乱入者
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「ゼータ、勇者殿をお守りしろ。」
父上の言葉にうなずいて、勇者の近くで警戒する。
広場の出入り口から、左目に眼帯を付けて無精ひげを生やした、大柄の男が現れた。
「おーおー、随分と歓迎されてやがるな、っと。」
話しながら切りかかってきた男の剣を、父上が己の剣で受け止める。
ガキイィィィン!
甲高い音があたりに鳴り響いた。
男は嬉しそうににやりと笑う。
「ほぅ。俺様の一太刀を受け止められるなんざ久方ぶりだ。あんたは?」
「私はライザン王国騎士団長、ラスター=セイクリッドだ。城に侵入してくるとは、何が目的だ?」
「お!重要人物がいるってこたぁ、ここが当たりか?そこにいるどっちかの坊主が勇者ってことだろ?」
「もう一度聞くぞ、ここに何の用だ?」
嘗め回すような視線を向ける大男に対して、父上が威圧する。
すると、男は構えていた剣をしまってぺちゃくちゃと話始めた。
「いや何、ここに勇者がいるって聞いたもんでな。ちょっくらどんな面してんのか拝んでやろうと思ってよ。で、どっちの坊主だ?」
「俺が勇者って呼ばれてる。」
エースが控えめに主張する。
先ほどの手合わせで自信をなくしてしまったようだ。
「なんでぇ随分と覇気のねぇ坊主だな。せっかく俺様が剣術を教えてやろうと思ったのによ。」
「勇者殿には私が剣術を教える。貴殿の出番はない。」
「あんたが教えるって?守りに徹するような剣術をか?笑わせるなよ。勇者に必要なのは、敵を殲滅するような、殺しの剣だ。」
「貴殿はそれを教えられると?流派はどこだ?」
「流派?いんや、俺様の剣は俺様だけのものだ。ただただ理外の獣をぶった切るためだけに研鑽を積んだものよ。」
男の言葉を聞いて、私は内心驚いた。
そのような剣術は既にすたれてしまっているものと思っていたからだ。
少なくとも、私が生きてきた中で、攻撃を主軸にした剣術を扱う者など皆無だった。
男は、周囲の様子など気にも留めずに語り続ける。
「騎士団長様に聞いてやるよ。絶対に受けきれない剛腕の一撃を持つ敵が現れた時、どうすればいい?」
「・・・。」
「答えはなぁ、攻撃される前に相手の腕を切り落とす、だ。
じゃあ絶対に追いきれない速度で走る敵が現れた時、どうすればいい?
答えは走られる前に足を切り飛ばす、だ。」
男が父上に向けてというより、父上の後ろにいる勇者に向けて語り掛ける。
「じゃあ最後に、戦いになったら絶対に勝てねぇ敵が現れた時はどうすればいい?」
男は真剣な目で勇者を見つめる。
「答えは、戦闘になる前に首を切り落とす、だ。勇者にはその力がある。それなのに、守りに徹するなんて馬鹿のやることだぜ。」
話し終えると、男は豪快に笑い飛ばした。
そんな様子を見ていた父上が、剣をしまいながら名を訪ねる。
「貴殿、名はなんという。」
「俺様か?俺様はジャックってんだ。各地の理外の獣を追いかけまわしてんだが、いまだに一回も切り飛ばせねぇ。」
「貴殿がここに来た目的は、勇者殿に剣を教えることか?」
「まあそんなとこだ。興が乗らなかったら、そのまま帰ってたけどな。」
調子のいい男の言葉に、父上がため息をついた。
「王城に押し入ってくるなど前代未聞だ。次からは常識的に入ってきてくれ。私のほうで許可を取ってくる。」
「父上、このような不審者、よろしいのでしょうか。」
私は男に聞こえないように、小声で父上に話しかけた。
勇者は現在の人類において、最重要人物だ。
魔王を倒すまで、何物にも害されてはならない。
「単身で騎士たちを排除して王城に乗り込んでくる実力者だ。生半可なものでは止めることはできない。ならば、内側に入れて常に監視していたほうがましだ。もちろん、身辺調査は行うがな。」
「おう、騎士団長殿、面倒なことはよろしく頼むわ。勇者に対する指導報酬は、うまい酒ってのはどうだ?」
こうして、ジャックという非常識な剣の指導員が増えたのだった。




