第16話帰還と次の一歩
――あれから一ヶ月。
夜の町は静かだった。
湿った風が路地を抜け、かつて感じていた魔力の重さは、もうない。
その静けさの中で――
俺たちは確かに、前へ進んでいた。
「……今日はここまでだな」
ダンジョンから戻ったばかりの体に、わずかな疲労が残る。
だがそれ以上に――
(軽い……)
確かな変化があった。
「……ああ、体が軽い」
拳を握る。
力が、前とは比べものにならないほど馴染んでいる。
「限界、越えたのね」
エリナが肩を叩きながら笑う。
「正直、見てて怖かったけど」
「……悪かったな」
苦笑する。
「でも」
エリナの目が、少しだけ柔らかくなる。
「強くなったわよ、あんた」
「……ああ」
小さく頷く。
胸の奥に、確かな熱がある。
俺たちはそのままギルドへ戻った。
夜の灯りが照らすカウンター。
いつもより静かな空気の中、受付へ向かう。
「アナシュ・クライン、小迷宮討伐――完了です」
受付の女性が書類を確認し、目を細める。
「……やっぱりね」
一枚めくり、軽く笑った。
「1ヶ月でCランクパーティ昇格なんて偉業、そうそうないわ」
「よくやったわね」
「ありがとうございます……!」
エリナが誇らしげに頷く。
その時。
『我が主。ステータスを確認しろ』
リードの声。
「……ああ」
意識を向ける。
『アナシュ・クライン
LV:25(限界突破)』
HP:1020/1020
MP:710/710
SP:2050/2050
平均攻撃力:1020
【スキル】勇者LV1(ランク???)
【サブスキル】成長/超集中/鑑定/スタミナ強化/戦闘狂/限界突破
【魔法】風魔法LV10/身体強化魔法LV7
【技】風魔二連撃/疾風脚/跳躍/烈風拳/瞬時反応
「……すげぇな」
思わず漏れる。
(ここまで上がるか……)
『当然だ』
リードが静かに言う。
『限界を越え続けた結果だ』
「……ああ」
拳を握る。
「ちゃんと、強くなってる」
「で?」
エリナが掲示板を見る。
「次、どうするの?」
視線の先には――
Dランク、Cランクの依頼。
選択肢は、いくらでもある。
「焦るな」
レインが静かに言う。
「積み重ねを崩すな。それが一番の近道だ」
「……分かってる」
数秒の沈黙。
そして――
「これだ」
一枚の依頼を指す。
「堅実だけど……確実に上に行ける」
エリナが笑う。
「いいじゃない」
レインも頷く。
「同行しよう。君たちの成長も見たい」
夜の街を歩く。
風が心地いい。
だが――
(近いな)
胸の奥がざわつく。
(次の戦いが)
確実に、近づいている。
『ここからが本当の冒険だ』
リードの声。
「……ああ次は中層に行こうと思う」
空を見上げる。
「もっと強くなる」
拳を握る。
その先にあるものは――
まだ、誰にも分からない。




