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第6話 「バイトを探す男」

昼休み。



いつものテーブル。



 

「カトゥー!俺バイトしよう思っとるんよ」

 

ユージが言った。

 

 


一瞬、周りが静かになる。

 

 


「バイトですか?」

 

ヒロシが聞き返す。

 

 


「そう。ちょっと金いるけーね」

 

 

珍しい話ではない。

 

だが――

 

 


「飲食系がええんやけど」

 

 

その一言で、

全員がなんとなく察した。

 

 



(あ…ダメなやつだ)

 

 


(まかな)いあるしな」

 

 

やっぱりだった。

 


 

「あと出会いもあるやろ?」

 

 

ニヤッと笑う。

 

 

誰も何も言わない。

 


 

「時給も絶対1100円以上は欲しいし!」

 


 

条件が増えていくーー

 

 


「で…時間なんやけど」

 


 

ここからが本番だった。

 

 

 

「17時半か18時くらいから入って」

 

 

みんな下を向きスマホの画面を見つめるが…耳はダンボ!

 

 

 

「20時半には帰りたいんよね」

 

 


沈黙ーー

 

 


「……何で20時半なんです?」

 

ヒロシが一応聞く。

 

 


「バカやのカトゥそれ聞くか?」



「女と電話(ゲーム)せんといけんやろ!」

 

 

即答だった!!

 

 



(バカはアンタだろ…)



全員がそう思った…


しかし言葉にできる者はいなかった…… 




「21時には家おらんと怒られるけーね」

 

 

 

誰も反応しない…

 

 

 

「20時半なら、まぁ余裕で間に合うやろ?」

 

 

 

余裕とかいう問題ではない…


根本が間違っている。

 


 

全員がそう思っていた。

 

 

 

 


その日の夜。

 

 

ユージは早速電話をかけていた。

 

 


「もしもし!バイトの応募なんですけど!」

 

 

元気だけはいい。

 

 

 

「はい、時間はですね18時くらいからで」

 

 

普通だ。

 

 

 

「20時半には上がりたいんすよ」

 


普通ではない。

 

 

 

「え?無理?忙しい時間帯?…」

 

 

相手の声は少し呆れていた。

 

 

 

「いやでも自分、仕事終わり17時なんで」

 

 

全く関係ない。

 

 

 

「え?それはちょっと…」

 

 

雲行きが怪しくなる。

 

 

 

「いやいや、大丈夫すぐ慣れるんで!」

 

 

何が大丈夫なのかは分からない。

 

 

 

「え?…いや…あー…はい……」

 

 

プツッーー

 

 

電話が終わった。

 

 

「ムカつくわぁ…」

 


「何様や」

 


不満そうに(つぶや)く。

 

 

 

 

翌日ーー

 

 

「昨日○○に電話したんやけどさ」

 

 

早速始まった。

 

 

 

「メッチャ感じ悪かったわ」

 

 

「何様やっつーの!」


 


(お前だ…)

 

 

誰も口には出さない。

 

  

 


その後も、何件か電話をかけた。

 

 

 

結果は――

 

 

全滅。

 

 

  

「求人出るってことは、人手不足ちゃうんか?」

 

 

ユージは首をかしげる。

 

 


 

「全然受からんやないかい!」

 

 

 

理由は明確だった。

 

 

 

だが……本人だけが分かっていない。

 

 

 

 

数日後。

 

 

一件だけ、面接まで進んだ。

 


  

「ちょっと行ってくるわ」

 

 


珍しく綺麗めの(スウェット)

 

 

それでも面接の格好ではない。

 

 

 

そして一時間後ーー

 

 

帰ってきた。

 


 

「どうでした?」

  

ヒロシが聞く。


 


「ダメやな」

  

即答。

 


 

「何でですか?」

 

 


「知らん」

 

  

本当に分かっていなかった。

 

 

 

「多分な…」

 

 

ユージが続ける。

 

 


「店がショボかったんよ」


 

「勿体ないわぁ、今逃したら二度とあんな店

面接いかんっつーの」 


 


責任転嫁だった…

 

  

 

「俺クラスになると、ああいうとこ無理なんやろな」

 

 

 

誰も否定しないーー

 

  

否定できないのではない。

 

 

 

面倒なだけなのだ。

 

 

 

「まぁ、安いとこで働く気ないし」

 

 

 

まだ言う。

 

 

  

その日の帰り道。

 

 

ユージは一人で(つぶや)いた。

 

 

 

「今の世の中…人見る目あるヤツおらんなぁ」

 

 

 

 

本当にお店側の見る目がないのか…

 

  

もしくは、彼が選ばれるような人間ではないのか…

 

 

 

 

その答えにはーー

 

 

彼は一生、辿(たど)りつけないのかもしれない。

 

 

 

「まぁええか」

 

  

そう言って、

 

 

またコンビニに寄った。

 

 

 

バイトを探しているはずの男は、

 

 


今日も客のままだった…

次回  第7話 「依存する男」 (5/15 金)


今回も最後まで読んでいただき感謝いたします。

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