『春の定義は』 その2:僕の青春を詰め込みました
2023年3月
【青春を形に残したい】
ありきたりな話なんですけど、社会人になってからいろいろ辛い経験しました。
追い詰められてるときって幸せだった頃のことを思い返すじゃないですか。
しかもそれがやけに輝いて感じられるじゃないですか。
僕にとってはそれが大学生時代、特に1~2年生くらいの時期だったんです。
エモ懐かしみながら、あの頃の出来事とか抱いてた感情とか、そういうものがだんだんと離れて褪せていくのって寂しいことだよなって感じていました。
寂しいっていうか、見過ごせないレベルの大きな損失じゃないかと思いました。
僕にとって記憶は財産と同じで、人生の価値って素敵な思い出の数で決まると思ってるんですよ(唐突な人生観)。
そういう感覚を持っていて、かつ創作活動を趣味にしている人間である僕が、人生で一番輝いてたときのことを何かの形に残しとかないでいいんか? 的なことは考えますよねやっぱり。
という経緯で、実はかなり早い段階から(今から7年くらい前)本作のひな型に当たる作品の構想は練り始めていました。
目的が自分の思い出の補完ということなので、テーマはモラトリアム感を前面に出した大学生活、さらにすべての季節を盛り込むように1年間の物語としました。
そんな感じで漠然とした「やりたいこと」は初期からブレずに決まってたんですね。
あとはそれに合うようにストーリーやキャラクターを考えて当てはめていくという方向性でした。
初めは小説ではなくパワーポイントを使ったノベルゲームふうアニメーションで作ろうとしてました。
頓挫してしまったんですけど、その痕跡がこちらです。
この時点ではストーリーは今と全然違ってました。主人公も男だったし。
学生時代によく聴いていた楽曲をBGMとして、著作権ガン無視で使いまくりました(なので公開できません)。
しかし、こういう心理描写過多のストーリーは微妙な間合いをアニメで表現するのが難しかったです。
やっぱりこの手のジャンルは小説が合ってると思いました。
【骨組みを立てる】
これを小説という形で作り直そうとなったときに、改めてメインストーリーも一新しました。
どうしようかなと思って、やっぱりラブストーリーは入れたいなと思いました。
ただ、それだけで1年分のお話を作るのはボリューム的に厳しい。
なのでかさ増し目的でサスペンス要素も足すことにしました。
そこで一緒にモラトリアムっぽい停滞感・鬱屈感を出す理由付けもできればなと思って、いろいろ考えて『親友の失踪事件』というのを思い付きました。
なんですけど、書き終わってみると明らかにこっちの方がウエイト持ってっちゃってましたね。
ちなみに女性を主人公にしたのは僕の中で初めての試みでした。
本作では常に主人公と親友とのエピソードがちらつくことになるんですが、そのときに、男同士と女同士とで友人関係の雰囲気って違うよなと思って。
本作的には女性同士の友情の方がしっくりくる気がしたんです。
あと、テーマ的に主人公がウジウジしてしまう場面が多いんですけど、単純に男が悩んでる姿って格好悪いけど女性だとそれだけで一種の儚さがあるというか、絵になるかなって。
これは僕が男だからそう感じるのかもしれませんね。
乙女心のわからない僕に女性視点の恋愛を書けるのか、みたいな躊躇はもちろんあったんですけど、それについては主人公像を「思考が世間ずれしている女の子」に設定することで事なきを得たのかなと思っています(得られているでしょうか…?)
という話をここまで書いてふと気付きましたが、本作を境にしてそれ以降の自作品ってすべて主人公が女性になってますね。
ゴブリンガールしかり、頭セレブレーションしかり……。
それより前って、僕男主人公ものしか作ったことないんですよ。
どういう心情の変化?
ちょっとこれ、自分で自分に興味深いです。
今度考察してみたいと思いました!
【ほぼほぼ体験談】
純文学ってどういうものを指すんでしょうか。
ネットで適当にググると、「とりとめのない日常の出来事を芸術的な感性・表現で示した文学作品」みたいな説明がありました。
これでいうと、本作は純文学というよりは大衆文学(純文学より娯楽性が高いもの)が適当だと思われます。
失踪事件、みたいなドラマチックな出来事って日常的とは言い難いですし。
※このサイトの投稿カテゴリに『大衆文学』というのがなかったため、一応純文学のところに置かせてもらってます。
どちらにせよこういうジャンルの作品って等身大の世界を描くじゃないですか。
異世界転生ものみたいに突飛な展開や設定で見せる作品ではないですよね。
リアルさが求められるし、それを何より大切にしないといけないと思います。
だからこそ下手な想像で書くと墓穴を掘っちゃうんだろうなと、余計な物怖じをしてしまうんですよ。
ということで、この作品は本筋こそ創作したものですが、所々に盛り込まれている小ネタエピソードはほとんど僕の実体験を基にしています。
真夜中に凍えながらひとり花見をしてみたり(4月)、濃霧の立ち込める田んぼ道を肝試し感覚で徘徊したり(6月)。
学校サボって日中を家に篭り、その罪悪感を少しでも和らげようとアパートの前にゴミ捨てに出て「これで一日中引きこもってたわけじゃないから」という実績作りをしてみたり。
懐かしいですね~!
あと原付がやけに登場するなって思われた方いると思うんですけど、
はい、そうです。
僕の描く青春に原付は欠かせないのです(断言)。
滑り防止のために雪道に両足を着けて走って凍傷寸前になったネタ(1月)も実際に経験したことです。
そもそものこれを書いた目的が僕の思い出補完でしたので、こんな具合で自分にしかわからない思い出を各章(月)に散りばめています。
それでいうとかなり内輪ネタに走っていたという自覚はありまして、
読者の視点で見たときに「このくだりって必要だったの?」という不自然な箇所って結構見受けられたんじゃないでしょうか。
ラブストーリーにしろサスペンスにしろ、テンポが遅く中だるみもひどかったと思います。
悪い意味で粗のありすぎる作品でした。
それとオチについても、大衆文学にしてはスッキリと細部まで見せてくれないというか、モヤモヤが残る終わり方だったとも思います。
結局最後の最後まで名都に再会することは叶わなかったし、故に彼女の心情を聞くこともできませんでした。
眞輔との問題も解決にまでは至っていなくて、これからも一緒に抱えて生きていこう、という展望でしたよね。
じゃあ何をもってしてこの物語は終わったのか? というと、それは主人公・花帆自身の、物事の捉え方の変化でしょうか。
それって1年間を通して少しずつ変わっていったもので、それを冒頭4月の春から終盤の3月、ひと巡りして再び春を迎えたときに、確かに自分はあの頃とは変わったんだ、という自覚を持たせることで示しました。
ここまで書いてしまう時点で野暮がすぎるんですが、なんていうかこう、煮え切らないものを煮え切らないままで置いてしまおう、というか「煮えねえな~」ていう過程そのものが青春なのかなって。
ちょっと自分でも書いてて意味わからないんですけど、そういう意味わからんのが青春ですよ(強引)。
青春なんですよ!
【まだ書き足りない】
作品を最後まで書ききってみて、自分自身でも気付かない内に設定が移り変わっていたとか、このキャラ初期はこんな役じゃなかったよな、とか。
そういうことってありますよね。
みたいなお話で本作との思い出を振り返りたいなって思いますが、文字数があれなので次回に続きます!
つ・づ・く