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逃げられ王子と追われる令嬢  作者: キョウ
第2章

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100: 脱出

と、とうとう100話まで来てしまいました!!

最近とみに遅筆なのに、読んでくれている皆様のお陰です。ありがとうございます!

 部屋を用意……って言うから宿泊してたようなお部屋を想像してたのに、連れて来られたのは王宮内でもかなりはずれの方にある塔の上の部屋だった。

「悪いな。アオイが魔法を使えると分かっていたからな」

「これって……、完全に監禁ですよね」

 螺旋階段をひたすらグルグル上らされてたどり着いた部屋は、宿泊してた部屋と遜色ないくらいの整った部屋だった。

 でも、違う所もある。

 目では確認出来ないけれど、この部屋全体に魔力制御の魔法がかけられている。

 魔力持ちの少ないセラトでも、これだけの魔法を施せる魔術師がいる、ってことよね。


「今日はもう遅い。ここにいれば命を狙われるようなことも、拐われるようなこともない。安心して休め」

 いやいやいや。

 今、拐われてきたんですけど!

 じとり、とした目でマルクス様を見たけど、そのままもう1人の従者を連れて部屋を出て行ってしまった。

 もちろん扉にはカギがかけられている。


「もー……。なんなのよ……」

 セラトの妃って言ってたけど、どういうこと?殿下にはもうお妃がいるのに。

 それも気になるけど、レオは大丈夫かな。いや、レオなら大丈夫だろう。

 ダリア様やナナトはどうなっただろう。

 レオだけじゃなく、ハヤテやリン、アランまでいたからよっぽどのことがなければ命の危険はなさそうだけど……。


 全然、身体検査とかされなかったから良かった。

 お出かけ用の簡素なドレスのポケットから、小さく折りたたんだ白い布を取り出した。

 一目見ただけではハンカチに見えるそれを、ヒラリと広げる。床に広げたそれに手をかざす。

 小さく魔力を込めれば、布の上に華旺国で使われている「かな」が現れる。

 アヤメ兄さん考案の魔法具。

 でも、この文字「かな」が読めないと発動しないので、華旺国の者か「かな」をちゃんと習った者しか使えない。

「彼の者をここへ」

 唱えたら、文字が光る。

 移動魔法のキラキラが見えて、増えていく。

 見えてくるシルエットがハッキリして、目の前にタカユキ様が現れた。

「呼んでくれて良かったよ。さすがに城に忍び込むのは骨だからね」

 細目が柔和に笑う。


「しかしすごいな、さすがアヤメ。これ、王宮の魔法防御網(バリア)にもちゃんと引っ掛からないね。私の移動魔法じゃあ、感知されてしまうと思うなぁ」

 一見すごく便利な移動魔法は、基本的には術者が行ったことのある場所でないと移動出来ない。どんなに近くても実際に訪れていないと()()には飛べない。

 アヤメ兄さんは、この布に複雑な術をかけて、「布がある場所は本人が行ったことのある場所と同じ」になるようにした。

 一体どんな術なのか、一応説明は受けたけど難しすぎて理解出来なかった。

 本人以外が布を用いて(しゅ)を唱えたら、布のある場所に移動出来る、という、とっても便利な道具なのだけど、魔法のバリアまで突破出来るとは……。

 でも、アヤメ兄さんがあんなに研究して作った魔法具を、全く必要としない人がいることを知ってる……。


「お父様!あっ、タカユキ様。来てもらったのは嬉しいけど、向こうは?」

「えー、レオ君がいれば向こう敵無しでしょ。あっちに人数割くより、コッチかな、と思ってつけてきたのに」

「それは、ありがとうございます。でも、こんな魔法制御くらい自力でどうにか出来ますよ」

「ははは!だろうね。でも、さすがに娘を1人で脱出させるのは心配だからね」

 タカユキ様は、長く一緒に父として暮らしてきた優しいお父様の顔で言った。


 *****


 魔法制御のかけられている空間にいると、魔法を発動出来なくなる。魔法のかけられた核がどこかにあって、それが使おうと放出した魔力を吸い取るからだ。

 根本的にはその核を見つけて壊せば制御は解けるんだけど、レオやタカユキ様、私の家族は探す労力より、吸い取れないほどの魔力を使って無理矢理魔法を発動させる方が手っ取り早い、と思うだろう。

 現に今目の前で、タカユキ様は扉のカギを魔法で開けた。制御なんか何もなかったかのように。


「えっ……、なんっ……」

 扉の前で監視していた兵に言葉を発することも許さず、タカユキ様は魔法ですぐさま眠らせた。

 諜報部隊の長をしているのは知ってるけど、こうして実戦を目の前で見るのは初めて。

 でも、若い時にはスゴかった(父上談)らしいその腕前は、現場を退いた今でも衰えてないらしい。


「魔法制御を付けたから、油断していたのかな。アオイを閉じ込めておくのに、見張り1人だけとは」

 王宮の建物にくっついてはいるものの、出入口は一階まで降りないとないらしく、2人で物音を立てないように螺旋階段を降りた。

 降りきった所は小部屋になっていて、人の気配はない。さっき入ってきた王宮内部に続く扉の向こう側には見張りがいそうだった。


 扉の向こう側で何やらモメているような声が聞こえてくる。

 タカユキ様と壁に張り付いて、何を言っているのか、見張りは何人いるのか、様子を聞いてみる。

「……り下さい……。……ですから…………」

 兵士が誰かを説得しているように聞こえる。敬語だし、目上の人っぽい。んだけど、相手の方の声がよく聞こえない。

 女性……なのかな?

 ボソボソとした、でも高めの声がする。

「……たくし……、お話が……」

 もしかして、私に何か話しに来た方なのかも?

 って、私がここに閉じ込められてる、というのを知ってる人?もしくはこの王宮内では全て知られていることなの?

 と、考えていたら、ふいにドサリという重いものが倒れるような音がした。

 目の前の扉が静かに開くと、細身で華奢な女性が現れた。


「ユーリア妃殿下……」

「アオイ……様、ですわね?」


 同時に声を発して、2人で止まってしまった。


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