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八冊目


 リスト作りを始めて何日目が経ったか分からんようになってきた。


 あと五十人だ。


 頑張らねば……。



「ねぇ、おじいー?」



 メイド(ギフター)にも統括がいる。


 俺が真っ先に応接間に呼んだあの娘である。


 名は生前からイリスとなった。


 そのイリスに毎日の食事を任せてはいるが、どこから食材を手に入れているのかは分からん。


 うちの庭に農場はあっても、肉は無い。


 毎度の肉はどこから仕入れてきているのやら……。



「ねぇ、おじいってばー?」



 記録の世界と呼ぶことにしたここでは当初時間の概念がなかった。


 まあドアは開くし、腹は減るから止まっているわけではないんだろう。


 正確には朝、昼、夜といった時間を表す根本的な存在が無かったのだ。


 そこで俺は運命の指輪で日本と同じぐらいの時間軸の朝や昼、夜といった概念を想像した。


 これにより俺の身体は若干ではあるが倦怠感と眠気が襲ってきた。


 流石に指輪の力を使ったのか疲れたのだろう。


 この指輪の力は俺に影響しているものだと気が付いた瞬間でもある。



「おじいー?聞こえてるー?」



 ウォーターバレットだけではなく、他の魔法も使えるようになっておかねばならないのかもしれない。


 何かがあってしまってからでは遅いのだ。


 それと、この城の隣にある図書館には一度だけ訪れておいた。


 図書館への扉は無く、メイド(ギフター)と共に探しまくる破目になってしまった。


 いつの間に俺の腰にあったのかは定かではないが、古びた二十cm程もある大きな鍵を空中に差し込み捻ると図書館への扉が開くと分かったのは、大捜索から二日目の夜だ。


 諦めそうになった時、腰に見かけない鍵が付いていると思い、色んな鍵穴で試そうかと考えるうちに空間に差し込め、扉が開き、図書館へと繋がることとなった。


 誰が気付くというのか、この仕掛け。



「おじいー……」



 図書館に入るとそこにいたのは、眼鏡をかけ、下半身が透けた妙齢の男性だった。


 その者は自分をライブラリと紹介し、この無限記録の大図書館の司書を任されていると言った。


 誰から、とは言わない。


 どーせあの管理者だろう。


 ライブラリは俺に一冊の本を渡してきた。


 【記録の箱庭(ログ・ガーデン)】と金色の文字で綴られ、表紙も背も裏表紙も全てが白を基調に作られたこの世のものでは再現できなさそうな本である。


 その本の中は今まで管理者の管理する複数の世界での歴史から個人の日記まで事細かに記載されていた。


 これらは俺が読破したものから、図書館に寄贈のような形で自動的に本が生成され、棚へと収まっていくらしい。


 読みたいジャンルなどで検索をかけ、読破していけば良いらしいが本の好き嫌いはしない性格だ。


 片っ端から読んでいこうと思う。


 この【記録の箱庭(ログ・ガーデン)】はこの空間に作られた扉を行き来しても何の問題は無いらしく、態々この図書館に訪れなくてもよくなった。


 この本さえ持ち歩けば、どこでも色々な本を読み漁ることが出来るということだ。


 片っ端から読破していくのはもう少し先の話になりそうだがな……。


 先の話で『検索』という単語が出たと思う。


 既に本の冊数は十万冊を優に超えている状況だ。


 検索を掛けねばやってられない、という意味でもある。


 気にはするな。


 さて、司書の仕事としてはジャンル別に並び替えたり、大図書館の掃除などやることは多岐にわたる為、本好きの霊を三人程やった。


 それぞれ、栞、眼鏡、表紙に憑いていた霊たちである。


 栞や眼鏡の奴らはいいものの、表紙に憑いていたやつは少々性質が悪い。


 人皮装丁本という言葉を知っているだろうか。


 本の表紙である装幀(そうてい)は一般的に紙や布、動物の皮などが作られる。


 しかし中には特殊なものがあり、宝石を散りばめた豪華なもの、タケノコの葉で作られたものと多々見つかる。


 その一つに人の皮で作成されたものが俺の親父の手に回ってきたというだけである。



「おじいってば!!」


「なんじゃ!やかましい!!」


「返事してよー!ずっと呼んでんのに!!」


「用はなんだ」


「ごめんの一言もないの?人としてどーかと思うよ?」


「イリス、こいつを部屋の外に」


「はい」



 首根っこ掴まれて連れていかれる少女。


 なんか猫を捕まえたときみたいだな……。


 俺は連日のリスト作りで忙しいんだよ……。



「わぁ~、待って待って!!で、伝言があるのー!」


「伝言?誰からだ?」


「その前に降ろしてー」


「イリス、降ろしてやれ……」


「…はい」



 べしゃっと音を立ててその場に座る猫。



「で、誰からだ?」


「う、うん。門番のウーバンからだよ」


「ウーバンから?というかあいつ門番なんかやってたのか……」



 ウーバンの槍。


 アフリカの原住民族が水害により移籍したが、ウーランの兄の形見であるウーバンの槍が見つからず、弟は水害の遭った場所へ探しに行き、ミイラ取りがミイラになってしまった。

 それ以降、水害がその原住民族を襲うこととなり、ウーバンの祟りとしてその槍の場所へと生贄を渡す風潮が出来たという。

 ウーバンは村の者から忌み嫌われており、呪い子として離縁していた。

 その弟であるウーランも同じ境遇ではあったが、呪い子としての痣が無く比較的マシであった。

 しかし、ウーバンが身投げした滝つぼから水害が起こり、村を巻き込む災害が起こった。

 その逃げ遅れたウーランは兄の形見である槍を落としたことに気づき、道を戻る。

 ウーバン、ウーランの住んでいた家は水害とは全く別の場所に建てられており、家にいれば助かったもののウーランはその日村に買い物をしに訪れていた。


 運悪く起こった事故だが、村の者は祟りに見えたのだろう。



「で、そのウーバンからなんて?」


「門の外で武器を持った子供が倒れてるってー」


「そうか、子供が……は?」


「いや、だからちょっと色の黒い子供が短剣持って倒れてたって」



 は?


 子供?


 人間のか?


 どうやってこの空間に入ってきた?


 門の外にはこいつらは出られない。


 出られるのは許可した者達だけだ。


 ウーバン、ウーラン、メイド(ギフター)の数名、コリャン、クーマー、渡辺道行のみである。


 この他に子供はいない。


 どこからか侵入されたということか……。



「お、おじい……?」


「そいつの所に案内しろ!!」


「う、うん…」



 リストなんか作ってる場合じゃねえ。


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