帝国。
帝国。
今年は帝国暦4151年。
この世界の中心である皇帝が君臨するその帝国は、周囲の七カ国と八つの地域を支配するパクスの地だ。
帝国のパクスが及ばない地域にも人は住むけれど、そこは人類域にはカウントされていない未開地と呼ばれている。
北方のガリアの地、そのまた北に位置するノーザランドはそんな未開地と接している実質人類域の最果てと言ってもいい不毛の地だった。
帝国が帝国となったのは初代カエサルの時代。小国の連合であったそれまでの国を武力で征服し統一国家を作り上げた初代皇帝だ。
実は初代の魔王と呼ばれる人、その人こそがこの初代皇帝カエサルなのだという。
帝国の歴史を習うと必ず出てくるこの人物。彼が魔王ということは皇帝は魔王の血をひいているって事?
最初はそうも思ったけどどうやら少し事情が違うらしい。
そもそもこの初代魔王皇帝カエサルはそのあまりにも行き過ぎた恐怖政治により民の反感を買い、最終的には自分の甥に暗殺されている。後継者にするべく妹の子オクトバスを養子にしたカエサル。まさかその甥に倒されるとは皮肉な話だ。そのオクトバスが次の皇帝であり現在の皇帝はその血筋なのだと。
ここで実は諸説あるのが、カエサルは暗殺されたのではなく封印されたのだという説。
そしてその封印された時に残されたもの。それが魔王石となったのだと。
以来魔王はおよそ500年の周期で復活し、そして封印されてきた歴史がある。
その辺は聖王国の歴史で習うのだけどね。
でも、最後に封印されたのはもう1000年前だし、それ以来魔王はグランウッドの木の下で眠っている筈。
もしかして……。
この間の事件はその封印がとけかけているってそういう事なの?
あたしが聖都の結界をはるのを辞めたからいけないの?
紅い街道を進むとそろそろ国境が見えてきた。一応そこには駅が設置されていてそこで働く人の為の小さな街がある。
駅っていうのは伝令用の馬が置かれている場所で街道沿いにはけっこう数があるのだけど、ここは国境っていう事もあって少し規模が大きいかな。
ここ、ラウンタークの街を抜けるのには一応紹介状が必要だったりする。身元不明だと審査が通るまで足留をくらったりするらしい。
まあこっそりと国境を抜ける事が出来ないわけじゃぁないけど、一応あたしたちもギルドの紹介状を貰ってきた。
冒険者には割と緩いらしい審査も簡単にパスして。
今夜はここで泊まったら明日はいよいよ帝国領に入る。まず目指すのはガリア。もともと野蛮人を意味するガリアって名前。まあ要するに元は狩猟で生計をたてていた部族の住む地って、そういう意味なんだけどね。
今夜はここでゆっくりとお風呂に入って行こうねってティアと話してるあたし。ここを抜けるともうあんまり大きい街は無いらしいし大浴場があるところも無さそうだ。
やっぱりね。魔法で身体は洗えるけど、それだと味気ない。
たまにはちゃんとゆったりとお湯に浸かりたいと思うの。




