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わたしの回避能力を見よ!!

 金曜日の朝。

 今朝も当たり前のように「カフェ美山」でコーヒーを飲んでいる鏡子ちゃん。

 もう、朝に彼女がリビングにいる光景に、全く違和感がなくなってきている自分がいる。

 慣れって恐ろしい。


 家を出て駅へ向かう道すがら、鏡子ちゃんが優しく聞いてきた。


「サキちゃん、勉強どう? 捗ってる?」


 わたしは両手を重ねて擦りながら時代劇の悪役のように、

「へへ〜。お陰様で鏡子様のノートのお陰で、サクサク進んでおりやす!」


「そう、よかった!」

 と、鏡子ちゃんの天使の微笑み。

 う〜ん癒やされる。これが試験前じゃなくて試験後なら、もっと心から癒やされるんだけど。


「ねえ、サキちゃん。週末、一緒に勉強しようか?」


「へ? 大丈夫なの?」


「うん。わたしは少し余裕が出てきたし」


 「いいの!? お願い! 」……と言いかけて、ハタと気づいた。


「……に、日曜日にしない?」


「えー? 前日だとギリギリじゃない? 土曜日に一緒に勉強して、日曜日はその復習にしたら?」


「ど、土曜日ーー!(裏声)」


「どうしたの?」


「い、いいえ……な、なんでも、ない、よ……」


 ヤバい! 優花里先輩と約束してるなんて言ったら、図書館で歴史的な大惨事が巻き起こっちゃうよ!


「ど、土曜日は……家族でドライブに行く予定が……」


「え? でも今朝、おばさん『サキちゃんをよろしくね』って言ってくれてたよ?」


 おい、母! いらんことをーー!


「えーっと、やっぱり土曜日は自分一人で集中して頑張って、最終チェックを鏡子ちゃんにお願いしたいな、って!」


「うーん…でもわたしも直前は詰め込みたいしなー」


「じゃ、じゃあ今回は高校初めての試験だし、まずは自力で頑張ってみるよ!」

「えー? わたし、いらない子ー?」


 鏡子ちゃんが捨てられた子犬のような目で見てくる。

「そ、そんなことはないよ! だから日曜日、日曜日の……そう! 午前中ならどう? 午後はそれぞれ仕上げを頑張ろうよ!」


「うーん……(お願い、こういう時だけ粘らないでよ〜!)」


「……分かった! じゃあ日曜日の朝に図書館にしようか?どうせ私も週末は図書館に行く予定だったから」


「うん、うん、うん! そうしよう、そうしよう!」


「なーに、変なサキちゃん」


「い、いやー、鏡子ちゃんと二人きりでのテス勉、楽しみだな〜と思って!」


「えっ…」


 急に顔を赤らめる鏡子ちゃん。尊い…美少女の照れ顔はいつ見ても破壊力抜群だ。

 「そっか、分かった! じゃあ土曜日はそれぞれ別々に頑張ろうね」


「うん! そうだね!」

 一安心、と胸をなでおろした次の瞬間。鏡子ちゃんがさらっと爆弾を落とした。


「わたし、土曜日も一日中、市立図書館で勉強するから。何かあったらRINE送ってくれたらいいよ」


「……え、なんで……?」


「今、うちの近くで道路工事やっててうるさいの。だから休みの日は図書館に行ってるんだよ」

………… 神様。仏様。リリー様。 やっぱり…やっぱり、大惨事は避けられないんですか…!?


 どうしよう…


 いつも通りに鏡子ちゃんにしがみつかれ、校門をくぐる。けれど、わたしの顔はたぶん、ホラー映画の登場人物より真っ青になっていたと思う。


「おはよう、美山さん」


 涼やかな声。

 いつも通り、わたしだけを特別に名前で呼ぶ優花里先輩がそこにいた。

 しかし、先輩も今日は何かを察したのか、昇降口に入るまで視線が突き刺さっていた気がした。


教室に到着しても、鏡子ちゃんは私にピッタリとくっついたままだ。

ホームルームが始まるまでのこの密着時間、いつもなら少し照れくさいだけなのに、今日に限っては一刻も早く先生が入ってくるのを待ち望んでいる自分がいた。


(……あ、先生が来た!)


 チャイムと同時に先生が教室に入り、鏡子ちゃんがしぶしぶ自分の席に移る。


 チャンスは今しかない!!


 わたしは音速でスマホを取り出し、先生から見えないように机の下で「みっきん垢」を開いた。指が震える。


『ごめんなさい、コアラっ子先輩! 土曜日の図書館には友達の鏡子ちゃんがいるらしいんです。

 なので残念ですが、土曜日はキャンセルということで……、本当にごめんなさい!』


 送信!

 本当のことを伝えないと不審に思われるし、短い文章で理由も謝罪も完璧。この絶体絶命のピンチに、わたしってばなんて素晴らしい判断力!……あ、焦りすぎて「コアラっ子先輩」って混ぜこぜにして送っちゃった。


 優花里先輩も今はホームルーム中。返信は早くても休み時間だろうと思っていたら、まさかの即レス?!


 ……え、なんで? あなた優等生の生徒会役員ですよね、先輩!?


『みっきん様、事情はよく分かりました。あの、もし、もしよろしければ…みっきん様のご自宅で勉強会はいかがでしょうか?』


「はぇっ!?」 思わず変な声が出そうになった。


 え? 来てくれるの? いいの? あんな美人が降臨しちゃったら、わが家は大騒ぎだよ!? お母さんも美嘉もひっくり返ってお祭り騒ぎだよ!?


『コアラっ子様、ウサギ小屋のようなわが家でよろしければ』送信。


 また即レス。先輩、机の下で打つの早すぎませんか?


『みっきん様、とても嬉しいです! 本当にお邪魔してもよろしいのですか?』


 もちろんです! 図書館が鏡子ちゃんとの遭遇で「血の海」にならなくて済むなら、どこへでもお呼びします!


『お邪魔なんて、そんなことないです。でも家が小さくて恥ずかしいですが』


 以前噂で聞いたけど、優花里先輩の家ってとんでもない大豪邸らしい。そんな人がうちに来るなんて…


『みっきん様の自宅なら、私にとってはどんな場所よりも尊い場所です』


いや、それは言い過ぎだろ! うちっていつから聖地巡礼の対象になったんだよ!


『本当にすみません、今ホームルーム中なので、時間や場所は今夜お送りします』


『今夜を楽しみにしています!』


 ……よし。よかった〜! これで図書館大惨事イベントは回避だ! ふぅ、と胸をなでおろして顔を上げると、担任の沙有里先生がじーっとこっちを見ていた。


「美山……そんなに股間が気になるのか?」


「……ちがいます」


 顔から火が出るかと思った。

サキの悲劇回避への涙ぐましい努力です。

両方にいい顔はできるのか?

ヤンデレに挟まれてサキの苦労は続きます。

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