんだっけ?
私の焦りを察知したマーリエが、小さな声で教えてくれた。
あぁ、そうそう。ルネステルちゃんだ!
「ルネステル様、どうしたの?」
ルネリュースが訝しむような目でこちらを見ているので、私が妹さんの名前を覚えていなかったのがバレたかも。
だってさ、家名のベーグルの方が覚えやすいんだもん。美味しそうで。
「今度、我が家にも遊びにきてください。うちのカーギーとネマ様のところの子たちと遊ばせたいです」
なんと嬉しいお誘い!
うちの子たち魔物だけど、魔物に慣れる訓練していない子と遊んでも平気なのかな?
「ぜひお伺いしたいです!ただ、うちの子たち、ごえいの訓練を受けているので、普通の子は怯えるかもしれないんだけど……」
一応、ダメだったらごめんねと、予防線を張っておく。
「そういう訓練もあるんですね」
ベーグル侯爵家のカーギーはご令嬢のペットとして飼育されているみたいだから、基本的な躾しかしていないのだろう。
カーギーは名前はコーギーに似ているが、まんまミニチュアダックスフンドな種類なので、護衛ではなく、猟犬向きなんだよね。
「ルネリュースの護衛として、もう一匹おねだりしてみるのもいいかもよ?カーギーの遊び相手が欲しいんでしょう?」
一頭飼いだと、やっぱりお友達とか作ってあげたくなる気持ちはよくわかる。
貴族の屋敷で飼われているなら、散歩の途中でご近所のわんちゃんに会う、なんてこともないだろうし。
「ルネステル、お父様に相談してみよう」
「いいのですか?お兄様が怒られるかもしれませんよ?」
「いいんだ。俺もルネステルと遊びたいから」
それを聞いて、ルネステルちゃんが嬉しそうに笑う。
見ているこっちまで微笑ましくなる光景だよ。
それを見たアイリーナちゃんは腕を組んで、何やら真剣に考え込む。
「やっぱり定期的にみんなに会いたいよね」
「おれたちはすぐに会えるけど、ネマ様たちはむずかしいだろ」
ユアン君が無理を言うなと、アイリーナちゃんを窘めた。
「それなら、帝都のベーグル家の屋敷に集まればいいんじゃないか?たまに……二巡に一回ならお父様も許してくれるはずだ」
ルネリュースがそう提案してくれたが、アイリーナちゃんとユアン君は戸惑っている。
「おれたちは平民だから……」
「そうよ。手紙もいつ届かなくなるかもって思って出しているのよ?」
ふむ。みんなが集まれる場所……つまり、前世でいう宴会場みたいなものがあればいいってことだよね?
「私の名前で帝都の建物を買うことってできるのかな?」
「まさか、買うつもりなの!?」
私の質問にマーリエを始め、みんながびっくりした顔になった。
「これから先、宝探しをしたときのような交流会が始まるわけでしょう?そうしたら、私たちと同じように、仲良くしたいけど、身分の差もあっておしゃべりする機会がない子たちが増える」
私の名義で不動産を買うのが無理なら、オスフェの事業としてやるのもありだな。
題して、宴会場レンタルスペースだ!
そういった場所を作りたいと言ったら、ダオとルネリュース双方から法律上難しいと言われた。
相続などでの名義変更はできるけど、他国の者の場合は審査もあって、基準が難しいんだって。
「じゃあ、国に作ってもらうのはどうかな?一応、前回の交流会はダオの公務だったわけだし」
他種族交流会の一環として、その後の交流の機会を持つお手伝いっていうふうにすれば、陛下も承諾してくれるんじゃないかな?
「うーん、朝議に通るかは半々だと思うけど、やってみる価値はあると思う」
交流会参加者からの要望とか出せば、もっと通りやすくなるかも!
「のんびりやろうよ。殿下や姫様だって他のご公務があるし、僕たちもやることがあるでしょう?」
フェリス君の発言にハッとさせられた。確かに、と。
「もし、ユアンたちがルネリュース様と連絡取れなくなったら、僕が仲介するよ。子爵って位は真ん中だからちょうどいいでしょう?」
フェリス君の最後の一言に、みんなが微妙な顔をする。
庶民からすれば子爵も十分お貴族様だし、侯爵家から見れば子爵は下位貴族にすぎない。
でも、そう見るのであれば、真ん中といえば真ん中なのか。どちらにも融通が利く的な。
とりあえず、みんなでじっくりレンタルスペースの企画を練ろうではないか!
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、この奇妙なお茶会も終わりの時間を迎える。
「ネマにあげるものがあるの」
マーリエから渡されたのは一冊の本。
「まさか……もうできたの!?」
慌ててページを開くと、この前に見た、ダオの絵が目に飛び込んでくる。
いつの間に製本まで!?
「まだ一冊しかできていないけど、これはネマに持っててもらいたいんだ」
カラーの製本魔法は手順がくそ面倒臭い上に、規制があるために手続きもくそ面倒臭かったはず。
「ちょっとお父様に手伝ってもらったのよ」
マーリエ父が動いたのであれば、手続きはどうにかなるかもしれないが……。それでも、今日に間に合わせるには、ダオもマーリエも大変だっただろう。
「ありがとう!大切にする!」
ママンにお願いして、数百年は解けない保存魔法をかけてもらって、オスフェ家の家宝にするわ!!
あぁ……本当に、ずっとダオとマーリエと遊んでいたかったな……。
「ちょっとネマ、こんなところで泣かないでよ……」
マーリエも徐々に何かを堪えている声になる。
「ネマは気にしていないようだったから、大人だなって思っていたのに」
ダオはちょっと拗ねたような声だった。
「へいきなわけないじゃんぅぅぅ……」
私だって二人と離れるのは淋しいんだぞー!!
ガシェ王国に帰るぞー!!




