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ソシャゲ世界のエンディング後から始まる悪役貴族転生記... って、ここから入れる保険があるんですか?  作者: ネゴトハ・ネテェイエ
第一章 保険って入れますか?

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第三話 遅すぎるスタート

おぉ〜レベリス様。その調子〜!!」

「こんなことボクは望んでいなぁあああああいい!!!!!」


屋敷を出られると思ったじゃん!!!

屋敷を出られると思ったじゃん(二回目)!!!


俺は雑巾を床に擦り付けながら何度も何度も廊下を駆け回る。

少しだけ埃を被った床は、俺が雑巾で擦りながら行き来をするたびに、さらに美しく輝かせていた。


「うぁああああああああ!!!!!!」

「レベリス様はしっかりと雑巾で床を拭いてね〜」

「はい!!おかげさまで廊下はピカピカですよっ!!クソがっ!!」


腰に手を当ててスラッと引き締まったその体を強調させるように毅然と佇むアーサーに怨念名た視線を向ける。

いや、アーサーの言うとおりに部屋を出た俺も悪いんだけどね?

十中八九……いや、十中十俺が悪い!!!


まぁこの屋敷は、無駄にでかい。


記憶を辿ってみると国民にレベリスという顔の知れた国家犯罪者の生存を隠すために、作られた屋敷でもあることが分かった。

ここにはもう一人住む予定だったらしいが、最終的には拒否してアーサー一人しかいなかったとか。


ぷぷっ…どんまいレベリス君。

君とことん嫌われていたみたいだよ。


「アーサーもいい加減早くやれよ。…一緒にしようって話なのにボクだけするのはおかしいぞ」

「そうかい?じゃあ僕もいい加減動かないとね」


と言っても、俺の身体はレベリスのもの。

とりあえず床を拭き終えた俺はアーサーの隣に立つと不信感を持たれないように、どちらかといえば偉そうに彼に舌打ちをする。


すまん、悪気はない。


アーサーは俺の言葉に頷きながら苦笑すると、足を横に開いて指揮をするように腕を前に構えた。

直後、何か大きな圧が彼から発せられる。

そして、アーサーの口から歌うように声が発せられた。


「まぁ埃が目に入るかもしれないから目を瞑っててね。……|Gratia venti《風の恵みよ》」

「は?」


風が、形を成していく。

ゆっくりと、ゆっくりと…創るかのように。

愛でるように、吹く爽やかな風が俺の髪をかき上げていく。


それは——もしかして。


「第1小節【目覚めろ風(ウィンズ)】」


アーサーの言葉と共に、彼の手から小さな風が生まれ、つむじ風が起きる。


そして彼が音楽を奏でるように腕を動かすと、その風が意志を持ったかのようにアーサーの腕に追従し、廊下の埃を巻き取って、近くにあるゴミ箱で霧散した。


風が通った後は、埃一つも落ちていない。

いや、これだったら最初からこれでよかったんじゃないかなぁ!?


「…ふぅ、床についた埃は巻き上げづらくてね…感謝するよ。ありがとう」

「意味はあったんだな。…よかった」


アーサーの起こしたこの非科学的な現象の名は——————【魔術】。


この世界にて【魔術】とは自分の丹田に存在する魔力を様々なものに通すことで、人為的に『奇跡』を起こす現象のことだ。


風、火、水、地…その他諸々。


その才能や自分の持てる属性は血縁などに関係なく、生まれた時からすでに決まっていると言われる。


見ての通り、アーサーが使った魔術は風属性の『第1小節魔術』…『ウィンズ』。

『第1小節魔術』、『第2小節魔術』と、この第⚪︎小節魔術…の中に入る数字が大きければ大きいほど、魔術も強くなったりもしていく。


そして魔術を発動させるための魔力にも、意味はある。


筋力に魔力を通すと身体能力が上がるし、武器に魔力でコーティングする【魔装】という技術を施すことで、その武器の硬度を上げることも可能。


魔術、【固有スキル】、動き。

葉の一枚一枚が舞い散る、変態的なまでに作り込まれた物理法則の再現。


スマホの容量を一瞬で消し飛ばすようなその神ゲームだからこそ、そういった普通のゲームにはない感覚が面白かったんだよなぁ!!


