第四話 学年一の美少女(笑)が自宅に泊まりにくる 5
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「なにかがおかしい……」
「なにがさ?」
俺の部屋で、布団を並べている玲二に向けて呟いた。やつは「何言ってんの?」と言いたげにこちらを見る。
「いや、お泊まり会、パジャマパーティー、的なノリなのに、何故もう男二人で就寝モードなのか。おいしいイベント的なものが全部飛ばされているのか。スタンド攻撃なのか?」
どうして俺の横にはジャージ姿の野郎がいるのか。パジャマシーンはまるで無いのか。
「まあ、元々気まずいから、の処置だからじゃない?」
「……そうだが」
しかし俺の中の何かが要請するのだ。「サービス」と要求を続けるのだ。……なんか、ろくなことにならない予感しかしないのだが。
「ふむ」
と玲二は頷いて、続ける。
「じゃあのぞきに行こう」
「……のぞき?」
「うん。のぞき」
「風呂はとっくに入っていたと思うが」
「……いいかい、恭吾。風呂なんて覗いたら捕まるよ?」
「うん、寝室でも捕まるからね?」
「なん、だと……服着てるのに?」
「無意味なシリアス顔やめろ」
「わけがわからないよ」
きゅっぷい、と鳴きながら玲二がごまかした。
「そもそもだね、恭吾? のぞきとは何だろうか」
「何だろうか、と言われても」
「思うに健全な男子的な、集団での覗く、という行為において重要なのは連帯感や思い出作りなんじゃないのかと思うんだ。覗くという言葉に反して、実際は別に何も見ちゃいない。最大公約数的な共通の目標として、いわばただのラスボスとして配置されるだけで、別に裸なんて見たいわけじゃないんだよ。裸なんてみて面白いか? という話だ。違うだろう。友人と一つの目標に向けて頑張る、その行為、過程こそが大切なのであって、それが楽しく思い出になるのであって、覗かれる側なんてものは本質的には存在しないんだよ」
「おまわりさーん……」
こいつです!
「ま、理屈はさておき。これも思いで作りってわけさ。パジャマなら問題も少なそうだしね。どうせ対象に興味が無いなら、リスクは低い方が良いだろう?」
「いいたいことはわからなくもないが……」
「ま、僕としてはどつちでも良いんだけどね。こうしてだだべっているだけっていうのも、大切な思い出さ」
「微妙に発言が危ういぞ」
「そうかい? 僕は割とずっと、そうだったと思うけれどね」
違いない。
恋情は期間限定、友情は永遠。それは俺達に共通する真理だ。恋人には終わりがある。そしてそれが俺が過度のシスコンである理由、玲二が晶子を近づけない理由だ。
永遠も幸福も、与えられるものではない。構築するものだ。
取り繕ってごまかして、先送りにして塞いで逃げて、その果てにあるのがぬるっちい今だ。
気取らず気張らず、あるがままでいても、玲二との関係『だけ』は変わらないし壊れない。しかしそれでも。
最優先以外にも、幸福はできるだけ手元に置いておきたいし、喪われることは哀しいし、先を迎えることにメリットは少ない。
――なんちゃって。
「よし、のぞきに行くか」
俺は空気を振り払うように、そう声をかけた。
「だね」
玲二も頷く。
ここだけ切り取ればちょっとした、前向きめいたシーンではあるが。
やることはのぞきである。
しょーもないな。
しかしそれでいい。
やれやれだ。
俺は、クラスで明日葉が話かけてきたときを思い出しながら、自分自身に向けて呟く。
『俺のやること、目指すことは変わらない。ただひたすらに、未来なく妹といちゃいちゃするだけだ。
なにせ俺はシスコンだから。
徹頭徹尾、首尾一貫、初志貫徹、終始一貫、この世界は、世界一可愛い妹の為にある』




