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第10話 学級裁判なんて普通はやらない

【前回のあらすじ】


 こんにちは!愛里寿なのだわ!

 ある日のこと、愛里寿の王子様であるお侍様こと撫子さんが、お堅すぎる緑原の悪徳生徒会長にいじめられたのだわ!

 けれどお侍様は慈悲深い方だから、悪徳生徒会長に手出しをせず見逃してあげたの!素敵!

 でもね、お侍様はきっと傷心されているのだわ。だから愛里寿がお侍様を助けてあげるの!

 一方的にいじめたあの悪徳生徒会長を愛里寿は許さないのだわ!生徒会長と決闘の今日!愛里寿がコテンパンのけちょんけちょんにしてやるのだわーーッ!!



「あ、愛里寿さん……話が全く合ってないです……」


「!!!あなたはさっきの泥棒猫!!そう!愛里寿にも恋敵が現れたのだわ!こっちも負けないのだわーーッ!!」


「恋敵?こ、コスモ!!また余計なことを!!」



 ┌─────────────┐

   某月某日 午後16時45分

  緑原学園中央棟1階 多目的室  

 └─────────────┘


「ふん、逃げずに来たようだな如月撫子」


 教室前方の黒板前に置かれた教壇を中心にした両側に、教室の端に畳まれていたスチール製の長机を置いて、本物の裁判所のような配置で席が作られている。

 教壇から見て右手側の机にいるのは樹、小蘭、鵺一の三人。そして、左手側にいるのは生徒会長、副会長の二人。弁護側と検察側、と言ったところだろう。

 両者が向かい合う真ん中にも、空き教室から借りてきたのか木製のいつもの机が置かれている。これが証言台なのだろう。今は、被告人である撫子がそこに立っていた。

 教室の後方には並べられた椅子達。全て生徒で埋まっている。わざわざ生徒会は傍聴席まで用意したようだ。しかし、裁判長が居るべき場所には誰もいない。裁判という触れ込みだったが、あくまでも討論という形をとったようだ。


 検察側の生徒会長、海老沢龍臣(えびさわたつおみ)は、撫子を見やると顔をしかめながらフン、と鼻を鳴らした。そして、視線をその奥の弁護側に移す。


「しかし、よりによって下級生に弁護を頼むとは。貴様、勝負を捨てたか?」


 そう言う龍臣はどこか余裕そうに笑みをこぼす。

 海老沢龍臣、緑原学園生徒会長に君臨するこの皇帝は、同時に緑原学園一の切れ者。頭がいいのはもちろんだが、知略策略諜報活動などにも抜け目がない。彼の前では、どんなに誤魔化そうと策を巡らせたとしても通用しない。先回りで潰しにかかるか、正面から壊しに来るだけだ。

 小手先だけの話術は効かない。彼が納得する証拠をぶつけなければ、彼は決して頷かない。己が見たものしか信じない。


 今回の件によほど自信があるのか、龍臣はどっしりと構えている。そのせいか、樹達を見る目は高圧的で完全に見下していた。


「そうして踏ん反り返ってるがいい、神原は貴様なんぞに負けん」


 龍臣の態度に臆することなく、撫子もまた自信満々に胸を張りながら返した。そして勢いよく樹達の方へ振り向くと、


「そういうわけだから絶対勝つんだぞ!」


 と、すっかり安心しているのか笑顔を見せる。


「まったく、自分はやらないからって……」


 容赦なくプレッシャーをかけてくる撫子に樹は苦笑いした。


「樹ィ、生徒会長はやっぱり何か仕掛けて来るのカナ」


 その横から小蘭が不安そうに尋ねると、樹は顎に手を当てて龍臣をじっと見据えた。


「まあ、何も考えてないってことはないはずだ。だって、あの『海老沢』の従弟なんだからな……」


 樹の脳内に浮かび上がる、癖のあるウェーブがかった龍臣より少し長めの黒髪に、人を馬鹿にするような吊り上がった瞳、その上にインテリぶったように赤縁眼鏡をかけた顔。樹よりも断然体型ががっしりしていて、樹がどんなに拒絶しても構ってきて兄を気取ってくるクソ海老ピラフ野郎。脳内のそいつが「龍臣に勝てないようじゃ、樹くんもまだまだでちゅねえー」と馬鹿にしてきたような気がして樹はイラッとした。


「だー!!あのクソ海老ロブスター野郎め!!これが終わったら文句言ってやる!!」


 頭を掻きむしりながら喚く樹に、小蘭と鵺一は顔を見合わせ目配せで会話した。


(樹って、なんだかんだで海老沢サンのこと好きダヨネ)


(そうだな、俺達の中で一番海老沢さんに懐いてるよな)


 そう頷き合う二人には気づかないままで、樹は龍臣を睨みつける。その視線に気づいた龍臣も、眉をしかめて負けじと樹を睨みつける。向こうも向こうで、樹には何か別の思いがあるようだった。


「ではみなさん準備万端のようですし、早速始めましょう」


 静かに火花を散らす両者の間を、生徒会副会長の夏芽が割り込むように裁判を進行させた。


「まずはこちらの主張からですね。僭越ながら私が説明させてもらいます」


 夏芽はそのまま手元に持っていた手帳を広げ、そこに書かれた内容を読み上げた。


「今週月曜日の放課後、被害にあった男子生徒は裏庭で休憩中でした。

 そこに風紀委員長の如月撫子さんが現れ、校則違反をしていないかと男子生徒に絡みます。

 何も違反はしていないと男子生徒が否定するも、如月さんは聞く耳を持たず、言うことを聞かない男子生徒に痺れをきかせて手持ちの竹刀で殴打。

 男子生徒はすぐにその場から逃げ出し、校庭に出たところで生徒会長に遭遇、それで今回の件が明るみに出た、というわけです」


 夏芽が概要を説明をし終えると、傍聴席に座る生徒達がざわつく。信じられない、という生徒と、いつかやると思った、という生徒が半々のようだ。


「まあそうだと思ったケド、撫子さんから聞いた話と違うネ」


「そりゃそうだ、向こうは最初からそういう主張なんだからな」


 あくまでも撫子を黒としたい生徒会の主張に、樹も小蘭も鵺一も特に驚きはしなかった。だが、これを通すわけにはいかない。


「では、反論があるなら聞いてやろう。どの道、俺が全て論破してやるがな」


 夏芽の横で相変わらず腕組みをし高圧的な態度を取り続ける龍臣は、ふふん、と得意そうに樹を見下す。完全に馬鹿にされているようだ。いや、それほど自信がある、と言ったところか。

 樹は龍臣の顔を見る度に、クソ海老水族館野郎の顔がチラついていた。ここで負けたら、そしてそのことが知られたら、きっと死ぬまでからかわれる。それだけは絶対に嫌だった。


