エピローグ 彼女(偽)が俺と妹を付け狙う
エピローグ 彼女(偽)が俺と妹を付け狙う
「恭吾君っ、お弁当を作ってきたので一緒に食べませんか? 茜音ちゃんと一緒に」
「なっ、」
昼休みになった途端の居室が、一気にざわめいた。視線がみんなこちらに向いている。
戸惑う俺が視線を巡らすと、勇者でも見るような目で鴨下がこちらを見ていた。こっちみんな!
「修羅場? 修羅場なのか?」
と俺のシスコンっぷりを知っているクラスメート達が囁き合う。
「(二人の好感度を同時に上げるお弁当イベント。どうですか? 私、策士でしょう?)」
そっと耳打ちして笑う明日葉。
「きょ、恭吾くん!」
と、教室のドアを壊れそうな勢いで開けて、茜音が俺のクラスに飛び込んできた。
「ああーっ!」
明日葉の手に握られたお弁当を見て、更に大きな声を上げる。
「茜音ちゃん!」
茜音の方をむいて、明日葉が喜声をあげる。
「あ、明日葉さんっ!」
対する茜音は驚声だ。そしてクラスを満たす騒音。ああ、もうどいうつもこいつもかみ合ってない!
たった一人図式が見えている俺だけが頭を抱えた。
「さあ、いきましょう、恭吾君!」
「あ、」
腕をひかれて、よろめきながら引っ張られる俺。
「お兄ちゃん!?」
それを見咎めて、茜音が逆の手を引っ張る。
「どういうことなの、恭吾くん」
「どういうこともなにも」
引きずられながら問い詰められる。
「恭吾君は私とお昼も食べるのです。茜音ちゃんも一緒にどう?」
「へ? わたしも?」
「もちろんです! 私は茜音ちゃんとも仲良くしたいのです」
今はそれでもあっているけれども!
「恭吾くん、昼休みの間に説明してよね」
「な、何をだよ……」
クラスの喧噪が遠くなっていくのを感じながら、俺は、これから過ごすだろう、奇妙な三角関係の昼休みに頭を悩ませるのだった。
ああもう、何だっていうんだ。
『これは俺が、世界一可愛い妹といちゃいちゃする為に、妹を付け狙う邪魔者の排除に奮闘する物語だ。
それ以上でも以下でもない。徹頭徹尾、妹の為の世界の話』
だったはずなのに!
いつの間にやら俺の方まで付け狙われて、妹とのいちゃいちゃもままならないなんて。
「(両手に花、ですね、お義兄さん?)」
「お兄ちゃん!? なにをこそこそしてるの!?」
明日葉によって開かれ始めた今日の『未来』に、俺はただ悲鳴を上げるのだった。