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第一章「入学」 第十話「LOVE☆Phone」

 ○SIDE:BLUE


 ●平成二十一年四月五日(日曜)午前七時五十分――【華乃樹公園・展望台兼駐車場】


 ……『まただよ』と、思わないでもない。


 双眼鏡の向こう側には頭を強く打ち気絶した我が心友の姿。

 そして、魔法少女はそんな彼の身体を弄り……ニッコリ笑顔/ポケットから財布と携帯ゲット――でも、携帯を操作するもパスコードで挫折/ガックリ/改めて財布を物色――現金/硬貨/キャッシュカードを取り出し『ジー』っと見てたと思ったら再び携帯へ……――超ニッコリ満面笑顔/今度は起動成功したらしく、そのまま操作続行――


 ――って、まさかサッちゃん、キャッシュカードの暗証番号をカード裏に書いてた? しかもその暗証番号が携帯のパスコードと同じ?


 そこまで大雑把とは思いたくないが、目の前で起こっている現実が全てを物語っていた。

 魔法少女は自分の携帯も取り出し、今どきの女の子らしく片手で超速操作――たぶん電話番号やメールアドレスを登録しているのだと思われる。ついでに『パシャッ』とカメラ機能で自分を写して……もしかしてサッちゃんの携帯待ち受けを自分の写真にしてる? 変更できないようにロックかけてる? なんでいきなりそこまでするの!? かなり怖いよ!


「……ねえ、おバカ。最近の女子中学生は初対面の男子相手にあそこまでデレデレになれるもんなの? チョロくさいぐらいチョロチョロしい娘でビックリなんだけど……」

「まあ、仕方ないさ…………いや、そうだな。春サンにはそろそろ教えてもいいか」


 なんかちょっとイラッと来るもったいぶった言い方で携帯をかざすおバカ。

 それはサッちゃん盗聴ツールなアプリが入ったスマホ――ボクが見たことのない機種/ちょっと大きめ画面とシャープなデザインがかなり良い感じの逸品。


「これぞご近所のマッド・サイエンティスト、松戸科学まつどかがく爺様お手製スマホ! 正式名称『LOVE☆Phone』。俺様俗称『愛フォン』!!」

「やめてぇぇ――――――ッ!」


 思わず叫ぶバッタモノ感!

 だがおバカは止まらない。これぐらいで止まるなら最初から言わない……おバカだから!


「――アプリ『好き☆いやん』起動!」

「もうやめてよぉぉ――ッ! ホントにお願いだからぁぁ――――ッッ!!」


 普通にスキャンでいいよ!

 変に捻ると変になるんだよ! 解ってよ真理!!

 モチロン、そんなボクの切なる願いは届かない――おバカはマイペースにハイテンションなまま携帯を魔法少女へ向け『カシャ』っとカメラ撮影/窃盗現行犯証拠写真出来上がり?


「論より証拠! 百聞は一見に如かず――さあ、これを見るがいい!」


 俺様のお宝大公開! なノリで差し出された画面には写真ではなくて文字…………うん。アプリの名前から『服が透けるカメラ』を連想しちゃってたからホット一安心。いや、ボクも一応健全/思春期な男子ですからね……という羞恥心を誤魔化すために画面に集中!


『――姓名:未登録 性別:女 年齢:未登録 生年月日:未登録

 キャラクター属性:魔法少女 サブ属性:薄幸美少女

 ●精神強度:一〇八 ●肉体強度:二八 ●魔力容量:四八〇〇〇

 ※強度数値は成人男女平均を一〇〇とした場合。

 アビリティ:【妖精眼・A】魔力素視認、色別、兆候感知。魔法効果プラス補正(五%)/【固有魔法(自然操作)・S】効果プラス補正(六〇%)/【魔法・A】効果プラス補正(五〇%)/【不幸・A】運命力マイナス補正(五〇%)。半径一キロ圏内にいる親しい相手の運命力マイナス補正(二五%)/【生存運・A】生命危機的状況に限り他アビリティによる運命力マイナス補正無効、運命力プラス補正(一五〇%)