「なら、今の内容を否定させてもらうっす。

 撫子さんによれば、その男子生徒は喫煙をしていた。立派な校則違反な上に、再犯だって話だ。

 だから実力行使に出るしかなかった。確かに殴ったのは問題かもしれないけど、少なくとも何もしていない人間を殴ったわけじゃない。何かしたから殴ったんだ。

 撫子さんは理不尽な暴力を振るったわけじゃない」


 樹の反証に、再び傍聴席がざわつく。しかし、龍臣が机を強めに叩くと、すぐにしん、と静まった。


「異議ありだ。

 何度も言うが、喫煙していたと言う証拠は?俺が男子生徒から話を聞いた時は、男子生徒はタバコなど持っていなかった。

 物的証拠もなく、ましてや被疑者本人の証言など証拠としてあてにならん。

 そんな反論は認められんな」


 薄ら笑いながら首を振ると、龍臣は付け加えて補足する。


「もちろん、俺も念のため裏庭を確認済みだ。

 現場だけでなく、ゴミ袋に捨てられていないかも含めてな。

 だが、それらしいものは何も出てこなかった。これが全てだ」


 どうだ、言い返せまい、とでも言うかのように、得意げな顔で樹を見る龍臣の姿に、傍聴席から感嘆の声が漏れた。が、樹は涼しげな顔で龍臣に淡々と返す。


「それ、いつ確認したんすか?」


「ふん、裏庭の確認をしたのは次の日の昼休みだ。ゴミ袋も同じくな。

 掃除は放課後に行われるからな。昼休みの間であれば、掃除されてしまう前の状態で確認ができる」


 返ってきた答えに、樹はニヤリと笑った。


「じゃあ、駄目っすね。それは証拠にも根拠にもならない」


「なんだと……?」


 樹の発言に龍臣が顔をしかめると、樹は説明を始めた。


「当日調べなかったのは痛手っすねー。逆に言えば、事案が起きた直後から次の日の昼休みまでに証拠隠滅といった工作が図れたってこと。その間に男子生徒が喫煙していたと言う証拠を消した可能性だってある」


「当日に確認しなかったのは、こんな騒ぎになるとは思っていなかったからだ」


 龍臣も顔色を崩さず、樹の反論に返す。


「それに言っただろう、俺はゴミ袋も調べたと。

 仮に現場工作が昼休みまでに行われたとしよう。だがそれならばゴミの中から出てくる可能性が高いはずだ。

 出てこなかったと言うことは、工作は行われていない証拠になる」


 そんな簡単なこともわからないのか、と龍臣はやれやれと頭をわざとらしく振ってみせた。しかし、樹の笑みは消えなかった。


「だから、それが一番駄目なんすよ。

 会長さんさあ、うちのゴミ出しスケジュールって知ってます?」


 その問いかけに龍臣は、はあ?と言う顔をしたので、樹は小蘭に目配せすると説明を促した。小蘭は軽く頷くと、拡大コピーをしてきた緑原学園近辺のゴミ出しカレンダーをパッと広げて読み上げた。


「月曜日は資源ゴミ、火曜日は燃えるゴミ、水曜は金属類や燃やせないゴミ、木曜日は粗大ゴミ、そして金曜日はもう一回燃えるゴミダヨ」


 龍臣の顔が固まる。小蘭の読み上げで気づいたようだ。すかさず、樹は畳み掛けた。


「事案が起きたのは月曜日。次の日の火曜日は燃えるゴミの日。仮に事案直後に証拠隠滅されたとして、それがゴミとして捨てられていたら、ゴミ袋から出ないのは当然っすよ。だって、朝には燃えるゴミは全回収されてて学園には残ってないっすから!」


「っぐう!」


 穴を突かれ、龍臣が少し焦った顔を見せた。樹はそれを見逃さずにとどめを刺す。


「つまり!会長さんの調査は全くの無駄!何も出なかったことが工作をしていないという完璧な証拠にはならないんすよ!!」


「ぐああああっ!!」


 樹の攻撃に、龍臣は見えない何かから攻撃を食らったように仰け反ると、ギリ、と歯を食いしばり樹を睨みつけながら腕をつく。傍聴席からは歓声が上がった。

 どこかで見たような反応だが気にしないでほしい、そういうものだ。

 しかし、開幕から一発相手に泡をふかせることが出来た。これで龍臣も理解して態度を改めるだろう。樹は舐めてかかれる相手じゃないということを。


「静かに……!静かにしろ……!」


 ダメージを受けながらも、龍臣は生徒を鎮める。そして、ゆっくり体勢を元に戻すと、フッと最初のキリッとした顔に直す。


「確かに、工作をしていないという証拠にはならない。だが、それは事案直後の放課後の間限定の話だ」


 どうやら龍臣は直ぐに樹の主張を確認し直し、投げ返す武器を探し出したようだ。その通り、龍臣は樹の攻撃をさらに尖らせて返してきた。


「ゴミ回収は火曜の朝、生徒の登校時間よりも前だ。ならば、朝登校して昼休みまでの間であれば工作をしてゴミとして捨てた場合ゴミは残る。次の回収は金曜だからな。

 それでも出てこなかったということは、つまりこうとも言える。工作したという証拠もないとな!!」


「それなら証拠がある!」


 樹は食い気味に反証を断ち切ると机の上に透明なビニール袋に入れられた白い何かと、写真をばんと叩きつけた。


「この袋に入っているのはタバコの吸い殻っす。昨日裏庭でオレ達が見つけた。

 そして、この写真は吸い殻が見つかった場所の写真。わかります?不自然に土が盛り上がってるの。ここを掘ったら中からこの吸い殻が出てきたんすよ」


 樹は気持ちのいいくらい生意気な顔でニイイと口角を釣り上げた。


「誰かが土を掘って吸い殻を隠したってこと……これは証拠隠滅を図った立派な証拠だ!!」


 喰らえ!と言わんばかりに、樹はビシィと龍臣をまっすぐ指差した。だが、その龍臣はその主張に臆するどころか笑っていた。


「で、だからなんだというのだ?」


 龍臣の言葉に、樹は呆けた顔をする。不利な状況で頭がおかしくなったのだろうか?


「だから、証拠隠滅を図った証拠だって言ってるんすよ!」


「そうだな、誰かが誤魔化そうとした事実があったことは認めよう。だが、論点はそこではない」


 そこで一度言葉を区切ると、龍臣は樹に哀れむような表情を向ける。


「すまない、先程の俺の言い方が悪かったようだな。

 俺は工作が図られた証拠はないと言った。それは、()()()()()()()()()()()証拠はないという意味だ。

 貴様らがしたことは工作が図られていないという証拠はないことを立証したのと、そこから()()()証拠隠滅を図った事実を証明しただけだ」


 龍臣はふう、と呆れたようにため息をついた。


「俺が知りたいのは、それを()()()()()()()()()という点だ。今の貴様らの話では、その点は証明できないようだな。であれば、この工作の話も本件とは無関係な別件であり、証拠や理由としては成り立たん。

 貴様らの反証は、全く価値も力もない世迷言だったというわけだ」


 形成逆転、と言わんばかりに胸を張る龍臣に同調するように、傍聴席からおおっ、と声が上がる。そして、この反撃にどう出るのかと、生徒達の視線は樹に集中した。樹の表情は涼しげなままで変わっていなかった。


