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ファイブ ノミトの物語
害虫のような生き物を生んでしまった、と母親は度々口にした。
その言葉を聞いて育ったノミトは、できるだけ息をひそめ、部屋の隅でたまにみる虫のように、目立たず生きてきた。
だから存在感のない人間として、他人からはたまに思い出される程度の人間になった。
だが、そんな人間を見つけてくれる少女がいた。
ノミトはその少女を何があっても助けたいと思った。
運が悪いのか、度々大変な目に遭っているその少女を。
その道の先に、地を這う虫のように踏みつぶされる結末が待っていたとしても。
ノミトは突き進むつもりだった。
結果としてノミトは命を失う事になったが、彼は後悔していなかった。
守られた少女が、ノミトの死に酷く傷ついているとも知らず。
道端の蟻を踏みつぶして罪悪感を抱く事はあっても、それがトラウマになる人間は少ないから。




