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第四話 フリークスともぞもぞ

「なぁ、レイ。ふぇでりっく様って誰なんだよぉ?」

「…お願いだから忘れて」


 うぅ、恥ずかしい。顔から火が出そう。まさか22歳にもなって我を忘れてあんなにはしゃいでしまうなんて…。まぁ、体は推測12歳に若返ってるんだけどさ…。


「教えてくれってぇ。あんなに嬉しそうにぴょんぴょんジャンプしたりしてさぁ。さっきは超楽しそうだったじゃんかぁ」

「…頼むから回想やめて」


 思わず顔を覆うと手のひらに触れる頬の感触がもう熱い熱い。きっと茹で蛸みたいな赤い顔をしてるんだろう。

 あぁ、もうやだなぁ。頼むからリュウ振り返らないでよ?だって、リュウってそういうのめちゃくちゃ揶揄って来そうだもん。


「ふわぁ。歩いても歩いてもだなぁ」


 私が返事せずにいるとリュウは歩きながら大きな大きなアクビをした。

 はい。そんなこんなで絶賛、リュウにおんぶしてもらって移動中です。

 まだまだ広がる木!木!木!四方八方、森!森!森!!まるで、同じところをぐるぐると回っているだけなんじゃないかと錯覚してしまいそうな程、似通った景色が続いてる。


「リュウ重くない?大丈夫?疲れたなら休憩しよ?」

「大丈夫だって!レイは軽すぎなくらいだから大丈夫!」

「そう?」

「うん!ちょー軽いし!」


 「ほら!」とリュウが私をおぶった状態でウサギの様にぴょんと跳ねた。瞬間、軽く2mは宙に浮かぶ。全身を襲う浮遊感。リュウの首に回していた腕を残して、体がふわりと宙に浮かぶ。下を見ると地面は遠く、長いようで短かった浮遊の次には無慈悲な落下が待っているもので…


「ちょちょちょっ!怖い怖い怖い!!!」

「うぐ、レ、レイ、首絞まってる絞まってる!」


 思わずギュッと彼にしがみつくと、「ぐえ」とカエルみたいな声を上げながらも彼は器用にトンと地面に軽く着地してみせた。ま、まだ心臓がバクバクしてる…。


「も、もう絶対やらないで!」

「く。くび、絞まって…」


 …

 ……

 ………


 さて、どうして今おぶってもらっているかと言うと、どうも先程すっ転んだ時に足首も痛めていたらしい。始めこそ普通に歩けていたのだけれども時間が経つにつれ、どんどんと腫れてきてしまったのだ。

 それでも我慢して足を引きずりながら歩いていたら、心配したリュウが快くおんぶしてくれて今に至る訳だ。

 彼の持つ特殊な力もあり、私の重量自体はなんてことは無いみたい。しかし、精神年齢的には私の方が10歳も年上である為、なんだか大変申し訳ない気持ちで一杯である。


 ちらり、と見下ろすと一回り大きく腫れ上がった小さな足が目に入る。見なかった事にしよう。こういうのは見れば見るほど痛くなってくるものだ。


 ………むぅ。それにしても、やっぱり男の子の体慣れないなぁ。さっきからあそこが気になって仕方がない。リュウの腰あたりにふんにょり当たる感触がなんとも妙な気分。時折、もぞもぞと動いてポジションを整えようと試みてるんだけれど、いかんせん体が幼すぎる。あーもうだめ!気にするのやーめた!


 …ふぅ、それにしてもリュウの背中はあったかいなぁ。ポカポカしてて心地が良い。この足首の違和感さえなければ、お昼寝でもしたい気分だよ。


「ねぇねぇリュウ。どうかな?そろそろ森は抜けれそう?」

「さぁ〜?歩いても歩いても木ばっかだもんなぁ」

「金髪翠眼の、この森に似つかわしく無い妙に上等な衣服を見に纏った美少年とか見てない?」

「なんだよその具体的なの。てか、すいがんってなんだ?」

「緑色の目ってことだよ」

「へー!レイってむずかしい言葉知ってんだな」


 屈託のない笑顔で素直に私を褒めるリュウ。どんな話でも楽しそうに聞いてくれる彼が可愛くて仕方がない。頭をわしゃわしゃ撫で回したい衝動に駆られるがひたすら我慢である。

 だって私の1番はフェデリック様だもん!リュウに心移りなんかしないよーだ!あー、早く会えないかな!

 というか第1話のリュウってば森の中彷徨いすぎじゃない?かれこれ30分以上は歩いてるよ?それにさっきから…


「ギャウッ!グギャオオオ!!!」

「お、また出た!…っらぁ!」

「ベゲウッ…!!!?」


 道中での怪物との遭遇率の高さよ!そしてなんといってもリュウの強さよ!