「それなら、さらに証拠があるっすよ」


 樹は淡々と告げると、再びバン、と机の上に何かを出す。


「これは、撫子さんが例の男子から取り上げたタバコっす」


 樹は言いながら、証拠品のタバコの箱を開けると中から一本取り出す。そして、少し前に出した袋に入ったタバコの吸い殻と、今取り出したタバコを並べるように持ち上げて見せた。


「ほら見てください。裏庭から見つかったタバコの吸い殻と、男子から取り上げたタバコ。銘柄が同じなんすよ」


 確かに樹の言う通り、両手に持つタバコの吸い口近くに印字された銘柄は全く同じものだった。


「ねーえ会長さぁん、どーして男子から取り上げたタバコとおんなじ銘柄のタバコが裏庭に落ちてたわけぇー?」


 憎たらしくニタニタと笑ってタバコをぴらぴらと揺らしながら樹は龍臣に問いかけるように話を続ける。


「これではっきりしたでしょ?事案の後、男子は自分が裏庭で吸っていたタバコを土の中に埋めて隠したんすよ!……つまり!」


 ダン、と机を強く叩くとギッと龍臣を睨みつけて得意げに笑い結論を叩きつけてやる。


「男子生徒は会長に嘘をついて撫子さんに冤罪をふっかけた後、証拠隠滅を図って自分の潔白をでっち上げて撫子さんを嵌めようとしたんすよ!!」


 わあっと傍聴席がどよめく。生徒達は樹の綺麗な返しにすっかり納得したのか、樹を応援する声が多く聞こえてきた。


「うーん、何かワタシ達いなくても平気そうダネ、コレ」


「確かに作戦会議の必要もなさそうだ。そもそも樹は俺達の頭脳だ、余程のことがない限りこいつが負けるわけない」


 一気に場の流れをこちら側につけた樹を見て、小蘭と鵺一が最初の不安は杞憂だったかと一息ついた瞬間、ざわつく教室内を制するように龍臣が机を強く叩いた。


「甘い!」


 しん、と即座に静まる教室に、龍臣の鋭い声が響く。龍臣の表情は、まだ負けを認めていなかった。


「甘い、何もかも甘いぞ神原!

 確かに銘柄は同じだ。だが、種類までが同じだとは限らない」


「ヘ?種類?」


 龍臣の言葉に、樹ではなく小蘭と鵺一が呆けた顔をした。そんな二人の反応を見て、龍臣はやはりか、とため息をつきながら再度呆れたように首を振る。


「同じ銘柄のタバコでも、種類があるものがある。

 貴様らが提示したタバコはまさに種類があるものだ。

 ロングタイプとショートタイプ、といった風にな」


 さて、と姿勢を軽く正し腕を組み直すと、龍臣は性格の悪そうな笑みを浮かべる。


「見たところ箱の方はショートタイプのようだが、果たして吸い殻の方もショートなのだろうか?

 ショートとロングはその通り全長が違うが、吸い口のフィルターと呼ばれる部分の長さに違いはないと言う。

 吸い口部分しか残されていない吸い殻が、ショートだったのかロングだったのか。この状態ではわかるはずもない。

 そんな曖昧な証拠で同一のものだと結びつけるのはいささか横暴ではないのか神原樹ッ!!」


「ぐ、ぐおおおおッ!!」


 龍臣の反撃に、今度は樹が見えない何かに殴られたように仰け反ると、苦い顔をしながら机にしがみつく。


「い、樹ィ……大丈夫ナノ……?」


 小蘭が心配そうに声をかけると、樹は小蘭と鵺一にだけ聞こえるぐらいの声で二人にポツリポツリと話す。


「盲点だった……言われてみれば、タバコには種類がある」


 樹は悔しそうに唇をギリ、と噛みしめる。


「でも吸い殻の方が同じ長さだったかなんて、今となっては確かめるすべがない、燃えて無くなっちまってるんだから……」


 そう続けて、樹は机に両腕をつくと、両手を組んで額に当て頭を支える。


「同じ銘柄だと示せば、男子が喫煙していたことの証明になるのだと思っていたのに、覆されてしまったな……どうするんだ樹」


 やはり一筋縄ではいかず、なかなか手強い龍臣の返しの一手を受けて、鵺一は不安げな顔をする。その横で樹はとにかく頭をフル回転させて打開策を講じていると、はた、と何かに気づいて、小蘭と鵺一に向かって大丈夫だと頷くと、向こう側で勝ち誇った顔をしている龍臣へ視線を戻す。


「そうっすね、この箱に入ったタバコと吸い殻が本当に同一の種類のものかは証明できない。

 でも、よく考えてくださいよ。このタバコの箱って、撫子さんが男子生徒から取り上げたやつっすよね?

 なら少なくとも、撫子さんの行動には正当性があった!突然殴りかかったという話は嘘になる!」


 そうだ、今はタバコが同一のものなのかと言うより、男子がタバコを持っていた事実を証明すべきだ。仮に別のものだった場合、また別の人間がそこで喫煙を行なったことになるのでそれはそれで問題がありそうだが、今この場で争うべき論点はそこではない。撫子の行動に正当性があったかどうかを証明するのが今回の第一の目的だ。龍臣はおそらく論点がずれてきたことに気付きながらも上手いこと乗っかり返り討ちにして向こうのペースに持ち込んだのだろう。

 だけど、なんだろうこの違和感は。まるで最初から、この答えを用意していたかのような……。


「ほう、気づいたか。ただの頭でっかちではないようだな」


 自分に食らいついてきた樹に、龍臣は感心したように少し顔を綻ばせる。


「だが、そのタバコの箱が本当に男子生徒の持ち物なのか証明できるのか?如月が己の保身のために後から用意したものかもしれん」


「はあ!?何を言う!私がそんな姑息な真似をするわけないだろう!」


 証言台に立ったままの撫子も、これには流石に声をあげた。が、龍臣の表情は崩れない。


「うるさいぞ如月。今の貴様に発言権は無い。黙っていろ」


 ぴしゃりと抗議を拒絶され、撫子は渋々口をつぐむ。


「それで神原。貴様は証明できるのか?その箱は男子が持っていたものだと。そして、それを如月が取り上げたのだと」


 腕を組みながら樹に尋ねる龍臣だったが、その表情と態度からは証明などできるはずがない、と言いたげな雰囲気が出ていた。

 樹は薄く笑った。


「出来るすっよ。証人がいる」


 その言葉に、龍臣はほう、と呟きピクリと眉を動かす。


「ならば召喚すればいい。だが、その証人というのはよもや如月撫子の弟のことではあるまいな?如月本人には言ったはずだ、身内の証言ほど信憑性に欠けるものは……」


「昴くーん!証言台にカモーン!」


 ネチネチと文句を言う龍臣を遮るように、大きな声で樹が昴に呼びかけると、傍聴席の中から恐る恐る昴が裁判席に出てきた。

 撫子が昴の背中を頑張れってくれよ、と言わんばかりに叩いてから場所を譲り、入れ替わりで昴が証言台に立つと、龍臣はわかりやすく顔をしかめ舌打ちをする。そんな龍臣に昴もわかりやすくビビり、ビクッと肩を跳ねらせる。


