4通目 傾き姿勢のリニアモーターカー
振り向いたゲンの目は変わっていた。
「なあ俺って今どうなってる?」
でもなぜか声は変わってない、異常だ。
ここ約5ヶ月間でリアと入れ替わったり、アキラやスオウと関わってきたから分かる。
寄生すれば必ず目と外へ出る声は一致する。
リアが寄生してる時は目と声はリアになる。
目はリアで声は私と分かれることはない。
ここにいる全員もその性質を知っていた、だからこの異常な状態に戸惑っている。
「おいなんか言ってくれよ」
「目が…変わってる」
何から言うか迷ったけど、とりあえず目が変わっていることだけ伝えた。
「えっほんま?」
スマホで自分の顔を見る。
「ほんまじゃん!変わってるわ!」
「大丈夫なの?」
「まあ外見的に大丈夫ではねえと思うが、気持ち悪い部分も痛い部分ねえんだわ」
「なんか口に入ってこなかった?」
「あっそう!なんか入ってきて、口から出そうとしたら若干ふらついたんだよ」
「中から声が聞こえたりしてないか?」
アキラが踏み込んだ質問を投げた。
「あーなんかさっきからゴニョゴニョ聞こえんなとは思ってた」
「!」
この状態に既視感を感じた、過去に両親が乗っ取られていた時と同じ。
つまりはゲンが星人を乗っ取っているってこと?でもコシャープ星人についてはなんも知らなそうだし、体質とかからなのかな?
ますます分からない。
「…お前らなんか隠してんな?演劇に関係ないとか言ってあの女から離そうとして…あっ!」
思い出したかのように追っていた男達を退けて、追われていた女性の前へ立つ。
「やいてめえらこいつから離れろ!さもないとボコボコにしてやるからな!」
そのゲンの叫びに、男達はこう呟いた
『…ツクモ隊長?』
「あ?誰だよ」
おそらくゲンに寄生している星人の名前なのだろう。
(ヒナタ)
リアから話しかけられた。
(逃げたほうがいい)
(え?なんで?)
(隊長は相手にしないほうがいい)
(強いってこと?)
(うん)
リアから逃げることを勧められたのは初めてだった。それがあまりにも異様に感じて、ビビり始めていた。
異常が重なったその場は、警戒の空気が立ちこもっている。
次にどういう手を打てばいいかが分からない、
ここにいるみんなが次の一手を出せないでいた。
シュー…
その時ゲンの口から白い煙が上がっていることに気づいた。
「えっどしたんそれ」
「あっ?なんだよ」
「なんか口から出てない?」
「はあ?何言ってんだ」
それと同時にゲンが歩き始める。
「おいどこ行くんだよ」
「いやなんか勝手に歩いてんだって」
徐々に歩きが走りへと変わる。
「ヒナタ」
「どした」
「助けてくれ!」
そうゲンが言うと爆発的に速度を上げて、1本道の車道から突然どこかへと走り出した。
「うあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
『隊長待ってください!分隊に通達してくれ!』
最初に追いかけ始めたのは男達の一人だ、
「ウチらも追いかけるよ!リョウ!荷物とその人見とって!」
「おっけおけおけ速く行っといで!」
「アキラとヒナタ行くよ!」
次に私たちが追いかけ始めた。
「待てやごるるらぁ!」
聞いたことのない怒号を上げて追い始めた。
その場に残ったのは男達と、追われていた人と、わいだけになった。
「…で、この人のことどうするんです?」
追いかけていた人の処遇について質問してみた。
「それは言えないな」
「傷つけるんです?」
「もうこれ以上は関わるな」
「守っていいすか?」
「…戦うつもりか」
「ええ」
まあカロハに見とってと言われた以上しょうがないなあ。どんな人かは分からないけど、とりあえず守ることにした。
何が起こっているの?
部隊に追いかけられたと思ったら、突然知らん人が混じってきて、そしたらその人にツクモさんが入って行って、暴走し始めた。
本当に何が起こっているかは分からなかったけど、これだけは分かった。
(…ツクモ隊長、私たちをまた守ってくれたんですか?)
・ー・ー・ー・
車道を抜けてゲートパークへ入っていく。
「うお!あぶっね!!」
「大丈夫!?」
段差につまづきかけた。
「いけます!」
噴水のある広場を横切って、階段を駆け上がる。
「おらおらおら!とう!」
水が流れる階段を駈け下がる。
飛んだときに濡れたけど、んなもん気にしてられるか!
前進!前進あるのみじゃ!
遠目にバスターミナルが見えてきた。
「あいつ速すぎ!」
ゲンは能力を使っているからかかなり離れていた、視界にはなんとか入れれている。
「がぁぁああ!」
アキラが追い抜いていく。
「うううう!」
負けじと私も抜いた。
ゲンは花壇とスケボー場を飛び越えて、バス専用のスロープを駆け上がる。
ボッゥー
飛んだぁ!そして走ってきたバスの屋根を飛び乗って、バスターミナルの屋上へ登った!!
「はあああああ????」
「あいつの能力どうなってんだよ!」
「ウチらも登ろう!ウチの能力を使うから、人目に映らないとこ探して!」
バスのスロープを潜って、なんか良さげな車が停めてある入っちゃいけなさそうな所に入る。
「え、いいんすかここ!?」
「そんなことも言ってられないから!」
カロハ先輩の目が磁場ような瞳に変わる、目のほりたトゲトゲした模様が浮き出る。
「使うよ!」
雨空へと手を上に上げた。すると私たちや周りのものが浮き始め、
「発進!」
カロハ先輩の言葉で上への加速が始まった。
雨が滴るバスターミナルの屋上では張り詰めた空気が流れていた。
あそこに盗まれた巨人用コンテナがある。
だが、中には番人がいる。すでに二人が持っていかれた。
包囲網を作って常に警戒しているため、姿を表さない。すぐにコンテナごと始末するべきだが、ここは地球人がよく集まる集落の中心だ、あまり大規模な攻撃はできない。
今は逃げられることを防ぐ。
「ミヤコ副隊長。ツクモ隊からです。」
一進一退の空気の中、ツクモ隊の通信班から連絡が来た。ツクモ隊はコンテナを盗んだ者達の1人を追っていたため、捕まえたのだろうか?
「なんだ?」
「ツクモ隊長が地球人に乗っ取られました!」
だがそれは予想外過ぎた連絡だった、だが踏査任務において予想通りではないのが当たり前。副隊長として落ち着いて聞こう。
「今どこにいる」
「現在そちら側に向かっています!」
その一言と同時に、ツクモ隊長の目をした地球人が姿を現した。




