表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

第一話 私の推しは必ず死ぬ

『…あぁ、貴様の言葉は頭に響く。もうこれ以上は喋ってくれるな。気に障って仕方がない』


「かっこいい…」


『…成程な、愚弟の敵か貴様らは。

 ふっ、アレがどうなろうと知った事では無い。…だが、そうだな。頭痛の種を取り除く、その一点の為に貴様らを蹂躙しようじゃあないか』


「フェデリック様、かっこいい…。しゅき…」


 最近お熱な愛読書を読み耽りながら、私、佐々ささい 黎奈れいなはむふふとほくそ笑んだ。

 いやはや残業残業な仕事終わりのお漫画様は格別に体に染みるよねぇ…。


 しかも今日は金曜日ですからな!もうご飯も食べたしお風呂も入ったし!

 むふふ、せっかくだから夜更かしして全巻読みきっちゃおっかなー!ネタバレとか踏むのやだし!ぜーんぶ読んで感想早く言い合いたいし!


 いやぁ、それにしてもフェデリック様ほーんとかっこいい!しゅき!


 イケメン高身長に白髪ロングなのはもちろん当たり前に最高なんだけど、頭痛持ちでいつも不機嫌な顔してるのも良いし、目の下のクマも良いアクセント!

 後、ゴテゴテした装飾の付いたローブを着込んでるところね!痩せてるのを気にしてるんだろうなぁ。そういうのも萌えです!

 それに手に持ってる杖もカッコいい!持ち手が鷲の頭を模したやつ、しかもこれがフェデリック様の武器なのがたまらん!グッズがあったら欲しい!飾りたい!

 後、主人公で弟のユリベルトに嫌な態度取るけどこれ絶っっっ対に後でデレるやつだよね!絶対にユリがピンチの時に助けに来て、『無事か…愚弟』とか言い出すやつだよね!?期待していい!?いいよね!する!します!


 …

 ……

 ………


 ふぃー、20巻読了〜!フェデリック様、出番多くて良いなぁ〜!最高!

 さ、ちょーっと休憩しよ。一気読みは身体がバキバキになっちゃうのが難点だね〜。腰を回して腕を回してストレッチストレッチ!お、パジャマほつれてら。ハサミハサミ〜。どこにあったかな〜?ん、デカいけどこれでいいや。ちょきんとな!

 

 ふぅ、これで一息つけるってもんだね!どっかりとソファにだらしなくもたれかかり、お気にのマグに口を付ける。


 ごくごく…くぅ〜!あったかミルク(ラム酒入り)が身体に染みるぜ!…ん?さっきから何読んでるかって?


 ふっふっふ…知りたいかな坊や(ニーニョ)?いいだろう!教えてしんぜよう!


 いま、私が人に見せられない顔で楽しんでいるのはとある漫画作品だ。


 BL漫画『FREAKS(フリークス)


 美麗な作画と多種多様なカッコいいキャラクターで界隈ではそこそこ人気のある作品だ。

 ジャンルはBLとファンタジー。

 舞台は剣と魔法のある世界で、たぶん中世のヨーロッパモチーフなのだろう時代設定の作品だ。


 ストーリーはというと、主人公のユリベルト・ブラウナーもとい少年ユリは辺境に住む貴族の男の子。幼少の彼はある日、病床の兄・フェデリックの為にと一人無断で危険な森へと薬草を採りに出かけてしまう。

 そこで彼が出会ったのはどこからか逃げて来た世にも珍しい黒髪黒目の奴隷少年リュウだったのだ。そして、実はこの少年リュウには不思議な力が宿っていて…?


 と、その後は彼らの成長と共にリュウの力を狙う悪い奴らとのバトルであったり、ユリとリュウとの秘密の恋模様が展開されていく訳だ。


 連載自体は半年程前に完結しており、巻数は全42巻!ストーリーやバトルもサクサクなので勢いで読めるのも良いところである。

 

 この度、大人気少年漫画『悪滅のナイフ』を読み終えた事もあり、次は何を読もうかなと品定めしていたところ友人に勧められたこちらの作品を読み始めたのだが………


 これがもう激刺さり!もちろん主人公のユリくんも可愛いし、お相手のリュウもエロカッコよくてむちゃくそに良い!2人の恋愛だけでもずきゅんずきゅんしちゃう!

 でもねでもね?そんな主人公たちを差し置いて私にドチャクソに刺さったキャラクターがいるの!


 そう。それこそが先程紹介したフェデリック様!陰のあるキャラって言うのかな?

 私、昔からそう言うキャラクターが大好きなんだよね!推しってやつ!

 …でも、私の好きになるキャラにはある共通点があるんだよなぁ。ま、流石にこれは杞憂ってやつか!さーて、続き続き!


『…愚弟、貴様がずっと憎かった。常々目障りだと思っていたんだ』


「およ?フェデリック様、敵になっちゃったよ?」


 フェデリック様ってばまさかの裏切り枠!?なんだか雲行きが怪しくなってきた。流石に後で帰って来てくれるよね…?うほ、悪い顔もカッコいい〜♡


『はは、素晴らしいぞ闇の魔力!

 どうだ!あぁ…頭痛が消えた!消えたぞ!