「んじゃー昴くん、自己紹介と証言をどうぞ!」


 カチコチに固まっている昴に樹がそう声をかける。が、


「あ……あう……ぼ、ぼく……う……」


 と、昴はガチガチになったまま呻くような片言しか喋れない。


「……ダメそうだなあれ」


 昴の緊張しまくった様子に、樹は大きくため息をつくと鵺一に目配せをする。樹が何をしてほしいか察した鵺一は、弁護側の席から証言台に立ち尽くした昴の元へ移動すると、昴のブレザーのポケットから折りたたまれたコンパクトミラーを取り上げた。


「すまない、昴の代わりに証言してやってくれコスモ」


 鵺一がそう昴に語りかけながらコンパクトミラーを広げ、鏡を向けると、ドクン、と昴が目を見開いたかと思いきや、腕に巻いた白いスカーフをするりと解いて、頭にリボンカチューシャのごとく巻きつけるとてっぺんでうさぎの耳のように結んで固定した。


「まったく、スバルはこう言う場に弱すぎるのよねー」


 そう発言する昴は、完全に別人だった。


「あ、自己紹介だよね。私はコスモ。この外見、中等部1年の如月昴のもう一つの人格やってまーす。ちょっと前の騒動で知ってる人も多そうだけど、スバル共々よろしくねー」


 ニコッ、と笑顔で自己紹介をする証言台に立つ人物は、先ほどのガチガチに緊張してオドオドしていた昴とは別の存在だとはっきりわかるぐらいに性格も仕草も違っていた。

 傍聴席の生徒の大半は、例の騒動の真相を噂でしか聞いたことがなかったのか、いざ実物、というよりその噂の本物を目の当たりにして驚いたようでざわついている。

 もちろん、多重人格を否定していた龍臣も、冷静を装ってはいたが実物を見て驚きを隠せないのか、目を見開きコスモを凝視していた。


「……で、樹さん、証言でしたっけ?」


 挨拶をした後、コスモは弁護席に顔を向けると樹に確認を取る。樹が軽く頷いたのを見ると、コスモはちらりと検察側の龍臣達を見やってから正面を向いて口を開いた。


「おっけー、任せて!あの時表に出てたのはスバルだけど、記憶は基本共有してるから大丈夫よ!」


 そしてコスモは自信満々に証言を始めた。


「そうね、どこから説明したらいいんでしょう。あの日……今から四日前の月曜の放課後ね。あの時は撫子お姉ちゃんと一緒に風紀委員のパトロールをしてたの。私達は委員会に入って間もないから、色々教えてもらおうと思ってくっついてたのね。

 それで、裏庭に移動したらタバコを吸ってる男子生徒を見つけて……これで四回目だってお姉ちゃん言ってたなあ。

 で、またお姉ちゃんが口頭で注意してもまったく反省する素振りがないから思わず竹刀で殴っちゃったみたい。その時に男子が持っていたタバコの箱も取り上げてたよ。樹さんが見せてた白い箱のやつ」


 覚えてるのはこんなとこかな、とコスモが証言を終えると、龍臣は渋い顔で腕を組み考え込んでいた。

 その様子を見て、樹はしたり顔をする。


「どうっすか会長さん?これ以上ないくらいちゃんとした証言でしょ?」


 樹だけでなく、小蘭と鵺一もニタニタと龍臣に悪そうな笑みを向ける。その嫌な視線を受けながら、龍臣が苦しそうに口を開く。


「いや……この証言は認められん……別人格が見たこと証言するなど……要は別人の体験をあたかも自分のことのように騙るのと同じでは……」


 と、ブツブツと、どちらかといえば自分に言い聞かせる様につぶやいていたが、横にいる夏芽が顔を覗き込み、龍臣がそれに気づいて夏芽を見たのを確認してから、ゆっくりと首を振った。


「会長、別人格とはいえ同一人物です。記憶も共有しているなら、本人が証言した、と言い切れるでしょう」


 夏芽の言葉を聞いて、龍臣は「やはりそうなるか……」と呻く様にポソリとこぼすと、一度咳払いをして姿勢を正してから樹達に向ける視線を凛としたものに戻す。


「証言を認めよう。そのタバコは如月撫子が取り上げたものだ。念のため確認だが、嘘はついていないな?もしついていたら、その時は覚悟してもらうぞ」


 と、変わらず顔はしかめたままコスモの証言を通した。

 それを受けてコスモはにっこりと笑うが、すぐに顔を崩すと首を傾げた。


「というか、今までの流れを見てて思ったんだけど、どうして被害者だって言ってる男子生徒に話を聞かないの?」


 コスモの言葉に、教室にいる全員の時が止まった。


「だってそうでしょう?普通は被害者が色々情報を持ってるものだよ。なのにどうして話を聞かないの?もしかして、話せないのかな?話したら今までの主張が嘘だってバレるから……」


 樹は、コスモがわざと煽る様な言い方をしていることに気づき、小蘭と鵺一にも目配せで伝え、あえて黙っていることにした。確かに被害者の男子は情報収集中に会うこともなく、接触したのは生徒会側のみであり、その生徒会も積極的に裁判に呼び出そうとしている風には見えなかった。おそらく男子が証言を拒否しているか、生徒会が証言をさせたくないかのどちらかだろう。であれば、立つことはないであろう被害者の召喚を待つよりもこの煽りに釣られて男子が飛び出してくれたほうが都合がいい。

 だが、男子もコスモの意図に気づいたのか、出てくる気配がない。


「……野郎、ここまで言われても無視するとは、このまま雲隠れするつもりか」


 樹は少し苛立ちながら様子を伺っていたが、そのイライラもすぐに収まってしまった。

 結論から言えば男子が名乗りをあげることはなかった。しかし、思わぬところからの援護射撃が発生し、男子を引きずり出すことに成功したのだ。


「ふむ、確かにここまできたのなら本人に聞くべきだな。いいだろう、被害者の召喚を認める」


 そう淡々と涼しい顔で言い放ったのは、龍臣だった。

 龍臣は発言の後、席から立つとそのまま教室の前方の扉をガラリと開けて廊下に出て行く。するとその廊下から、件の男子生徒の腕を引っ張りながら戻ってきた。男子は廊下に待機して裁判を聞いていたようだ。

 男子生徒はしきりに「話が違う!」「約束が違う!」と喚いていたが、龍臣はピクリとも表情を変えずにそのまま男子生徒を証言台へと連行した。


「では君、名前と証言を。ただし君は被害者なのだから、もし名前を言いたくないのであれば匿名でも構わん」


 淡々と証言を促す龍臣に、男子生徒は掴みかかった。


「話が違うじゃねえか!話したくないって俺は言ったぞ!そうしたらそれでいいって言ったじゃないか!」


 胸ぐらを掴み上げガンガンと揺する。だがその腕をガッと龍臣に握られたと思うや否や、ギリギリとかなりの力で締め上げられた。

 痛みに小さく悲鳴をあげ男子が手を離すと、龍臣は軽く襟元を正し続けた。


「事情が変わった。相手はとことん君を悪者にしたいらしい。君が冤罪なのであれば、それを彼らに証言するだけで勝てる話だと思ったんだが、話すと都合が悪いのか?そうなると我々を騙した、ということで別の処罰が降るわけだが?」


 威圧的な口調に、男子生徒は凄んでしまう。しばらく沈黙が続いた後、男子生徒は「……わかったよ」と罰の悪そうな顔で当時のことを話し始めた。


「月曜の放課後、俺は裏庭で涼んでた。そうしたらあの風紀委員長がやってきていきなり引っ叩かれた。それだけだ。

 タバコの吸い殻?俺は知らねえ。別の人間が隠したんだろ?

