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第73話 城の宝物庫

 コツ、コツと地下へと続く階段を降りる。地下は木でなく、土を掘って魔法で固めただけの造りなので、どこか土の匂いがする。


 一応、宝物庫と名売ってはいるが、別に宝があるわけではない。昔は様々なエルフの宝石等があったらしいが、今はただの物置となっている。その証拠に、別に厳密な警備がされているわけでも、鍵かかった宝箱があるわけでもない。


 むき出しの大きな棚の前に立ち、先ほど自分で治癒魔法をかけて元気になっているエリスが立ち止まった。


「確か、ここの……」


 棚に適当に置かれている、銀のお菓子箱みたいな箱を開ける。


「あ、これだわ」


 そこには、先端が四角く、胴体は長い不気味な線が入ってあった。


「これが、じゅーでんき?」

「なんか変」


 なんだか思っていた物と違う。まぁ、そもそもどんなものか想像もついていなかったで、なんとも言えないのだが。


 おそる、おそる触ろうとするとエリスに笑われる。


「なにビビってるのよ。生き物じゃないわよ」

「じゃあ」


 フレデリカがエリスの手を持って、じゅーでんきを触らそうとする。


「きゃ!」


 悲鳴を上げてエリスがフレデリカの手を薙ぎ払う。


「なにすんのよ!」

「エリス、ビビってる」

「ビビってないわよ!」


 いや、今のは無理があるぞ。


 そんな強がりな言葉を放つエリスに、フレデリカが鼻で笑っていた。


「だったらフレデリカが触ってみなさいよ」

「ほい」


 言われて秒で触って見せるフレデリカ。


 それを持ってエリスに近づける。


「ほれ、ほーれ」

「あんたすごいわね。普通に」


 恐怖よりも感心が勝ったエリスは、素に戻った。


「それで、これをどうするんだ?」


 俺はスマホを取り出して、フレデリカの持っているじゅーでんきと見比べてみる。


 全員で見ていると、エリスが「あ」と声を上げて、じゅーでんきの先端を持った。


「先端を凹みに差せるんじゃない?」


 フレデリカが先端を持って、スマホの凹みに差した。


「ドッキング♡」

「なんで下ネタなのよ」

「今のは下ネタじゃない」


 確かに、今のは下ネタじゃなかったけど、なんだろう。フレデリカが言うと下ネタに聞こえる。


「今のが下ネタと捉えるなんて。エリスはやっぱりむっつり」

「なぁぁ!? む、むっつりちゃうわ!」

「じゃあ、リッタに抱きついて」

「はぁ!? なんでそうなるのよ!」

「むっつりじゃないのならできるはず」


 エリスは、むぅと膨れる。


「『しめしめ。わたしはオープンエロ。これで堂々とリッタの息子を拝めるわね』」

「勝手にアフレコすなっ! てか、今の流れでリッタの息子を拝めるわけないでしょ!」


 文句を言いながら、エリスは俺に抱きついた。


 俺は良い匂いに包まれて、エリスに1言申す。


「この微妙な胸の感触。不合格」

「美少女妖精王が抱きついて不合格とは良い度胸ねっ!」

「不合格をいただきました」


 フレデリカはじゅーでんきを持っている方とは逆の手で杖を出す。


『トニス』


 初級雷魔法トニスをエリスに放つ。


「な、んで、わたし!?」


 初級魔法とは言え、雷の魔法をくらったエリスは、プスプスと煙を上げてその馬に倒れた。


「今日、こんな、役回り、ばっか……。妖精王なのに……」

「ふっ。リッタに抱きついた罰」


 抱きつけと言っておいて、理不尽なやつ。


「ルナならこうはならない。フレデリカの優しさ」


 確かに……。ルナなら腕の1つくらい斬り落としそうだな。


「って、フレデリカ! 見てくれ!」


 煙を上げて倒れているエリスを放置して、俺はスマホの画面を見る。


 なんと、スマホが光を放ち出した。


「光っている!?」


 フレデリカも少し興奮気味で画面を見ると、あの日見た人物画が浮かび上がってくる。


 不思議な恰好をした男女が少し恥ずかしそうに映っている姿。


