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そして君は明日を生きる  作者: 佐野零斗
第三章『遊楽施設に潜む影』
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第三十八話『闇に潜む影を追え』

「───ひえぇっ!?怖い怖い…!!前向けない!!怖い!!」


「こんなの大したことないよ!!そんなに怖いなら、俺の後ろに着いていればいい!!守ってあげる!!」


 東商の繁華街──通称『レジャーエリア』に二人は立っていた。

 遊園地や娯楽施設が集まる一帯だが、決して“旅行”などという生ぬるい状況ではない。


『依頼:レジャーエリアに潜む影を追え』

『依頼内容:最近、東商レジャーエリアで連続殺人未遂事件が発生。素性を調査し報告せよ。犯人と遭遇した場合のみ戦闘許可。天道教幹部、もしくは香良洲の関与の可能性大。十分注意して挑め。』

『討伐士:奥寺絵梨花、宮本武蔵』


 朝、こうした司令が届き、ワープロボットで現場へ向かうと、そこは昼間の賑わいで溢れていた。


「あ、武蔵くん!!」


「──やあ!奥寺さん!!入団式ぶりだね!元気だったかい!」


「う、うん!今回は二人だけだね!一緒に頑張ろうね!!」


 挨拶を交わし、周囲を見渡す。

 事件が起きているとは思えないほど、昼のレジャーエリアは平和そのもの。

 そう、事件はすべて夜に起きるのだ。


「そ、それにしても…みんな賑やかだね。本当に事件が起きてるとは思えない…」


「そうだな。夜になるまで待つしかないな!!よし、暇つぶしに遊ぼう!!さあ行こう!!!」


「あっ!?ちょっ、待って武蔵くん!!!」


 任務そっちのけで全力疾走する武蔵。

 絵梨花は必死で追いかける。


「はあ…はあ…早い…ですよ…。流石に…ついていくのが精一杯…」


「お疲れだな!!じゃあ早速行こう!!」


 向かうは仮家ではなく、とあるホテル。

 フロントを通らず、QRコードで自室へ直行。荷物を置き終える。


「よしっ、じゃあこれと…」


「よし荷物も置いたし!!行くぞ奥寺さん!!!!」


 バタン、と大きくドアを開けて廊下を駆ける武蔵。

 もし着替え中だったら──などと考える暇もなく、絵梨花は荷物整理に専念する。


 荷物を片付け終え、最も大切な一枚の写真を取り出す。

 母と二人で写った写真──その前で、彼女はそっと呟いた。


「──お母さん。私、頑張るから。しっかり空から見ててね。長女として…しっかり頑張るから…だから…」


 涙混じりに写真に祈る様子は、隠れて見ていた武蔵でさえ気を使うほど、寂しさを帯びていた。


 ---


「さあ!遊ぼうか!!奥寺さん!!」


「は、はいっ。…本当にいいんですかね。こんなことして」


「いいんだ!!夜になれば調査が始まる。それまでの暇つぶしさ。だが警戒は忘れずに。楽しみながら警戒しよう」


 笑顔で言う武蔵に、絵梨花は少し安心したような表情を浮かべる。


「…じゃあ、そうしますっ!今は楽しみましょう!」


 ぐっと手を握られ、思わずガッツポーズ。


「じゃあ早速!!あれに行こう!!」


 指さす先は、恐怖度MAXのお化け屋敷『THE END』。

 明らかに苦手な雰囲気だ。


「ええ!?む、無理です!!私、怖いの苦手で…!!」


「大丈夫!俺がいる!!」


 ──絶対的な安心感。

 彼の存在が、どんな闇でも吹き飛ばしてくれそうな気がする。


「…分かりました…でも、私の前にいてください」


「もちろん!俺の後ろに隠れてろ!!」


 さっと後ろに回り、二人はお化け屋敷へ足を踏み入れた。


 ---


 時刻は21:00。

 レジャーエリア閉園──ここからが討伐士の本番だ。


「さて!早速パトロールだ!!」


「…は、はいっ…。うぷっ。気持ち悪い…」


 昼間のアトラクションを楽しみすぎたせいで、絵梨花は酔い気味。

 武蔵が連続でジェットコースターに乗らせたせいだ。


「そうか!なら、ゆっくり治すといい!」


 トイレに駆け込む彼女を見守りながら、武蔵は夜のパトロールを開始。

 辺りは暗く、明かりも少ない。アトラクションも停止し、異様な雰囲気に包まれる。


「…この雰囲気、気味が悪いな。確かに連続殺人未遂事件とあるけど、アトラクションだけの場所で?……何かありそうだ」


 住宅街の存在を思い出す。

 事件はそちらで起きているかもしれない──奥寺さんと合流した。


「奥寺さん!無事か?」


「は、はい。なんとか…落ち着きました」


「それはよかった。それで、奥寺さん──」


 酔いが覚めた彼女に今までの事情を説明。納得した様子で相槌を打つ。


「なるほど、住宅街の方が可能性は高いですね。二手に別れた方が効率が良さそうです」


「そうだな。奥寺さんは住宅街、俺はレジャーエリアを見回るよ」


「はい!何かあればすぐに連絡くださいね!」


 二手に別れ、効率的にパトロールを開始。

 奥寺絵梨花の目は怯えず真剣そのもの──母から教わった通り、仕事と私情を区別できる彼女の姿だった。

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