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ジョージおじさんは財布の中からお金を取るとトラックに乗って坂を下って行った。アンジェリーナちゃんは「夜に来てねー、またジェンガしようよ」と言って隣の家に帰って行った。僕はまたクリスマスプレゼントの仕分け作業を始める。明らかにぬいぐるみが入ってそうな柔らかい感触の袋、玩具が入っていそうな段ボールの箱、多種多様だ。ふいに朝に見た自分の幼少時代の動画を思い出した。僕はサンタクロースにプレゼントを貰った記憶が薄っすらとある。好きなアニメのフィギアだった。まだ自室の机の上に飾ってある。
少しするとサンタイルさんが帰って来た。ロングコートを壁から突き出した棒に掛ける。
「あの、アンジェリーナちゃんが来ました」
「おお、そうなんだ、クリストフくんのことが気になったのかな」
ああ、そう、そう。心配してくれていたみたいだ。
「お父さんが大きな魚を釣り上げたそうで、今夜も食べにおいでって言ってましたよ」
「じゃあ、エイダイを釣り上げたかな。やったな!あれは美味しいんだ」
「エイダイ?」
「ああ、エイと鯛の中間でね、大きい魚だよ。白身で身がホクホクしてるんだ。クリストフくんの住んでいた日本には無いのかな」
「初めて聞きました」
僕はあまり魚に詳しくないから、もしかしたらと思うとハッキリ答えられない。でも聞いたことがない。
「そうだ、早くお昼ご飯の準備をしないといけないね」
サンタイルさんはそう言うとキッチンに入り、それからトントン、トントン、ザクッ、ザクッと包丁とまな板の音が聴こえて来た。僕は手伝おうとしたが、サンタイルさんは「料理は僕に任せて」と言って僕の申し出を断った。
シチューのいい香りがしてきて、お腹がギュウグルグルと鳴る。そういえばガスはプロパンなのだろうか。キッチンを見た限りガスの火が出ているのが分かった。オーブンは無いみたいだったがその代わり大きな窯があった。あそこでパンを焼いているのだろうか。僕は疑問ばかり浮かぶ。