 そのタバコの箱だって俺のじゃねえ。風紀委員の奴らが用意した偽の証拠だろ?証言だって嘘だ、風紀委員で口裏あわせてんだろ」


 ふん、と吐き捨てるように今までに立証されたことを全て否定すると、もう何も話すまいと口を固く結んでしまった。


「あんたは、これまでに裁判で出た話は全部違うと言うんすか?それこそそう言い切れる証拠は?捏造してると思った根拠は?」


 樹がそう質問を投げかけても、男子生徒は口を割る気はない。本当に、これ以上は何も喋らないつもりだ。


「……なら、話を変えるっす。火曜日は何をしてましたか?」


「はあ?」


 急な話題変更に、男子は呆けた顔を返す。


「火曜に俺が何してたかなんて関係ねえだろ」


「生徒会長に依頼を頼んだのはいつっすか?」


 男子の抗議に間髪入れずに次の質問を放り投げる。


「……一昨日だよ。水曜日だ」


「なるほど。で、火曜日は何をしてましたか?」


 答えを返すと、樹は再び質問を繰り返した。


「だから、関係ねえだろ」


「そうっすね。で、火曜日は何をしてましたか?」


「しつけえぞ、答えるかよ」


「そうっすか。で、火曜日は何をしてましたか?」


「おい、いい加減にしろ」


「うっす。で、火曜日は何をしてましたか?」


「てめえ!!」


 押し問答にうんざりした男子は、ダン!と証言台替わりの机を強めに叩いて威嚇した。


「関係ねえっつってんだろ!!」


 声を荒げてジロリと睨むと、裁判の会場はさらに静まり返った。少しでも声を出せば、間違いなく男子生徒に何かされる。そんなピリピリとした空気に包まれながらも、樹だけは涼しい顔で淡々と次の発言を始める。


「そうっすか。だったらなんで素直に体育館裏を掃除したって言ってくれないんすか?」


「だから関係……てめえ、なんでそれを」


 突如崩されたループに動揺で素が出たのか、男子はそこまで言うとすぐに気づいて口をつぐむ。その様子に、なんだなんだと傍聴席がざわつく中で、樹と小蘭、鵺一だけがニタア、と悪い顔を浮かべた。


「やっぱセンパイだったんダネ、あそこ掃除してくれたノ。良かったヨー人違いじゃなくテ!」


 小蘭の嫌味じみた台詞に、ハッとした男子が再び声を荒げる。


「てめえら、ハメやがったな!」


 それを聞いて、今度は鵺一がやれやれとわざとらしく首を振る。


「まさかこんなに綺麗にハマってくれるとは。俺は無理だと言ったんだが、どうやら先輩を買い被り過ぎていたようだな」


 どう見ても煽っている鵺一の態度に男子がギリ、と歯ぎしりを始めたところで、樹が攻撃を畳み掛ける。


「ねえどうして掃除してくれたんすか?あんな体育館の裏なんて誰も通らないのに!ねえどうしてっすか?」


「そ、掃除当番だっただけだ」


「なんで嘘つくんすか?あそこの担当は高等部の2-Aっすよ?先輩三年でしょ?」


「まっ、間違えたんだよ!」


「間違えたんすかー!他の外掃除と間違えたんすかー!ってことはよく外掃除してるんすか?」


「……ああ!そうだよ。だから場所を間違えたんだ」


「へえ?それなのにゴミの出し方間違えるんだ?」


「間違えてねえよ!!履いたゴミはゴミ袋に入れて縛って出すんだろ!?」


「ゴミはゴミ袋に溜めて、入りきらなくなってから出すんすよ。袋に半分も入ってない状態で出すとか馬鹿っすか?」


「そんなの知るかよ!!」


 激しい応答を繰り広げると、樹はトドメを刺すべくダアンと机を叩いて身を乗り出した。


「ルールを知らないのはもういい。問題は、その先輩が捨てたゴミ袋の中身だ」


 そう言うと、樹は写真を叩きつけた。


「これはアンタが捨てたゴミ袋の中身の写真っす。……ねえ先輩、この大量の吸い殻、知らないとは言わせないっすよ」


 その言葉の通り、提示された写真に写っていたのはゴミ袋の中に捨てられた大量のタバコの吸い殻だった。

 樹が証人席、検察側、傍聴席にも見えるように写真を掲げると、生徒達はざわついた。しかし、証言台に立つ男子生徒は涼しい顔をした。


「ふん、知らねえよ。俺が吸った、とでも言いてえのか?俺はそれを掃除しただけだ、関係ねえよ」


 きっぱりと言い切る男子に、樹はふうん?と首を傾げた。その意味ありげな態度に男子が睨みを効かせるが、口を開いたのは樹ではなく小蘭だった。


「なんで先生か生徒会に吸い殻のコト通報しなかったノ?」


 その疑問に男子は、はあ?と顔をしかめるが、御構い無しに小蘭は続けた。


「ダッテ、こんなにタバコの吸い殻があったラ、普通は先生に言わナイ?校則違反の生徒がいる可能性もダケド、真っ先に不法侵入を疑うモンだとワタシは思うんだケドナー」


 違うノ?と問う小蘭に、男子は反射的に反応する。


「んなの当たり前だろ、ちゃんと知らせた!先生には言った!これでいいだろ!」


「だから嘘つくなよ、本当に知らせたんなら次の日学園から報告出るだろ」


 容赦なく樹が叩き斬る。彼の言う通り、そんな報告があったらすぐに周知されるのは当然だ。規律がどうより、不審者の可能性を考えて生徒の安全を配慮する方向になるはずだからだ。


「こ、これから言うからいいだろ!」


「いやいや、今から言っても意味ないでしょ。もう二日も経ってる上にオレ達が今言ったから言うみたいなノリ出されても」


 はあ、と呆れたようにため息をつくと、樹は男子を見つめ直した。


「で、なんで吸い殻を隠したんだ。言っとくけど、さっきそれを掃除したのは自分だって言い切ったんだから、吸い殻があったの知りませんでしたは通用しねえぞ」


 樹の問い詰めに男子は目を泳がせる。が、しばらくしてフ、と目の焦点が定まると、ニヤリと口角を上げた。それに樹が気づき眉をひそめると、表情を先ほどまでのふてくされたものに戻し、だるそうに体を反らせた。


「ちょっと待てよ、その話今は関係ねえだろ?なんで風紀委員長に殴られた話をしてんのにタバコの吸い殻見逃したことで怒られなきゃなんねえんだ?お?」


 わざとらしく大声をあげて嫌味っぽく抗議すると、男子は大人しい検察側、龍臣と夏芽の方にぐりんと顔を向ける。


「つーか会長さんよぉ、こいつ黙らせてくださいよぉ。関係ねえことネチネチネチネチ進行妨害でしょぉー。約束破って俺出したんだからそれぐらい責任取れよ、おい!」


 語気を荒げてそう言い放った瞬間、今まで黙ったままだった龍臣が突然笑い出した。

 その高笑いに、男子生徒だけでなく弁護側の樹達、傍聴席の生徒達も驚いて固まると、笑い終えた龍臣は一呼吸置いてから悪役の笑顔という表現がぴったりの笑顔を見せた。


「責任?我々には責任を取る義務も、そもそも約束を守る義務もないぞ。

 我々がいつ、お前の弁護をすると言った?我々は真実が知りたいだけだ。その為には()()()()()()()()()()()()()


「……は?」


 龍臣の言葉に誰もが理解できず呆けていると、次は樹に語りかけてきた。


「いやはや神原、やはり俺はお前を見誤っていたようだ。()()()()()()()辿()()()()()()()とは!

