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宮殿で宝を探すぞ!

やって参りました!宝探しゲームの日!!


「ちょっとネマッ!!なんなのよこれはっ!!」


「今日はこの衣装が絶対ですっ!」


「あ……足を出すなんて……淑女としてあるまじき行為だわっ!」


そんなことありませーん。

ちゃんとそこら辺も調べて作ってもらったもの!

ライナス帝国の文化では、十二歳以下の婚約者がいない女子は(くるぶし)上を見せても問題ないって。

まぁ、大人と同じ露出を控えるべし!って風潮はあるけど。

なので、半ズボンではなく七分丈のズボンにした。

あとは靴下も作ってもらったので、ほぼ肌の露出はないと言っていい。残念だ……。


「はい、帽子かぶって完成!うんうん、かわいい!」


思った通り、二人とも凄くよく似合ってて可愛い!

ウエストポーチには冒険の必須アイテムをいくつか入れており、水筒も持った。


「準備はよろしいですね。こちらが地図になります」


パウルが地図を広げて見せてくれる。


「捜索できる場所は、東翼の二階と三階。そして、大庭園の一部です」


地図というよりは、宮殿の間取り図だな。


「この塗り潰してある場所は部屋?」


その間取り図に、二ヶ所ほど真っ黒に塗られている部分がある。


「そちらは立ち入り禁止です。理由はテオヴァール殿下の趣味のお部屋だからです」


パウルの説明に、ダオがあぁと妙に納得した声を出した。


「テオ兄上、変な武器をいっぱい保管している部屋を持っているんだって」


「変な武器?」


「形が変だったり、使い方が変だったり、とにかく変なんだって」


そんな面白そうな部屋が!


「あ、ネマ、だめだよ。その部屋はテオ兄上がいないと扉が開かないようになっているから」


ダオにもわかるくらい、私が何かやらかしそうな顔をしていたのだろう。

でも、変な武器ってちょっと……いや、かなり気になるよね!


「じゃあ、今度テオ様にお願いしてみる!」


「話が逸れているわよ、ネマ」


マーリエに言われたので、私はごめんと謝ってからパウルの説明を聞く。


「この範囲内に宝物がある場所の手かがりを隠しました」


「もしかして、これも手がかりかな?」


ダオが間取り図の片隅に書かれている文章を指差す。


「はい。最初の手がかりが『女神が示す方を見よ』です」


「じゃあ、早速行ってみよー!!」


意気揚々と出発しようとしたら、パウルに止められた……。出鼻をくじかないでよ!


「ウルクとイナホをお連れください」


ウルクは陛下からの下知がされたようだけど、稲穂も?

困惑しながら、稲穂のショルダーバッグを用意しようとしたら、それはいらないと言われた。


「でも……」


宮殿の人たちがびっくりするだろうし、キュウビが出たって大騒ぎになりそう。


「大丈夫です。それと、スピカは再教育で、シンキには補佐をしてもらいますので同行できません」


「あ、うん。ほどほどにね」


パウル一人でも厄介なのに、森鬼も加わるとは。スピカ、生きて帰ってくるんだよ!


というわけで、今日は魔物っ子たちとウルクと海が護衛としてついてきてくれることになった。

ダオのところはお馴染みの隊長さんと顔見知りの隊員さん。

マーリエにはお世話係の侍女が同行することに。


「異様な光景なのに、受け入れられる自分が信じられないわ……」


星伍と陸星が先頭を行き、ぞろぞろと歩く私たち一行を見て、マーリエが呟いた。


「貴女も、怖かったら距離を取っても大丈夫よ?」


マーリエはそう言って、侍女への気配りも忘れない。

やっぱり、襲われないとわかっていても、ムシュフシュとキュウビがいたら怖いよね。

尻尾の先にスライムをくっつけているウルクと、はしゃいで星伍と陸星にちょっかいを出しまくる稲穂を見る。

怖い……かな??


「大丈夫です!」


私も侍女さんが怖がっていたらと思ったけど、意外と元気な声が返ってきた。

同僚たちに自慢できるって、逆に喜んでいるのはびっくりだけど。


「それで、ネマは手がかりについて何かわかったの?」


ダオの質問に、私はもちろんと自信満々に返す。


「女神様の絵が飾られている部屋があるのよ!」


「そういえば……」


ダオも覚えがあるのだろう。

ただ、どの部屋だったのかは忘れちゃったのかな?

