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第一章「入学」 第十二話「トライアングラー?」

 ○SIDE:SCARLETT


 ●平成二十一年四月五日(日曜)午前十時三二分――【赤月駅前】


 師匠曰く――漢が頭を下げていい状況は四通り。

 一つ、謝罪するとき。

 一つ、感謝するとき。

 一つ、助力を願うとき。

 そして最後に、女の子を怒らせたとき。

 先の三つは常識/道理/人の道。最後の一つは男は辛いよな理不尽。でもまあ――


「遅れて申し訳ありませんでしたぁぁ――――――――――――――――――――ッッ!!」


 今回は完全にこちらの落ち度なんですけどね!

 故に、遅れた謝罪、待っていてくれた感謝……その怒りを鎮めるためならこの頭などいくらでも下げる所存! その気持ちを態度で現すために全力全開でアスファルトに額をグリグリ!!


「……顔をあげなさい。『公共の場』で男の子が土下座などするものではないわ」

「――――ッ!? 申し訳ないです!」


 反省!! そう言えばここは人通りの多い駅前――こんな目立つ事したら人目が集まるのは必然。謝る相手に恥ずかしい思いをさせちゃダメダメ過ぎる! と、怖ず怖ず顔を上げ――


「――ぷにゅ!?」


 たら踏まれた。

 蹴りではなく踏むという行為ッ! 突き放すのではなくグリグリと嬲り続ける精神攻撃。しかも御丁寧に靴&靴下を脱いだ生足――訂正、素足! 否、裸足でッッ!!

 ……うん。特殊な性癖を持つ人には御褒美かも知れないが、俺はノーマルなので恥ずかしいです。視界は塞がれているけど鍛えられた察知能力が道行く人達の視線を感じてメッチャ恥ずかしいです………………見ないでッ! こんな俺を見ないでッッ!!


「いいですか、不知火皐月くん。頭を下げるだけで許されるのは権力持ってるお偉いさんだけですよ。下々の者はちゃんと対価を支払わなければダメなのです。罪と罰の精神です。昔から言いますよね――『地獄の沙汰も金次第』って? 手っ取り早く『命』で支払いますか?」

「――いいわきゃ! いいわきゃちゃちぇてくだしゃいッ!!」

「潔く土下座したかと思ったら、今度はみっともなく言い訳させろですか……なかなか好い性格ですね。恥ずかしくないんですか? 恥ずかしくないんですね。みっともない――アハ☆」

「みっとみょなくてけっきょう! ――あ、あー……謝れば説明もせず許してもらえるなんて思ってないです。言い訳しない俺カッケーとか言う恥知らずにはなりたくないと思います!」

「……ふむ。いいでしょう。その言い訳が面白かったらアナタの減刑をちょっと考えてあげましょうか? あくまで考えるだけで、十中八九『考えたけどやっぱり極刑』でしょうけど」

「いや、減刑とかはいらない、です。事情説明は迷惑かけた方の義務だし……罪にはちゃんと罰おくれ、ってコトで『あれは俺が家を出て……――」



 ――……五分後、説明終了。

 ちなみに中学生二人に唇を奪われたコトは話しませんでした。だってオレ的には事故みたいなもんだし。一方は人命救助だし。本筋には関係ないし。相手を不快にさせないための配慮は大事だし……保身じゃないぞ? そんなことよりも水色さんの反応はいかに――


「へ~、自殺しようとしてた魔法少女を救けて、辻斬りに襲われて、誘拐されそうだったお嬢様を救けたんですか~。凄いですね~。偉いですね~。超カッケー、ですね~」

「……うぐぅぅぅ」


 笑顔でグリグリ再開きたー!

 しかもさっきは土踏まず辺りに重心かかってたのに、今回はカカト――マヂで痛みつける気満々な踏み方。なのに元々の力が無いおかげか地味に良い塩梅でちょっと気持ち良い……。


 ――……あぁ、俺ってばこんな白とピンクでフリフリ満載の可愛いお洋服……そう、お洋服と言う表現しかありえない超可愛らしい服を着た、実年齢は上だけど見た目幼い女の子に大衆の面前で踏まれて喜んじゃってるんだな。もうダメだな。ダメ人間なんだな……。


 コレが罰か、と受け入れ始めた時――その幸せ感触が遠ざかる。ちょっとガッカリしている自分がマヂ気持ち悪い。


「……まあいいです。ここでこんなコトしてても時間の無駄です。そろそろお昼の時間ですから、今後のことはどこかのお店でご飯でも食べながら話し合いましょう。モチロン割り勘ですが、デザート二品奢ってくれるなら遅刻の件はチャラにしてあげます。大サービスですよ」

「へ? そんなんでいいの? ――……ああ。許すフリして叩き落とす感じ?」

「なんですかその性格悪いの!? 違います。そもそも別に許したわけじゃないです。ただ、このままだと私は『せっかくの休日を朝から昼にかけて無駄にした挙句、ストレスだけ溜め込んで終わる』って踏んだり蹴ったり。このまま終わってなるものか! と言う事で、とりあえず悪い事したとは思っているようですし、罪悪感ソレを使ってストレス解消しようかと。まずは美味しいもの食べて、必死で御機嫌とるだろうアナタで遊ぼー、ってだけです。お解りですか?」

「――俺はアナタのことが大好きです!」


 と、感謝感激で溢れる想いのまま抱きしめる。 

 だってこの娘、超優しいんだもの! 自分のためって流れで名誉挽回のチャンスくれるとか慈悲深すぎ! お腹ポッコリ幼児体型は伊達じゃない太っ腹! 胸はないけど懐広い! 海より広い! これはもう、溺れても仕方な――


「ちょぉぉっと待ったぁぁ――――――――――――――ッッ!!」


 いと思った瞬間、空から降り注ぐ声が俺の意識を引き上げる。

 強烈な既視感――具体的に言うと昨日の朝/学校/校門の上/おバカのアレな登場シーン。


「……何をやってる、このおバカ」

「それはコッチのセリフだ、サッちゃん! 『ずっとこの駅を隠れて見てた』けど、初デートで遅刻した挙句、力尽くで手籠めにしようとか、いくらなんでもあり得なさすぎるぞ!?」


 ……手籠め云々は置いといて、ドコで見ていたと言うのだろう、このおバカ?

