盗賊だけど地雷の避け方教えてくれない?
「すみません、よく聞き取れませんでした。もう一度お願いしますか?」
「これからよろしく、エドワード。悪魔の聖騎士へようこそ」
「えっと...簡単にいうと...」
「そ、合格!じゃあ早速こっちの自己紹介しよっか」
恐る恐る聞いた問いに屈託のない笑顔でランディが答える。
その恐ろしくもある顔に僕は100人に聞いたら100人が不気味と答える笑顔でなんとか言葉を絞り出す。
「よ、よろしくお願いします」
「僕はランディ・カーター。Bランク魔術師だよ。暫定リーダーだ。よろしく」
色の薄い金髪のイケメンから紹介が始まる。
「私はエンリカ・ロハス。Bランクの剣士よ。よろしくね」
入り口の前で声を掛けられ(てしまっ)た赤髪の女性はエンリカと名乗る。
水色の髪で眠たそうな目をした女性が淡々と述べる。
「リリス・スイーパー。錬金術師。Dランク。最後、カイル」
「俺はカイル・アキリー。魔法剣士みたいな感じだ。Bランクだ。よろしく、エド!」
床で寝ていた黒髪短髪の男が人が変わった様に自己紹介する。
「みなさん、よろしくお願いします」
「ウチに入るならこれ身に付けておいてねパーティシンボル」
「はい!?」
ランディに丁寧に渡されたペンダントトップの形を見て思わず声が裏返ってしまった。
盾に翼を広げた蝙蝠の様な形がくり抜いてある。
そこでパーティ名を思い出せない事に気づく。いや、気づいてしまったというべきか。はたまた早くに気づけて良かったと考えるべきか。
「好きな所に着けていいからね。リリスはピアスにして左耳に。他は左腕に着けてるよ」
ランディが丁寧に教えてくれてるところ、僕は今日一番の勇気を出して尋ねた。
「質問いいですか?」
「答えられるのなら何でも」
イケメンスマイルで返される。眩しい。
「このパーティの名前は何と言うのですか?」
一瞬の静寂に包まれる。胃がキリキリしてきた。
「緊張して聞こえてなかったのかな?悪魔の聖騎士だよ」
「えっ...い、意味はあれで良いんですよね...?」
きっと僕の知識不足だ。そうとしか思えない。そう思いたい。他に意味があるはずだ。
「そのまま悪魔の聖騎士で良いんだよ」
勘違いと思いたい理想は簡単に打ち砕かれた。
な、なんとか褒める言葉を言わなきゃ。
「ユ、ユニークな名前ですね」
その言葉が放たれた途端4人の顔が曇った。明るかった雰囲気が急に肌寒くなった。
やっちゃった。地雷踏み抜いちゃった。どうしようこの空気。
探索者は命懸けだ。常に死のリスクが付き纏っている。パーティメンバーが欠けることも少なくない。その上メンバーを募集してるとなると...
本当にやっちゃったな...今日は来るパーティも間違えちゃったし。
貰ったペンダントも手入れされていて一見新品に見えるが、よく見ると年季が入っている。恐らく悪魔の聖騎士の前任の盗賊の物であっただろう。
なんか重いな。余り言いたくないけど魂と一緒に怨念も宿ってそう。本当に申し訳ないけど着けたくないな。でもそんなことすると取り憑かれそう。これ詰んだ?
暫くの沈黙の後、重々しくカイルが口を開く。
「悪魔の聖騎士は前のリーダー達と決めたんだ」
ああ、この際思い切って聞いちゃおう。
「そのぉ、前のリーダーは僕と同じ盗賊だったんですか?」
「ああ、そうだった。凄いやつだったよ」
「それじゃ、やっぱり」
パーティメンバー(?)に悪い事してしまった。ごめんなさい。
「パーティ抜けた。子供産まれるから。両親探索者で幼い頃両方死んだ。子供に同じ思いさせないため」
「えっ?」
リリスのゆっくりとした発言に僕は雷に打たれた様な衝撃が走った。
え?生きてたの?じゃあこの空気何?生きてて良かった〜。取り憑かれたりしないし。何より探索者としては分からないけど人としてはめちゃくちゃいいじゃん。
『パン!』
ランディの手を叩く音に全員が注目する。
「湿っぽい話はこの辺にしてパーティ登録に行こっか!」
―――――――――――――――――――――
3人でつい先程まで居たギルドへと向かう。
そこでこれまで感じたことのない胸のざわつき。
ギルドへ近づくに連れて違和感は大きくなる。
注目されてはいる。だが、普通の視線じゃない。耳を澄ませて周りの会話を聞き取る。
「おっ、おい見ろよ。あの悪魔の聖騎士と一緒に歩いてるぞ」
「どんなメンタルしてたら出来るんだ!俺なんか考えただけで背筋が震える」
「アイツ、アレか?たしか悪魔の聖騎士って盗賊の募集してたよな」
「いや、ないない。アイツどう見たって新人だろ」
「でもよ、王都に数日も居れば探索者なら噂は嫌でも入ってくるだろ。噂を聞いた後に組みたいと思うか?」
明らかに良い評判ではなさそうなガヤが聞こえる。
あっこれヤバいパーティじゃん。やっぱり悪い予感が当たっちゃった。所謂地雷パーティってやつ?今日は晴れのち地雷。常に気をつけましょう、だな。
「今日はいつもより注目度高いね」
「そうね、何でかしらね」
僕の心情なんかつゆ知らず元凶(?)であるランディとエンリカは「あはは」「うふふ」と談笑している。
尚、カイルとリリスの二人は家でグッスリ寝ている模様。(勿論各自室)