その絵がある部屋に到着すると、ダオは思い出したと手を叩いた。


「大叔母様が使っていた部屋だよ」


確か、先帝様には妹君がお二人いたそうだから、元皇女様のお部屋だったってことか。

ちなみに、その二人の元皇女様は先々代の皇帝が崩御されたときに、皇族から抜けられている。

ダオが生まれるずっと前のことなので、大叔母さんたちには数回しか会ったことないらしい。


「それで、女神が示す方って……」


壁に飾ってある女神様の絵は、片方の手は何かを指差し、反対側の手には錫杖(しゃくじょう)っぽいものを持っている。

女神様を描いた絵は、世界を持っていたり、死者の魂を導いたりするものが多いので、これはちょっと珍しいな。女神様の顔もちょっと違和感あるし。


「題名が……神罰って……」


この指の先に、神罰を受けている誰かがいるってことだよね?

ちょっと怖い絵だなぁ。


「この先って……本棚?」


女神様の指差す先には、お洒落な本棚があった。

女性が好みそうなデザインで、飾り棚も兼ねているのか、年代を感じる骨董品も飾られている。


「とりあえず調べてみよう!」


その本棚、特に飾られていた骨董品は丁寧に調べてみたけど何も出てこない。


「うーん……マーリエ、女神様の前で同じ格好をしてみて」


「同じ格好?……こう?」


絵の前で、マーリエが本棚の方を指差す。

私は絵と見比べながら、立つ位置や腕の角度を修正。


「じゃあ、ダオはこのマーリエの前から真っ直ぐ本棚に向かって歩いて」


ダオは不思議そうな顔をしつつ、言われた通りにしてくれた。

まるで線の上を歩いているように、真っ直ぐ歩くダオ。

本棚の前に到着し、どうするのか聞いてきた。


「ダオの視線より上の段に、女神様に関係する本がないかな?」


「えーっと……あ、これかな?『女神に愛された娘は本当の愛を知る』っていう題だけど」


女神様に愛された娘って、大聖女様のことだよね。

まずはその本を見てみることにしたんだけど……。


「マーリエが好きそうな本だね」


「そ、そうね……」


冒頭を読んだダオの言葉に、私は思わずマーリエを見た。


「何よ?」


「恋愛ものなんて読むの!?」


「失礼ね!読むわよ!昔の名作から最近の流行りものまで読んでいたら悪い?」


マーリエの新たな一面を知ってしまった。

そうかそうか。恋愛ものが好きなのか。


「じゃあ、今度私のおすすめ教えるから、マーリエのおすすめも教えてね!」


「わたくしからしたら、ネマが恋愛の物語を読んでいることが驚きなのだけど……」


確かに、私が読んでいる本は冒険ものや歴史・時代ものが多いけど、中には恋愛が絡んでくる話もそこそこある。

特に歴史ものなんて、泥沼な人間模様だったりするから面白い。


「マーリエ、ネマ!次の手がかりがあったよ!」


私とマーリエがおしゃべりをしている間に、ダオが本の中からメモ紙を発見した。


「なになに……『ライナーシュの花、ライナスの顔、一人だけが知っている』?」


メモを読みあげると、一つ目の手がかりよりも意味がわからないことが書かれていた。

ライナーシュはライナスの語源であり、一夜にして消え去ったという伝説の花だ。

フィリップおじさんが聖獣から預かったと、アリさんがいる山から持ってきて、今は繁殖のために厳重に管理されてる。


「ライナーシュの花はわかるけど、ライナスの顔ってなんだろう?」


「女神が絵画のことだったから、これも絵の題名じゃないかしら?」


マーリエはそう言うが、マーリエ自身もそんな題名の絵には心当たりがないそうだ。


「もしかしたらこれ、金貨のことじゃないかな?」


ダオの発言に、私とマーリエはあっと声を揃えた。

確かに、金貨の表には製造されたときの皇帝陛下の横顔、裏には国花であるライナーシュの花が刻まれている。


「金貨だとしても『一人だけが知っている』の部分がわからないんだ……」


「……わたくし、わかったかも!ついてきて!」


マーリエが部屋から飛び出していった。私たちも慌ててあとを追う。

マーリエが目指したのは、なんと!マーリエ父の部屋だった!