 さすがに現在立っている駅の屋根の上で、ということは無いだろうが……。


「そんな奴に水ちゃんは渡せねー!」

「水ちゃん、だと……!?」

「フッ。そーさ! 実はビックリ、俺様と水ちゃんは元々知り合いでな……いーや違うな。タダの知り合いじゃねー! 俺様達は中学の時付き合っていた――そう! 水ちゃんは俺様の元カノだったんだよッッ!!」

「なんだってーッ!?」


 悪いのは全部ノストラダムス的驚愕の真実!?

 手っ取り早い確認のために水色さんを見ると――


「えー? この人だーれー? 水ちゃんわかんなーい☆」

「……と、わざとらしい棒読みで言っておられるが?」

「待って、水ちゃん!? 俺様、俺様だよ! 斉藤縁! 斉藤神社のエニちゃんだよ!!」


 そう言って詰襟学生服の上着を『ガバっ!』と開いて髪を解く――と、あ~ら不思議。学ラン羽織ったイケメン『美少女』爆誕☆

 黒のタンクトップ/スポーツブラに包まれた主張控えめな小胸おむね/長い黒髪/キリッとした眼差し(変化なし)/整った御顔(モチロン変化なし)――見た目ハンサムな美少年がハンサムな美少女になりました。コレだから美形ってヤツは……。


「説明しよう――俺様こと斉藤縁くん三月三日生まれの十六歳は心は漢、身体は女な残念イケメンである。女の子大好きなのに身体は女…………愛したいのに愛せない! そんなやるせなさを他者のラブコメを愛でることで解消する哀しき愛の求道者!! それが俺様、ラブコメマスター・斉藤縁ッッ!!」

「お前は一体誰に説明してるんだ、おバカ?」

「俺様のことを知らない道行く人全てに!! ――あと、俺様と水ちゃんが別れたのは、周囲に理解されない関係が『ハッピーエンド』に続かない茨の道だと思い知ったからだ! 俺様だけならともかく、そんな不毛な道を愛するものに歩ませる気はさらさらねー!! でも、同性愛を否定してるワケじゃないんで勘違いすんなよ。世間体ってヤツに負けただけだかんなッ!!」

「あー、うん。確かに世間体は大事――」

「――知らないわ。強引に私のハジメテ奪って、ヤリ逃げしたバカのことなんて!」


 おーっと、ここで爆弾発言投下ぁぁッ!

 ハジメテ、ヤリ逃げ……いやいや、大丈夫。おバカの中身こころはともかく身体は同性。うん。大丈夫、問題ない。オレ的にBLは嫌だけど百合は許容できる。ノーカン、ノーカン。大丈夫、大丈夫。そもそも女性の過去に拘るなど漢の器が疑われ…………うぐぅ……!


「なあ、おバカ……………………………………とりあえず死んどこうか?」

「信じてもらえないだろうが合意の上だったと言っておく!」

「信じるさ――水色さんの言葉を!」

「フッ。サッちゃんならそう言うと信じてたぜ、俺様!」


 その言葉は真実――その証拠に初動で遅れを取る/不意打ち/投擲――迫る影/石ころ/顔面直撃コース――反射/回避/否応なく外された視線/標的消失――再捜索/発見――斜め後ろ/水色さんに手の届く場所/こちらが振り向くよりも速く伸ばされた手が――


「――お姫様抱っこ、だと……!?」


 彼女の小さな身体を抱きかかえ――勢いそのまま、目の前で重なる唇と唇/キス/口吻/接吻――最初は驚いてた水色さんが徐々に脱力/瞳を閉じ、力を抜き、身を任す…………ぐっ、なんか胸がきゅーっとして身体に力が入らない。水色さんがオレのこと完全ロストしてるのが解っちゃうのがメッチャ辛いッッ!


「フッ。じゃあサッちゃん、そーいうことなんで――サラバだ!」

「待、て……」


 そのままクルリと背を向け立ち去ろうとするおバカ&水色お姫様。

 その背中に手を伸ばす――が届かない/足が前に進まない――見ればいつの間にか膝をついていた。コレじゃ進めなくて当たり前。だから立とう、と思った瞬間――


 ゴリッ!!


 後頭部に響く鈍い音/衝撃/痛み――遠退く意識/意志とは無関係に倒れていく身体――それでも『せめて』と後方確認/視界の端/ギリギリ見えた犯人の姿は――


「――春、サン…………な、んで……?」

「……ごめんね、サっちゃん」


 そして俺の意識は闇に沈んだのでした。本日二回目の気絶。そろそろ一回病院行って精密審査受けた方がいいかな……なんて、どうでもいいこと……考え、なが……ら…………。

久しぶりの更新。

なんか最近疲れているのか話を作ろうとすると下ネタに流れ気味……次回は脳内妖精が誕生しちゃう話にする予定?

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