 さっきから原作フリークスでみた事のあるヤバいモンスターが出たり入ったりしている。それをリュウが私を背負いながら軽々と蹴り飛ばしていくのだから、なんだか無双ゲーでも見ている気分だ。


 さて、ここで一つ説明をさせてもらおう。 

 漫画『FREAKS』は剣と魔法のファンタジー世界が舞台のBL漫画、というのは以前も説明したかと思う。

 展開としてはユリとリュウの成長と共に2人の恋模様が丁寧に描かれて行く。と、同時にファンタジー要素として剣と魔法のバトル展開も繰り広げられていく訳だ。


 当然、バトル展開と来たならば敵キャラクターや悪い連中が登場するよね。

 その内のメインの敵がこのタイトルにもなっているフリークス!もとい漢字で書くと化外獣フリークスなのである。

 設定はどうだったかなぁ。…え〜、人間の悪意や無念、苦しみを糧にして生まれた闇の魔力を喰らい続けて異常な進化を遂げた精霊や獣、だったっけ。


 ちなみにだけど、さっき私を今日のご飯にしようとしていた水色のデカ虎はこの森の原生生物だと思われる。化外獣フリークスでは無い。一般的な化外獣フリークスは闇の魔力を体から放出しているので一目で分かるのだ。


 …で!なんで急にこんな説明をしたかと言うと、この森、くだん化外獣フリークスがめっっっっちゃいる!そしてそれをリュウがめっっっっちゃ簡単に倒しちゃってる!


「ふぅ。この森、動物いっぱいいるなぁ」


 ほら、今だってティラノサウルスみたいな化外獣フリークスをジャンプからの踵落としで地面にめり込ませちゃったもん!

 しかも感想が「この山、カブトムシいっぱいいるな」みたいな夏休みの男の子みたいなこと言ってるもん!

 というかまた性懲りも無くジャンプしやがって!空中浮遊しながら「し、死ぬ…!」って毎回なってるこっちの身にもなって!


「それホント怖いからやめてって言ってるでしょ〜!!!」

「いだだだだ!ほっぺ引っ張るのひゃめろ!わかっひゃって!次は絶対にしないひゃら!」


 ……ふぅ。彼の持つ特殊な力についてはまた別の機会にお話しする機会があると思うのでまた今度。

 いやはや、あのぷにっとレッグのどこにそんな力が秘められているのか。科学で説明のつかないパワーは不思議で仕方がないよね。まぁ、例え科学であっても私には説明できる自信は無いけど。もぞもぞ。


「…なぁレイ」

「ん?どしたのリュウ?」


 なんだかリュウが気まずそうに声を掛けてきた。彼に似つかわしくない珍しい態度だ。何か異変でもあったのだろうか。


「お前さぁ、トイレ行きたかったりする?」

「え?なんで?」

「だってさぁ。さっきからおれの背中にめっちゃちんこ押し付けてくるじゃん」

「………え?」

「しっこ我慢する時に手でぐっと抑えたりするから分かるけどさぁ。あんま、おれの背中ではやって欲しくはないかなぁって」

「……………」

「待ってるからさぁ。トイレならその辺で済ませたら…」

「…………う」

「う?」

「うわぁぁぁっ!!!忘れろ忘れろ忘れろ!」

「いてっ!あたっ!ちょ、殴んなって!なんだよ!トイレじゃなかったのか!?」


 最悪最悪最悪!!!


 全然そんなつもり無かったのに!変な勘違いされた!全然そんなつもり無かったのに!!!ちょっとポジション悪いなぁって、落ち着かないなぁってしてただけなのに!!!! 


「リュウ、忘れて今のは!ホントそんなのじゃないから!!ねぇ!本当に違うから!」

「でも、おれ背中で漏らされたくないし…ちょ、だから殴んなって!」

「違うの!あぁ〜っ!もう!だから違うんだってぇ!」


……


「うわぁぁぁあ!!!誰かっ!誰か助けてぇ!!!!」


……


「あだだ…っ!!」

「もぉ〜っ!どう説明したら…え、今の声って」  


 私たちが立ち止まっていた場所から正面向こう。森の木々の向こうから甲高い少年らしい叫び声がこちらまで届いた。

 すぐ彼に振り向くと、リュウとばっちり目があった。


「レイ!」

「うん!行こうリュウ!貴方の未来の推しの為に!」

「何言ってるかわかんねぇけど助けに行くぞ!揺れるけどがまんしろよ!トイレもな!」

「だから違……ばばばばばばばば!!!!」


 やばいやばい!田舎の爺ちゃんのおんぼろトラクターより乗り心地悪い!喋ったら舌噛んじゃう!まだ勘違いしてるから訂正してやりたいのに…!!


 ま、待っててユリくん!今、貴方の未来の恋人が助けに行くからね!私というおまけ付きだけど我慢してね!


 あとリュウ!キミに性知識が無かったのが唯一の救いだったよ!おしっこ我慢以上の勘違いをされていたら、もう発狂もんだったからね!お前を殺して私も死ぬしかなくなってたからね!己の無知に感謝しろ!

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