扉の前で、何度も深呼吸して気持ちを落ち着かせようとしているマーリエ。

きっと、心の中で迷惑じゃないかとか、いろいろ考えているのだろう。

二人の親子関係はだいぶ改善したとはいえ、まだ自分から行動を起こすのは緊張するよね。


「マーリエ、大丈夫だよ」


「……うん」


私が励ますと、マーリエは意を決して扉を叩く。


「あの……お父様はいらっしゃいますか?」


扉を開けたのはマーリエ父の侍従さんで、中でお待ちをと通してくれた。


「マーリエ、それにダオとネフェルティマ嬢もよく来てくれた。そちらが噂のムシュフシュとキュウビか……」


ウルクは下知があったので噂になっていてもおかしくないけど、稲穂まで何か噂されているの?


「ミルマ国で仲良くなったウルクと、稲穂はへいかとヘリオス領を見にいった途中で仲間になったんです」


「あぁ、あのときの」


マーリエ父がちょっと遠い目をする。

あのときは陛下だけでなく、ルイさんとテオさんも同行したから、宮殿に残っていたマーリエ父が大変だったとあとから聞いた。

その大変だったことを思い出しちゃったのかも。


「それで、今日はみんなで宝探しをしてて……」


最初の手がかりから次の手がかりを見つけ、マーリエが何か心当たりがあるようなので来たと説明する。


「セリューから話は聞いている。好きに探すといい」


マーリエ父は快く承諾してくれた。

家主がいないのも困るが、いる前で家探しっていうのもやりづらい……。

うっかり高いものを壊したりしたら……恐ろしい!


「あの……お父様が集めている金貨を見たいのですが」


「あぁ、いいよ。こっちへおいで」


マーリエ父は別室へ案内してくれたんだけど、これまたその部屋が凄かった。

部屋の壁一面にたくさんの絵画が飾ってあり、博物館などで見かける平面のショーケースがいくつも設置されている。


「私が個人的に蒐集している、歴代皇帝に関するものを保管している部屋だ」


「個人的に?」


歴代皇帝のものを皇族が集めているのが不思議だ。


「あぁ。ほとんどのものは、当時を知る資料として、展示されていたり、厳重に保管されている。ここにあるのは、趣味で描いた絵や自作の魔道具といった……本来であれば見られたくないと思われるものが多い」


凄く言葉を選んだようだが、まぁ理解はできた。

言うなれば、ご先祖様の名誉のためにも、世に出さない方がいいものってことだよね?

もし、私の下手な絵が子孫によって公開されたりしたら……恥ずかしすぎて死ねる!


「金貨はこっちだ」


部屋の中央にある一番大きなショーケースを覗くと、ずらりと並ぶ金貨が!


「凄い!これ!ロスラン皇帝時代の金貨だ!」


ダオが興奮して指差す先には、ショーケースの中なのに、ケースに入れられた金貨があった。


「へぇー。そんな古いものが残ってるってすごいねー」


本当はダメなんだろうけど、ショーケースに張りついて金貨を眺める。


「でも、これは横顔じゃないんだ」


他の金貨と比べるとサイズが少し小さい。裏面はデザインこそ違うが、ライナーシュの花なのは今と同じだ。

違うのは表面。他のは全部横顔なのに、これだけ何かの紋章が描かれている。

この絵柄、どこかで見たことあるような?


「ロスラン陛下は肖像画すら描かせなかったくらい、自分の姿を残すことを酷く嫌がったので、金貨には彼が使用していた紋章を用いたそうだ」


気持ちはわからんでもない。

写真なら現実として受け止められるが、絵だと美化しすぎじゃね?といつも思ってしまう。


「ライナス帝国の紋章とも違うのね」


マーリエがそう呟くと、マーリエ父は金貨が見えるようにと彼女を抱き上げ、紋章のことを教えてくれた。


「ロスラン陛下の手記に、自分だけがこの紋章を使う資格があると書かれている。その資格がどういうものなのかは解明されていない」


紋章を使う資格?

普通は、家の紋章だったり、所属している組織の紋章だよね。

ロスランって、何か秘密組織の生き残りだったりして……。

それはそれでロマンがあるな!!


