↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/59

第58話『リリオリの依頼』

 リリオリが声をかけると、一人の男が奥から姿を現した。


 スラッとした細身の体躯で、俺より少し背が高い。

 黒髪を後ろで束ね、鋭い目つきが印象的な整った顔立ちの森人(エルド)だ。


「お帰りなさいませ。無事、手に入りました……か?」


 クルクマと呼ばれた男は、俺を見るなりピタリと動きを止めた。

 妙に熱を帯びた視線が、まっすぐ俺に注がれる。


「ああ、彼らのおかげでね。客人としてお連れしたから、失礼のないように。それと──」


 リリオリが言い終えるより早く、クルクマが俺の目の前に踏み込んできた。

 そのまま流れるような手つきで、俺の耳、ほっぺた、尻尾を引っ張ってくる。


「な、なんだよ!?」


「こ、これは当研究所のセキュリティチェックです。

 危険なものを持ち込んでいないか確認しないと……!

 ムム!? なんだこの艶のある毛並みは!? フワッフワじゃないか!」


「クルクマ」


 リリオリの声が聞こえていないのか、クルクマは俺の体を一心不乱にまさぐっている。


「それにこのだらしない肉、実にけしから……おやおやぁ!?

 こんなところに怪しげな膜があるぞぉ!?

 どぉれ、中はどうなっているのかな、触らせてごらん、ハァハァ」


「や、やめっ……くすぐったい! ちょ、引っ張るなって!

 尻尾は……敏感だから……ぁふうぅっ、そんなところ……ダメ……っ」


「けしからんのはお前だ、クルクマ」


 ビシッ!