 詳細データ:未登録――』


「……なにこれ? なんかのゲームのステータス……?」

「続けてパシャリ♪」


 と、今度はサッちゃんを撮影――スマホ画面に写る画像/写真/重なる文字表示――スキャン開始/完了/既存データ検索/該当アリ/データ更新/完了/暗転/再表示――


『――姓名:不知火皐月 性別:男 年齢:十五歳 生年月日:平成五年五月五日

 キャラクター属性:エロゲ主人公

 ●精神強度:五三〇〇〇〇(+一〇六〇〇〇〇) ●肉体強度:二三〇(+四六〇)

 アビリティ:【妹キラー・SSS】年齢・性別問わず主観で妹認識した対象の心的防御八割減。魅了効果(強)。対象からのマイナス補正無効(プラス補正有効)。対象を庇護する場合に限り精神・肉体強度プラス補正(二〇〇%)。対象の運命力プラス補正(三〇〇%)/【器用貧乏・A】スキル習得率プラス補正(五〇%)。成長率マイナス補正(五〇%)/【マジカルち○ぽ・?】十八禁能力(解説不可)/【女難・S】奇跡の女難(解説不要)/【妖精眼・F】魔力素視認(色別不能)/【主人公補正・A】運命力プラス補正(五%)

 医療用ナノマシン付属アビリティ:【再生・S】回復力プラス補正(三〇〇〇%)※全治一ヶ月が一日。/☆new!【雷神具・A】三秒間、肉体強度プラス補正(一〇〇%)。発動中雷属性付与。電撃ダメージ軽減。クールタイム一八〇秒。

 詳細データ:茜が身も心も魂も捧げる(予定の)大好きなお兄様。中学の時にどっかの男女に睡眠薬盛られた挙句にイタズラされて穢されちゃったけど、それでもだーい好き☆――』


「……あ~、精神・肉体強度にステータス補正かかってるってコトは、サッちゃんがあの娘のことを妹認定しちゃってるってコトで、それで【妹キラー】とやらの魅了効果が発揮されちゃって……結果、チョロチョロのメロメロになってるってコトでいいのかな?」

「ザッツライト! さすが春サン。一を聞いて十を知る男の娘!!」


 イカした笑顔で親指立てるおバカ――はとりあえずスルーして、茜ちゃんの戯言の真相考えつつ……っていうか、人の能力判定できる機械とかビックリしすぎて感情が追いつかないよ!!


「……あれ? でもコレ、あの空を走る技がのってないよ?」

「残念ながら脳ミソの中までは覗けないから、知識や経験に頼るスキルは表示されないのサ」


 おバカが言うには、これは肉体と魂(心)をスキャンして能力判別しているらしい。

 そして、『技』っていうのは知識や経験の集大成なので、こんなカメラパシャでは解らない様子……いや、むしろできたら怖い。っていうか魂スキャンされてる時点で怖いよ! 昔の人じゃないけど『カメラに魂を吸い取られる』ような恐怖だよ!! ……いやいや、クールになるんだよ蒼井春。いまは極力冷静に情報収集。未来これからの為に未知を殺すんだよ!


「じゃあ、このやたらと補正のかかってる運命力ってのはドコ?」

「あ、やっぱソレ気になるか……フフフ、いいだろう。教えてしんぜよう! 運命、それは機械で調べるのが不可能な世界からの干渉力! だが俺様にはソレをなんとなく数値化する能力があるのだ!! 凄いな俺様! 超すげー! ヒャッハー!!」

「アー、ソーデスネー。スゴイ、スゴイ。じゃあ、とりあえず……頭冷やそうか?」

「……スンマセン。調子乗りました。改めてサッちゃんの基本運命力発表……おっとビックリ主人公クラスな『一〇八〇』! で、銀色ちゃんの方は……ビックリ底辺『四四』! あ、これも男女平均一〇〇計算な。ちなみに運命力一〇〇〇オーバーは主人公クラスって言って、他人の物語だろうが関わったら最後、引っ張って、突き進んで、掻き回して、その物語の中心人物になっちまうようなヤツ。逆に運命力低いと周りに流されて幸せから程遠い皺寄せ人生になりやすい。さらに絶望的なこと言うと運命力は持って生まれた数値でアビリティとかで補正はできるけど成長変化はしない無慈悲なもんでな……試しに春サンのも視てやろーか?」

「やめてよッッ!!」


 絶対にノウな全力拒否!

