実験 その3
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「勇者殿にゼータ殿、ご機嫌麗しゅう!本日は前回ご協力いただいた、女神様の加護を付与した鉱石の実験となりますよ!」
ルーシーが相変わらずのハイテンションで訓練場に参上した。
腕一杯に、鉱石やら剣やらを抱えていて危なっかしい。
彼女は手に持っていた鉱石を片隅に置くと、まず最初に剣の方を掲げて喋りだした。
「こちらは、女神様の加護を受けた鉄鉱石で作った武器となります。普通の武器とは違って、勇者殿から直接女神の加護を注がれても、砕けずに耐えられる可能性があるかと思います!」
ルーシーの発言に、勇者が腰に下げている刀に意識が向いた。
西の町、ガンズロッドで打たれたその刀は、勇者が直々に掘った鉱石を使用していた。
そうして作られた刀は、女神様の加護に耐えうる強靭な刀身をしていたのだった。
「ガンズロッドで作られた、勇者殿の刀のような物か。女神様の加護を付与した武器が量産できれば、我々騎士団でも理外の獣を討伐することが可能になるな。」
「なんと、既にガンズロッドで試し済みでしたか。しかし、そうなれば話は早いです!さっそく試してみましょう!」
ルーシーが勇者に向けて、ずずいと剣を差し出した。
勇者は、剣を受け取ると女神様の加護を発動させ、全身を青白い光に包んだ。
次に、全身に纏っていた光を、手に持った刀に収束させる。
次第に、淡く光っていた剣が、強烈な光を放ち始めた。
「よし、多分女神様の加護は込め終わったと思う。剣も砕けてないし、成功じゃないか?」
勇者が自信満々に剣を掲げた。
確かに、以前は女神様の加護を注いだ時点で砕けていたため、一歩前進したといえるだろう。
「勇者殿、試し切りをお願いしたい。」
「はいよ。」
勇者が、訓練場に置いてあった丸太に対して剣で切りつけると、量産品とは思えない切れ味で丸太が両断された。
剣自体も、特に問題は見受けられない。成功だろうか。
「私にも貸してもらえないだろうか。」
私は、勇者から剣を受け取り、その刀身をまじまじと見つめる。
勇者自身のように、剣自体が青白く光り輝いており、女神様の加護を宿していることが分かる。
どうやら、勇者の手を離れても、女神様の加護が機能しているようだ。
私も、訓練用の丸太に向かい合い、光り輝く剣で切り飛ばした。
シュッ!
小気味よい音とともに、丸太の上半分が宙を舞う。恐ろしい切れ味だ。
「大成功だな!」
勇者が笑いながら方を叩いてきた。
しかし、私は手の中にある剣にわずかな違和感を感じていた。
もう一度、丸太に対して剣を振るう。
パキイィィィン!
先ほどまで問題ないように見えた刀身が、その根元まで含めて砕け散ってしまった。
突然、手に持っていた武器が砕けたことで、勇者が動揺の声をあげる。
「・・・どういうことだ?さっきまで問題なかったのに・・・。」
勇者の言う通り、勇者から受け取った直後の武器には、なんの異常も見受けられなかった。
そうなると、私が受け取ってから剣を振るうまでが問題だったということだ。
もちろん、受け取った剣を雑に扱ったりはしていない。
ということは・・・。
「女神様の加護を纏った武器は、勇者殿以外が使うとすぐに砕けてしまうのか?」
私は、持ち手だけになった剣を見つめながらつぶやく。
すると、今まで様子を見ていたルーシーが、神妙な顔つきで声を発した。
「うまくいったと思ったのですが・・・。騎士たちが命を預ける剣という相棒が、数回振るっただけで砕けてしまっては問題ですね。まだまだ改良の余地がありそうです。」
彼女は、目の前で起こった出来事を、すべて見逃すまいと必死にメモしている。
一歩進んだと思えば、また新たな課題が顔をのぞかせる。
騎士団による理外の獣討伐は、まだまだ遠い夢物語のように思えた。