「あ、あったわ!手がかりに書いてあった『一人だけが知っている』ってこの金貨のことじゃない?」


そこには十三代皇帝ペールドゥと記された金貨があった。


「前に、お父様が話してくれたことがあったでしょう?一人だけ顔の向きが違う金貨があるって」


「よく覚えていたな」


マーリエ父にとっては世間話的な感じだったのかもしれないけど、娘が些細な会話を覚えていてくれたのが嬉しかったみたい。

自然な感じでマーリエの頭を撫でている。

娘のマーリエからしたら、父親が好きなことだから覚えていたと思うけどね。


「じゃあ、この金貨の顔が向いている先に、次の手がかりがある?」


ダオが金貨の顔と同じ方向を向く。

私もそっちを見てみるが、平面のショーケースと壁の絵しかない。

さっきは本棚だったから、今度はショーケースに隠してあるのかと探しても見つからず。

じゃあ、絵の題名かと、その並びの絵を調べてもヒントっぽい題名のものはなかった。


「トゥーエン様、この部屋に隠し扉とかありませんか?」


「さすがにこの部屋にはないな」


別の部屋ならあるんだ!

ちょっとワクワクしてしまったが、気を引き締めて、手がかりの捜査に当たる。


「ペールドゥ皇帝の金貨のことではなかったのかしら?」


「ライナスの顔とライナーシュの花の条件がそろっているから、金貨であっていると思う」


マーリエがしょんぼりしてしまったので、金貨で間違いないと太鼓判を押す。


「トゥーエン伯父上、ペールドゥ皇帝のお名前の意味をご存じですか?」


「ペールドゥはマカルタ語で『(みち)』という意味だ」


マーリエ父の答えを聞いたダオは、真剣な表情で考え込み始めた。

ちなみに、私はマカルタ語と聞いてもラーシア語の原型とされる古語としかわからないし、路と言われても何も閃かない。

待てよ……やっぱり顔が向いている方に隠し通路があったりして!

それか、大庭園に行く道っていう可能性も……。


「大庭園に次の手がかりがあるかもしれない」


「私もそう思った!とにかく行ってみよう!」


意見が一致したので、マーリエ父にお礼を言って、大庭園へ向かうことにする。


「気をつけて遊ぶんだぞ」


「はい。お父様、ありがとうございます」


廊下まで見送りにきてくれたマーリエ父に手を振って別れる。

少しでも父親と過ごせて、マーリエも嬉しそうだ。


「建物から大庭園に行く道の途中にあると思うんだけど、ダオは何か気づいた?」


「僕は水路だと思ったんだ。皇帝はみんな水の聖獣の契約者だから、水と深い関わりがあるでしょう?」


ふむ。言われてみれば、歴代の皇帝はザ・水属性って感じだわ。

大庭園の中央には大きな噴水があり、そこからいくつも水路が引かれている。

今回、範囲に指定された大庭園の一部は端っこの方で、細い水路が一本流れていたはず。


「あんまり大庭園で遊ばないからちょっと新鮮」


まぁ、大庭園は綺麗すぎて、遊び場とするには気が引ける。

いつも遊んでいる庭は宮殿東翼の裏側にあたり、先帝様と皇太后様が子供がいろいろと遊べるようにと整えた庭だそうだ。

だから余計なものがなくて、走り回れるようになっている。


「あ、あの水路かな?」


大庭園の端っこまでくると、細い水路があるのがかろうじてわかった。


「これは水路と言っていいの?」


大庭園の中央部の水路とはかなり(おもむき)が違うため、マーリエは不思議そうに見ている。


「水が少しでも流れているんだから、水路でいいんじゃないかな?私は風流で好きよ」


あえての演出だと思うが、水路のほとんどが苔に覆われていて、苔玉を避けるように蛇行しながら細い水が流れていた。

水路だけなら、日本庭園みたいな静謐(せいひつ)な美しさを感じる。


「とりあえず、水路をたどってみよう」


ダオに続いて、水路の横を歩いてみる。

特にこれといったものは……あったわ!