 リリオリが、クルクマの頭に手刀を打ち下ろした。

 俺の膜に顔を突っ込んでいたクルクマの肩が、ビクッと跳ね上がる。


 リリオリは小さくため息をつき、《忘念草》をひょいと放る。


「分かっているだろ? 急ぎなんだ。馬鹿をやってないで、頼んだよ」


「かしこまりました。もちろん滞りなく進めておりますので」


 クルクマは《忘念草》を受け取ると、テキパキとした所作で奥の部屋へ消えていった。


「なんなんだ、あいつは……」


 俺は両手で膜をぎゅっと抑えながら、呆然とつぶやいた。


「彼は優秀なんだが、少々悪癖があってね。

 毛に覆われた動物を見ると、触らずにはいられないようなんだ。

 まったく、理解に苦しむよ」


 リリオリは、こちらを振り返り苦笑した。


「改めて、ようこそ。《リリオリ・ラボ》へ。

 ここでは新種の植物を栽培したり、薬品や触媒の開発、生物と魔力の相互作用の研究などを行っているんだ。

 何かあれば、遠慮なく相談してくれたまえ」


 周囲の棚には乾燥させた葉や瓶が整然と並んでいる。

 部屋の中央には大きな木製の作業机があり、いくつもの透明な器具から細い煙が立ちのぼっていた。


 奥ではクルクマが作業を始めたらしく、乾いた葉が擦れる音と、草花の甘い香りが漂ってくる。


 ふいにリリオリが両手を掲げ、空中を指先でなぞり始めた。

 その動きに、部屋のあちこちが反応する。


 天井から吊るされた球体植物が光量を変え、室内が均一な明るさで満たされる。

 机の上に置かれた木箱が少し震え、澄んだ歌声を流し始めた。


 ラースの身体が淡く明滅する。

「おぉ、これはすごく便利ですね!」


「単純な仕掛けさ。いくつかの植物を組み合わせることで、生活を快適にしてあるんだよ。

 この部屋では、特定の動きに反応して、他の植物に指示を送る《トリガーの木》を使っているのさ。

 私の両手の動きに合わせて、ギミックが動くようにね。

 そこに、音を蓄積できる《エコルナの木》を繋げれば、音楽を楽しめる。

 他にも、自在に動く《ハンドラの蔦》を繋げれば、この通り」


 彼女が左手で壁際の容器を指差し、右手を一定の角度で滑らせると、鮮やかな液体が注がれていく。

 するすると伸びてきた蔦が容器の縁を掴み、俺の手元まで運んできた。


「果汁100%だよ。召し上がれ」


 差し出された容器を受け取り、慎重に口をつける。


「う……美味い!!!」

 濃厚な甘味とほのかな酸味が、体に染み渡っていく。


「いいだろう? 慣れれば、君でも簡単に操作できるよ」


 リリオリは何やら素早く空中をなぞり続けている。


「これらがすべて《トリガー》で操作できるギミックなんですか? すごいですね!」


 ラースは、部屋の中をふわふわと漂いながら、機器を観察している。


「ここにあるものは試作品なんだ。

 気になるものがあれば、好きに持っていくといい」


「えっ、いいのか!?」


「光や音は、色々と使い道がありそうですよね!」


「そうだな! あとで使えそうなものを探させてくれ。

 ただ──先に、《鬼哭の三紋》への行き方を教えてくれないか」


 俺が切り出すと、リリオリは軽く頷き、眼鏡の位置を直した。


「そうだね。その話をするためにも、まず君たちは知っておくべきことがある。

 先ほど君たちは、この町の入り口に気づくことができなかっただろう?

 あれは、悪い奴が入ってこないように、町の入り口に《隠蔽》の術をかけてあるからなんだ」


「なるほど……どおりで、スキルを使っても分からなかったはずだ」


 ラースがくるりと回転する。


「確かに、ただの森にしか見えませんでしたよね!」


「そして──残念ながら、今は《鬼哭の三紋》へ行くことができない。

 理由は森の奥にいる一匹の“暴れん坊”だ。普段は大人しいのに、今は我を失うほど暴れているからだ」


「えっ、どういうことだ?」


 リリオリは《トリガー》操作の手を止めずに続けた。


「ほとんどの者は避難できたが、まだ何人か取り残されていてね。

 被害が広がらないよう、周囲に《隠蔽》を施して封鎖してあるんだ」


「おいおい……それは、悠長に話してる場合じゃないな」


 リリオリは手を止めて、こちらに向きなおった。


「そう。そこで本題だが、その暴れん坊を鎮めて、仲間を助けてくれないか。

 なぁに、相手は“森の賢王”などと呼ばれているが、私から見ると“ただの毛玉”だ。

 それにもちろん、策は用意してある」


 “暴れん坊”、森の王、毛玉っ……!?

 まさか、またグレムサが……?


『キュェッキュェーーーーッ!!』


 人を小馬鹿にした笑い声が脳裏に蘇り、思わず拳が震える。


「恐らく、君にとってそこまで難しい相手ではないはずだ。

 仲間を助け出せれば、《鬼哭の三紋》への道も案内できるし、旅が楽になる近道も教えよう。

 どうだろう、受けてくれるかな」


「……仲間が危ないんだろ? だったら、助けないとな!

 それに、ちょうど良かった──あいつには少し痛い目を見せてやらなきゃと思っていたんだ。

 ガツンと分からせてやるよ」


「おぉ、それは頼もしい」


 リリオリが《トリガー》を操作すると、それに反応して奥からクルクマが姿を現した。


「では、作戦を伝えよう」

------------


■クロ

身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》《ゴーストテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》

ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》

Extra:《跳星バースト》


■ラース

スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》

パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》


---


次回2026/9/26、0:10頃、次話を更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼ツギクル
★押してもらえると嬉しいです★
(ランキング集計されてるらしいです) ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
モモンガの──ぬ・れ・ば! いやん、続けてたらR18直行でしたわよ! ⁽⁽◝(•௰•)◜⁾⁾ 球体植物が照明で、歌声木箱がオルゴールな感じなんですね。 (*´ω`*) ただの森に擬態させているとは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。