 だけどそれは大失敗な大失態/思った以上の過剰反応におバカがポカーン……からのキュピーン/何かを察したニヤニヤ顔に変化。イラッとくる表情でイラッとくるよ。イライラ。


「なんだなんだ春サン。自分のこと解るのがそ~んなに怖いのか?」

「……っ、そ、そーだよ。自分に合った生き方は『楽』かもしれないけど、絶対楽しくないと思うからね。ボクは才能の奴隷になるつもりはないんだよ」

「そこをポジティブにパラダイムシフトだろ☆」

「……サッちゃんなら『自分を極めること』とかに喜び見出しちゃうかもね」


 でも、ボクにはその行為が作業としか思えないので全否定させていただきます。

 これ以上話してもなんだかな~、なのでひとまず会話を打ち切り、再び双眼鏡を覗く。するとあ~ら不思議――魔法少女がサッちゃん(気絶中)と情熱的に唇を重ねてた。なんで!?


「……フッ。命の危機で種族維持本能全開なトコに妹キラーの魅了受けたらエロエロになるのも道理か……だがこんなトコで一線越えるなんて俺様が許さねー! ラブコメは寸止めだ!!」


 ラブコメ云々はともかく、あの行為を止めることには賛成/お手並み拝見――


「――おーい、そこのお嬢さ~ん。そんなトコでナニやってんの~?」


 ド直球だったよ!?

 わざとらしく大きな声で尋ねるというど真ん中――故に効果的/そこからは激的――『ビクッ!』とした魔法少女/周囲を見回し、ボク等を発見/双眼鏡越しに重なる視線/気不味く目を逸らすボク/見られていたことを察する魔法少女/『ボン♪』という音が聴こえそうなほ真っ赤に紅潮/『アワアワ』あざと可愛く狼狽え……離脱/逃走/サヨウナラ~♪


「……勝った。手強い相手だったぜ」

「…………」


 何に勝利したのか――それはきっと現代の若者たちの乱れる性に、とでもしておこう。



 その後――気絶したサッちゃんはとりあえず放置/今のうちに後始末、後始末~♪

 まずは河原に降りる道を探そうと辺りを見回す、おバカは携帯をポチポチ――メール送信/相手はおそらく茜ちゃん――たぶん『サッちゃんが川に落ちた。服濡れたから着替え用意すべし』的な事を書いて送ったのだろう。うん。デート用の服を用意してくれたら最高だね☆

 とか考えてたらおバカが携帯の画面をボクに見せてくる――『サッちゃんが川に落ちた。でも見知らぬ可愛い女の子に人工呼吸してもらったおかげで無事復活。おかげでヌレヌレ。着替え用意すべし』……うん。真ん中余計。火に油つっこんでるね。絶対ワザとだよね、それ!

 直後、飛び跳ねるように目覚めたサッちゃんが、自宅目掛けて飛ぶように全力ダッシュ。

 合掌してお見送りした後、おバカが「ちょっと足調達してくる」と言って離れる/置いてけぼりなボクは暇つぶしに双眼鏡を覗く――緑の木々/鳥の鳴き声/流れる水/滝/水煙/マイナスイオン……なんか嵐が過ぎ去った後効果でほのぼの癒されるよ。ほのぼの~。

 数分後、おバカが「知り合いから借りてきたぜ」とママチャリ二台持ってくる。三段変速が付いた方をボクに貸してくれた。自分は変速なし……変なお気遣いしちゃって生意気だよ!

 さらに数分後――前三段、後六段の変速機付きの黒ママチャリかっ飛ばすサッちゃん通過。


「さあ、行くぜ春サン! ペダルを回せ!!」

「はいはい。超特急で出発するよー」


 ……ボク等の旅、アゲイン!


 ☆現時刻八時二五分――残り時間三五分。

運命力高いほどアビリティの保有限度数は多い。けど、マイナス要素のアビリティを持ってると引き換えに限度数が多くなる、とかあるのですが、そこら辺は超省略。

次回はもう一回Side:BLUEやって一気に話を進める予定。

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