まぁだからこそ、目の前で見ると驚きが勝つんだけど。

でもそれより…。


「目ェエエエ゛エエ゛エ!!!!目がァアアアアアアアア!!!!!」

「だから目を閉じてっていったのにさぁあ!!!あぁちょっと…水を取ってくるから!!変に動き回らないで!!」


目をガン開きで見ていた障害がここにきて出てくるんかい!!!


空気中を漂っていたゴミが俺の目の中で暴れ回り、俺もそれに合わせてのたうち回る。

それもそのはず、風属性の『第1小節魔術』は単純明快、風を発生させるだけなのだから。

空を舞っていた目に見えないほどのゴミも巻き込まれ、俺の目の中に飛び込んできた…というわけである。


……いや、目を瞑らなかった俺が一番悪いんだけどさ。

がむしゃらに手を動かしたら何か物を割ってしまいそうなので、その場から動かずにじっと助け(アーサー)を待つ。


僅か数十秒後に水の音がして、俺の目の前に何かが置かれる。

俺は導かれるようにして顔にその水をぶっかけた。


水の冷たさが顔を滑り落ちると共に目のイガイガが取れて、やっと目が見えるようになる。

…よかったぁあ。


「だから目を瞑っていて…って話をしたのにさぁ」

「…すまん」

「いや、もう分かればいいよ。分かれば」


アーサーの手に浮かべて弄んでいる小さな台風のようなものに視線を向ける。

彼はその手の中の台風を最も簡単に握りつぶして、俺の顔を覗き込んだ。


「あれ?どうしてそんな狐に捕まれたみたみたいな顔をしているんだい?」

「…それを言うなら『狐につままれる』だが」

「そういう言い方もあるよね」

「そういう言い方しかない」


こいつの顔をぶっ潰していいかな?

まぁそんなことしないけど。


飄々とした顔に軽い苛立ちを覚えながら、俺は雑巾を再び手に持つ。


「…早く次に行くぞ」

「何もないならいいけど…まぁ確かに数十部屋残っているんだからね。日が暮れちゃうよ」

「尚更だ」


ちなみに雑巾掛けに埃とり…全ての部屋の掃除に7時間という膨大な時間を使うことになった。


解せぬ。



◇◆



そこからの屋敷の作業に時間がかかり、いつの間にか日は沈みかけていた。

でも、屋敷が綺麗になる以外の収穫がなかったわけでもない。


それは、今はエンディング後の2ヶ月後であること。

これはアーサーの部屋を掃除した時に置かれてあった新聞の日付を見たからだ。

彼も『今日の新聞』と言っていたし、間違いはない。


そして、今俺とアーサーは庭で剣を構えて互いに向き合っている。


…え?何でこうなったかって?

いや、アーサーも『掃除と鍛錬』って言っていたし。

俺も一度でも外に出て見たかったら丁度良かったし。


本当は拒否して眠ろうとしたのだが、アーサーから『え?聞こえな〜い』と笑顔で言われて、震え上がったのもしょうがない。

誰でもあの笑顔は怖いって。


腰から刀を引き抜いたアーサーは重心を下げ、『攻め』の構えをとる。

俺も前傾気味に身体を前に倒して、始めの用意をする。


「レベリス様の【錬成】【隠密】と魔力はその腕につけている魔道具…『封魔の飾り』によって使えない」

「…これって魔道具だったのかよ」

「うん、だから、僕も魔力と【固有スキル(オリジン)】は禁止…正々堂々剣でも拳でも足でもありの1対1だ」


お互いの視線が、静かな庭の中を行き交う。

風が俺たちの間を通り抜け、小さな雑音だけが耳の中に消されていく。


そして—————————合図を出すまでもなく一斉に駆け出した。


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