人生は一期一会の連続である
風邪気味なうです
「ん?おはようエド」
「お、おはようございま…す?」
心は軽いが鉛のような身体を引きづり家に戻ると短パンにタンクトップ、ボサボサの髪のカイルが丁度2階の部屋から降りてきた。
太陽の光は既に地面とほぼ垂直から降り注いでいる。
僕は返答に困った。わずかな思考時間で弾き出した答えは無難に言葉を返す事だった。
まあ、カイルの寝起きの悪さについてはもう慣れたのもある。
「俺が着替えたら朝飯食いに行かね?俺の奢りで」
「!!!是非お願いします。何食べにいくのですか?」
朝?飯?と言う言葉は何とか飲み込んだ。
「セクラン王国タイプのカレーでもどう?」
「良いですね!行きましょう」
カレー、それは全探索者の味方でもある。
その辺の野草の鍋に携帯できるカレールーをぶち込めば何と言う事でしょう、青臭さや苦味も全て飛んでカレーに生まれ変わる。油分を含めたスパイスの栄養も取れる完璧に近い食、それが探索者で言う『カレー』。
本来はセクラン王国の料理だったが味に感動した探索者達が改良したらしい。
セクラン王国風のカレーは初めて食べるから楽しみだな。
こうして僕とカイルの2人は出かけた。
そして・・・・・
「カイル、一つ質問良いですか?」
「良いよ」
「ここ、何屋ですか?」
「さあ?入ってみれば分かるんじゃね?」
ギトギトとした油とそれだけで満腹になるような肉肉しい匂い。ヤカンから吹き出すような蒸気。
王都の中心部から20分弱歩いて辿り着いた謎の店。
ただこれだけは一つ言える、確実にカレー屋では無い。
カイルが言うにはセクラン王国カレーは王都でポピュラーなカレーとは少し違うスパイスの香りがするらしい。
しかし、ここの店(?)からはその匂いは全くしない。
「お腹すいた。早く入ろう、エド」
カイルは僕の懸念を気にする様子を微塵も見せずに店の戸を開けた。
「へいらっしゃい!」
50代くらいのおじさんが威勢のいい声を出す。
「すみません、ここ何屋ですか?」
カイルはおじさんに普段からは想像できないほど丁寧に質問した。
「ここはラーメン屋ですぜ!」
ラーメン、今や世界中の都市に広がっている食べ物。でも僕は村には飲食店どころか他の店など無いからラーメンは食べた事無い。
「エド、ラーメン屋でも良い?」
「あ、良いです。是非食べたいです」
カイルの後に続いて店に入った。
満席だったので5分ほど待った後、カウンターの席に案内される。
「僕、ラーメン屋初めてです。何を食べれば良いか分かりません」
「俺は初めての店のプロだぞ。任せておけ」
「そ、そうなんですか」
「何故か1人で飯食いに行くと絶対に初めての店しか入れないからな」
「……………」
そう言うとカイルは目を閉じ、集中して匂いを嗅ぎ始めた。
「ここは……味噌ラーメンちょい薄め脂多め固さ普通だな」
「!!!」
調理場にいるおじさんの雰囲気が変わった。
えっ、何?ラーメン屋ってこんなピリピリしてるの?僕1人で行けないんだけど。
「エドもそれで良い?」
「はい」
「おっちゃん!味噌ラーメンちょい薄め脂多め普通を2つ!」
「あんた方、分かってるな」
おじさんは謎の呟きと共に麺を茹で始めた。
裏話的なのが苦手な方は『来るところ間違えました。〜新人探索者、最きょうパーティに入る〜』をもう一回初めから読んでください。最近、自分自身が読み返して説明不足と感じた所を結構加筆していってます。
気が付けば『来るところ間違えました。〜新人探索者、最きょうパーティに入る〜』の連載を始めて半年が過ぎていました。
ここまで連載出来たのは読んで下さっている皆様のお陰です。本当にありがとうございます。
と、ここで作品名『来るところ間違えました』ではなく『入るところ間違えました』じゃね?と思った方いるかもしれません。海万も連載1週間くらいでそう思いました。
その事に関しては理由があります。
最初の構想ではエドがパーティ面接の家を間違える筈だったんです。それが書いていくうちに何故か今の形になりました。
なにやら最終回的な後書きになっていますが、まだまだ終わる気は無いのでこれからも『来るところ間違えました。〜新人探索者、最きょうパーティに入る〜』を楽しみにしていただけると幸いです。




