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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第2章

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77: 会議3日目 (レオンハルトside)

「ハルト!ハルト……だよな?お前、なんでこんな所にいるんだ?っていうか、そのカッコ……」

 勢いよく話しかけてきたくせに、語尾がどんどん小さくなっていく。

 目の前のガタイのいいコワモテの顔が不安げになっていくのが可笑しくて、思わずクッと笑ってしまった。


 会議3日目でいよいよ討伐議題に入る。

 昨日までの出席者と、更に体格のいいいかにも軍部の関係者であろう男達が会議室に集まってきている。

 討伐に参加した時に見た顔がチラホラいる。が、向こうがこちらに気づいていない場合がほとんどの中、コイツ―――ストラウト共和国の将軍・ガザル・コスナーは意外と観察力があるんだな、と見直した。


「久しぶりだな。ガザル」

「お、おぅ……。前回の討伐ぶりだな。って、お前……、やっぱり噂通りどっかのボンボンだったんだな……?」

「黙っていてわるかった。身分を明かせなかったんだ。それにしてもよく俺だって分かったな」

 海岸線の討伐隊に正体を隠して参加している時には、フードを深く被ってあまり顔を出さないようにしていた。

「そりゃ、お前、体格っつーか、雰囲気つーか、身のこなしでハルトだと気づいたんだが……。ん?身分……?……まさか……。今回、グーラート王国の第三王子が、初めて三国会議に出席する、と聞いたんだが……。そいつはやたらと魔法が使えて……やたらとイケメンだと噂されてたんだが?…………………………お前?」

「俺」

 ニヤリと笑ってやった。

「~~~~!!マジかぁー……。あっ!今までのご無礼、大変失礼致しました」

「やめろよ。普通でいいよ、めんどくせぇ」

 突然畏まった後、元に戻った。

「マジかよ。今まで散々こき使っちまったじゃねーか!あっ!ワーグ殿はもちろん知ってたのか!?」

「討伐隊の中では、ワーグとアランだけだな。知ってたのは」

「アランもかよ!!確かにアイツも傭兵にしてはちょっとお上品だと思ってたんだよ」

「褒め言葉と取らせて頂きます。因みに所属は軍部ではなく、レオンハルト殿下直属の従者になります」

 ガザルの後ろから現れたアランがご丁寧に役職を明かした。

「うお!気配消すなって!」

 ガザルとワチャワチャやってると、周りの討伐参加者がザワザワと騒ぎだした。


 遅れてきたワーグも入口付近で捕まって、顔見知りのセラト国の軍関係者に真相を聞かれている。

 レナルドを見ると、呆れたような嬉しそうな複雑な顔をしている。

 何人か、見た顔から声をかけられたが会議の始まる時間になり、それぞれ席についた。


 開催国であり議長国でもある、セラト国の最高司令官ゲオルグ・スティングラー将軍が前に出ると、会場は一瞬でピリッと緊張感に包まれた。


 *****


「―――さて、海岸の現状は以上の通りだ。偵察部隊によると今年の進行は早めで、冬の到来前には魔物が動き出しそうだと報告がある」

「冬前に来てくれるならありがてぇな」

「去年は真冬だった。海に落ちた奴は即戦力外だったな」

 グーラートのワーグ、セラトのスティングラー将軍、ストラウトのガザル、三国の軍部関係者がメインで話が進む。

 昨日までの会議の偉ぶった大臣や文官と違って、現場の叩き上げが多い軍人達は気取らずにざっくばらんに話が進む。

「で?グーラートからは何か報告があるんじゃねぇのか?」

 ガザルがニヤリとしながらこちらに話を振ってきた。

「そうですね。今回初めて末弟のレオンハルトも参加させて頂きましたので、報告と提案を」

 立ち上がったレナルドが会場を見渡す。

 ほとんどの視線がレナルドではなく、隣で一緒に立った俺に集まる。

「既に見知った方もいらっしゃるかもしれませんね。グーラート王国第三王子のレオンハルトになります。討伐時の「水使い」と言ったら分かる人も多いですか?」

 ザワリ、と空気が変わる。


「水使いって、去年クラーケンの攻撃を完璧に躱したウォーターウォールを発動させた奴か?」

「同時に火炎弾もぶちこんでたよな」

「お、俺、見たぞ!一昨年の討伐の時には救護テントで負傷していた奴らを一気に治療して、奇跡とか言われてた!」

 ザワザワと討伐参加者達が話し出す中、セラト国の大臣が声を上げた。

「なんだ?その噂話みたいなのは!去年も一昨年もそんな報告は上がっていない」


 そりゃそうだ。

 討伐隊に紛れ込んでいた俺は、毎回グーラート王国軍とも行動を共にせず、地元の町役場が募った義勇軍として参加していて、ほとんどの参加者と交流を持たなかった。しかも大きい魔法を発動して、派手に動いた後はその場をすぐに去ってしまっていた。

 まだ魔物が出ていたので、かなり心苦しかったが、正体を明かすわけにはいかなかった。

 そんな得体の知れない存在1名を、国に出す報告書には書きづらいだろう。

 学園を出てから毎年参加して、3年目くらいでガザルに声をかけられた。なるべく大人数で戦闘している時に、誰が魔法を放ったのかわからないようにしていたのに、たまたま居合わせたガザルに見つかってしまったのだ。

 それからは作戦の要に俺を使うような戦略を立てられたりして、まあ、結構コキ使われた。

 ガザルは俺の素性を聞いてくることはなかったので、去年はそれをいいことに素知らぬ顔をして司令本部を出入りしたりして、討伐隊の中で存在を知られるようになってきた所だった。


「事情がありまして、身分を隠して参加していました。でも戦闘力として有力なのは一緒に戦ったみなさんならお分かりのことと思います」

「わしは知らんがな、仮にそうだったとして今正体を明かすことの意味はなんだ?」

 だたやかましいだけのジジイじゃなかったな。


「この討伐における全責任と総指揮権限をレオンハルトに」


 レナルドが言うと、会場がピタリと止まった。


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