 やはり、奏さんに気に入られているだけあると言うことか。あの、奏さんに……ッ!」


 後半の言葉に感じたのは強い嫉妬の念。だがそれよりも前半の言葉の真意を問うのが先だった。

 こいつは何を言っている?もし、その意味がその通りだとしたら、この裁判自体がそもそも——。

 一人勘づいて唇を噛みしめる樹を見て、小蘭と鵺一はどう言うことだと顔を曇らせる。その様子に、龍臣は満足そうに笑った。


「これも気づいたか。ククク、そうでなくてはな。

 そうだ、この裁判自体が()()に過ぎない。

 ()()()()()()()()()()()()()と言う、大きな目的の前の茶番としてな!」


「てっ、てめえ何言ってんだァ!?」


 唐突なカミングアウトに、状況を飲み込めてきた男子生徒が吠えた。


「喫煙グループってなんの話だァ!?今の流れは俺があのメスゴリラに殴られたのをとっちめる流れだろォ!?それに、俺は吸ってねえって言ってんだろ!!」


 ひとしきりがなると、男子生徒は薄い笑みを浮かべた。


「あれか?お前ついにトチ狂ったか?一年のガキに言いくるめられたからプライド守りたくて便乗したのか?ふざけんなよこの置き物会長がよぉ……でもこれで失脚だな、かわいそうにな!」


 一方的になじる男子生徒の勢いに、教室全体が飲み込まれた。傍聴席からも生徒会に対するブーイングがちらほらと出始める。しかし、龍臣は顔色を一切変えることはなく、男子生徒のいる証言台の向こう側、弁護側の席に座る樹に問いかけた。


「神原、一つ確認だが、そのゴミ袋の中の吸い殻、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「!?」


 この問いに弁護側に座る樹達、先ほど証言をしたコスモだけが目を丸くして固まった。同じ吸い殻があったことは、樹達しか知り得ない情報のはずだ。なぜ、生徒会長が知っている?自分達と同じように証拠を集めていたとしても、男子生徒に不利になる情報を探すわけがない。いや、それはそうだという思い込みに過ぎなかった。生徒会は、龍臣は、最初からそのつもりで話に乗っていたのだ!


「ほう?やはり貴様はなかなか頭が回るようだ。そうでなくては困る」


 一瞬のうちに思考を巡らせ、生徒会の真意を確信した樹の様子を察したのか、龍臣はまた偉そうに上から褒める。そして、まだどういうことかわかっていない小蘭や鵺一、その他大勢の生徒達へ向けて、高らかに言い放った。


「諸君、騙す真似をしてすまなかったな。だが我々生徒会は真実を突き止めたいだけだ。どんな手を使うことになろうとも!」


 大げさに手を振り上げてアピールをし、ふむ、と落ち着くと、今度は隣に座る夏芽に顔を向けた。


「では四ノ季、結論を言ってくれ」


 夏芽は頷き、ニコリと薄目で微笑んだ。


「そこの男子生徒は校内喫煙グループの一員で間違いありません」


 その目は笑っていなかった。


「はあああ!?んだとォ!?使えねえ生徒会がァ!何を根拠に!冤罪だ!冤罪だぞテメェら!」


 当然、その言葉に男子生徒は激昂する。しかし、夏芽も龍臣も表情を崩すことはない。


「冤罪ではありません。証拠はきちんとあります」


 男子の態度に臆することなく、夏芽は淡々と事務仕事のように話を進めた。


「まず、先ほど会長もおっしゃった、裏庭の吸い殻と同じものがゴミ袋の吸い殻の中にあること。

 タバコのブランドは、そうコロコロと変わることはほとんどありません。

 吸い始めの時期は比べるかもしれませんが、種類が偏っていることからその可能性は低く、全員日常的に吸っているものと思われます」


「だからなんでそれで俺がその一員になんだよ!裏庭の吸い殻もゴミん中のやつも俺には関係ねえって言ってんだろ!」


 息巻く男子を無視して夏芽は続ける。


「次に、裏庭の吸い殻は男子生徒のものだということ。これは神原くん達が提示してくれました。

 撫子さんから没収された箱と銘柄が同じなんでしたよね?そうなると貴方が吸って捨てたと考えるのがスマートです」


「はああ!?それなら会長が言ってただろが!ロングとショート、どっちかわからねえと断言できねえって!!」


 ちゃんと裁判を聞いていたのか、男子は龍臣の返しを持ち出して抗議する。しかし、夏芽は苦笑気味に首を振った。


「それは会長のただの負け惜しみですよ。神原くんに負けるのが嫌だからって難癖つけておきたかっただけです」


「余計なことは言わんでよろしい」


 むすっとした顔で龍臣がポソリと呟く。


「ここまでに何か反論はありますか?」


 ニコニコと問う夏芽に怒りを隠せない男子生徒は乱暴に机を叩くと再びがなる。


「反論ないわけねえだろうが!!そんな中途半端な証拠で納得できるとでも!?大体ヨォ、今の全部あの一年のガキが出した証拠だろが!テメエらは容疑者の味方すんのか!?アァ!?テメエで調べてねえのに鵜呑みにすんのか!バカ生徒会がよ!!」


「ふむ、ちゃんと裁判は聞いていたようだな」


 男子生徒の罵倒に反応したのは龍臣だ。少し驚いたような顔で関心したように男子生徒を見る。


「馬鹿にすんなァ!」


 その態度にイラっとしたのか、男子生徒はキレ気味にまた強く机を叩いた。しかし、樹も男子生徒の言いたいことはわかっていた。


「まあ、そうなるっすよ会長さん。だって手のひら返し凄すぎるじゃん。ちゃんと現場を調べて怪しいものは何も無かったって言ってたのにさ、実は知ってましたとか言われても納得できねえし、最初は嘘ついてたってことになるでしょ?心象悪くないっすか?」


 男子生徒に助け舟を出すわけではないが、最初の証言と矛盾した発言は引っかかっていた。生徒会側は、最初に「裏庭からもゴミ捨て場からも何も見つけられなかった」と言っていた。それなのにこの場に及んで急に何を言い出すのか。立場が悪くなったからこちらに乗り換えただけなようにも思えた。