はははははっ!あぁ、世界が鮮明に見える!恨み尽くしたこの世の全てが鮮明に映るぞ…!』


 フェデリック様の頭痛が治った!ぐすっ、こんなに嬉しそうな顔して…。うぅ、良かった良かった…。


 …いやこれ良かったのかな?


 はちゃめちゃに闇のオーラ纏ってるんだけど。なんか頭からツノ生えてきたんだけど。

 ね、ねぇ、これはあれだよね?主人公のユリくんと戦って敗北の後に味方サイドに戻ってくるんだよね?ほら、頭痛治ったし。闇のオーラ纏って強化イベント的なアレなんだよね?ねぇ?そうだよね?


『愚弟!愚弟!愚弟愚弟愚弟愚弟愚弟!!!

 …っ邪魔をするなァ奴隷!!!貴様如きがっ!!!貴様なンぞにィィィっ…!!!!』


 現在、絶賛ユリくん+リュウVSフェデリック様。なんかいよいよ嫌な予感がしてきた。むっさ異形化しとる。腕4本も生えてるし、背中に翼生えたし、斬られても再生しとる。フェデリック様の原型が顔下半分しか残ってないよ?


『ーーーオレには優秀な弟がいる。少しばかり愚かで貴族には向かぬ甘い性格だが、いつだって己の誇りであった』


 待って待って。ねぇちょっと待って?

 過去回想はご馳走様なんだけどなんで戦闘中に回想挟み始めるの?もうこれアレじゃん!絶対またアレじゃん!


『ーーーユリベルト。貴様、強くなったのだなぁ』


 いやもうホント待って!?フェデリック様、ユリに斬られたのにめっちゃ穏やかな顔してる!!!!

 好き!死ぬ!いや人型に戻って良かったーと思ったらこれとかさぁ!ねぇ、フェデリック様は死なないで!!!やだやだやだやだ!!!

 ま、まだワンチャン闇の魔力とやらで延命出来るかな?ほら、再生能力むちゃくそ上がってるみたいだし…。

 そ、そうだよね闇の魔力で再生出来るよね?…き、きっとそう!絶対そうだ!これでデレモードに入ったフェデリック様が味方サイドに入る!ユリくん溺愛でリュウが嫉妬!はい勝ち!ねぇお願いだからそうなって!!


『っユリベルト!!』


 え?ねぇやだ!介抱されてたフェデリック様、ユリくん庇って斬られちゃったんだけど!?めっちゃぶっ倒れてんだけど!ユリくんに抱き上げられながら血まみれの手で彼の顔に触れようとしてるんだけど!

 うそうそうそ!回復するよね?死なないよね?()()死なないよね!?


『あぁ…ようやく頭痛が引いていく…』


『ユリベルト…。今ならば、今の私であったなら。私はお前の良き兄として…』


『正しく、お前を愛せただろうか』


「フェ、フェデリック様ぁぁぁーーーーーっ!!!!!!」


 い、逝ったーーーーーーー!!!!!!まただ!なんでなんでなんで!?()()私の推しが死んじゃった!!!!!

 うゔぅ!涙と鼻水が止まんないよぉー!!!


「ぐすっ!あんまりだよこんなの!なんで私の推しは絶対に死んじゃうの!?なんで死んで完成みたいなキャラ造形にするのさ!?こんなのってあんまりだよ!!!」


 怒りに任せて漫画を勧めてきた友人にメッセージを送る。


『私の推しが死んだんだが…!?』

『フェデリックでしょ笑

 絶対、れいなの推しになると思ってた』


 なんやこいつ!わかってたなら先に言っとかんかい!いやネタバレは絶許だけど!

 なーんでまたこんな苦しい思いしなきゃなんだよ!


「確かにキャラの死は作品の良いスパイスになると思うよ!?でも、そんな彼らを好きになった私たちはどうしたら良いっていうのさーーーーーーっ!!!!」


 だんっ!!!


 近所迷惑も気にせず、怒りのままに台パンを披露した。しかし、それが悪かった。


 普段なら滅多に使わないハサミを、たまたま今日はパジャマのほつれた糸を切る為に出していて、ズボラな私はそいつを手のすぐ届くところに放置しており、たまたま机から半ばはみ出す形でハサミちゃんはスタンバイしていて、更にはたまたま振り下ろされた私の拳がハサミちゃんの持ち手部分にぶち当たった。


 その結果、どうなったと思う?


 先端の鋭く尖った裁ちバサミはくるくると回転し、それは見事な放物線を描きながら、真っ直ぐ私の眉間に飛び込んできたのだ。


 しかも、こんな時に限っていつもなら掛けているメガネを涙を拭く為に外していた。

 メガネガードも敵わないときたら後はもう分かるよね?


 そう。妙に全てがゆっくりに見える中、縦回転しながら愛犬の様に勢いよく飛び掛かってくるハサミに立ち向かう術は無く、最後には刃先がこちらに向いたところが目に入り、そのまま…


 どすっ!


「おげっ」


 ばたーん!


 …

 ……

 ………


 死〜ん………


 …

 ……

 ………


「はっ!し、死んだ!?………あれ?ここどこ???」


 目を覚ましたのはそれから5分かそれとも1時間以上後の事かはわからない。

 だって…、


 チュンチュン

 ギャーギャー!

 ガルル…!

 ぷっちょ!


 だって、目が覚めたら森の中にいたんだもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