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プロローグ

「まず状況を整理してみようか。

カミラさんが殺されたのは午後2時頃で、その時宿にいたのは我々6人しかいない。


 部外者の可能性も否定できる。鍛冶屋のサムのベルトを借りて確かめてみたけど、外部の人間が行うことは間違いなく不可能だね」


 探偵エレナは溌剌と語る。俺はただただ聞いているだけ。いつものことだ。


「まずミラさんには不可能だね。広間で私とチェスをしていた。それは助手クンも見ているね。

彼女は瞬間移動ができるけれど、人に見られていては行えない。同様に私と助手クンの可能性も否定できるだろう。


 次にヘンリーさんはどうかな。カミラさんが殺された部屋に行くには広間を通らなければならないけど、彼は一度も通っていない。加えて彼は能力を持っていないから、犯行は不可能だね。


 となると残るは9歳のエリザベスちゃんと革職人のサムの2人。どちらも一度広間を通っていたね。果たしてどちらだろうねぇ」


 勿体ぶった口調で、エレナさんは続ける。まだ20代と若いものの、年齢に見合わない知識と観察力、そして洞察力は圧巻だ。


 なにより、蒼い目と白いショートヘアの髪は、犯人を指摘する時には強く映える。


「エリザベスちゃんは、右手の人差し指をムチのように長く伸ばせるという能力を持っているね。

子供ながら、なかなか危ないものを持っているものだねぇ。カミラさんの死因である絞殺とも一致する」


「でもウチはっ!!」


 エリザベスちゃんの反論を静止して、エレナは続ける。


「まあまあ、そう急ぎなさんな。彼女は指を伸ばすたび、戻したあとの第一関節がみみずのように腫れるという代償がある。

一昨日見させてもらった通りだね。ありゃあ痛々しいものだねぇ。ただし今はその跡は見られないから、指はまだ綺麗なままだ」


「つまりそれって...」

 ミラは気づいたようだ。ここまで来ると消去法で分かってしまう。


「そう。犯人はサムだよ。間違いなくね。能力もないのによく頑張るものだね」

 エレナは鋭い眼光で指摘する。


「違う!俺じゃない!第一どうやって殺したんだよ!手で首を絞められたとかではないんだろう?ならどうやって——」


 サムを遮って、エレナは答える。

「うるさいねぇ。自明じゃないの。ベルトだよ。

昨日見せてもらった時と現場検証で借りた時、少し形が変わっていたよ。ちょうど締めた部分がぐにゃりと曲がるような、そんな痕跡もある」


「......」

 サムはもう応えようともしない。


 俺は気になっていることをエレナさんに聞いた。

「でも、動機はどうなるんです?動機だけの面でいえば、正直サムよりも間接的とはいえ危害を加えられたミラさんの方が——」


「さあねぇ、興味ないよ。状況からして、殺せるのはサムしかいない。ただそれだけさ。

まあ旧知の仲ではあったみたいだし、大方痴情のもつれとかそういう、くだらんものなんかじゃないのかねぇ」







 事件を解決させた後、2人で帰路に着く。


「さすがですねエレナさん。今回もあっさりと解決しちゃって」


「君の指摘もよかったよ。ベルトの可能性を指摘したのは君だからね。

 しっかしねぇ。休暇で旅行に行ったっきり、まさか君と鉢合わせて、さらに事件にも遭うとはねぇ。全く気が休まらなかったよ。」


「まあ、まだ明日も休日なんですから、ゆっくり休んでください。書類仕事はやっておきますから」


「助かるよ助手クン。いつも悪いねぇ。はいこれお土産。美味しいんだって。あげるよ」


 そう言って、地方名物のお菓子をくれた。


 こうしてまた、いつもの業務に戻る。

 エレナさんと俺の事件簿は、次々と厚くなってゆくことを、この時の2人はまだ知らなかった——

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