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ニッポン駐在記~元日本人航宙軍士官日本駐在員になる~  作者: 鷹羽 樹


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第9話 瑠沙の里 3

「クリス少佐、日本国内では緊急時や捜査などの時以外はスマホや正規の無線機を使ってください。日本には電波法と言う法律があり内蔵端末での通信は違法の恐れがあります。あと、内蔵端末などの王国製技術の地球への漏洩にはくれぐれも気を付けてください。

 東京では駐在所近くに社員用宿舎としてマンションの一室を用意しましたので、明日駐在所に言った際に確認しておいてください。マンションにはベッド、冷蔵庫、洗濯機、レンジを設置しておきましたので、そのまま入居していただいて結構です」


 瑠沙少佐は、先ほど渡した大判の封筒とは別に、二つの小さな細長い封筒をエイミーに手渡した。

 エイミーは手渡された郵便封筒に懐かしさを覚えながら栗栖と書かれた封筒の中身を確認する。中からは二本の鍵とプラスチックカード、住所の書かれた紙片が入っていた。

 紙片に書かれた住所を見て免許証とパスポートをもう一度確認する。どちらもそのマンションの住所になっていた。


「ちょっと地図で場所を確認させてもらいますね」


 エイミーは内蔵端末でネットワークに接続した。ハッキングして地図データを抜いてしまえば早いのだがしょっちゅうそんな違法行為ばかりしてるわけにはいかない。こちらの環境に合わせてデータを取り込むことにする。

 フリーでダウンロードできるOSをエミュレートして作動させる。画像などを表示するブラウザは地球で一番使われているらしいものを選んだ。そのブラウザの関連したマップを表示させる。同時にこの住所近隣の不動産情報も表示した。


「えぇー、駅まで徒歩八分って。相場の家賃見たら、ひと月分で頂いた金額の五分の一が無くなっちゃうんですけど」


 瑠沙少佐はエイミーのわずか一分ほどで情報を取得したその速さに驚きながらも、家賃相場に動揺した彼女を安心させるように説明した。


「そのマンションは会社の所有物件ですから頂くのは管理費用として毎月六万円、来月の給料から引かせてもらいます。光熱費などはお渡しした通帳の口座から引き落とされるように、こちらで手続きしておきます。

 それと、これもまた急な話で申し訳ないのですが、姫様がここ瑠沙の里での滞在に難色を示していまして、東京の別宅が欲しいと仰って現在準備中なのです。内装工事は終了して明日の午前中には家具の搬入も終わる予定です。

 そこで少佐には、姫様がご入居前にセキュリティーの確認をしてきてもらいたいのです。

 もう一つの封筒に、そのマンションの鍵とセキュリティーカードが入っています。住所はその紙に書かれた場所です

 検分した結果、追加で必要なものがあればこちらに連絡を下さい。至急追加の工事を行います。

 それとそのカギとセキュリティーカードは少佐がそのまま持っていてください。緊急の場合必要になることもあるでしょうから」


 エイミーは先ほど自分のマンションを確認したように、マップと不動産情報を検索して表示する。

 今度はマップの機能のストリートビューを使ってマンションの外観を見てみた。


「おお、きれいな高層マンション。商業施設も有りと……。物件は……、えっ、じゅ、じゅうななおく……」


 エイミーはネットの接続を切りそれ以上の検索をやめた。


「クリス少佐、王族のお住まいになる場所ですから。分かりますよね」


 瑠沙少佐の言葉に、エイミーは愛想笑いを返しながらコクコクと頷いた。



「さて、こちらからの伝達事項は取り敢えずこのくらいでしょうか。何か疑問や問題があれば瑠沙中尉に聞いてください。彼はあなたの副官として東京駐在所に在籍することになります。

 それと、少佐のODC(空間収納)のリストを見せてもらいましたが、私物の銃器がいくつかあるようですね。姫様の護衛の必要上、そのまま所持していて構いません。ただし、日本には銃砲刀剣類所持等取締法と言う法律がありますので、緊急時以外はODCから取り出さない様にしてください。

 ただ、所持している王国製の銃器は地球製の物とは規格が違いますので、弾薬の補充ができません。後ほど銃器のリストを渡しますので、希望の物を申請してください。

 ああ、重要なことを忘れるところでした。光学兵器だけは没収させてもらいます。これは技術格差上、地球にはまだ存在しない製品の使用は認められないと言う事からです。

 まあ、これも細かいことを言い出したら、身体強化技術や義体技術など、王国人自体の否定になりますから、あくまで王国への建前上のポーズと思って供出に協力してください」


「ここでだしますか? 返してもらえるんですよね?」


 エイミーの顔は強張り出し渋っている。


「ええ、そうしてもらえれば。何か違法な物をお持ちじゃないですよね」


 瑠沙少佐は、エイミーの出し渋る姿を見て訝しんだ。


「いえ、そう言う訳じゃ……」


 エイミーは、ソファーに座った膝元にODCの取り出し口を開くと、一つづつ取り出しテーブルに並べていく。

 航宙軍正式拳銃二種二丁、小銃二丁、狙撃銃一丁、そして次にくすんだ木箱を取り出し、瑠沙少佐に開けて見せた。


「これは、光学銃開発最初期の物で未使用品で状態も最高ランクの鑑定書付きの物です。オークションに出せばおそらく今回の姫様の物件と同じくらいの値が付くのではないかと」


