第四話 学年一の美少女(笑)が自宅に泊まりにくる 4
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「別に、怒ってるとか、嫌ってるとかじゃないよ」
と茜音は言った。
扉越し、顔は見せてもらえないままだが。
声から判断するに、その言葉に嘘はなさそうだが、さて。
「(だいたいそもそもからして、怒る理由がないというか、単にタイミングの問題であって、怒るって言うか恥ずかしいだけだし、っていうか顔合わせづらいとも思われないほどやっぱ意識されてないのかぁ……)」
「え? なんだって?」
小声で何か云っていたようだが、扉越しなのでほとんど聞き取れない。
「なんでもない! とにかく怒ってないから!」
「お、おう……」
思いっきり怒鳴られて、俺はすごすごと撤退したのだった。
「まあ、良かったんじゃないですか?」
「うん」
居間に戻った俺は、情けなさに苦笑されながら嫌われてはいないらしいことを明日葉に告げる。
「しかしあれだ、状況が好転しているとは言いがたく……なんというかあれだ、こう、そう、気まずい」
「恭吾君回りくどくてわかりにくいです」
「つまりなんだ、その、茜音と二人きりというのは気まずいので、もし予定があいているなら」
俺は視線を逸らしながら、少し早口に言う。
「泊まっていかないか?」
「ほう」
と明日葉は頷く。
「つまりあれですね? 茜音ちゃんとパジャマパーティー」
「あ、ああ。そんな感じで一つ」
「茜音ちゃんと同じ部屋で寝る、と」
「いや、部屋は用意できるが」
「同じ部屋でいいです」
即答だった。
「勿論恭吾君は自分の部屋で寝るんですよね?」
「そりゃあそうだろう」
「ふむ。それはつまり……お義兄さん!」
「お義兄さんと呼ぶな!」
「何を言ってるのですかお義兄さん! 一晩中茜音ちゃんをかわいがっていいとめでていいと今そういったじゃないですかお義兄さん!」
「そこまでは言ってない……」
一晩中かわいがる、という並びに思うところがあるのは、俺が邪なのでしょうか……?
「とにかくそういうことなら協力します。ええ、今すぐ茜音ちゃんのところに行ってきます、お義兄さん!」
後半はドップラー効果だった。もういねえ。
「…………」
いや、これはきっと俺を元気づけてくれるために、わざとやってるんだよな?
まさか本当に「思っても無いチャンスだぜ!」とか考えているわけじゃないよな?
「…………」
俺は携帯電話を取りだした。
「もしもし、乃羽か? ちょっと相談があるのだが……いや、玲二は関係ない。え? ああ、いや、それでもいいけど。……うん、うん。でだな――」
ひとしきり事情を説明し終わる。これでどうにかなりそうだ。乃羽を呼ぶらな、だ。
「玲二、今日なんだが――」