 スマホと俺を交互に見るフレデリカ。


「こう、まじまじと見ると似てるね」


 改めて言われてベヒーモスの言葉を思い出す。


 リュートのスマホ。


 これは父さんのスマホ。


 だから、この人物画は……。


「父さん……」

「リッタのお父さん……」


 フレデリカが呟き、画面を見たまま聞いてくる。


「じゃあ、この隣の女の人はリッタのお母さん?」


 俺は首を横に振った。


「違う。この女の人は俺の母さんじゃない」


 隣に写っているのは確実に俺の母さんではなかった。


「元カノ?」

「なんか嫌だな。父親の元カノを見るとか」


 苦笑いで答えながら、ボタンを押してみる。次は、あの文章を読んでみたい。ここをローラが押して、この人物画が出て来たのだ。だったらボタンを押せば文章が出てくると思ったが、反応を示さない。


「あれ?」


 なにも反応を示さないのでボタンを連続で、ぽちぽちっと押すと画面が変になる。


「あ、リッタ。潰した」

「あれぇ」


 画面が変になったので適当に押してみると、次はちゃんと俺の出したかった文章の部分が出てくる。


「あ、これこれ」

「ドラゴンの恋文」

「これの意味を理解すれば、父さんの手がかりになるかも」

「でも、読めないよね」

「俺でも読めない」

「だったらどうするの?」

「そこで、ベヒーモスに頼もうと思って」

「ああ。日誌解読したルナね」

「フレデリカ……。ルナをゴリラ扱いしたら死ぬぞ……」


 最近、ルナがゴリラ扱いされている。絶世の美女をゴリラと言えるのは勇者パーティだけだろうな。


「ほんじゃベヒーモスのいるワルツワットの森へ行くか」


 俺はまだフレデリカの能力を得ているので、杖を出してエフュージョンを唱えようとする。


「ま、ちなさ、い」


 ガシッと、ボロ雑巾が俺の足を掴んでくる。


「エリスゾンビが現れた」

「誰が、エリスゾンビやねん……」


 死にかけの声で、ちゃんとツッコミを入れる雑巾王エリス。


「わたし、を置いていくなんて、許さないから」

「わかってる、わかってる。ちゃんと連れていくから」


 返事をしてから、エフュージョンを唱える。


 しかし、なにも起こらなかった。


「あ、あれ?」

「そういえば、エフュージョンは人の集まる場所、行ったことのある城や町、思い入れのある魔力の持ち主のところへは行けるけど、それを満たさない場所には行けない。以前、フレデリカはワルツワットの森にリッタがいたからエフュージョンできたけど、今、ワルツワットの森には誰もいないから行けないかも」

「でも、ベヒーモスがいるぞ?」

「あれは魔神」

「腐っても魔神。人間とは違うってことね」


 あはは、なんて苦笑いを浮かべるが、どうしようか悩む。


「ここからワルツワットの森に行くには、最短でノーシュヴァイン城に行ってからになる。そこからベヒーモスを探すことを考えると時間がないな」

「リッタ」


 フレデリカが袖をクイクイとしてくる。


「航海日誌にジズのことが書いていた。エルフの大地で吹くとジズが来ると。ジズに頼んでベヒーモスのところに連れて行ってもらうのは?」

「おお。それは良いアイディアだな」


 流石は杖の勇者様。頭が良い。


「あんたら。空の魔神をパシリにするのね」


 自分で回復魔法をかけたエリスが起き上がり、呆れた物言いをしてくる。


「それを言えば、大地の魔神を阿呆だと思ってるぞ」

「まぁそれも、そうね。見た目ルナだし」

「お前。次は殺されるぞ」

「ふん。ルナなんてバナナあげてれば機嫌良くなるわよ」


 いない時には強気なやっちゃ。


「ほんじゃ、空の魔神を呼んでみるとするか」

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― 新着の感想 ―
[一言] ドラゴンの恋文、今になって読み直してみると、判ってくることもある… 「線」かあ… 魔神を使いっ走り。罰当たりですなあ/w
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