 次に取り出したのは黒い化粧箱で、中身は美しい彫刻が施された二世代ほど前の銃だった。


「これは著名な銃開発者の限定生産品、しかも未使用高ランク品です。これは先ほどの値は付かなくても、家が二、三件分ほどの値でしょうか」


 こうしてエイミーのODCからは、骨董品、美術品とも言える光学銃が十二丁、金額にすれば小型の星間クルーザーが一艇買えるほどの物が出てきた。


瑠沙少佐はやや顔を引きつらせながら言った。


「これは没収などしたら強権を利用した横領を疑われかねません。瑠沙家で預かったにしても、価値を維持するために定期的なメンテナンスを必要とするのでしょう? そこまでは、こちらでは出来かねます。

 この十二丁の銃はこのままお持ちください。王国とご本家には骨董品、美術品として返却したと報告しておきます」


 エイミーは、ほっとした顔をして銃の箱を一つずつ丁寧に収納していく。


「瑠沙少佐、これは使っても大丈夫でしょうか」


 ODCから革製の作業ホルダーの様な物を取り出し、見せる。そこには二本の棒が刺さっており、長さはどちらもこぶし二つ分、一本は円筒形もう一本は楕円の物だった。


「ああ、光学剣(ライトセイバー)ですか。それは使わない方が良いでしょうね。もう一本は見たことありませんね」


 エイミーは楕円形の物をホルダーから取り出すと、目の前に両手で縦にして持った。そして右手の親指でスイッチをスライドして入れると、ジワリと銀色の液体が染み出し、それはアッと思う間に伸び上がり、やや反りのある片刃の剣と鍔になった。いや、それは長さ八十センチほどの抜身の刀だった。


「クリス少佐には驚かされてばかりですね。それは、どこで手に入れられたのですか」


 エイミーはスイッチをスライドして元に戻すと、刃と鍔は柄の部分に吸い込まれていくように短くなっていき、そして柄だけになった。ホルダーにそれを戻しながら。


「軍の技術研究員の友人と酒を飲みながら、こんなのあったら面白いよね、なんて話をしてたらそいつが、よし、作ってみるって送ってきたのがこれなんですよ。なんでも液体金属を利用したものらしいんですけど。軍の採用コンペにも出したようですが駄目だったようです。ですから一品ものですよこれは」


「それを使うのは、地球に密入国した宙族と全身義体の敵のみにしてください。と言うよりも、コレクションの一つにされた方がいいんじゃないでしょうか?」


「ああ、やっぱりそう思いますか?」


 エイミーは光学剣と液体金属ソードのホルダーをODCにしまった。そして、そのほかの渡された品物も、左目にODCのリストを表示させネーム付けしながら入れていく。


「こちらからは以上ですね。先ほども言いましたが何かあれば中尉の方にお願いします。それから、お礼が遅くなりましたが、こちらに向かう船では娘が大変お世話になったようでありがとうございました」


 瑠沙少佐はソファーから立ち上がり頭を下げた。その横では中尉も頭を下げた。


「妹がお世話になりました。ありがとうございます」


 エイミーも慌てて立ち上がり頭を下げる。


「娘さんと言うと、ご分家の実里亜さんですか。こちらこそ色々助けてもらいありがたかったです」


「明日からの東京駐在所と王家の東京別宅の件、よろしくお願いします。この後は姫様とご本家へのご挨拶ですね。中尉、少佐のご案内を」


瑠沙少佐とエイミーはお互いに敬礼を交わすと、中尉からコートとスカーフを受け取り、瑠沙少佐にもう一度頭を下げた。


「それでは失礼します」


 エイミーは瑠沙中尉に先導されて駐在事務所を後にした。



 エイミーは先を歩く中尉に声を掛けた


「中尉、姫様に先にご挨拶に伺おうと思う。ご本家には午後一番で伺うと伝えてもらえないか」


「はい、了解しました」


 中尉はスマホを取り出すと登録してある番号の一つに電話を掛けた。先方といくつか言葉を交わすと通話途中で先方からの言葉をエイミーに伝えた。


「少佐、ご本家からお昼をご一緒にいかがでしょうかとのことですが」


「喜んでお伺いしますと伝えてほしい」


「少佐は喜んでお伺いしますとのことです。……はい。……はい。そう伝えます。失礼いたします」


 中尉はスマホを切り、ポケットにしまうとエイミーに本家からの言葉を伝えた。


「ご本家は、楽しみにしてお待ちしておりますとのことです。それと少佐、王家別邸まで少々距離がありますので急いで向かいませんと、ご本家の方に影響が……」


「おお、そうなの? じゃあ急がないと。姫様の方はアポ入れとかなくて大丈夫?」


「そうですね、大至急入れます」


 二人は段々早足になっていった。


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