 だが、樹には龍臣がその程度の男には思えなくなっていた。だからこそ知りたい、この矛盾の真相を。


「嘘か。そうだな、そう思われても仕方ない。だが、俺はこう言ったはずだ。()()調べたと」


「だから!それがなんだって…」


「ああああああああ!!」


 男子生徒が龍臣の言葉に反射的に噛み付くが、食い気味に樹が声を上げてそれをかき消した。


「い、樹!?何かわかったのか!?」


 突然大声をあげた樹に両サイドの小蘭と鵺一もびっくりして声をかける。うわあああ、と頭をぐちゃぐちゃ掻きむしると、樹は悔しそうに龍臣を見た。


「確かに、言ってた。「俺が調べた」って。「生徒会が調べた」とは言ってなかった……!」


 やられたああああ!と再び頭を掻きむしる樹のそばで、どういうことかと訝しげに小蘭と鵺一も龍臣の方を見ると、龍臣は勝ち誇ったような表情を浮かべていた。


「そういうことだ。()()吸い殻を見つけることはできなかった。だが……」


()()裏庭の吸い殻も、ゴミ袋の吸い殻も見つけていました」


 夏芽がそう言いながら取り出した写真には、樹達が見つけたものと全く同じ証拠が写っていた。


「「そういうことかああああああああ!!」」


 ようやく言葉の意味を理解した小蘭と鵺一の綺麗なハモリに続くように、教室全体が大きくざわついた。

 こんな単純なトリックで、全員が誤解をしてしまった。しかし、それすらも龍臣の思惑通りなのだろう。これまでの裁判は龍臣が主導で話を進めていた。その話し方や身振り手振りもあって、龍臣の発言が生徒会の総意であるかのように錯覚していた。加えて夏芽が必要最低限のことだけしか話さなかったため、夏芽のことを誰も気にしなかった。

 最初から仕組んでいたのだ。生徒会長と副会長、二人の地位は伊達ではなかったということだ。


「ああ、ただ一つだけ嘘をついていた点は訂正させてもらおう。俺が調べなかったのはこんなことになるとは思わなかったから、と言ったが、これが唯一の嘘だ。本当は、当日すぐに俺が調べに行けば男子生徒が怪しみ警戒され、一斉摘発が難しくなりそうだったからだ」


 龍臣が吸い殻の情報を知っていたのは、夏芽が樹達と同じように調べたから。それを知りながら黙っていたのは、男子生徒に自分は味方だと思わせるための罠。龍臣はあえて表立って動かないことで信頼を築き、その間に裏で夏芽が動いて証拠を掴む。さらに言えば、夏芽も調べていることが男子生徒にも、そしておたすけ屋側にもバレないように、証拠をあえてそのまま残しておいたのだ。きっと本来は、男子生徒が油断しきったところで吸い殻の説明自体を夏芽に全てやらせるつもりだったのだろう。


「だったらなんだよ!!」


 生徒会の策略にざわつく教室を、男子生徒の怒号が切り裂く。シン、と静寂が訪れると、男子生徒はガンガンと机を叩きながら喚いた。


「何度も言うが不十分だろうがよ!箱と同じだとか同じのがあるだとか偶然だろ!大体俺は認めてねえんだよ!俺が認めてねえんだから間違ってんだよ!」


 もはやその様子は理不尽な結果に憤るというより、自分の思い通りにいかないことに対して駄々をこねているようにしか見えなかった。夏芽は笑顔を崩し、悲しそうにため息をついた。


「貴方が箱を持っていたことは確定していて、その箱と同じ銘柄のタバコがあちこちに落ちていた以上、認めざるを得ないと思いますのに……」


 そう首を振ると、出したくなかったのですが、と前置きしてから写真を取り出すと、そのまま無言で全員に見せるように突き出す。そこに写っていたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。


 男子生徒の顔が強張った。


「本当は使いたくありませんでした。ですが会長は手強い相手だと言いますから、私も本気を出させていただきました。

 きっとあなた方は情報共有をまたするだろうと、あなた方が集まりそうな場所全てにビデオカメラをしかけました。頼んだらすぐに設置していただけるんですもの、本当に助かりました。

 証拠が出たらすぐに回収もして頂いて、あなた方に気づかれることなく抑えられました。もう言い逃れは出来ませんよ」


 夏芽が何を言っているか理解できない男子生徒は、口をパクパクさせるだけだ。一方、彼女の妹により散々それを嫌と言うほど味わってきた樹達は、男子生徒に憐れみの目を向けていた。


「私は四ノ季夏芽。()()()()()()()()()()は、こういう風に使うのが正しい使い方ですよ」


 にこりと笑う夏芽だったが、やはり目は笑っていなかった。



 *



 決定的な証拠を出された男子生徒は戦意を喪失したのか、はい、はい、俺は吸いました、と罪を認め、その後の裁判はスムーズに進んだ。撫子と揉めた際に喫煙していたこともあっさり認め、撫子は無罪を勝ち取った。

 男子生徒を含めた喫煙グループは、裁判後すぐに全員召集され、生徒会に連行されていった。どこへ向かったかはわからない。が、おそらくこれから職員会議が始まるんだろうな、と誰もが感じた。


 こうして、おたすけ屋対生徒会の裁判は幕を閉じたのであった。


 これにて閉廷!



 *



 ┌─────────────┐

   某月某日 午後18時57分

  緑原学園中央棟1階 多目的室  

 └─────────────┘



「ありがとうな神原〜〜ッ!!!」


「樹さん〜〜!お姉ちゃん助けてくれてありがと〜〜ッ!!」


 撫子とコスモの姉妹(?)は大声で感謝の言葉を何度も繰り返すと、各々樹の手を取りブンブンと大きく振る。それに合わせて樹の体も大きくガクガクと揺れる。


「わわわわかった、わわわかったからもうやめて」


 揺れながら抗議すると、撫子はやっと手を止めてくれた。

 裁判が終わり生徒会が男子を連れて教室から出て行くと、傍聴席の生徒達も次々と帰っていき、今残っているのは樹、小蘭、鵺一の三人と、被告人だった撫子

 、姉を救うため証言をしてくれたコスモの五人だけだった。


「でもサ、なーんかモヤモヤするヨー。確かにこっちが勝ったんだケド、最後美味しいとこ全部持っていかれちゃったシ……」


 そう小蘭が言うのも無理はない。生徒会の後半の手のひら返しは、その場にいた全員が騙された。確かに龍臣は自ら「男子の弁護をする」などひとことも言っていなかった。立場をうまく演じて言わずともそうだと信じ込ませ、最後に切り捨てたのだ。嘘は言わない、だが本当のことも言わない。それが彼の戦い方で、樹もまんまと引っかかり()()()のだ。


「……オレ、初めて負けたかもしんない」


 冤罪が晴れて喜ぶ撫子とは対照的に、樹は物憂げにはあ、とため息をついた。しかし撫子には、樹が落ち込んでいる理由がよくわからなかった。


「何故ため息をつくんだ神原!私達は裁判に勝ったんだぞ!もっと喜べ!誇りを持て!」


「姉さん、ちょっと黙ってて」


 嬉しそうにしない樹にプリプリ怒る撫子を鵺一が制した。なんでお前まで元気がないんだ!と撫子が今度は鵺一に突っかかりはじめたので、コスモが慌てて撫子を止めようとしているとガラリ、と教室の戸が開けられた。


