領主館へ聞き込み
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「ようこそシルフィーナへ。私はこの町の領主のバルダックだ。」
「領主のおっちゃん!久しぶり!」
「ああ、エース君、久しぶりだね。元気だったかい?」
眼鏡をかけた線の細い男性が、領主館に迎え入れてくれた。
勇者と距離が近い所を見るに、住民と積極的にコミュニケーションを取っている御仁のようだ。
「突然押しかけて申し訳ない。今日は、シルフィーナの町で黒い煙を見たという証言を確認するために来ました。ここ最近で、理外の獣に関するような事象は発生しているでしょうか。」
私の言葉に、バルダックは少し考えるそぶりを見せる。
「特に不審な事故や行方不明があったとは聞いていないな。漁師から、漁獲量が少し減っていると報告があったが、それも異常という程ではなかった。」
彼の言葉に、内心で肩をすくめる。
少なくとも、シルフィーナの町単位では異常は見受けられないようだ。
そうなると、黒い煙の目撃情報は、個人単位ということになるだろう。
この後、住民たちに聞き込みをしなければならないと思っていると、バルダックが思い出したように口を開いた。
「そういえば、皆さんは海の外がどのようになっているか、聞いたことがありますか?」
「海の外、ですか?特に別の大陸があるなんて話は聞かないですね。」
「そう、海の外側はこの大陸をぐるりと囲い込むように複雑な海流が流れておりましてな。何人たりとも、その先へ進むことができないのです。シルフィーナの地では、その先は女神様のご加護が届かない領域ではないかと噂されているのですよ。まぁ、今回の件に関係があるかどうか分かりませんがね。」
バルダックの言葉に、女神様の加護が存在しない領域に思いをはせた。
きっと薄暗く、生命が生きていくことができない過酷な地ではないだろうか。
女神ルナフレイム様のご加護が満ちているこの地で生まれ育った我々には、想像もできない領域だ。
そんな、途方もない話を聞けた私たちは、バルダックに挨拶して領主館を後にするのだった。




