お気楽主人公中間試験を忘れる?!
今日は何事もなく無事に終わった。
放課後、いつものように鏡子ちゃんの絡まる腕にがっしりガードされながら、わたしたちは下校の途についていた。
茜は今日から部活。
昨日、茜が「絵麻先輩が鏡子ちゃんのことを妙に気に入ってるみたいなんだよね」と言っていた。
まあ、鏡子ちゃんはこれだけの美人でお胸も大きいから、一目惚れする人がいても全然不思議じゃない。
そんな美しい彼女にこれでもかと密着されているわたし……、前世で絶対、何かとんでもなく徳を積むような良いことをしたんだろうな。
「ねえ、サキちゃん」
不意に、鏡子ちゃんがわたしの顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
うわ、相変わらず綺麗な顔。
「なに? 鏡子ちゃん」
「これから夜とか、RINEで連絡取ってもいい……?」
RINE。この世界でみんなが使っているあの便利な連絡アプリだ。
「?……もちろん。わたしたち友達なんだから、そんなのわざわざ断らなくてもいいよ。むしろ、これまであんまりしてこなかったよね?」
「うん。なんかね……最近、夜になるとサキちゃんのことが気になっちゃうの」
鏡子ちゃんの瞳が、少しだけ潤んでいるように見えた。
「そうなんだ。嬉しいよ」
「本当に!? わたしも嬉しい! じゃあ、今晩から連絡するね」
「分かった〜」
え、何この状況。わたしの高校生活、ちょっと充実しすぎじゃない? これから夜な夜な、学年でもトップクラス美人の一人である鏡子ちゃんとRINEで語り合い、ネット上(正体は優花里先輩)ではコアラっ子さんや蜜柑ちゃん(あ、でもこっちはおっさんかも…)とアニメの考察を深め合う……。
超絶美人二人と夜に語り明かせるなんて、もう、わたしの一生分の運を使い果たしているかもしれないよ〜!
と、思っていた時が私にもありました……
駅までの道。夕日に照らされた鏡子ちゃんの笑顔は、どこか切なげで、でもとても幸せそうだった。 その時はその綺麗な横顔を見ているだけで幸せだった。
その日の夜。 お風呂から上がって一息ついていると、スマホが震えた。
「あ、鏡子ちゃんからRINEだ」
『これからよろしくね。サキちゃん』
短いメッセージだけど、鏡子ちゃんが打ってると思うとそれだけで可愛い。
『こちらこそよろしくね!』と返すと、コンマ数秒で既読がついた。
『サキちゃん、今何してるの?』
「はや……」
『今はご飯食べ終わって、アニメ見ようと思ってたよ。鏡子ちゃんは?』
『わたしは勉強してたんだよ。サキちゃん、アニメ見る余裕あるの?』
え? ちょっと待って。そういえば今日、ホームルームで先生が「中間試験」って単語を口にしていたような……
『鏡子ちゃん、中間試験っていつからだっけ?』
『え? 来週の月曜からだよ?』
ヤバい!ヤバい! 来週って!? アニメ見てる時間なんて一分もないじゃん!
慌ててわたしは鏡子ちゃんに泣きついた。
『鏡子ちゃん、ヤマ教えてくれない?』
『いいよ! サキちゃんに頼ってもらえるなんて嬉しい。助けてあげるね』
『ありがとう!ごめん、よかったら全教科分お願い……!』
すると、すぐに各教科の重要ポイントがまとめられたノートの画像が送られてきた。
「うわ、綺麗……!」
感謝を込めて、『ありがとう! 助かったよ! 大好きだよ鏡子ちゃん!』と送信。
すると、目がハートになった猫がドキドキしているスタンプが猛烈な勢いで送られてきた。
「ふぅ……どうなることかと思ったよ……わたしも違う意味で心臓がドキドキだったよ…」
とりあえず、少しでも勉強しなきゃ。
アニメは試験が終わるまでお預けだ。 あ、そうだ。コアラっ子さんにも一言送っておこう。
『中間試験を頑張るので、今週のリリーは試験後に語りましょう!』
……やっぱりレス早いな……
返ってきたのは、リリーが膝をついて絶望しているような、すっごく悲しそうなスタンプ。
『優花里先輩、ごめんなさい、でも試験が終わったら、怒涛の如く語り合いましょう!』
リリーが土下座をしているスタンプを追い打ちで送ると、またすぐに通知が。
『試験勉強、もしよければ、私が勉強を見てあげましょうか?』
「えっ!?」 優花里先輩といえば、全国模試でも上位の秀才だって噂を聞いたことがある。去年の試験の傾向も知ってるだろうし、これは最大のチャンスでは!?
『コアラっ子さんがよければ、ぜひお願いします!』
『では土曜日、市立図書館のロビーに10時でどうかしら』
『了解です! あ、それと……勉強苦手なので、優しく教えてくださいね』
コアラっ子さんになっている「先輩」は、優しいからきっと大丈夫だろう。
『もちろん、優しく教えてあげるわ。でも、サキ様のためだから、もし厳しくなってしまったらごめんなさいね』
……ちょっと怖いけど、背に腹は代えられない!
鏡子ちゃんのノートと、優花里先輩の直接指導。これなら来週、赤点を回避して生き残れる気がしてきたぞ!
「よし、がんばろー!」
わたしは意気揚々と参考書を開いた。
ただ、土曜日に図書館で「秘密の共有相手」と密会(?)することの危うさに、この時の私はまだ全く気づいてはいなかった。
いや、中間試験聞いてない、忘れるわけないだろ!と突っ込みたいところ良く分かります。
サキのおっちょこちょい設定がここで活きてきています(自画自賛)