「貴様ら、まだ残っていたとはな」


 フン、と鼻を鳴らして偉そうに入ってきたのは龍臣だった。その後ろには控えるように夏芽もいる。連行した生徒達の引き渡しが終わり、様子を見に戻ってきたのだろう。


「……負け組をいじめにきたんすか会長」


「ハッ!負け組なのはこちらだろう。勝ったくせに何を不貞腐れているのだか」


 やれやれと言わんばかりに大げさに首を振ると、まだそのままの配置で残されていた検察側の席にどかっと座った。


「……本来ならば、如月撫子も貴様らおたすけ屋もついでに潰す予定だった」


 樹達に目を合わせないまま、龍臣は続ける。


「如月撫子。貴様の風紀を守ろうとする姿勢は評価するが、暴力で物事を解決しようとしすぎなのだ。少しでも言うことを聞かなければ、力で無理やり聞かせる。その横暴は許されるものではない。だからこの冤罪話を利用して、暴力はいずれ恨みで返ってくるぞとお灸を据えてやるつもりだったんだがな」


 撫子もまた龍臣を見ないまま、返す。


「余計なお世話だな。私は私の正義で動くだけだ。そもそも本当に救い難いバカにしか私は手を出さん。そんな奴らから恨まれたとしても、私は間違ったことをしたとは思わん」


「貴様は自分の正義を貫くか。それもまた規律を守る者の務めか。その正義を俺が理解することなど一生来ないだろうがな」


 クック、と少し楽しそうに喉を鳴らして小さく笑うと、龍臣は視線を変えずに次の言葉を紡ぐ。


「そして「おたすけ屋」。貴様らの活動は聞き及んでいる。部活でもなく委員会でもない非公式の団体であり、あたかも店のように物々交換で物事を請け負っていると。ただでさえ非認可の活動である上に、トラブルを起こしては学園を騒がせている問題児の集まり、そう聞いていた。だからこの裁判で俺達に反論すらできないほど論破し醜態を晒させ解体するつもりだった」


 だが、と龍臣は続ける。


「神原、お前は俺の想像以上にキレ者だった。俺と同じ結論にたどり着くなど想定外だ。しかし予定は狂ったが貴様が先に追い詰めてくれたおかげでこちらも仕留めやすかったぞ」


 ここで言葉を区切ると、ようやく樹達に視線を合わせた。


「だから今回は俺達の負けだ。だが覚えておくことだ。貴様らが少しでも変なことをすれば、俺達はまた全力で貴様らを潰しにかかる」


 話は以上だ。と締めると、龍臣は席から立ち上がりスタスタと教室を出て行った。その後に夏芽もペコリと会釈をしてから続いて出ようとしたので、慌てて樹が呼び止めた。


「夏芽さん!あの、質問があるんすけど!」


 樹の声に足を止め、ゆっくり振り返る。


「最後のあの写真、どうして最初に出さなかったんすか。あれだけ決定的な証拠なら、最初に出せば……それに、あれって火曜日の写真でしょ?撮れたらすぐ理事長に見せれば一発で……」


 樹の重箱の隅をつつくような質問に、クスリと軽く笑った。


「あの写真は、()()()()()()()ですよ」


 夏芽の答えに、は?と言う顔をする樹達に夏芽はさらにニコリと笑む。


「言ったでしょう?彼らは()()情報共有するかもしれないって。大量の吸い殻のことを知った会長がそう推察して、それで一昨日から彼らの集合場所何個かにカメラを仕掛けてもらったの。

 背景が外だからわかりにくいかもしれなかったけれど、あの写真は体育館裏で撮られたものではなくて、食堂裏で撮られたものなの」


 それを聞いて樹は即座に記憶のデータベースに問い合わせる。確かに、夏芽が出した写真の背景は体育館裏ではなく別の場所に見えた。

 あの流れとそれまでの証拠のおかげで、誰もが火曜に撮られたものだと錯覚した。だが夏芽はそうとは言っていないどころか、ちゃんと別のものだと言っていた。しかしさりげない言葉すぎて、全員がスルーしてしまった。


「はあー。つまり夏芽さんも会長と同じ話法を使ってたんすか。二段構えされてたらそりゃ勝てねえわ!」


 攻め入る隙を見つけてもすぐに返り討ちにされる見事な生徒会のロジックに、樹は素直に負けを認めた。そんな樹を見て、夏芽は苦笑した。


「会長と似たようなこと言うのね」


 会長が?と話を続けようとした樹を遮るように、今度は撫子がずい、と前に出て夏芽に尋ねる。


「それよりも写真だ。それは理事長は知っているのか?こんな茶番の裁判なんかで使うより、さっさと大人に見せるべきものだろう、どうなんだ?」


「ええ、撫子さんの言うことは尤もです。ですから、すでにお父様、理事長には今日の朝の時点で提出済みです。

 申し訳ないのですが、この裁判の結末は最初から決まっていました。裁判で生徒会が男子生徒を絞り、仲間の情報を得やすく整えた後に、事情を知っている理事長にバトンタッチする手筈だったのです」


「何から何まで完璧に仕組んであるとは、全く嫌な男だな」


 夏芽の説明に、撫子は大きく首を振りながらため息をついた。


「では私は失礼しますね。皆さんも早めにお帰りください」


 話を終えた夏芽は、ペコリと一礼すると教室から出て行った。


「生徒会、か……」


 夏芽を見送りながらポソリと樹がこぼすと、小蘭が背中をバンバンと叩き出した。


「もう切り替えていこうッテ!負けたのは悔しいケド、やっぱり会長はアノ海老沢だったってことでサ!いつまでもウジウジしてんナヨ!」


 どうやら樹を元気付けているようで、それに同調するように鵺一も樹の肩を叩き出す。


「こういう日もあるさ樹。落ち込むのはもうよせ」


「落ち込んでねーしッ!つーかいきなり何だよウザいんですけど!」


 自分をバシバシ叩く二人をガーッと怒鳴りながら弾いた。その様子に撫子が苦笑する横で、一人話についていけないコスモは首を傾げて全員に尋ねる。


「あの、ところでさっきから「あの海老沢」って何度も言ってるけど、会長以外の海老沢がいるの?」


「む、そうか。コスモと昴は海老沢さんとは会ったことないのか」


 そう気づいて、撫子が「海老沢」の説明をしようと口を開く前に、樹が自分のスマホをコスモに見せた。


「海老沢はな、こういうやつだよ」


 画面に映っていたのは、メッセージアプリで樹宛に大量に送られた「海老沢」からの煽りメッセージだった。


 《樹くぅん、龍臣から聞いたぜ、裁判やるんだって?》


 《勝った?》


 《勝った?》


 《ねえ勝った?》


 《龍臣に負けるなんてまだまだでちゅよ〜》


 《勝ったよな?ねえ勝ったよな?流石天才〜》


 一際大きくため息をつく樹と、それを見て苦笑する周りの様子に、コスモは色々察してそれ以上は何も聞かなかった。

もう二度と裁判ネタなんてやらない

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