間章その一『星波学園の人々』26
★夜衣斗★
田村さん?………ああ!一昨日の剛鬼丸の武霊使い………はぐれ化を起こして、武霊使いじゃなくなったから取り上げられたって事か?
「田村さんの奥さんから、これを君に使って貰いたいって言われて貰って来たの」
奥さん?……田村さん、結婚してたんだ……ってか、奥さんから?どうして?
「奥さん。夜衣斗君にとても感謝してたわよ。夫を助けてくれてありがとうって。だから、今度、周りが落ち着いたら、ちゃんとしたお礼をしに行くって」
お…お礼?………困る。自分が助かる為に田村さんの治療をした………だから、礼を言われる筋合いは……ない。だから、困る。
「本当は一昨日渡されてたんだけど、夜衣斗君用に再設定するのにちょっと時間がかかっちゃってね。昨日渡せなくって、市役所への連絡も滞ってたみたいなの。だから、星電を管理している自警団。私が直接持ってきたわけ」
……いや、まあ、それでも、団長自ら来る事はないんじゃないんだろうか?
「ん〜本当はね。私以外の団員が持ってくはずだったんだけど……私、ちょっと夜衣斗君に興味があったから、替わって貰ったの」
……興味っすか……照れます。
「徒歩で帰るんでしょ?」
まあ、バスに乗って帰る距離でもないし、そのつもりだったので、頷く俺。
「じゃあ、途中まででいいから一緒に帰りましょ?」
そう言われて、何だか照れ臭くなり、頬を掻く俺。
……考えてみれば、朝もそうだけど、女性と一緒に登下校するのは初めての経験だな……素直に喜んでいいのかな?……まあ、いいか。
「……美羽ちゃんから聞いてたけど、本当に夜衣斗君って喋らないのね?ちょっとは会話のキャッチボールをしましょうよ」
そう団長に言われて、俺は先ほどとは違う意味で頬を掻いた。