「ねぇ、あの石変じゃない?」


水路の中にぽつんとある石。周りから凄く浮いている。

苔が付着していないし、置かれた時期が新しいのだとわかった。


「本当だ。あれ?先にも同じような石があるみたいだよ?」


ダオが駆けていき、見つけた石の場所でほらっ!と大きな声をあげる。

水路をそのまま捜索したところ、合計六つの怪しい石を見つけた。

私はしゃがんでその石を取ろうとしたところで、あることに気がつく。

水路の(ふち)に手を置いて体を支えないと、石に手が届かない。でも、縁に手を置くと苔を潰してしまう。

せっかく青々と育っている苔を傷めてしまうのは忍びないので、私は水路を跨いで真上から取る方法に変えた。


「ネマ!やめなさい!」


水路を跨いだ瞬間、マーリエに引き戻されてしまった。


「危ないし、なんと言ってもはしたないでしょう!!令嬢がおお……足を広げるなんて……」


顔を真っ赤にしながら怒っているのかと思ったら、うっかり下品な言葉を使いそうになって恥ずかしいらしい。


「え、これくらい……」


「だめよ!殿方の目もあるのだから」


ダオも警衛隊のみんなもマーリエの肩を持つので、真上から取る方法は諦めるしかなさそうだ。


「それに、石を取る前に、場所に印をつけておいた方がいいと思う。もし、この石が手がかりではなかったら、元に戻さないといけないし」


あ、そうか。手がかりじゃなかったら、庭師があえて置いたってことだもんね。

うーん、どうやって庭を傷つけずに印をつけるのか?


「閃いた!星伍、おいで!」


星伍を呼び寄せて、私だけ水路を渡る。そして、私、石、星伍の鼻先が直線上になるよう調整。


「星伍、伏せ。そのまま待て!」


次の石の場所でも同じように陸星を待機させ、白、グラーティア、ノックス、稲穂と魔物っ子たちを目印にした。


「動いちゃダメだからねー!じゃあ、海。石を全部水で取ってくれる?」


「……わかった」


海はちょっと眠たそうだ。

この大庭園の端っこはこの時間日陰だし、ポカポカ陽気と水のせせらぎでお昼寝には最高のロケーションだもんね!ねっ転がりたいの我慢しているんだろうなぁ。


海が水路の水を操り、石を地面へと運ぶ。

早速石を観察するが、本当に普通の石だ。


「これだけ軽い?」


しかし、一つだけ明らかに軽い石があった。見た目は他の石と似ているけど、成分が違うのかな?

手の上でちょっと転がしてみる。

ダオとマーリエにも順番に回した。


「あら?これ、中が空洞みたいよ?」


「なんでわかったの?」


「わたくしが土属性持ちだってこと言わなかった?」


聞いたっけ?

私が魔力極小すぎて、魔法の話をあまりしないから、たぶん聞いてないんじゃないかなぁ?

ダオが風属性持ちなのは知っているけど。


「土の魔法で中がわかったってこと?」


「これくらいなら、持っただけでわかるわよ」


そうなのか。土魔法は奥が深い。

中が空洞なら、何か入っていたりするかもしれない。

そう思って、耳の近くで石を振ってみたけど、変わった音は聞こえなかった。


「仕方ない。石を割ろう!」


うさぎさんリュックから短剣を出して、鞘を外そうとしたら隊長さんに止められた。


「小さいものを壊すのは技量が必要です。ここは、マーリエ姫様のお力をお借りした方がよろしいかと……」


むぅ。でもまぁ……目標からズレて自分の足を刺す可能性はわずかだけどある。隊長さんの忠告は素直に受け入れるべきだな。


「わかりました。マーリエ、お願いしてもいい?」


「いいわよ。でも、この貸しは高いから」


私が借りるのやめようかと思う間もなく、マーリエは魔法を放つ。


『砕石』


その瞬間、マーリエの手の中にあった石が、八つに割れた。


「手がかり、あったわね」


石の中にはメモ紙が入っていた。それをダオが取り、読みあげる。


「『すべてが繋がる場所』だって」


すべてが繋がるねぇ。これまた抽象的な……。


「今までの手がかりや答えが繋がるってこと?」


女神様、大聖女、ライナスの顔、ライナーシュの花、金貨、ペールドゥ皇帝、水路……今までの手がかりと答えを思い浮かべても関連性は見つけられない。


「ライナス帝国の歴史とか?」


ライナス帝国の歴史は長すぎるので、私は広く浅くしか勉強してない。直近五代の皇帝を覚えていれば困らないしね。


「ライナスで聖女と言えば、ザイシウェルの聖女リリーだけど、ペールドゥ皇帝の時代じゃないんだ」


あぁ、大聖女のあとの女神様のお気に入り!

