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原付徘徊おじ☆彡  作者: 仲良しおじさん
創作活動の章
24/46

『春の定義は』 その3:キャラの伸びしろ


 2023年4月



 今回は『春の定義は』について、初期構想から大きく逸れてしまったり、思いもよらぬ方向へ転がっていった設定なんかの裏話をしつつ、創作って作者本人にも予測できないことが起こるよねみたいな話をしたいと思います。


※この先は本作を既読の体で書いてしまっています。

 未読の方はわけわからんと思いますが、もしよければ流し見でもしていってくだると嬉しいです!




保科(ほしな)大暴れ問題】


 かつて主人公が在籍していたバドミントン部にいる同期生の女の子。

 実は保科さんって初めの設定では序盤に1、2回出てくるだけのモブ中のモブ設定だったんですよ。


 信じられますか?

 だって保科さんラスボスでしたもんね。

 僕自身も驚きを隠せないほどの、良い意味でめちゃくちゃ昇格したキャラクターでした。


 そもそも代行(だいこう)こと中辻(なかつじ)くんもそれほど重要な役目を負わせる予定はなくて、

 主人公・花帆と親友・名都との関係性を知ってる友人、という形で要所要所にちらっと絡ませるくらいのはずだったんです。


 それが途中で、花帆、中辻、保科で三角関係作ったらめちゃくちゃ泥沼にならんか? という悪い発想が浮かんでですね。

 これはもう面白いに違いないだろうと。

 確信してしまったので書きましたよね。


 でも本当に、この軌道修正がすごく良い方向性で働きまして、保科という燃料を投下することで全体的に不足していたボリュームや緊迫感をうまく継ぎ足すことができたんです。

 特に彼女とのラストキャットファイトがなければすごく盛り上がりに欠けた佳境になっていたと思います。

 マジでナイス。


 保科さんと引き合いに出す形で、(たつみ)というキャラについても語りたいんですけど、

 巽はあれですね、飄々(ひょうひょう)として見せて実は内にコンプレックスを抱えていて、友人である眞輔に執着している。

 それ故に花帆の抱える闇を暴こうとする引っ掻き回し役を当てがっていました。


 ただし、最終的には和解して味方ポジションにつきます。

 いわゆるあの、「こいつ絶対許さん」と思ってた奴が仲間になった時にすごく心強さを感じてしまう、あの事象を体現させてみたかったんです。

 「ジャイアン映画だと良い奴じゃん」みたいなの。


 というので、おおむね狙った通りの役回りをこなさせることはできたんですけど。。

 読んでくださった皆さんはどう思ったでしょうか。

 僕はなんかイマイチ、全力を出し切れなかったというか、初期構想に忠実であり過ぎた『優等生』感が残りましたね……。


 創作者で同じ悩みを持った方いらっしゃると思うんですけど、主要人物ほど物語の進行上の型枠をガチッと設けてしまっているので、それだけ遊びの部分というか、伸びしろを作りづらいんですよ。

 枠からはみ出てしまわないように、あまり好き勝手にやらせてやれないんですね。

 一方で、初めから期待も注目もしていなかった保科さんみたいなモブキャラこそ自由に暴れ回るチャンスがあって、流れに乗るとどんどんパンチを効かせてくれる。


 僕は事前に骨組みだけ立ててから物語を書き始める派です。

 書き進めながらその都度肉付けを考えていきます。

 そこでどれだけ(いろどり)を加えられるかによって作品の魅力も大きく変わるんですよね。


 でもしっかり統一性を保っていないと支離滅裂に走ってしまう。

 その塩梅が非常に難しくて、だからこそ同じ作品って生まれないんだなとも思います。




【意図しなかった伏線】


 ラスボスと化した保科さんとも直接対決を経て和解し、最後に主人公は長らく離れていたバドミントン部に復帰することになります。

 ここも当初は復帰する予定はなくて、肉付けで足した部分でした。

 終盤のところ書いてて、これ最後は部に戻るというのもありだな、と思えたというか。

 むしろ今の花帆にとっては戻ることがより自然じゃないかと僕の心境も変わってたんです。


 その線で最後まで書いて、改めて冒頭から作品を読み直してみました。

 するとですね、かなり序盤の頃に花帆がバド部の中辻くんに退部届を渡す場面があったんですが、


『ケジメのつもりだったし、きっとあの場所に戻ることはないって、わかっていたから』

『花帆にとって、もう俺たちと過ごすことは重要じゃないんだな』


 という文が出てきたんですよ(5月の章)。

 これを書いていた時点では僕自身も本当に、もう主人公は部活に戻ることはないと思ってたんです。

 なんと、作者ですら思いもしなかった形で伏線へと変貌してしまっているではないか!


 驚愕しました。

 思わず口に手を当てて、はっ、って言っていました。


 この部分の変容って、つまり丸々主人公の成長を表してるんですよ。

 初期の時点では思い付きもしなかった選択の幅を広げるだけ、花帆が可能性を生み出してしまったんですよね。

 なんか、泣けました。親バカでしょうけど泣けたんです。


 こういう体験ができるってとても貴重ですよね。

 創作ってすごい。ありがとう。




【題名「春の定義は」について】


 作品の題名って、初めに付けるパターンと最後に付けるパターンとがあると思います。

 本作については書き終えてから最後に考えました。

 でもなかなか良いものが思い付かなくて、なら本文の中から適当なキーワードを抜き出してそのまま使ってやろうと思って。

 探していると、冒頭と終盤の両方でキャラたちが春の定義について話し合う場面があることに気付きました。

 物語としてはすべての季節を扱っているんですけど、春で始まり春で終わるという意味では適しているかもな、と思って『春の定義は』で決めました。


 ただ、今にして思うとこれ以上ないというほどしっくり来ていますね。

 むしろこの題名を付けてから物語を書き始めたんじゃないかというくらい。


 毎年春を感じる度にこの作品の冒頭だけでもちらっと読み返したくなるような、僕の中でそんな位置付けの作品になってくれました。

 きっともうこれほどの熱を注いで青春ジャンルのお話を書くことはできないだろうし、仮に書いたとしても本作と似たり寄ったりの話になっちゃうんじゃないかな、というくらいいろんなものを出し切れたと思います。

 大満足。


 P.S. これ書いていてる今(2023/4/2)ちょうど桜が見ごろなので、近々深夜のひとり花見に行きたいと思います!




~Happy End~




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