じゃあ、やっぱり関連性はないのかな?だとすると、何を繋げればいいんだ!?


私たちがうんうん頭を悩ませていると、待機を解かれた魔物っ子たちは元気に遊んでいる。

星伍の尻尾を追いかける陸星、陸星の尻尾を追いかける稲穂。なんだか電車ごっこをしているようにも見える。

今度、線路として縄梯子を用意してあげようかな?

それとも、ムカデじゃんけん……って、魔物っ子たちはじゃんけんできないや。

待てよ。スライムたちなら、どんじゃんけんをアレンジしたらやれるのでは?

線の上を………………。


「あぁぁぁーー!!」


「びっくりしたー」


私が急に大声を出したもんだから、何事かとみんなの視線が集まった。


「あの地図に線を引くんだよ!」


地図というか間取り図だけど、手がかりがあった全部の場所を線で繋いで、線が重なった場所に宝物があるんじゃないかな?

そう説明すると、二人も理解してくれた。


「でも、ここでは線を引けないわ。移動しましょ」


ひとまず、一番近くの東屋(あずまや)に行って、地図を広げる。

筆記用具はあるんだけど、定規がない。

真っ直ぐな線が引けるもの……と考えていたけど、この地図自体で定規の代用にできるじゃん!


私はまず、女神様の絵があった部屋とマーリエ父の部屋が一直線になるように折る。ちょっと折りづらいな。

この折れ目が線代わりにもなるので、しっかりと折って跡をつけた。

次は、マーリエ父の部屋と水路に石があった場所。こちらは大まかになっちゃうけど、なんとかなるだろう。

そして、石の場所と女神様の絵の部屋。

三本の線が入ったわけだが……。

できあがったのは歪な三角形だった。


「ネマ、すべてってことは、この地図をもらった場所。ネマの部屋も入れないといけないんじゃないかな?」


「なるほど!」


ダオに指摘されるまで、スタート地点である自分の部屋のことは失念していた。


「じゃあ、私の部屋がここだから……」


私の部屋を他の三ヶ所と繋ぐと、これまた変な形の四角形になった。

でも、四角形になったことで対角線ができ、それが交差する場所が判明する。


「ここは……」


「え……ここに行っていいの?」


ダオもマーリエも困惑する場所だった。


◆◆◆


宝物がある場所までやってきたものの、やっぱり躊躇する。


「ネマがやって」


「わたくしも無理」


と、二人に押し出されるように扉の前に立つ。

女は度胸じゃー!!っと気合いを入れて、その扉を叩いた。

微かな音を立てて開いた扉の向こうには……満面の笑みを浮かべたルイさん。


「……ルイ様かぁ……」


かなりドキドキしていたこともあって気が抜けた。


「待ってたよ。さぁさぁ、中に入って」


おそるおそる部屋に入り、案内された先には陛下と皇后様の姿が。

そう。対角線が交わった場所は、陛下の私室。

執務室の方にはよくお呼ばれするけど、私室はさすがにね……。


「三人ともよく頑張ったね。宝物はここだよ」


テーブルにドンッと置いてある箱。装飾も派手なため、高価なもの入ってますオーラを放っている。


「開けてごらんなさい」


皇后様にも促され、私たちは三人で箱の蓋を開けた。


「うわぁ!!」


「とても綺麗!」


私とマーリエは思わず感嘆の声をこぼす。

箱の中には、色とりどりのケーキが入っていたのだ!

旬の果物を使ったもの、希少なチョコもどきを使ったもの、あとはお祝いのときにしか食べられない特別なケーキまで!


「これ、ライナス帝国の祝いの宴でしか食べることができないって……」


なので、私もまだ食べたことなかったんだ。次の祝いの宴は陛下の誕生日だから、それまでの辛抱だと思っていたのに!


「これくらいでないと、宝物にならないだろう?」


「ありがとうございます!」


宝物は三人で分けられるものって条件をつけていたので、食べ物になるとは予想していたけど、これは予想外すぎて興奮する!!


「お茶を用意させるから、あなたたちも座って?」


皇后様が目配せをすると、侍女たちがテキパキとお茶を注いだり、ケーキを取り分けてくれた。


「それで、宝探しは面白かったかい?」


私はケーキを食べるのに忙しいので、ダオ、任せた!!

お、お口が幸せだぁぁぁ!!




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